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税理士業務に必要な『農地』の知識 【第9回】「土地区画整理法・土地改良法」

税理士業務に必要な 『農地』の知識 【第9回】 「土地区画整理法・土地改良法」   税理士 島田 晃一   今回は土地区画整理法と土地改良法について解説する。2つの法律は主として土地の面整備のためのものであるが、土地区画整理法は既存宅地の整備又は農地等を宅地化し整備するための手続きを定めた法律であるのに対し、土地改良法は農地そのものの整備のための法律であるという点に違いがある。   1 土地区画整理事業の概要 土地区画整理事業とは、乱雑な市街地やこれから市街化しようとする地域について土地の区画を整えたり、道路、公園等の公共施設の整備を行う事業であり、その施行は土地区画整理法に基づき進められる。 土地区画整理事業の施行者は、土地区画整理法において「地方公共団体」、「土地区画整理組合」及び「個人」の3者が定められている。このうち土地区画整理組合は事業施行区域内の地権者が7人以上であることが必要であり、事業遂行にあたっては組合員の3分の2以上の同意が必要である。また、個人が施行者になる場合は、施行区域内の地権者又は地権者の同意を得た者が1人もしくは数人で行い、事業遂行にあたっては全員の同意が必要である。   2 土地区画整理事業の手順 土地区画整理事業においては、施行者が換地計画を作成し、その計画に沿って道路等公共施設の設置、及び、個々の地権者の土地について造成・区画整理等の整備を行い、各種条件を考慮して再配置を行う。再配置により個々の地権者が取得する土地を換地という。 換地計画上、換地の面積は元の土地より少なくなる(減歩(げんぶ)という)。これは、公共施設の設置や事業費の捻出のために施行地区内の土地の一部が施行者に拠出されるためである。ただし、減歩されても各土地について区画等の整備が行われ道路の接道状況が良くなっていることから、元の土地と換地の価値は等しくなるようになっている。 しかし現実的には、すべての地権者について等価の換地を受けられるわけではない。その解決策として、元の土地より換地の価額が少ない地権者については、「清算金」が交付され、元の土地より換地の価額が多い地権者については清算金が徴収される。 事業終了の際には、換地処分といい元の土地の権利が一括して換地に移行されるが、土地区画整理事業の事業期間は長期にわたるため、このままでは事業開始から換地処分までの間、長期間にわたって土地の利用ができなくなる。 そこで、施行者は土地の利用制限期間を少なくするため、工事が終了した地区から地権者に対し仮換地を定める。仮換地は原則としてそのまま換地に移行する。仮換地が指定されると、地権者はその土地について使用収益が可能になる。   3 土地区画整理事業とその税務 (1) 譲渡税の課税関係 換地処分があった場合、地権者は元の土地を施行者に譲渡し、施行者から換地を取得したとみなされる。 譲渡税に関しては、租税特別措置法33条の3《換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例》により、清算金の交付がないときは、譲渡はなかったとされ譲渡税は課税されない。また、換地処分による土地取得については、不動産取得税は非課税である。また、不動産登記は施行者が行うため、個々の地権者に登録免許税の負担は生じない。 なお、清算金が交付されたときは、次の算式により計算した金額が譲渡所得になるが、その金額については、収用等に伴う買換えの特例又は収用等の5,000万円特別控除の対象になる(措置法33条第1項3号又は措置法33条の4第1項)。 (2) 土地の相続税評価 土地区画整理事業施行中に地権者に相続が発生した場合、当該土地の相続税評価は原則として次のようになる(評基通24-2)。 なお、相続発生時において清算金の徴収又は交付が確定しているときは、徴収された清算金相当額は仮換地の評価額から控除し、交付を受けた清算金相当額は評価額に加算される。   4 土地改良事業の概要 土地改良事業とは、農地の造成、整備及び農業用水路、農道等の農業生産基盤の整備を行う事業であり、具体的には農地造成事業、区画整理事業、用排水路整備補修等事業が行われる。 区画整理事業においては、前述した土地区画整理事業のように換地が行われたり、土地集約のために地権者相互において交換が行われる場合もある。事業の施行や手続きについては土地改良法に定められている。 土地改良事業は、実施主体に応じて大きく2つに分けられる。1つは、実施主体が土地改良区(又はJA)となる「団体営事業」である。土地改良区とは、農地所有者や小作人など15人以上の参加資格者が、事業計画、定款等について都道県知事の認可を受け設立する団体で、事業遂行にあたっては組合員の3分の2以上の同意が必要である。 もう1つは、実施主体が国・都道府県となる「国・県営土地改良事業」である。国・県営土地改良事業の実施にあたっては、従来は施行地区内の農地所有者等15人以上の申請人が必要であったが、今年、土地改良法が改正され人数要件は廃止になり、小人数での申請も可能になった。 団体営事業の場合、土地改良区は区画整理事業、農地造成事業、水利施設の建設(造成等事業)を行うだけでなく、造成等事業の完了後、用水路、ポンプ施設等の土地改良施設の維持管理(維持管理事業)を行う。なお、国・県営土地改良事業についても、造成等事業は国・都道府県が行うが、維持管理事業は多くの場合、土地改良区に委託される。   5 土地改良区の賦課金・決済金と税務上の取扱い 土地改良事業が行われた場合、造成等事業及び維持管理事業のための資金については、土地改良区が賦課金を組合員から徴収する。賦課金のうち造成等事業部分は、毎年の金額が10アールあたり1万円以下など少額な場合を除き農地の取得費又は繰延資産となる。一方、維持管理事業部分は金額に関わらず事業所得(農業所得)に係る必要経費になる。 なお、土地改良区の組合員が農地を譲渡したり、他の用途に転用したときは、組合員としての資格を喪失することになり、土地改良区はその者から賦課金を徴収できなくなる。ただし、賦課金は前述したように造成等事業の費用の後払い及び維持管理事業のための資金であるため、賦課金を徴収できなくなると他の組合員の負担が増加することになる。 そこで、土地改良事業に係る農地を組合員が譲渡・転用したときは、造成等事業の費用残額及び将来の土地改良施設の維持管理費用にあたる金額を決済金として一括徴収することになっている。 農地を譲渡するにあたって支払った決済金は、売買契約において転用して売却することが定められていることなど一定の要件を満たすことを条件として、譲渡所得の計算上、譲渡費用として取り扱われる。一方、農地を転用した場合に支払った決済金は、その農地の所有者に相続が発生したときの相続税評価の計算上、土地造成費のように評価額から控除することはできない。 *  *  * 以上、土地区画整理法と土地改良法と関連税務について簡単に見てきた。これらの法律に係る事業や税務上の取扱いは、土地改良区の賦課金に関する税務を除き、実務上頻繁に出てくるものではないが、仮にこのような事例にあたったときは、本稿を入口にしてより深く精査し、間違いのない取扱いをしてほしい。 (了)

