《速報解説》 会計検査院、小規模宅地特例や事業承継税制等の 適用状況に関する報告書を公表 ~小宅特例では貸付事業用宅地等を相続税申告期限後に譲渡するケースなど、 政策目的との乖離を指摘~ Profession Journal編集部 会計検査院は11月29日、「租税特別措置(相続税関係)の適用状況等について」を公表、相続税関係特別措置のうち減収見込額が多額に上っているものの適用状況等を検査、政策目的に沿ったものとなっているか検証を行った。 今回公表された報告書は、会計検査院法第30条の2に基づく国会及び内閣への随時報告として、相続税関係特別措置が、これまで租特透明化法に基づく適用実績の調査が実施されていない等、関係省庁における検証が十分に行われていないとして、各措置の適用状況や関係省庁による検証状況等を検査するために実施されたもの。 (※) 検査の対象及び方法については、報告書p10-11を参照されたい。 報告書において詳細に検査が行われたのは、28年度において減収見込額が多額に上っており、近年において大きな政策の転換が行われるなどした次の相続税軽減措置だ。 上記のうち小規模宅地等の特例では、特例を適用している検査対象者の中で、特定宅地等のうち「貸付事業用宅地等」の割合が65%と最も多く、また、相続税の申告期限の翌日から1年以内に譲渡していたもの、及び、1ヶ月以内に譲渡していたものの割合でも貸付事業用宅地等の譲渡が最も多いとし、 と指摘した(p23-30)。 また非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(いわゆる事業承継税制)関する検査では、適用対象となる「中小企業者」が、資本金の額が業種別に定められた一定の金額以下(製造業等は3億円以下、卸売業1億円以下、小売業・サービス業5,000万円以下)であることなどが要件とされているが、特例を適用した検査対象企業のうち資本金の額に対して資本剰余金が多額(最大で約885倍)となっているケースや、資産保有型会社・資産運用型会社で常時使用従業員数が5名以上である等の要件を満たし適用可能となった企業のうち従業員数が10人以下のものが多いことなどから、 と指摘した(p44-p60)。 なお、農地の納税猶予制度では、特定貸付けの特例を適用した検査対象のうち、農業所得以外の所得を経営の基盤として農業経営を継続している農業相続人が相当数を占めることなどが指摘されている。 * * * 会計検査院は過去にも相続税関係特別措置についての検査結果を行っており、平成17年には「租税特別措置(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)の適用状況等について」が決算検査報告に織り込まれ、これを受け平成22年度税制改正において、特定居住用宅地等の適用要件の見直し等が行われている(財務省「平成22年度 税制改正の解説」p438)。 このタイミングで公表されたということは、今月中旬にも取りまとめられる平成30年度税制改正大綱において対応が示される可能性もあるため、報告書で指摘された点については確認しておきたい。 (了)
《速報解説》 名古屋国税局、株主が個人である法人が適格合併を行った場合の未処理欠損金額の引継ぎについて(支配関係の継続により引継制限の判定をする場合)の文書回答事例を公表 税理士 長谷川 太郎 名古屋国税局は、平成29年11月7日付(ホームページ公表は11月14日)で、「株主が個人である法人が適格合併を行った場合の未処理欠損金額の引継ぎについて(支配関係の継続により引継制限の判定をする場合)」の事前照会に対し、文書回答を公表した。 本稿では以下のとおり、その内容について解説する。 事前照会の概要 親戚が保有していた会社(B社)の全株式を自分がオーナーとなっている会社(A社)が買い取り、その後買い取った会社(B社)と連れ子会社(C社)の逆さ合併(第一次合併)を行い、同日にA社がC社(第一次合併における合併法人)を吸収合併(第二次合併)することが予定されている。 〔図1〕 (※) 国税庁ホームページより この場合において、買い取った会社(B社)と連れ子会社(C社)の有する未処理欠損金額を第二次合併時において、A社に引き継ぐことができるか(共同で事業を行うための合併には該当しない)という照会内容となっている。 主な論点としては、第二次合併時において、支配関係の起算日が株式売却前であることから、株式売却前後で継続した支配関係があると言えるのかどうかという点にあり、結論として継続した支配関係があり、未処理欠損金額は「引き継ぎ可能」となっている。 