「使用人兼務役員」及び「執行役員」の税務をめぐる考察 【第2回】 「使用人兼務役員に関する税務上の留意点①」 税理士 大塚 進一 使用人兼務役員は基本的には役員であるので、役員に対する取扱いが適用されるが、一部使用人でもあるため、その辺りの整合性に留意する必要がある。 1 使用人兼務役員になることができる役員とは 前回の1(1)において述べた、「その他法人の使用人としての職制上の地位」とは、支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等法人の機構上定められている使用人たる職務上の地位をいう。したがって、取締役等で総務担当、経理担当というように使用人としての職制上の地位ではなく、法人の特定部門の職務を統括しているものは、使用人兼務役員には該当しない(法基通9-2-5)。 ただし、事業内容が単純で使用人が少数である等の事情により、法人がその使用人について特に機構としてその職務上の地位を定めていない場合には、当該法人の役員で、常時従事している職務が他の使用人の職務内容と同質であると認められるものについては、使用人兼務役員として取り扱うことができる(法基通9-2-6)。 使用人兼務役員には「常時使用人としての職務に従事するもの」という要件があるため、非常勤役員は使用人兼務役員になることができない。 また「副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員」とは、定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等によりその職制上の地位が付与された役員をいう(法基通9-2-4)。よって、単なる通称又は自称常務取締役のように、職制上は単なるヒラ取締役であるような者は該当しない。 2 使用人兼務役員の給与の取扱い (1) 一般の役員給与について 役員に対する給与は原則、損金不算入であるが、①定期同額給与、②事前確定届出給与、③業績連動給与に該当するものは損金に算入できる(法法34①)。ただし、この①~③に該当する場合でも、不相当に高額な部分の給与は、損金に算入されない(法法36)。 (2) 使用人兼務役員給与の考え方 使用人兼務役員は使用人としての職制上の地位と役員としての地位を併せ持つので、その給与を「使用人部分」と「役員部分」に分けて考えることとなる。使用人分に対する給与は損金算入され、上記①~③の役員給与の規制の対象とならない。 つまり、使用人分の給与は、定期同額給与の制約を受けず、毎月変動させることができ、残業手当も損金にすることが可能である。 なお、使用人としての給与は、その法人の他の使用人に対する給与の支給の状況等から、その職務に対する給与として相当な金額とされている。よって、使用人兼務役員の給与では、適正な使用人分の給与があり、給与支給総額からそれを除いた額が役員給与として扱われ、①~③の規制を受けることとなる。役員分の給与として「不相当に高額な給与の部分」については、損金不算入になるので注意が必要である(詳しくは次回述べる)。 (3) 使用人兼務役員に対する賞与 役員に対する賞与は、原則「事前確定届出」をしていない限り、損金にならないが、使用人兼務役員の使用人分の賞与は、損金にすることができる。ただし、他の使用人に支給する算定基準に合わせる必要がある(他の使用人の賞与額が給与2ヶ月分なら、使用人分の給与の2ヶ月分)。 なお、使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与で、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものは、不相当に高額な部分として損金不算入となる(法令70三)。また、他の使用人に対する賞与の支給時期に支給せず未払金経理をした場合も損金不算入となる(法基通9-2-26)。 (4) 使用人兼務役員に対する退職金 使用人兼務役員が、例えば常務取締役等となった場合、使用人兼務役員は役員であるので、それが常務取締役等になったとしても、役員としての地位の変動にすぎず、退職の事実は存しない。よって、法人が使用人兼務役員であった期間に係る退職給与として一定の金額を支給したようなときは、原則として損金不算入となる。 ただし、使用人兼務役員への給与の支給が次のすべてに該当するときは、その支給した金額について、退職給与と取り扱って差し支えない(法基通9-2-37)。 次回も引き続き「使用人兼務役員に関する税務上の留意点」について、使用人兼務役員給与の「不相当に高額な部分」を中心に解説する。 (了)
相続税の実務問答 【第20回】 「遺留分減殺請求が見込まれる場合の相続税の申告」 税理士 梶野 研二 [答] 遺留分減殺請求によってお兄様に引き渡す財産が確定していない場合には、あなたが、すべての財産について取得したものとして相続税の申告をします。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 遺贈があった場合の財産の帰属 遺言は、遺言者の死亡の時から効力を生じることとされています(民法985①)。遺言によって遺贈が行われると、その対象となった財産は、遺贈者(被相続人)の死亡とともに、その相手方(受遺者)に移転することになります。 しかしながら、遺贈が相続人の遺留分を侵害することとなる場合には、遺留分を有する相続人(遺留分権者)は遺留分の減殺請求を行うことができ(民法1031)、遺留分の減殺請求が行われたときには、受遺者は、遺留分権者に対して、遺贈により取得した財産の一部を引き渡し、あるいは侵害のあった遺留分に相当する弁償金を支払わなければなりません(民法1041)。 