#No. 226(掲載号)
#島田 晃一
2017/07/13

役員インセンティブ報酬の分析 【第5回】「株式報酬・将来株式発行型①」-平成28年度の状況-

役員インセンティブ報酬の分析 【第5回】 「株式報酬・将来株式発行型①」 -平成28年度の状況-   弁護士・公認会計士 中野 竹司   1 株式報酬・将来株式発行型 (1) 概要 前回述べたとおり、役員インセンティブ報酬は、報酬の交付物が金銭かエクイティかに大きく分けることができる。今回は、役員インセンティブ報酬のうち、平成28年度までに導入された株式報酬、かつ将来株式発行型について取り上げる。いわゆるパフォーマンス・シェアと呼ばれるものである。 なお、平成29年度税制改正により、インセンティブ報酬の法人税法上の損金算入の可能性が高まったことから、今後多様なインセンティブ報酬プランが設計されてくると考えられるが、今回は平成29年税制改正前のプランについて検討し、次回から平成29年度税制改正後のインセンティブ報酬プランについて検討する予定である。 (2) 株式報酬・将来株式発行型の導入例 平成29年税制改正前の株式報酬・将来株式発行型の導入例として、株式会社ツムラによる業績連動型株式報酬制度がある。 その概要は以下のようになっている。   2 ガバナンス面から見たメリット・デメリット 株式報酬・将来株式発行型は、いわゆるパフォーマンス・シェアと呼ばれるものであり、同じ株式報酬であるリストリクテッド・ストックと異なる特徴を有する。 すなわち、リストリクテッド・ストックは、一定期間の在籍等の条件はあるものの、ストック・オプションと違い、通常、株価の下落により無価値になることはなく、役員に有利な報酬形態であるが、勤続年数条件型の株式報酬手段は、株価と連動しているものの、業績とは連動していないという批判がある。 このような批判に対応するため、パフォーマンス・シェアが設計されることがある。 パフォーマンス・シェアは、 ◆主要な目標の達成水準が獲得株数を決定する ◆業績評価の終わりに獲得できる株式が組み合わされて長期インセンティブの価値が決まる という特徴により、報酬と業績の連動を直接的に図るものであり、先ほど紹介したツムラの株式報酬もこのような特徴を備えるものといえよう。 もっとも、株式報酬であるから、希釈化が生じるというデメリットもある。   3 金融商品取引法上の視点 株式報酬・将来株式発行型のインセンティブ報酬について、発行開示について開示府令上「第三者割当」から除外されておらず、「第三者割当の場合の特記事項」として割当予定先の状況等として各役員の住所、氏名、職業の内容等の開示が必要になるように考えられる。 また、インサイダー取引規制及び売買報告・短期売買利益の返還制度の適用除外規定がないといった問題もある。ただし、一定の場合に府令の改正案が公表されている部分もあり、次回以降紹介する予定である。   4 税法上の視点 平成29年度税制改正前においては、株式報酬・将来発行型のインセンティブ報酬について、発行会社は役員報酬として損金算入できなかったといってよいだろう。そのため、係る形態のインセンティブ報酬の実例はそれほど多くなかった。 しかしながら、平成29年度税制改正において、株式報酬・将来発行型のインセンティブ報酬について発行会社が役員報酬として損金算入する余地があることになり、このインセンティブ報酬を設計する会社が増えている。 平成29年度税制改正後の状況については、次回以降、紹介する予定である。 (了)