事前照会の前提 (※前提の詳細は、実際の文書回答事例を参照) 〔図2〕 (※) 国税庁ホームページより ◆B社(平成27年1月15日に設立された6月決算法人)の株主である甲、乙(甲の妻)及び丙(甲の子)は、平成29年5月26日に、それぞれが保有するB社株式の全部をA社(平成29年5月1日に設立された4月決算法人で、株主は丁(甲の兄の孫))に譲渡している。 ◆C社(平成24年1月13日に設立された6月決算法人で、その発行済株式は、平成27年1月15日から継続してB社が100%保有)は、平成29年12月1日に、B社を被合併法人とする吸収合併(以下「第一次合併」という)を行い、同日に、A社は、C社を被合併法人とする吸収合併(以下「第二次合併」という)を行うことを予定している。 ◆第一次合併及び第二次合併は、いずれも適格合併に該当するが、法人税法第57条第3項に規定する共同で事業を行うための合併には該当しない。 事前照会の結論及び見解 B社及びC社の未処理欠損金額をA社に引き継ぐことができるとする照会者の見解で差し支えないとの回答となっており、照会者の見解は主に以下の通りである。なお、第一次合併時における取扱いに対する見解については割愛する。 ① 支配関係の起算日について 合併法人(A社)が被合併法人(C社)の未処理欠損金額を引き継ぐためには、被合併法人と合併法人との間に、①合併法人の第二次合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日(平成24年5月1日)、②被合併法人の設立の日(平成24年1月13日)又は③合併法人の設立の日(平成29年5月1日)のうち最も遅い日である平成29年5月1日から継続して支配関係がある必要がある(法法57③、法令112④)。 ② 起算日における支配関係について 平成29年5月1日において、甲及びその親族である乙と丙と被合併法人(C社)との間には、当事者間の支配の関係(B社を通じたみなし直接支配関係)があり、丁と合併法人との間には、当事者間の支配の関係(直接支配関係)がある。 この場合において、被合併法人(C社)と合併法人(A社)との間には、支配関係がないのではないかとの疑問が生じるが、「一の者」(株主)が個人である場合には、一の者にはその個人及びその親族を含む(法令4①一)とされており、その親族は株主に限定されていないので、甲は合併法人(A社)の株主ではないが丁の親族(4親等血族)に該当するので、「一の者」に含まれる(民法725条の「親族の範囲」において、6親等内の血族等は親族とされている)こととなり、甲と合併法人(A社)との間に当事者間の支配の関係(直接支配関係)があると考えることができる。 したがって、平成29年5月1日において、被合併法人(C社)と合併法人(A社)との間には、一の者(甲)との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係すなわち支配関係があることとなる。 〔図3〕 (※) 国税庁ホームページより ③ B社株式譲渡後の支配関係について 平成29年5月26日のB社株式譲渡後においては、合併法人(A社)と被合併法人(C社)との間には、当事者間の支配関係(B社を通じたみなし直接支配関係)があることとなる。また、B社株式譲渡の前後でグループ内の株式の保有関係は変わっているが、B社株式譲渡の前後を通じて被合併法人(C社)と合併法人(A社)との間の支配関係は継続しているため、被合併法人と合併法人との間には、平成29年5月1日から継続して支配関係があることとなる。 ④ 結論 したがって、合併法人(A社)は、被合併法人(C社)の未処理欠損金額を引き継ぐことができる。なお、被合併法人(C社)から引き継ぐ未処理欠損金額には、第一次合併によりB社から引き継ぐ未処理欠損金額が含まれる(法法57②③)。 【参考】 (了)
2017年11月30日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.246を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第15回】 公認会計士 佐藤 信祐 (《第2章》 平成13年度税制改正) (5) 組織再編税制における移転資産等の譲渡損益の取扱い ① 移転資産等の譲渡損益の計上に係る取扱いの原則 『平成13年版改正税法のすべて』145頁(大蔵財務協会、平成13年)では、譲渡損益の計算について、以下のことが記載されている。 平成13年当時は、企業結合会計及び事業分離等会計が導入される前であったため、会計上、現物出資については時価取引、合併については時価以下主義となっていたことを考えると、このような制度が設けられたことは理解できる。