ただし、仮に、その遺贈が遺留分権者の遺留分を侵害するものであったとしても、遺留分権者から遺留分減殺請求が行われるまでは、遺贈の対象となった財産は受遺者に帰属することとなります。 2 遺贈があった場合の相続税の申告 相続又は遺贈により財産を取得した者は、相続や遺贈によりその被相続人から財産を取得したすべての者の相続税の課税価格(注1)の合計額が相続税の基礎控除額を超える場合には、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告書を提出し、申告書に記載した相続税を納付しなければなりません(相法27①、33)。 (注1) 相続税の課税価格とは、相続や遺贈により取得した財産の価額から債務・葬式費用を控除し、一定の生前贈与財産の価額を加算した金額です。 相続税の申告期限までに遺留分の減殺請求が行われていない場合には、遺贈の対象となった財産は、受遺者に帰属していますので、当該受遺者は遺贈の対象となったすべての財産の価額を相続税の課税価格に加えて、相続税の申告をすることとなります。 なお、減殺請求権は形成権であって、その権利の行使は受遺者に対する意思表示によってなせば足り、必ずしも裁判上の請求による必要はなく、また、いったん、その意思表示がなされた以上、法律上当然に減殺の効力を生ずるものと解されています(昭和41年7月14日最高裁判決)。しかしながら、遺留分減殺請求がなされたとしても、具体的に返還する財産又は弁償する金額が確定しないと、受遺者及び遺留分減殺請求を行った相続人が、相続税の課税価格を計算することができません。 そのため、相続税の申告期限までに遺留分減殺請求が行われていたとしても、返還すべき財産、又は弁償すべき金額が決まっていない場合には、遺言どおりに受遺者が被相続人(遺言者)の財産を取得した状態にあるものとして、その遺言の内容に沿った相続税の計算を行い、申告をすることとなります。 相続税の申告期限後に、遺留分権者からの遺留分減殺請求が行われることが見込まれる場合、あるいは、遺留分減殺請求に基づき、返還すべき財産又は弁償すべき金額が決まることが見込まれる場合(このような場合には、遺贈を受けた財産のうちから相続税の納税資金を捻出することが困難であると認められることも珍しくないと思います)であっても、相続税の申告期限においては、遺贈の対象となった財産は受遺者が遺贈により取得した財産であることに変わりありませんので、受遺者は、遺贈を受けた財産の価額を基に相続税の課税価格及び相続税額を申告し、算出された相続税額を納付しなければなりません。 一方、被相続人のすべての財産が相続人のうちの1人又は相続人以外の者に遺贈されたために、何ら相続により取得していない相続人は、原則として、相続税の申告義務はありません(注2)。 (注2) 生命保険金等のいわゆるみなし相続財産を取得した場合、被相続人から相続時精算課税制度による贈与を受けていた場合には、相続により財産を取得していない場合であっても、相続税の申告義務が生じます。 3 相続税の申告書の提出後に遺留分権者に返還する財産等が確定した場合 相続税の申告期限後に遺留分減殺請求に基づき、返還すべき財産又は弁償すべき金額が確定したときには、当該財産の価額又は弁償すべき金額に相当する金額の課税価格の減少が生じます。この場合、遺贈について減殺請求を受けた者は当該確定を知った日の翌日から4ヶ月以内に、相続税の更正の請求を行うことができます(相法32①三)。 また、遺留分減殺請求に基づき、財産の返還又は価額弁償金を受けることが確定した相続人は、相続税の期限後申告書又は修正申告書を提出することができます(相法30①、31①)。 4 ご質問の場合 あなたは、お父様の遺言により、お父様のすべての財産を遺贈により取得しており、現時点で、遺留分を有するお兄様から遺留分の減殺請求も受けていません。そうしますと、お父様の財産のすべてはあなたが遺贈により取得したという状況に変わりはありません。 したがって、近い将来、遺産の一部を相続人であるお兄様に返還すること、あるいはお兄様の遺留分に相当する弁償金を支払うことが見込まれるとしても、あなたがすべての財産を遺贈により取得したものとして相続税の申告書を提出し、併せて算出された相続税額を期限内に納付する必要があります。 なお、相続税の申告書提出後に、お兄様から遺留分の減殺請求がなされ、お兄様に返還すべき又は弁償すべき額が確定したときには、その確定を知った日の翌日から4ヶ月以内に相続税の更正の請求を行うことができます。 (了)
連結会計を学ぶ 【第12回】 「債権と債務の相殺消去」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 連結貸借対照表の作成に際しては、連結会社相互間の債権と債務の相殺消去が行われる(「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)18項)。 今回は、債権と債務の相殺消去について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 債権と債務の相殺消去 親会社と子会社で取引が行われ、期末において、債権と債務が存在する場合には、連結貸借対照表の作成に際して、それらは相殺消去する必要がある(連結会計基準31項)。 次のことに注意する(連結会計基準注解(注10))。 作成のイメージは、おおむね次の図表のとおりである。 【図表:連結貸借対照表の作成プロセスのイメージ】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 Ⅲ 連結精算表の作成 親会社と子会社の個別貸借対照表は次のとおりとする。 ① 親会社の個別財務諸表における売掛金の発生 親会社は子会社(100%の持分比率)に商品を売上げ、期末に、売掛金として残っている(消費税は考慮しないものとする)。 また、売掛金残高に対して1%の貸倒引当金を計上している。 ② 子会社の個別財務諸表における買掛金の発生 子会社は親会社から商品を仕入れ、期末に、買掛金として残っている(消費税は考慮しないものとする)。 ③ 連結財務諸表における投資と資本の相殺消去 ④ 連結財務諸表における債権と債務の相殺消去及び貸倒引当金の調整 連結財務諸表の作成に際して、親会社の個別貸借対照表と子会社の個別貸借対照表を単純に合算すると、「売掛金700」とこれに対応する「買掛金700」が二重計上となってしまうので、相殺消去する。また、売掛金700が相殺消去される結果、それに対する貸倒引当金も不要となることから、貸倒引当金の調整を行う。 連結修正仕訳は次のようになる。 ⑤ 連結精算表 連結精算表は次のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第138回】 研究開発費① 「研究開発費の会計処理」 仰星監査法人 公認会計士 素村 康一 〈解説〉 研究開発費は、将来の収益を獲得するために支出される費用であるため、費用収益対応の原則に基づくと、固定資産と同じように支出時に資産として計上し、将来に獲得する収益と期間的に対応させて費用を計上することも考えられます。 しかしながら、企業の行う研究開発のすべてが将来の収益獲得につながるとは限りません。当然、失敗することもあります。また、研究開発計画が進行し、将来の収益を獲得できる期待が高まったとしても、依然としてその獲得が確実であるとはいえません。 確実に収益を獲得できるのであれば資産計上を認めることも考えられますが、資産計上を認めるための客観的で判断可能な要件を規定することは困難です。仮に抽象的な要件を定めて資産計上を容認した場合には、企業間で判断基準にバラツキが生じ、比較可能性が損なわれるおそれがあります。 以上のような論拠により、研究開発費は発生時にすべて費用として処理することとされました(「研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書」三2)。 〔図1〕 研究開発費の会計処理のイメージ ある支出が研究開発費に該当した場合には、すべて発生時に費用として処理する必要があります。そのため、研究開発費に該当するか否かが重要になります。 ここで、「研究」と「開発」は以下のように定義されています。 以上の定義に基づき、会社の行う活動が研究・開発に該当するか否かを実質的に判断することが求められます。 したがって、製造現場で行われる品質管理活動やクレーム処理のための活動は、開発の定義である「著しい改良」に該当しないため、研究開発には含まれないと考えられます(「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」第26項)。 その結果、ある活動が研究開発活動に該当する場合、その研究開発活動に投入された原価は、人件費、原材料費、固定資産の減価償却費及び間接費の配賦額等、研究開発のために費消されたものであればすべて研究開発費に含まれます(「研究開発費等に係る会計基準」二)。 〔図2〕 研究開発費に該当する費用 研究開発費は、新製品の計画・設計、既存製品の著しい改良等のために発生する費用であり、一般的には原価性がないと考えられるため、通常、一般管理費として計上します。ただし、製造現場において研究開発活動が行われ、かつ、当該研究開発に要した費用を一括して製造現場で発生する原価に含めて計上しているような場合があることから、研究開発費を当期製造費用に算入することが認められています。 この場合、当期製造費用に算入するにあたっては、研究開発費としての内容を十分に検討してその範囲を明確にすることとし、製造現場で発生していても製造原価に含めることが不合理であると認められる研究開発費については、当期製造費用に算入することは認められません。 特に、研究開発費を当期製造費用として処理し、当該製造費用の大部分が期末仕掛品等として資産計上されることとなる場合には、従来の繰延資産等として資産計上する処理と結果的に変わらないこととなるため、妥当な会計処理とは認められないことに留意する必要があります(「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」第4項)。 (了)
計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第24回】 「これも気づかない!「罫線の消し忘れ」」 公認会計士 石王丸 周夫 1 今回の事例 計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例24-1】 連結損益計算書のフォームで、特に必要のない罫線が1本ある。 罫線に関するうっかりミスは【第7回】で取り上げました。【第7回】では、罫線の「引き忘れ」と「引きすぎ」の事例を紹介しましたが、今回はそれとは異なり、罫線の「消し忘れ」という事例になります。 上の事例には、罫線が1本余計なところがあります。どこだかわかりますか? 会社法計算書類では、決算書のフォームが定められているわけではありませんが、経理の実務としては、罫線をどこに引くかは概ね決まっています。「明文規定はないけれど、普通はこうする」という具合に、決算書を作成しているのです。そういう意味で、【事例24-1】では罫線が1本余計です。 「そう言われてみれば・・・」というところがありませんか? 2 意味のない罫線は引かなくてよい さっそく、答えを見てみましょう。本来の正しい姿はこうです。 