#No. 226(掲載号)
#中野 竹司
2017/07/13

《速報解説》 平成29年度改正を受け相続税関係の改正通達が公表~事業承継税制の免除等要件緩和に係る新設規定も

《速報解説》 平成29年度改正を受け相続税関係の改正通達が公表 ~事業承継税制の免除等要件緩和に係る新設規定も   Profession Journal編集部   国税庁はこのほど、平成29年度税制改正の適用に伴い、相続税関係の通達(相続税法基本通達、相続税関係の措置法通達等)の一部を改正する通達を公表した(ホームページ掲載日は7月6日)。 *  *  * 今年度改正により、日本国籍のない非居住者が、相続開始前10年以内に国内に住所を有していた被相続人等から相続等により取得した国外財産が相続税の課税対象とされるなど、相続税・贈与税の納税義務者の見直しが行われた。これに伴い、相続税法基本通達では、居住無制限納税義務者の判定に当たって、「その者が相続若しくは遺贈又は贈与により財産を取得した時において、法施行地に住所を有するかどうかによるのであって、被相続人又は贈与をした者の住所が法施行地にあるかどうかは問わない」とした基本通達1の3・1の4共-4《居住無制限納税義務者の判定》が削除されている。 *  *  * また措置法関係通達(租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて(法令解釈通達))では、いわゆる事業承継税制(非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予制度)について、災害や取引先の倒産等一定の事由が発生した場合に猶予税額の免除や要件緩和される措置が講じられたことに伴い、例えば措置法70条の7の2第31項1号に規定する「災害によって甚大な被害を受けた場合」の判定方法が算式の形で示される(70の7の2-56)など、各免除等要件の判定方法に関する説明及び留意事項をまとめた項目が新設されている。 なお、上記の改正は平成28年4月1日以後に発生した災害により被害を受けた一定の会社にも適用されているため、すでに適用を検討しているケースや昨今の豪雨被害等により今後検討を要する場合も、新設項目で示された内容について確認しておきたい。 措置法第70条の7の2《非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除》関係で新設された項目は次の通り(贈与税についても同主旨の新設項目あり)。 *  *  * その他、今年度改正で創設(常設化)され平成28年熊本地震にも適用されている租税特別措置法第69条の6《特定土地等及び特定株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例》及び同法第69条の7《特定土地等及び特定株式等に係る贈与税の課税価格の計算の特例》は、特定非常災害発生日前に相続等により財産を取得し同発生日後が申告期限となる一定の場合に、特定土地等及び特定株式等の評価額を特定非常災害の発生直後の価額によることができる特例措置だが、本特例に係る個別通達として4月17日付け(HPでは5/8)で公表されていた「租税特別措置法第69条の6《特定土地等及び特定株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例》及び同法第69条の7《特定土地等及び特定株式等に係る贈与税の課税価格の計算の特例》に規定する特定土地等及び特定株式等の評価について(法令解釈通達)」が、今回の改正で措置法関係通達に織り込まれる形となった(69の6・69の7共-1~5、69の6-1、69の7-1)。これにより上記個別通達は廃止されている。 なお、平成28年熊本地震に関しては、特定非常災害発生直後の価額を求めるための調整率がすでに公表されている。 (了)

#No. 225(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2017/07/13

《速報解説》 外国の親会社から無償で支給される原材料を輸入し、国内の工場において半製品に加工して加工賃を受け取る取引における消費税の取扱いについて、東京国税局より文書回答事例が公表

 《速報解説》 外国の親会社から無償で支給される原材料を輸入し、国内の工場において半製品に加工して加工賃を受け取る取引における消費税の取扱いについて、東京国税局より文書回答事例が公表   公認会計士・税理士 新名 貴則   東京国税局は平成29年6月22日付(ホームページ掲載は7月5日)で、「外国の親会社から無償で支給される原材料を輸入し、国内の工場において半製品に加工して加工賃を受け取る取引における消費税の取扱いについて」の事前照会に対し、照会に係る事実関係を前提とする限り、照会者の見解のとおりで差し支えないとする回答文書を公表した。 以下では、その内容について解説する。   ◆前提 本事例の前提となる取引関係は次の通りである。   ◆事前照会者の見解   ◆見解の理由(要約) ▷加工作業について 当社は国内の工場において加工作業を行い、半製品を外国親会社に引き渡し、その対価として加工賃を受け取るので、当社の加工作業は「国内において事業者が行った資産の譲渡等」に該当する。 ここで、国内において行う課税資産の譲渡等のうち、非居住者に対して行われる役務提供で、次に掲げる3つ以外のものは輸出免税の対象になっている。 外国親会社は国内に支店又は出張所その他の事務所を有しないため、非居住者に該当する。また、当社の行う加工作業は上記の①から③に該当するものではない。したがって、当社の加工作業は輸出免税の対象となる。 ▷輸入消費税について 事業者が保税地域から引き取る課税貨物について輸入申告書を提出した場合、当該課税貨物について課された輸入消費税は、当該課税貨物を引き取った日等の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除される。 当社は無償支給される原材料を輸入し、輸入申告書を税関長に提出して、輸入消費税を納付している。したがって、この輸入消費税は仕入税額控除の対象となる。 (了)