しかしながら、平成18年に企業結合会計が導入された結果、現物出資であっても、投資が継続しているとみることができる場合には、現物出資法人において譲渡損益を認識しないことになった(事業分離等に関する会計基準19(1)、31)。 そのため、現在の会計基準を前提とすれば、現物出資についても、現物出資法人が移転資産等を時価により譲渡したものとして譲渡損益の計上を行うことを原則とする規定は必要であると思われるが、現行法人税法にもその旨の規定は存在しない。組織再編税制の制度趣旨を考えると、そのような規定がなかったとしても、現物出資法人が移転資産等を時価により譲渡したものとして譲渡損益の計上を行い、適格現物出資に該当する場合に限り、法人税法62条の4により、移転資産等を簿価により譲渡したものと解すべきであろうが、本来であれば、立法的な解決が図られるべきである。 これに対し、合併又は会社分割を行った場合には、会計上の処理にかかわらず、法人税法62条1項にて、譲渡損益を認識することになる。平成13年度税制改正直後の条文は以下の通りである。 このように、【第6回】で解説したように、非適格合併を行った場合には、資産及び負債を被合併法人から合併法人に譲渡し、その対価としての合併法人株式が合併法人から被合併法人に移転し、その後、被合併法人からその株主に対して被合併法人株式が分配されたとみなして合併譲渡損益の計算を行うものとされており、非適格分割型分割を行った場合も同様の規定がなされている。 【非適格合併又は分割型分割における取引図】 このような処理になっている理由は、 と解説されている(※1)。 (※1) 『平成13年版改正税法のすべて』145-146頁。 これに対し、会社法の施行により、会社法上も、分割型分割については、分社型分割+現物分配として整理されたため(会社法758八、763十二)、平成18年度税制改正により、上記の規定の見直しがなされている。 そして、被合併法人又は分割法人における譲渡損益は、本来であれば、合併の日又は分割型分割の日に譲渡損益を計上すべきである。しかし、課税所得の計算の便宜上、合併の日又は分割型分割の日の前日でみなし事業年度を区切り(法法14二・三)、合併の日の前日又は分割型分割の日の前日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入することとされた(法法62②)(※2)。 (※2) 前掲(※1)146頁。 ここで留意が必要なのは、合併の日の前日又は分割型分割の日の前日に、合併又は分割型分割を行ったとみなす旨の規定ではないという点である。そのため、被合併法人の株主又は分割法人の株主におけるみなし配当及び株式譲渡損益の計算は、合併の日又は分割型分割の日に行う必要がある(法規27の3九・十、法基通2-1-22(3)イ・ロ、2-1-27(5)イ・ロ)。 なお、平成22年度税制改正により、分割型分割を行った場合におけるみなし事業年度に係る規定が廃止されたため、現行法人税法62条2項の規定は、合併を行った場合に限定されている。 * * * 次回では、適格組織再編成の場合の特例について解説を行う予定である。 (了)
企業の「相談役・顧問」に関する 税務上の留意点 公認会計士・税理士 新名 貴則 1 我が国における相談役・顧問という存在 相談役や顧問という役職は、我が国の法人においては特段珍しくはない。その存在理由は法人によって様々だが、主に次のようなものであると考えられる。 相談役や顧問といった存在にも一定の合理性があるのは事実であるが、中には単なる名誉職と化しているケースがあったり、逆に新経営陣に対して干渉しすぎるケースもあったりする。 そのため、昨今では株主等から「本当に必要な存在なのか」という厳しい目が向けられ始めており、実際に役職を廃止する法人も出てきている。 2 相談役・顧問の法的位置づけ 一口に相談役や顧問といっても、その位置づけは法人によって様々であるため、場合分けをして整理する必要がある。 ① 取締役のままである場合 代表取締役ではなくなっても、「取締役相談役(又は顧問)」といった役職につくケースである。この場合は取締役として登記されており、相談役や顧問とはいえ会社法上は法人の役員のままである。また、法人税法上も当然に役員に該当する。 ② 取締役を退任する場合 取締役を退任して、単なる「相談役(又は顧問)」となるケースである。この場合は、取締役としては登記されていないので、会社法上の役員には該当しない。また、会社法においては「相談役」や「顧問」といった会社の機関は規定されていない。個々のケースによって多少の違いはあるが、通常は会社と委任契約又は準委任契約の関係にあると考えられる。 法人税法上の取扱いは、個々のケースにより取扱いが異なる。会社法上の役員ではなくても、法人税法上の「みなし役員」に該当する場合は、役員として扱わなければならないことに注意が必要である。 