上図の赤枠の部分には罫線がいらないというのが答えでした。おそらく皆さん、正解できたのではないでしょうか。 余計な線が1本ありますと言われれば、だいたい見つけられます。しかし、その情報を与えられていなかったとしたら、見過ごしてしまう人が多いのではないでしょうか。現にこのミスには何回も出くわしています。 経理実務では、罫線というのは「合計を求める際の区切り」のような意味合いで使用されます。そうすると、【事例24-1】では、「経常利益」と「税金等調整前当期純利益」の間に引かれた罫線は、一見もっともらしいのですが、実は何の意味もない罫線であることに気がつきます。 この事例の会社は、今年度、特別損益項目が一切発生しなかったようです。したがって、経常利益の下はすぐに税金等調整前当期純利益となっています。 経常利益と税金等調整前当期純利益は同じ額が記載されていますが、計算過程としては、経常利益までを計算した後、そこでいったん区切って税金等調整前当期純利益を求めるという形式なので、一番右端の列については「経常利益と税金等調整前当期純利益の間の罫線」は必要です。 しかし、その左隣の列まで線を引く必要はありません。説明するまでもないですが、その線は特に何の役割も果たしていない不要な罫線なのです。 3 どうしてこのミスが起きたのか? このミスが起きてしまった原因を考えてみましょう。それは、この連結損益計算書の作成プロセスと関係あります。 作成者は、今期の連結損益計算書を作るにあたって、前期の連結損益計算書のデータをコピーして、それをもとに当期の連結損益計算書を作成しました。その際、フォームが同じで数字と科目名だけを見直せばよいだけなら、このミスは起こらなかったのです。 どういうことかというと、前期の連結損益計算書が、実は以下のようなものだったのです。 赤枠で囲った部分に注目です。特別損益項目ですね。今期はこれが一切ありませんでしたが、前期はこれがあったのです。 ということは、前期のフォームのデータをコピーして、それをもとにして今期の連結損益計算書を作成する場合、コピーして用意したフォームについて、特別損益項目の部分(赤枠で囲った部分)を削除してあげなければならないのです。そして、この時、上図を見るとわかりますが、特別損失の減損損失と税金等調整前当期純利益の間の罫線を消し忘れてしまったというのが、【事例24-1】だったのです。 今回の事例が「罫線の消し忘れ」であるというのは、これを意味しています。 4 こんな類似事例も・・・ ほぼ同じパターンで、次のようなミスも起きています。 【事例24-2】 連結損益計算書のフォームで、全く意味のない罫線が1本ある。 【事例24-2】も、前年度と今年度のフォームの違いに起因するミスです。 【事例24-2】は以下のようなパターンです。 今期は特別損失だけになってしまったのですね。したがって、今期の連結損益計算書のフォームを作成する際、まず前期のフォームのデータのコピーを用意し、そこから特別利益項目のところを丸々削除したのです。その際に、特別利益項目の1番下に引いてあった合計線を消し忘れたのが【事例24-2】というわけです。 罫線のミスというのは、決算の本質に関わるような話ではないため、見落とされることが多いです。もっと大事なことに注意を向けなければならない中で、なかなか気がつかないというのが実情でしょう。しかし、ミスが発生するパターンは限られていますので、【第7回】と今回で紹介したパターンを覚えて、このようなミスが起きていないかを確認していくとよいでしょう。 〈今回のまとめ〉 罫線のミスは、発生パターンを覚えておき、作成した決算書のフォームを確認することが大切です。 (了)
組織再編時に必要な労務基礎知識 Q&A 【Q10】 企業が合併した場合、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関してどのような手続きが必要か 特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ 【A】 社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関しては、主に、消滅会社の適用事業所を管轄する年金事務所において資格を喪失する手続きを行い、存続会社の適用事業所を管轄する年金事務所において資格を取得する手続きを行う。 ここでは、A社を消滅会社、B社を存続会社とする吸収合併の前提で、必要な社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続きを確認する。なお、健康保険は、A社、B社ともに全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入していることとする。 A社(消滅会社)の手続き A社の適用事業所を管轄する年金事務所へ、合併日から5日以内に、次の2つの書類を提出する。 ①は、被保険者資格を喪失する手続きとなり、健康保険・厚生年金保険の資格を取得しているすべての従業員・役員分のそれぞれについて必要となる。また、本届出には、本人分及び被扶養者分の健康保険被保険者証の添付が必要となるため、合併日以降手続き実施までに従業員等から健康保険被保険者証を回収しておかなければならない。 なお、紛失等により健康保険被保険者証の回収ができない場合は、資格喪失届にその理由を付記するか、健康保険被保険者証回収不能・滅失届の提出が別途必要となる。 ②は、適用事業所を廃止する手続きとなり、その事実が確認できる書類(解散登記の記載がある法人登記簿謄本の写等)の添付が必要となる。なお、A社に複数の適用事業所がある場合は、それぞれの事業所を管轄する年金事務所へ当該全喪届の提出が必要となる。 