#No. 225(掲載号)
#新名 貴則
2017/07/11

《速報解説》 国税庁、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しについて各種情報をまとめたホームページを新設~改正を反映した平成30年分の源泉徴収税額表等も公表~

 《速報解説》 国税庁、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しについて 各種情報をまとめたホームページを新設 ~改正を反映した平成30年分の源泉徴収税額表等も公表~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   平成29年度税制改正により、配偶者控除及び配偶者特別控除に見直しが行われ、平成30年分の所得税から適用される。このたび、この見直しに関する各種情報をまとめたページが、国税庁HP内に新設された。 なお、上記情報の公開に合わせて、平成30年分の源泉徴収税額表等も公開されている。 (※) 平成29年分から税額は改正されていないが、扶養親族等の数の計算方法が変わることにより、税額表の最後に掲げられている(注)及び(備考)の記載内容が変更されている。   【1】 見直しの概要 今回の配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに関する実務上の留意点は、次の3つである。 (1) 控除額の改正 ① 配偶者控除 改正前の配偶者控除の控除額は、居住者の所得金額に関わりなく一律38万円(老人控除対象配偶者の場合は48万円)であった(旧所法83①)。改正後は、居住者の合計所得金額が900万円を超えると26万円、950万円を超えると13万円(老人控除対象配偶者の場合は32万円、16万円)と逓減する仕組みとなる(所法83①)。 また、改正後は、合計所得金額が1,000万円を超える居住者は、配偶者控除の適用を受けることができなくなる(所法83①)。 (注) ・合計所得金額900万円超:給与所得のみの場合、給与収入1,120万円超 ・合計所得金額1,000万円超:給与所得のみの場合、給与収入1,220万円超 ② 配偶者特別控除 改正前、配偶者特別控除の対象となる配偶者の所得要件は、合計所得金額38万円超76万円未満であった(旧所法83の2)。改正後は、この要件が、合計所得金額38万円超123万円以下に拡大される。改正後の配偶者特別控除の控除額は、下表のとおりである(所法83の2)。 なお、改正前と同様に、合計所得金額が1,000万円を超える居住者は、配偶者特別控除の適用を受けることはできない(所法83の2)。 【改正後の配偶者控除額及び配偶者特別控除額の一覧表】 (※) 国税庁ホームページより (2) 源泉徴収における扶養親族等の数の計算方法の改正 ① 用語の定義 今回の改正により、配偶者に関し3つの用語が定義された(所法2①三十三・三十三の二・三十三の三・三十三の四)。 (※1) 配偶者控除額又は配偶者特別控除額 (※2) 改正前の控除対象配偶者とは定義が異なる。改正前は、控除対象配偶者の定義に居住者の合計所得金額の要件は設けられていなかった。なお、控除対象配偶者のうち70歳以上の者を、老人控除対象配偶者という。 (※3) いずれも、青色事業専従者等は除かれる。 上記①②③の配偶者を、居住者の所得及び配偶者の所得との関係で整理すると次のとおりとなる。 【配偶者の範囲】 (※) 国税庁ホームページより ② 扶養親族等の数の計算 (ア) 原則的な取扱い 甲欄を適用して源泉徴収を行う場合、改正前は配偶者が控除対象配偶者に該当すれば、扶養親族等の数に1人を加算していた(旧所法185、186)。平成30年1月以後は、配偶者が源泉控除対象配偶者に該当する場合に、扶養親族等の数に1人を加算することとされた(所法185、186)。 (イ) 障害者に該当する場合の取扱い 改正前は、控除対象配偶者が障害者に該当する場合には、扶養親族等の数に1人(同居特別障害者に該当する場合には2人)を加算していた(旧所法187)。改正後は、同一生計配偶者が障害者に該当する場合に、扶養親族等の数に1人(同居特別障害者に該当する場合には2人)を加算することとされた(所法187)。 (ウ) まとめ 以上により、改正後の配偶者に係る扶養親族等の数の計算は、次のとおりとなる。平成29年分以前と平成30年分以後では、配偶者に関して扶養親族等の数の数え方が異なるので注意が必要である。 【配偶者に係る扶養親族等の数の数え方】 (※) 国税庁ホームページより なお、今回新設された上記ページ内には源泉徴収義務者に向けたパンフレット「平成30年分以降の配偶者控除及び配偶者特別控除の取扱いについて(毎月(日)の源泉徴収のしかた)」が公表されており、配偶者に係る扶養親族等の数の計算方法の具体例が示されているので参考にされたい。 (3) 配偶者控除の適用方法の改正 改正前は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に控除対象配偶者がいる旨の記載があれば、年末調整において配偶者控除の適用を受けることができた(旧所法190)。 今回の改正で、配偶者控除の適用に居住者の所得要件が設定されたため、年末調整で配偶者控除の適用を受けようとする居住者は、年末調整の時までに「給与所得者の配偶者控除等申告書」を給与支払者に提出することとされた(所法190二二、195の2)。 同申告書には、居住者及び配偶者の合計所得金額の見積額等が記載され、年末調整でそれらの金額に応じた配偶者控除額又は配偶者特別控除額の適用を受けることとなる。   【2】 申告書等の様式変更 (1) 様式変更の概要 今回の改正に伴い、平成30年分以後の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の様式が変更される。 主な変更点は、次の2つである。 公表された情報には、現段階での書式のイメージ(一部)が紹介されている。 (2) 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」及び「給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿」の記載事項の変更 源泉徴収時の扶養親族等の数の計算方法が改正されたことにより、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」及び「給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿」の記載事項が変更される。 変更後の記載事項の詳細については、以下の情報を参考にしていただきたい。 【「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の記載例】 (※) 国税庁ホームページより (3) 「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」の兼用様式の廃止及び様式の改定 平成29年分までの兼用様式が廃止され、「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」の2様式となる予定である。どちらの様式もその年の年末調整の時までに提出する必要がある。なお、本稿執筆現在、今回新設されたページ内には、具体的な様式は示されていない。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 235(掲載号)
#篠藤 敦子
2017/07/10