【代表取締役退任後の相談役又は顧問の法的位置づけ】 3 取締役のまま相談役又は顧問になる場合の留意点 ① 給与や経済的利益 代表取締役を退任した後も取締役であり続ける場合、法人税法上も当然に役員に該当する。したがって、当該「取締役相談役(又は顧問)」に対する給与や経済的利益は、役員報酬として取り扱う必要があり、次のいずれかに該当する場合のみ損金に算入される。 ただし、上記のいずれかに該当する場合であっても、その役員報酬に「不相当に高額な部分」がある場合には、その部分については損金不算入となる。 ② 退職金 代表取締役を退任して相談役や顧問になる時点で退職金を打切り支給し、さらに最終的に相談役や顧問を退任する時点で、再度退職金を支給するケースも多くみられるが、この場合は次の点に注意が必要である。 ▷役員退職金の打切り支給の取扱い 社長が相談役に退いたなど、役員の分掌変更や改選があった際に一時金を支給しても、退職した事実がなければ、原則として税法上は退職金でなく賞与として扱うことになる。 しかし、例えば次のケースのように、「役員としての地位や職務内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められる」場合は、法人税法上は退職給与として損金算入となり、所得税法上は退職所得となる。 また、退職金を打切り支給した後に支給される退職金の計算上、打切り支給した退職金の計算基礎となった勤続期間を一切加味しない、という条件で支給されるものであることが必要となる。 ▷代表取締役が取締役相談役(又は顧問)になるケースの注意点 取締役相談役(又は顧問)に退いたといっても形式だけであって、依然として経営の第一線から退いていないような場合には、代表取締役退任時点で退職金を打切り支給しても、税務上は退職金とは認められず役員賞与として扱われる。 したがって、このような場合には代表取締役退任時には退職金を支給せず、取締役相談役(又は顧問)を退任する時点で退職金を支給する方が、税務上は有利となる。ただし、その役員退職金に「不相当に高額な部分」がある場合には、その部分については損金不算入となる点に注意が必要である。 また、代表取締役退任時に、税務上も退職金として認められる形で打切り支給を行った場合でも、税務上注意すべき点がある。それは、最終的に相談役や顧問を退任する時点で再度退職金を支給する際には、打切り支給した退職金の計算基礎となった勤続期間を一切加味できないということである。 したがって、代表取締役退任時に多額の退職金を支給し、さらに相談役や顧問の退任時にも同様に多額の退職金を支給するということは、税務上は認められないということになる。 ③ 退職金の決議 代表取締役退任時であっても、取締役相談役(又は顧問)の退任時であっても、いずれも役員退職金に該当するため、定款又は株主総会決議によることになる。 4 取締役は退任して相談役又は顧問になる場合の留意点 代表取締役を退任する際に、取締役も退任した上で相談役又は顧問に就任した場合、会社法上の役員ではなくなるが、法人税法上の「みなし役員」に該当するか否かがポイントとなる。 会社法上の取締役ではない相談役や顧問であっても、次に該当する場合は法人税法上の「みなし役員」に該当する。 ➡その法人内での地位・職務等からみて、他の役員と同様に実質的に法人の経営に従事していると認められる者 (1) みなし役員に該当する場合 ① 給与や経済的利益 代表取締役を退任した後でも、法人税法上のみなし役員に該当する場合、その相談役又は顧問に対する給与や経済的利益は、役員報酬として取り扱う必要がある。 したがって、次のいずれかに該当する場合のみ損金に算入される。 ただし、上記のいずれかに該当する場合であっても、その役員報酬に「不相当に高額な部分」がある場合には、その部分については損金不算入となる。 ② 退職金 代表取締役を退任後も、実質的に法人の経営に従事していると認められることからみなし役員に該当する以上、税務上は役員を退任したとは認められない。したがって、代表取締役退任時に退職金を打切り支給しても、税務上は退職金としては認められず役員賞与として扱うことになる。 したがって、このような場合は代表取締役退任時には退職金を支給せず、相談役又は顧問を退任する時点で退職金を支給する方が、税務上は有利となる。ただし、税務上は役員退職金として扱うため、その役員退職金に「不相当に高額な部分」がある場合には、その部分については損金不算入となる点に注意が必要である。 ③ 退職金の決議 代表取締役退任時の退職金は役員退職金に該当するため、定款又は株主総会決議によることになる。ただし、税務上は退職金とは認められない点に注意が必要である。 