B社(存続会社)の手続き B社の適用事業所を管轄する年金事務所へ、合併日から5日以内に、次の2つの書類を提出する。 ①は、被保険者資格を取得する手続きとなり、健康保険・厚生年金保険の資格を取得するすべての従業員・役員分のそれぞれについて必要となる。 ②は、社会保険上の被扶養者がいる従業員・役員分について提出が必要となる。なお、国民年金第3号被保険者資格取得届は、配偶者の被扶養者がいる場合に提出が必要となり、3枚複写式の様式を使用する場合は3枚目をさす。 健康保険被保険者証の発行 B社(存続会社)における手続きは、健康保険被保険者証の発行に関わるものであるため、不備がないよう早めに準備してスムーズに進めるようにしたい。 通常、資格取得届を提出してから2週間前後で健康保険被保険者証が発行されるが、合併日が4月等の新入社員が多い時期に重なると、通常よりも発行に時間を要することがある。当然のことながら、合併日以降はA社(消滅会社)における健康保険被保険者証は使用することができないため、新しい健康保険被保険者証が早めに発行されるよう、合併日以降できるだけ早めに手続きを行いたい。 なお、健康保険被保険者資格証明書交付申請書を合わせて提出すると、健康保険被保険者証が発行されるまでの間、その代わりとして使用できる証明書を発行してもらえるため、手続き書類は増えるが、合併時期が4月等の場合は特に、当該申請書も合わせて提出することをお勧めしたい。 保険者の変更 今回は、健康保険は、A社、B社ともに全国健康保険協会(協会けんぽ)の適用を受ける前提としたが、同じ全国健康保険協会(協会けんぽ)でも都道府県により健康保険料率が異なるため注意が必要となる。 また、合併の一方が健康保険組合である場合には、保険料率のみならず給付内容等が異なることがあるため、それらの点も合わせて、合併の説明の際に従業員等に周知されたい。 (了)
AIで 士業は変わるか? 【第2回】 「AI時代に変容を遂げる士業の姿」 株式会社マネーフォワード 取締役兼Fintech研究所長 瀧 俊雄 2017年3月15日の日経新聞記事「AI襲来、眠れぬサムライ」は、AIの活用により士業の仕事が意味をなさなくなる可能性に触れ、反響を呼んだ。クラウド会計ツールを提供し、記帳業務の自動化をセールスポイントにする当社にも、その解説を求める講演依頼が後を絶たない。 技術が仕事を奪っていった歴史は、電話交換手や、馬車の事例でよく語られる。今回の場合にはAI(人工知能)という、まるで人間の代替物が浮上してきたことで、24時間働き続ける人造人間がでてくるような喩え方が新しい。しかし、少し考えれば、人造人間が奪う仕事が、なぜ士業のものに限定されるのかという謎に気づく。 このような謎が生まれてしまった理由は、これら論調が形成される元となった、2013年に発表されたフレイ=オズボーン論文が日本に紹介された過程にある。 同論文の原題は「THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?」、和訳すると「雇用の将来:コンピューター化により雇用はどれだけ脅かされるか」であり、コンピューターによる自動化を通じて、米国の702業種の業務のうちどれほどが自動化されるかを順位付けた内容となる。だが重要なのは、それは人工知能を正面から取り上げたものではなく、単純なロボット化・自動化を含めた影響分析であることだ。 ただ、士業の仕事が奪われるという文脈が付けられたのは、同論文において失われる仕事の上位10種に、納税準備の業務や、データ入力業務が含められたためである。原典も読まず、士業の実務を知らない人間から見れば、「ああ、それでAIが士業の仕事を奪うのだな」という理解が行われてもおかしくはない。 だが、現場を少しでも知る人にとって、考え方は全く異なるのではないだろうか。 税務の現場では、もちろん帳簿データにおける税務判断や、税務申告といった、まさに有資格者でしか行えない業務が存在する。ただし、実際に顧客満足の源泉となっているのは、既に発生した経営状況を会計資料や税務手続きとして対応することにあるのではなく、これからの会社の意思決定に影響を与える点にあるのではないだろうか。過去の企業の成功・失敗事例を元に、経営者が陥りそうな悪い判断を事前に察知したり、経営資源の活用改善を促すことが「先生」と言われる所以ではないだろうか。 この5年ほどの人工知能ブームは、コンピューターが学習を行う過程で「ディープラーニング」と呼ばれる手法が大きな分析の改善をもたらしたことに端を発する。もっとも、前述の論文において示唆される、なくなる仕事の特徴は、実はディープラーニングを必要としない、より初歩的な自動化ツールによるものである。具体的には、税法や仕訳のあり方といった、既に何らかの答えが行政や会社単位で存在しているものに対して、適切な質問文を投げ込めば、従来と同じ答えが導かれる、というものである。 仕訳の記帳のような、質問文を入れる方法が、これまでは手入力で行われる場合には、その際に同時に科目の判断までを行うことが業務上は効率的であった。しかし、銀行やクレジットカード、電子マネーなどの利用明細がインターネット上で入手可能となっている現在は、入力自体を自動化し、付随する判断も自動化することが合理的な作業方法となる。入力作業の自動化自体は真新しいものではないが、クラウド化やキャッシュレス化によって、様々なデータをすぐに活用できる環境が整った中、飛躍的にルールに則った記帳業務を自動化することの旨味が発生してきた。この動きは更に、今後の数年間で大きく前進する可能性がある。 その可能性を象徴するのが、政府が2017年に未来投資戦略において設定した4つの領域の目標数値である。 