プロフェッションジャーナル No.225が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年7月6日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.225を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/07/06

monthly TAX views -No.54-「「働き方改革」と税の課題」

monthly TAX views -No.54- 「「働き方改革」と税の課題」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   先の都議会選挙の結果は、安倍一強政治への不信任といえよう。政治手法だけでなく、経済の分野においても、スローガンをくるくる変えるだけで、昨年の配偶者控除問題に象徴されるように、税の構造や所得再分配政策に手を付けない政権の本質が、国民から見透かされたとみることもできる。 今回は、アベノミクスの一丁目一番地の政策である「働き方改革」と税の課題を取り上げてみたい。もっとも、8月に予想される内閣改造後は、「人づくり革命」に変わるようだが。 *  *  * 本年3月に公表された「働き方改革実行計画」(以下、実行計画)では、「テレワーク」が大きく取り上げられている。 と大きくプレイアップされている。 しかし、マスコミで報道されるテレワークの現実、そこで働く人々の実態を見ると、決してバラ色のものではないように思われる。とりわけセーフティネットの問題が未整備であり、このままでは、「実行計画」は絵に描いた餅となりそうだ。 以下、税制の課題として、所得区分の問題と、所得把握の問題の2つを、テレワークを念頭に置きつつも、副業・兼業にも広げながら論じてみたい。 *  *  * 「実行計画」は、テレワークを、事業者と雇用契約を結んだ「雇用型テレワーク」と、請負契約の「非雇用型テレワーク」の2つに分けている。 一般的には、前者は雇用契約のある給与所得、後者は個人事業主として事業所得(ただし、規模が小さいなどから雑所得となる可能性もある)という区分になる。 給与所得になれば、源泉徴収、年末調整、給与所得控除という経費の概算控除の3点セットが適用される。事業所得であれば、自己申告、経費の実額控除が適用され、源泉徴収制度はなく予定納税制度が適用される。 ただし、税理士、弁護士、司法書士などに支払う報酬などには、源泉徴収が行われる。また、事業所得は給与所得など他の所得との損益通算が可能で、青色申告をすれば損失の繰越控除ができるが、雑所得であれば損失はないものとみなされる。 このように課税方法が大きく異なるので、どの所得区分に当たるかにより、税負担の多寡や事務手間の有無が生じてしまう。 わが国の判例によると、給与所得とは「従属的・非独立的な労務提供の対価」とされており、必ずしも「雇用契約を結んでいるから給与所得」とはなっていない。雇用契約を結んでなくても、給与所得とされる例もある。 一方事業所得は、「自己の計算と棄権において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位が客観的に認められる業務から生ずる所得」とされている(判例)。 このような中で、実態に即したよりきめ細かいガイドラインの整理が必要となる。 とりわけ問題になるのは経費の取扱いであろう。一般的には、給与所得控除の方が実額で控除される経費より手厚いので、給与所得に分類される方が有利、つまり税負担が少ないということになる。 次に、所得把握の問題がある。副業やマルチジョブワーカーの所得を効率的に把握するには、マイナンバーの活用が欠かせない。そのためには、支払調書(資料情報制度)の範囲を今より広げて、執行上の公平性を高めていく必要があろう。 そのような目で、17年6月19日に開催された政府税制調査会の海外調査報告(総論)を見ると、問題意識として、 と記載されている。じっくり読む必要がありそうだ。 なお、2月掲載の本連載No.49では「シェアリングエコノミーと税制」と題し、Uberを例にとり、配車アプリを使って、自分の空き時間と自家用車で他人を目的地に運ぶサービスを提供する一般人の税金、社会保障の問題を論じたので、あわせ参考にしてほしい。 (了)