相談役又は顧問退任時の退職金は、法人税法上のみなし役員ではあっても会社法上の役員ではないため、定款又は株主総会決議によることはできない。したがって、個々の状況にもよるが、通常は取締役会決議によることになると考えられる。 (2) みなし役員に該当しない場合 ① 給与や経済的利益 代表取締役退任時に取締役も退任し、法人税法上のみなし役員にも該当しない場合は、その相談役又は顧問に対する給与や経済的利益は役員報酬には該当しない。したがって、役員報酬の損金算入要件は適用されない。 ② 退職金 代表取締役退任時に取締役も退任し、法人税法上のみなし役員にも該当しない以上、税務上も役員を退任したと認められる。したがって、代表取締役退任時に退職金を支給した場合、税務上も退職金として認められる。ただし、その役員退職金に「不相当に高額な部分」がある場合には、その部分については損金不算入となる点に注意が必要である。 また、相談役又は顧問退任時の退職金は役員退職金ではないため、過大役員退職金の規定は適用されない。 ③ 退職金の決議 代表取締役退任時の退職金は役員退職金に該当するため、定款又は株主総会決議によることになる。 相談役又は顧問退任時の退職金は、役員ではないため定款又は株主総会決議によることはできない。したがって、個々の状況にもよるが、通常は取締役会決議によることになると考えられる。 (了)
中小企業特別措置の適用停止に係る 「平均所得金額」の算定方法 【第1回】 「平均所得金額の意義と対象となる租税特別措置」 弁護士・公認不正検査士 下尾 裕 平成29年度税制改正により、平成31年4月1日以後に開始する事業年度より、一定以上の所得を有する中小企業においては、租税特別措置法(以下「措法」という)に基づく特別措置の一部の適用が停止されることとなった。 そこで、本連載では2回に分けて、「平均所得金額」を基準とする特別措置の適用停止制度の概要を明らかにするとともに、「平均所得金額」の算定方法等について解説する。 1 平成29年度税制改正による「平均所得金額」概念の導入 措法は従前より、地域経済の柱として雇用の大半を担いながらも、財務基盤の弱い「中小企業者」(以下の1及び2のいずれかに該当する法人(措法42の4⑧六、措令27の4⑫))を支援する趣旨から、中小企業者に対し、軽減税率等の特別措置を設けていた。 しかしながら、これらの特別措置はあくまで資本金の額等を基準に形式的に判定する枠組みになっていたことから、例えば、大企業並みの所得がある株式会社であっても、資本政策上、資本金の額を1億円以下にすることにより適用を受けることが可能であり、上記本来の趣旨とは必ずしも整合しない運用実態が散見されるところであった。 そこで、平成29年度税制改正は、平成31年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税に関し、「平均所得金額」、すなわち、課税所得の3年平均が15億円を超える中小企業者については、特定の特別措置の適用を停止する改正を行った(措法42の4⑧六の二)。 2 「平均所得金額」概念により適用を停止される特別措置の範囲 平成29年度税制改正に基づき「平均所得金額」概念により適用を停止される又は適用停止の対象となることが予定されている(※1)特別措置は以下のとおりである。特に、「中小企業等の貸倒引当金特例のうち中小企業等の法令繰入率の適用に関する特例」及び「中小企業等の法人税の軽減税率の特例」については現に適用している中小企業が多いと思われることから、留意が必要である。 (※1) 財務省「平成29年度税制改正の解説」P534による。 以下では、①現行法においてすでに適用される中小企業のうち「適用除外事業者(平均所得金額15億円超)に該当するものを除く」との規定が織り込まれ適用停止の対象となることが確定している特別措置と、②本改正の適用開始(H31.4.1~)までに適用期限が到来するため現行法に規定は織り込まれていないが、今後の法改正によって適用期限が延長された場合に適用停止の対象となることが予定されているものに分けている。 このため②に記載した各特別措置が適用停止の対象とされるかについては、今後、平成30年度税制改正等に係る法改正の内容に留意する必要がある。 また、交際費等の損金不算入の中小企業特例(いわゆる800万円控除(措法61の4②)及び中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻しによる還付の不適用(措法66の13①)は、元来の趣旨が中小企業の安定的企業経営にあることに鑑み、適用期限の延長等があった場合でも、適用停止の対象とはならない予定となっている(※2)。 (※2) 財務省「平成29年度税制改正の解説」P534による。 (注) 下記における「中小企業者等」とは、中小企業者又は農業協同組合等で青色申告書を提出するものを意味する(改正措法42の4③等)。 ① 適用停止の対象となることが確定している特別措置 (※3) これらの特別措置は、平成29年度税制改正において手当がなされているものの、財務省告示における現行の適用期限が平成31年3月31日までとされていることから、現実には、今後適用期限が延長された場合にのみ適用対象となる。 ② 適用期限が延長された場合に適用停止の対象となることが予定されている特別措置 (了)