1つ目は主要な銀行における銀行のAPI開放であり、銀行の入出金データを会計・財務ソフトがタイムリーに取得し、リアルタイムな帳簿付けを可能としていくものである。2つ目はキャッシュレス比率の倍増であり、小口現金による支出はなくなり、経費用の電子マネーやクレジットカードを支給される未来はすぐそこにある。3つ目は中小企業におけるクラウドサービスの活用推進であり、これによって士業は単なる入力・操作の業務から、経営判断の支援へと仕事の比重が移ることとなる。そして最後が現金サイクルの高速化であり、請求回収サイクルを情報技術を駆使して短期化し、資金繰りの悩みを抜本的に変えることを企図している。 これらそれぞれの要因はどれも、バックオフィスという「会社が会社であるための手続き」のために費やす時間から、会社の本分でもある、商品やサービスを通じて顧客の満足に向けて振り向けることを可能とするものだ。士業の仕事も、そのバックオフィスの負担を減らすことに一役買いながらも、究極的には顧客満足の資源配分を補佐することに、シフトしていくものとなる。 フレイ=オズボーン論文に話を戻したい。同論文では、コンピューター化によって奪われない上位の仕事も示している。最もなくならないのは「治療に向けたセラピスト」である。手術前や入院中における精神的なケアは、患者が心の安定を保ち、ひいては免疫力にも影響する大事な仕事である。仮に手術が一定の確率で失敗する、といった真実があったとしても、それを受け容れるような会話は、高度化した人工知能であっても対応することは困難であろう。 同じようなことは、経営者の意思決定についても言えないだろうか。 経営者も、孤独な一人の個人である。そのような人に対しての、多面的な支えとなることが、AI時代に変容を遂げた士業の姿といえるのではないか。 (了)
海外勤務の適任者を選ぶ“ヒント” 【第11回】 「海外派遣者に与える「責任と権限」」 中小企業診断士 西田 純 この連載ではこれまで、海外勤務の適任者選びについてさまざまな角度から考えてきました。今回はやや方向性を変えて、会社として派遣者にどのような「責任と権限」を与えるのかという視点から、海外事業への取組み姿勢について考えてみたいと思います。 一口に海外勤務と言っても、派遣先が連絡事務所や支店である場合や、100%子会社の現地法人である場合、合弁会社である場合、さらには現地代理店への出向など、さまざまな形態があります。 連絡事務所や支店の場合は本社が運営責任を持ちますし、現地側が主導権を持つ合弁会社や代理店への技術者派遣の場合などは、限定的な責任と権限で仕事をすることになるので比較的折り合いがつけやすいと思うのですが、日本側が主導権を持つ合弁企業や100%子会社の場合は、日本側が社長を出すのが通常のケースです。 ところが場合によっては、社長が務まる人材がいない等の理由により、現地での体制が脆弱化する場合があります。 1 非常勤社長という選択肢 (1) 社長は日本で? 「社長が非常勤」という体制の会社は、日本ではあまり耳にしませんが、それでも皆無というわけではなく、地方の子会社などで散見されます(東京本社の役員が地方子会社の社長を兼ねるなど)。 海外でも似たような事例があり、社長は2~3ヶ月に1度現地を訪れるだけ、派遣者のトップは工場長、というような体制で操業している会社は決して珍しくないと思います。 (2) 理由はさまざまだが 最もシニアな派遣者が技術屋で、生産の仕事が忙しいため社長は任せられない、あるいは資格要件的に海外勤務者を社長にするのが難しい、もしくはいろいろな理由で本人が固辞している、その他理由は多様だと思いますが、端的に言って現地のトップが社長でない場合、その現地法人はさまざまな「弱み」を抱えることになる、という点はご認識いただくべきだと思います。 (3) 現場主義と即応主義 最大の弱みは、現場で何か緊急を要する事態が起こったときの対応です。重大事故や、従業員や家族の生命に関わるような出来事があった場合、会社としては現場で即応体制を組むことが求められます。 このような場合、日本と現地の間に直行便がなかったり、日本に居る兼任社長の予定が詰まっていたりすると、社長の現地入りまでの時間が長引き、社会に対する責任の取り方という面で不利な状況を作り出してしまう危険性が生じます。 また、緊急事態でなくても取引先との関係づくりや現地政府との交渉など、さまざまな面で社長不在という体制が不利な状況につながる可能性があることを、本社としては認識しておくべきでしょう。 どうしても社長を非常勤にせざるを得ない、というような場合には、①緊急事態を想定したマニュアルを整備し、訓練やシミュレーションを定期的に実施する、②現場主義・即応主義を補完するための代替的な措置を講じておく(社長の現地訪問頻度を上げる、通信連絡体制を整備・強化する等)等の対応策が求められます。 いずれの場合も、「非常勤社長」という体制はあくまで例外的な措置であるとご認識ください。惰性に流されそれを常態化させてしまうことについて、妥協すべきではありません。 2 会社として考えておくこと (1) リスク管理 まず手始めに災害、事故、犯罪、その他日常的なものも含めて、発生しうるリスク要因を可能な限り洗い出しておくことは必須です。そのうえで、リスク要因の発生確率と万一発生した場合の対応策について、あらかじめ準備しておくことが望ましいでしょう。 以下の(2)に述べるトラブル対応と並行して、俗にBCP(Business Continuation Plan)と言われる事業継続計画を作成しておくと、リスクへの対応力はぐっと高まります。元々は国内の、災害対応などを想定したものですが、中小企業庁がBCPに関するウェブサイトを運営していて、どのような情報が必要なのか参考になると思います。 