#No. 225(掲載号)
#森信 茂樹
2017/07/06

平成29年度税制改正を踏まえた設備投資減税の選定ポイント 【第1回】「平成29年度税制改正における設備投資減税の見直し全体像」

平成29年度税制改正を踏まえた設備投資減税の選定ポイント 【第1回】 「平成29年度税制改正における設備投資減税の見直し全体像」   アースタックス税理士法人 代表社員  税理士 島添 浩  シニアマネジャー 税理士 小嶋 敏夫 壽命 正晃 發知 諭志   《平成29年度税制改正における主な改正内容》 ▷中小企業投資促進税制は対象資産から器具備品を除外した上で、平成31年3月31日まで延長 ▷中小企業投資促進税制の上乗せ措置(即時償却等)を廃止し、代わりに中小企業経営強化税制を創設 ▷税額控除は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制の3つの税制の合計で法人税額の20%まで   ◆平成29年度税制改正の概要 中小・小規模事業者の「攻めの投資」を後押しするため、中小企業投資促進税制の上乗せ措置(即時償却等)を改組し、中小企業経営強化税制を創設したうえで、対象設備を拡充し、これまでの上乗せ措置において対象外であった器具備品・建物附属設備が追加された(適用期限は平成31年3月31日まで)。 なお、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用期限も2年延長された(平成31年3月31日まで)。 (※) 中小企業庁ホームページより   ◆中小企業経営強化税制の概要 平成29年度税制改正で創設された中小企業経営強化税制は、中小企業等経営強化法に基づく支援措置(税制措置、金融支援)の1つで、経営力向上計画の認定を受けた事業者は、法人税について即時償却又は取得価額の10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)が選択適用できる制度である。本税制は、改正前の中小企業投資促進税制の上乗せ措置を改組し、新たに創設されたものである。 なお、中小企業等経営強化法に基づく支援措置には税制措置と金融支援があり、税制措置は固定資産税の特例と前述した法人税に関する中小企業経営強化税制の2つの措置がある(詳細は次回以降(【第2回】・【第3回】)を参照されたい)。 一方、金融支援は政策金融機関の低利融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証等の資金調達に関する支援を受けることができる。   ◆中小企業投資促進税制の概要 中小企業投資促進税制は、中小企業における生産性向上等を図るため、一定の設備投資を行った場合に、税額控除(取得価格の7%)又は特別償却(取得価格の30%)の適用を認める措置である。 平成29年度税制改正において、対象設備等について一部見直しを行い(上乗せ措置を改組し、中小企業経営強化税制を創設、器具備品を縮減)、適用期限を平成31年3月31日まで2年間延長した。   ◆商業・サービス・農林水産業活性化税制の概要 商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、商業・サービス業・農林水産業を営む中小企業等の活性化を図るため、一定の要件を満たした経営改善設備の取得を行った場合に、税額控除(取得価格の7%)又は特別償却(取得価格の30%)の適用を認める措置である。 消費税率の引上げに向けて、経営改善の取組みを行う事業者の設備投資を後押しするため、適用期限を平成31年3月31日まで2年延長した。   ◆即時償却は中小企業経営強化税制に 平成29年度税制改正前の中小企業投資促進税制においては、上乗せ措置により即時償却を選択できたことから、同措置が廃止されることにより即時償却ができなくなる可能性があった。しかし、この上乗せ措置が廃止された代わりに「中小企業経営強化税制」が新設されたことから、一定の要件を満たせば引き続き即時償却を選択することが可能となった。   ◆業種は要注意 例えば、不動産業、物品賃貸業については、中小企業投資促進税制の指定事業には該当しないが、商業・サービス業・農林水産業活性化税制では指定事業に該当する。したがって、適用税制の検討にあたっては、まず指定事業に該当するか否かを確認することが肝要である。   ◆税額控除の上限額は法人税額の20%まで 税額控除の上限額は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び商業・サービス業・農林水産業活性化税制を合わせて法人税額の20%である。   ◆措置法適用対象となる中小企業の範囲が縮小される 平成31年4月1日以後に開始する事業年度から、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円を超える事業年度については、法人税関係の中小企業向けの各租税特別措置法の適用が停止されることになる。具体的にどの特例措置が適用停止の対象となるか、留意が必要である。 *  *  * 次回からは、新設された中小企業経営強化税制について、要件、対象設備、手続き等を確認する。 (了)

#No. 225(掲載号)
#アースタックス税理士法人
2017/07/06

相続空き家の特例 [一問一答] 【第1回】「「3,000万円特別控除」と「相続空き家の特例」の適用要件の主な相違点」-相続空き家の特例の適用要件の概要-

相続空き家の特例 [一問一答] 【第1回】 「「3,000万円特別控除」と「相続空き家の特例」の適用要件の主な相違点」 -相続空き家の特例の適用要件の概要-   税理士 大久保 昭佳   Q 「3,000万円特別控除(措法35①)」と「相続空き家の特例(措法35③)」の適用要件の主な相違点について説明してください。 A 適用要件ごとの主な相違点について比較すると次のとおりです。 上記の内容を対比表としてまとめると、次のようになります。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ●○●○解説○●○● 平成28年度税制改正により、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例(以下、本連載では「相続空き家の特例」という)が創設され、被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を相続した場合に一定の要件に該当する譲渡は、租税特別措置法第35条第1項《居住用財産の譲渡所得の特別控除》(以下、本連載では「3,000万円特別控除」という)に規定する居住用財産を譲渡した場合に該当するものとみなすこととされました。 「相続空き家の特例」は、いわゆる旧耐震基準(昭和56年5月31日以前の耐震基準)の下で建築された相続後の古い空き家の増加を抑制することを目的として創設されていることから、その適用要件について「3,000万円特別控除」と対比してみると、改めて全く新しい特例の創設であることに気づかされます。 被相続人居住用財家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等に係る遺産分割や相続開始日前後のその利用状況等は多様多種にわたることから、本特例の適用にあたっては慎重な判定が要されるところと考えます。 【第2回】以降から、その適用要件に係る詳細を一問一答形式により解説していきます。 (了)