このサイトからは、各種の広報資料なども入手できるため、リスク管理について参考にしてください。 (2) トラブル対応 社長不在の状況で会社としてトラブルに対応しなくてはいけない状態は、明らかな危機に該当します。その場合の担当者が決まっていなかったり、シニアな派遣者が場慣れしていないなどの状況が重なると、火に油を注ぐ形でトラブルのダメージは大きくなります。 この場合、もしも若手の事務系社員が派遣されているようなら、仕事の守備範囲もさることながら、連続する徹夜に耐え得るなど体力的な面も勘案して、トラブル対応時に社長の臨時代理として前面に立ってもらうようあらかじめ決めておくのも1つの案です。 ただし事前の準備は不可欠で、一旦事件が発生してからの任命は逆効果になる場合もあることに留意ください。 3 候補者選定のポイント (1) はじめから“社長の器"という人材はいない 「うちには社長候補の人材がいない」という会社は少なくないようです。でも、たとえば「若手だから」あるいは「現場経験が短いから」という理由で社長候補と考えない、という判断が働いているとしたら、それは無用に可能性の芽を摘んでしまっていることになるのではないでしょうか。 むしろ若手で可能性のある人を、たとえば社長候補の副社長として、最初は周囲がサポートする形で派遣する、というパターンはあって良いものだと思われます。 他方で、定年までの時間も短く、技術屋一筋でやってきたシニアな派遣者にいきなり社長を任せるというような人事だと、どこかに無理が生じる可能性が残ります。 いずれの場合にも、①役割分担、②任期とタイミング、③本社のバックアップなど、さまざまな対策を組み合わせることで乗り切るしかありません。 (2) 立ち上げ時の社長赴任は半年でも可 現地法人の経営を軌道に乗せる立ち上げ時期が、本社としては最も神経を使うフェーズだろうと思います。この期間に限り、本来は非常勤となる兼任社長が現場に張り付いて陣頭指揮を執ることは、何にもまして強いサポートになると思います。 逆に言えば、立ち上げ時期の社長は半年経つと現場を引き上げる、というスケジュールをあらかじめ決めておく、ということになります。7ヶ月目からの体制については、本社と派遣者間の役割分担を明確にすることで乗り切るようにします。具体的には社長不在時の①営業、②技術・製造、③総務・人事、④トラブルや緊急事態について、責任者を明確にして連絡体制を整備しておく、ということです。 (3) バックアップ体制の充実 万一トラブルが起こった場合に本社からどのような応援が可能か、そのバックアップ体制についても可能な限り決めておくことが求められます。非常勤の兼任社長が日本から対応しなくてはならない場合については、トラブル発生時の現地入りまでをどのように調整するのか、即応できない場合は誰か代理が先乗りして時間をつなぐなどの代替案も含めて体制を充実させておくことが求められます。 (4) 見積りに余裕を上乗せする さまざまな条件を加味して厳しい人繰りを何とか乗り切れる目途が立ったとしても、ギリギリで見積もっていると、いざというときに想定外の事態が発生するなど、会社の対応力を超えた事態が発生したりします(いわゆるマーフィーの法則:起きる可能性があって、起きてほしくないトラブルは必ず起きる)。 「ギリギリの体制を組んでいるのにこれ以上は無理!」と言われるかもしれませんが、見積もり10に対して最低でも1の余裕は上乗せして持つようにしてください。予算でも、時間でも、あるいは人繰りでもそうです。そこまで追い込んで、ようやく現実的な対応策になると考えていただいて間違いはないと思います。 4 まとめ~やはり現地責任者に社長を任せるのがベスト~ 今回はここまで、「どうしても海外勤務者に社長を任せられない場合」を想定したお話をしましたが、原則論を言えば、社長は常勤がベストであることに異論の余地はありません。 人材育成計画、そして海外勤務者派遣計画については長期の視点で取り組み、海外勤務者が現地法人の社長を務められるように、時間をかけて準備することに勝る対策はないのです。 非常勤社長はあくまでもつなぎの措置であり、なるべく早く状況を改善するよう対策を講じていただくことをお願いして、今回のまとめとします。 (了)
《速報解説》 適用開始まで1年を切った「国際観光旅客税」 ~海外出張も課税対象に~ Profession Journal 編集部 昨年12月公表の平成30年度税制改正大綱に盛り込まれた、新税制となる「国際観光旅客税」は、平成31年1月7日以後の適用とされており、制度開始まですでに1年を切っている。 本税制は納税義務者を国際観光旅客等(※1)とし、国際船舶等(※2)による日本からの出国を課税対象としている。ただし、出国後に天候その他やむを得ない理由により外国に寄港することなく日本に帰った場合における出国は対象外としている。 (※1) 「国際観光旅客等」は、国際船舶等により日本から出国する観光旅客その他の者(船舶又は航空機の乗員等を除く)であって次に掲げるものをいう。 ① 出入国管理及び難民認定法の規定による出国の確認を受ける者 ② 国際旅客運送事業(他人の需要に応じ、有償で、国際船舶等を使用して旅客を運送する事業)に使用される航空機により日本を経由して外国に赴く旅客 ③ 条約の規定に従うことを条件に日本に入国する者 (※2) 日本と外国との間で観光旅客その他の者の運送の用に供される船舶又は航空機(公用船及び公用機を除く)。 なお、次の場合における日本からの出国については非課税とされている。 税率は出国1回につき一律1,000円で、平成31年1月7日以後の出国に適用される。ただし、施行日前に締結された運送契約(施行日前に当該出国の日を定めたものに限る)による国際旅客運送事業に係る出国については、国際観光旅客税を課さない等の所要の経過措置を講ずるとしている。 納税地は、国内事業者(※3)の特別徴収による場合は、原則としてその住所等の所在地とし、国外事業者(※4)の特別徴収及び国際観光旅客等の納付による場合は、原則として出国する港の所在地としている。 (※3) 国内に住所等を有する国際旅客運送事業を営む者。 (※4) 国内事業者以外の国際旅客運送事業を営む者。 また、本税の徴収・納付については、国際旅客運送事業を営む者が徴収した後、一定期間内に納付を行う。具体的には国際旅客運送事業を営む者が、航空チケット等の代金に本税の1,000円を上乗せして国際観光旅客等から徴収し、国に納付を行う流れだ。 それ以外の場合、例えばプライベートジェット等により国際旅客運送事業を営む者を介さずに日本から出国する場合は、出国のための搭乗等をする時までに国際観光旅客等自身が本税を国に納付しなければならない。 「国際観光旅客税」という名称から、観光目的で出国する旅客に限り納税義務者となる印象を受けるが、上記の通り、観光、ビジネス等の目的に関係なく、出国するほぼ全ての旅客が納税義務者となる。海外との行き来の多い企業にとっては、出張に係る費用負担が増えることも予想される。これら費用負担の取扱いについて何らかの対応がなされるのか、今後の動向にも留意されたい。 なお、本税制を規定した法案については既報の通り、「国際観光旅客税法案」として、他の改正事項とは別の法案が国会に提出されている。 【参考図】 (※) 観光庁ホームページ「(概要資料)次世代の観光立国実現に向けた観光促進のための国際観光旅客税(仮称)の創設」より
《速報解説》 事業承継税制の特例制度の前提となる認定・確認手続を規定した 「経営承継円滑化法の改正省令案」がパブコメに付される Profession Journal 編集部 既報のとおり平成30年度税制改正では、一定の要件の下、特例後継者が会社代表者から贈与等により取得した特例認定承継会社の全ての非上場株式に係る課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について、その特例後継者の死亡の日等まで猶予される「事業承継税制の特例制度」が創設される。 この特例制度を受けるためには、現行の事業承継税制と同じ建付けとして、経営承継円滑化法(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律)による経済産業大臣の認定及びその後の継続的な確認を受ける必要があるのだが、このたび2月8日付けで、特例制度の創設に対応した「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」がパブリックコメントに付された(意見・情報受付締切日は3月9日)。 (※) 上記のパブリックコメントのページでは改正省令案の概要のみ確認できる。本パブコメ開始後に、備考欄において「複数のお問い合わせがあったため、念のため補足いたします。今般の改正の前提となる、所得税等法の一部を改正する法律案及びこれらを踏まえた政省令案が成立していないため、省令改正案の概要という形で意見の募集をしております。このため、改正省令の条文案・新旧対照表案はございません。」との追記が行われた。 改正省令案では、特例制度の前提となる認定の類型の追加が行われ、認定に必要な特例承継計画の確認申請や、特例承継計画に重大な変更がある場合の変更申請、雇用確保要件を満たさなかった場合の特例承継計画に係る指導・助言に関する規定が追加される。 なお、「特例承継計画」とは、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた特例認定承継会社が作成した計画であって、その特例認定承継会社の後継者、承継時までの経営見通し、承継後5年間の事業計画等が記載されたものをいう(計画が提出できる期間は平成30年4月1日から平成35年3月31日まで)。 また、改正省令案概要では特例承継計画の重大な変更の例として「後継者の変更、後継者の人数の変更、事業計画の大幅な変更」が示されており、変更後の計画について認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けたうえで、変更申請を行うものとされる。 注目された雇用確保要件の実質的な撤廃に関しては、改正省令案概要においても「現行の事業承継税制における雇用確保要件を満たさない場合であっても、認定取消し事由には該当しないものとする」としているが、「その他の認定取消し事由については、現行の規定と同様とする」との記載があり、例えば資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合などには認定取消し事由に該当する点については、特例制度でも注意すべきといえよう。現行の事業承継税制の認定取消し事由については、「中小企業経営承継円滑化法申請マニュアル」(中小企業庁)のP40・41で確認することができる。 ちなみに、雇用確保要件を満たせなかった場合にも納税猶予の期限は確定しないが、その理由を記載した書類(認定経営革新等支援機関の意見が記載されているものに限る)を都道府県に提出しなければならず、その理由が、経営状況の悪化である場合又は正当なものと認められない場合には、特例認定承継会社は、認定経営革新等支援機関から指導及び助言を受けて、その書類にその内容を記載しなければならない。 改正省令案は、所得税法等の一部を改正する法律(法案が2月2日付けで国会へ提出済み)の施行の日から施行され、平成30年1月1日以後の贈与等について、特例制度の対象となる予定となっていることから、昨年と同様、税制改正関連法と同日に公布される見込みだ。 (了)