#No. 225(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/07/06

平成29年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第2回】「スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大」

平成29年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第2回】 「スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   [2] スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大 1 改正内容 平成29年10月1日以後に行われる「スクイーズアウトによる完全子法人化」について、以下のように特定連結子法人の範囲が拡大する(平成29年所法等改正法附則1三ロ、11②)。 ① 支配関係がある法人間の「全部取得条項付種類株式方式」「株式併合方式」「株式売渡請求方式」による完全子法人化について、組織再編税制の適用対象となる「株式交換等」とし、以下の適格要件を満たせば、適格株式交換等に該当することとなり、その完全子法人が特定連結子法人に該当する(新法法61の11①四、61の12①二、2十二の十六・十二の十七、新法令4の3⑲)。また、その株式交換等完全子法人の100%子法人も一定の要件を満たす場合、特定連結子法人に該当する(新法法61の11①五、61の12①三)。 なお、株式交換等に含まれる「全部取得条項付種類株式方式」「株式併合方式」「株式売渡請求方式」の定義については、組織再編税制に係る他の改正記事を参照してほしい。 ② 株式交換完全親法人が株式交換完全子法人となる法人の2/3以上の株式を所有していれば、現金交付型株式交換も他の要件を満たせば適格株式交換等に該当し、株式交換完全子法人が特定連結子法人に該当する(新法法2十二の十七、61の11①四、61の12①二)。 また、その株式交換完全子法人の100%子法人も一定の要件を満たす場合、特定連結子法人に該当する(新法法61の11①五、61の12①三)。 ③ 合併法人が被合併法人となる法人の2/3以上の株式を所有していれば、現金交付型合併も適格合併に該当し、被合併法人の時価課税が回避され、合併法人である連結法人で被合併法人の繰越欠損金を引き継ぐことが可能となる(新法法81の9②二、2十二の八)。 また、被合併法人の100%子法人が一定の要件を満たす場合、特定連結子法人に該当する(新法法61の11①五、61の12①三)。   この結果、連結納税におけるスクイーズアウト課税について、改正前と改正後を比較すると次のとおりとなる。 【連結納税におけるスクイーズアウト課税の見直し】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 この改正は、組織再編税制の改正に連動して、特定連結子法人を定める条文(旧法法61の11①四・五、61の12①二・三)において「株式交換」が「株式交換等」という用語に変わっただけであり、連結欠損金制度の仕組み自体が変わる改正ではない。 しかし、この改正は、次ページに述べるように、平成22年度税制改正による「特定連結子法人の繰越欠損金を連結納税へ持込可能とする規定」の創設以来、その採用と加入の妨げとなっている懸案事項を解消させる改正であり、連結納税の採用や加入を後押しする改正である。 なお、次ページ以下では、連結欠損金及び連結欠損金個別帰属額の取扱いを解説するものとし、事業税に係る繰越欠損金は、単体納税と同様の取扱いとなるため、解説の対象外としている。 2 連結納税の不利益を受けずに少数株主排除が可能に! 連結法人(連結納税開始前の連結法人となる法人を含む)が、ある法人を完全子法人化したいが、売却に応じない株主がいる場合に、強制的にその株主から退出してもらうために採用される手法(スクイーズアウトの手法)として、現金交付型株式交換、全部取得条項付種類株式方式、株式併合方式、株式売渡請求方式が採用されている。 しかし、従来、スクイーズアウトの手法によって完全子法人となる法人は、現金を対価に完全子法人化されているため、非特定連結子法人に該当することとなり、その完全子法人において連結納税開始又は加入時に時価評価や繰越欠損金の切り捨てが行われることになり、それが障害となって連結納税の採用や完全子法人化を断念する会社も多かった(旧法法61の11①四、61の12①二、81の9②一、2十二の十六)。(注1)(注2) (注1) その完全子法人となる法人に100%子法人がある場合、その100%子法人についても非特定連結子人に該当する(旧法法61の11①五、61の12①三)。 (注2) 株式交付型株式交換の場合(交換対価は連結親法人株式)で、適格株式交換に該当する場合、その株式交換完全子法人は特定連結子法人に該当するが、少数株主が連結親法人の株主となるためスクイーズアウトが成立しない。 ▷ケース1 スクイーズアウトよる完全子法人化 ~平成29年9月30日以前~ ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 これが、今回の改正によって、平成29年10月1日以後にスクイーズアウトの手法によって完全子法人化する場合、現金を対価に完全子法人化する場合であっても、一定の要件を満たせば、適格株式交換等に該当するため、その完全子法人は特定連結子法人に該当することになり、連結納税開始又は加入時に時価評価は不要になるとともに、繰越欠損金が連結納税に持ち込まれることになる(新法法61の11①四、61の12①二、81の9②一、2十二の十六・十二の十七)。(注3) (注3) その完全子法人となる法人に100%子法人がある場合、その100%子法人については、「5年前の日(※)又は設立日からの完全支配関係継続要件」を満たしていれば、特定連結子人に該当する(新法法61の11①五、61の12①三)。 (※) 連結納税開始の場合は、「最初連結親法人事業年度開始の日の5年前の日」、連結納税加入の場合は、「適格株式交換等の日の5年前の日」を意味する。 ▷ケース2 スクイーズアウトよる完全子法人化 ~平成29年10月1日以後~ ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 また、連結法人(連結納税開始前の連結法人となる法人を含む)が、ある法人をスクイーズアウトするために、現金交付型吸収合併を採用する場合についても、従来は、現金交付により非適格合併に該当したため、時価譲渡となり、被合併法人の繰越欠損金も切り捨てられたが、今回の改正によって、現金を交付しても他の要件を満たせば適格合併となるため、簿価譲渡となり、「5年前の日又は設立日からの支配関係継続要件」又は「みなし共同事業要件」のいずれかを満たす場合、合併法人である連結法人(連結納税開始前の連結法人となる法人を含む)で被合併法人の繰越欠損金を引き継ぐことが可能となった(旧法法81の9②二、57②③、2十二の八、新法法81の9②二、57②③、2十二の八)。(注4)(注5) (注4) ただし、「5年前の日又は設立日からの支配関係継続要件」又は「みなし共同事業要件」のいずれも満たさない場合、被合併法人の繰越欠損金及び合併法人の繰越欠損金又は連結欠損金個別帰属額のうち、一定のものについて利用制限が生じることになる(新法法81の9②二・⑤三、57②③④)。 (注5) その被合併法人となる法人に100%子法人がある場合、その100%子法人については、「5年前の日(※)又は設立日からの完全支配関係継続要件」を満たしていれば、特定連結子人に該当する(新法法61の11①五、61の12①三)。 (※) 連結納税開始の場合は、「最初連結親法人事業年度開始の日の5年前の日」、連結納税加入の場合は、「適格合併の日の5年前の日」を意味する。 ▷ケース3 スクイーズアウトよる吸収合併 ~平成29年9月30日以前~ ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ▷ケース4 スクイーズアウトよる吸収合併 ~平成29年10月1日以後~ ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 今回の改正は、「連結納税制度の採用法人を増やす」という面では、その影響は大きくないと予想される。 しかし、あるグループ法人について、スクイーズアウトにより完全子法人化をしたいが、時価評価や繰越欠損金が切り捨てられることを懸念して連結納税へ加入させることに踏み切れなかった連結納税グループにとって、連結納税の加入を後押しする改正であるといえる。   3 連結納税開始日が平成29年10月1日以後であっても、株式交換等が平成29年9月30日以前に行われた場合は旧税制が適用される! この改正は、平成29年10月1日以後に行われる株式交換等(株式交換、全部取得条項付種類株式割当方式、株式併合方式、株式売渡請求方式)又は合併について適用される(平成29年所法等改正法附則1三ロ、11②)。 そのため、連結納税の開始日が同日以後であっても、スクイーズアウトによる完全子法人化又は吸収合併が平成29年9月30日以前である場合は、その株式交換等又は合併は適格株式交換等又は適格合併に該当しないため、旧税制が適用される点に注意を要する。   4 全部取得条項付種類株式方式又は株式併合方式により連結納税に加入した場合、「完全支配関係を有することとなった日」はいつになるのか? スクイーズアウトによる完全子法人化のうち、現金交付型株式交換は「株式交換の効力発生日」、株式売渡請求方式は「株式取得日」が完全支配関係発生日となると考えられる(連基通1-2-2)。 この場合の「株式取得日」とは、株券発行会社の場合、「株式の引渡しのあった日」、株券不発行会社の場合、「株式売買契約書で定めた株式譲渡の効力発生日」、上場株式の場合、「譲渡人の口座から譲受人の口座への株式の振替の記録がされた日」(注)になると考えられる。 (注) 「連結納税基本通達逐条解説」(秋元秀仁編著、税務研究会出版局)の連結納税基本通達1-2-2の解説参照。 一方、全部取得条項付種類株式方式又は株式併合方式の場合、全部取得条項付種類株式の取得又は株式併合の効力発生日と端数処理が完了した日のいずれになるのか疑問が生じるが、実態として、買収会社及び買収対象会社以外に買収対象会社の株式を所有する者が存在しないことが確定するのは、端数処理が完了した時であると考えられるため、完全支配関係発生日も端数処理が完了した日、具体的には、裁判所の許可を得て、買収会社又は買収対象会社が株式を取得した日(上記「株式取得日」参照)に完全支配関係が生じると考えられる。 この場合、裁判所の許可や買取り手続の進行状況によっては、連結納税に加入する日がわからない状態が続く可能性もあり、少なくとも、スキームの検討段階では、連結納税への加入がいつになるのか(決算をまたぐのかまたがないのか)わからない、ということになる。 いずれにせよ、完全支配関係発生日が、全部取得条項付種類株式の取得又は株式併合の効力発生日と端数処理が完了した日のいずれになるのかについて、今後、通達で明確化した方が実務上の混乱も生じないであろう。      (了)

#No. 225(掲載号)
#足立 好幸
2017/07/06
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