相続空き家の特例 [一問一答] 【第22回】 「「相続空き家の特例」の譲渡価額要件(1億円以下)の判定④ (母屋と離れ等の複数の建築物のある敷地等を譲渡した場合)」 -譲渡価額要件の判定- 税理士 大久保 昭佳 Q Xは、昨年3月に死亡した母親の居住用家屋(昭和56年5月31日以前に建築)とその敷地を相続により取得しました。 相続の開始の直前において、母親は一人暮らしをし、母親が所有していた土地(200㎡)は、用途上不可分の関係にある2以上の建築物(母親が所有していた母屋:80㎡、離れ:40㎡)のある一団の土地でした。 Xは、その土地全部を更地とした上で、本年7月に1億2,000万円で売却しました。 相続の時から取壊しの時まで母屋も離れも空き家で、その敷地も相続の時から譲渡の時まで未利用の土地でした。 この場合、Xの譲渡は、「相続空き家の特例(措法35③)」の譲渡価額要件(1億円以下)を満たすこととなるのでしょうか。 A 譲渡資産が用途上不可分の関係にある2以上の建築物のある一団の土地であった場合は、その母屋に相当する部分のみが「対象譲渡資産一体家屋等」に該当し、対象譲渡に係る対価の額は8,000万円であるため、「相続空き家の特例」の適用を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 「相続空き家の特例」は、被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡の対価の額が1億円以下であることが、その適用要件の1つとされています(措法35③)。 そして、譲渡資産が母屋と離れ等の複数の建築物のある敷地等を譲渡した場合の「対象譲渡資産一体家屋等」の判定については、措通35-22(「対象譲渡資産一体家屋等」の判定)の(4)において、次のように示されています。 したがって、本事例の場合、措置法令第23条第7項の規定により計算した被相続人が主として居住の用に供していた母屋の床面積の全床面積に占める割合(【第7回】の解説を参照)を譲渡価額に乗じると、下記のとおり1億円以下となることから、「相続空き家の特例」の適用を受けることができることとなります。 なお、母屋と離れ等の複数の建築物がある場合の敷地等の計算例については、【第9回】、【第10回】、【第11回】をご参照ください。 (了)
〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第21回】 「別表13(5) 特定の資産の買換えにより取得した資産の圧縮額等の損金算入に関する明細書」 〈その2〉 公認会計士・税理士 菊地 康夫 Ⅰ はじめに 本稿では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 今回は、前回に引き続き「別表13(5) 特定の資産の買換えにより取得した資産の圧縮額等の損金算入に関する明細書」と、その付表である「特定の資産の譲渡に伴う特別勘定を設けた場合の取得予定資産の明細書」を採り上げる。 Ⅱ 概要 この別表は、法人が、租税特別措置法第65条の7から第65条の9まで(特定の資産の買換えの場合の課税の特例等)の規定の適用を受ける場合に記載する。付表は、特定の資産の譲渡に伴い特別勘定を設けた場合に、翌期以後に取得をする見込みである買換資産を届け出る場合に使用する。 本制度は、いわゆる圧縮記帳と呼ばれるもののうち、特定資産の買換特例に係るものである。今回は前回の解説の続きであるので、制度の概要と当期の別表13(5)の記載例については前回の記事を参照されたい。 Ⅲ 「別表13(5)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成29年4月1日以後終了する事業年度。 (3) 圧縮限度額の計算 (単位:円) ◆譲渡経費の按分計算 ◆差益割合の計算 ◆買換資産の圧縮限度額 ◆特別勘定の繰入限度額 (4) 付表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (5) 付表の各記載欄の説明 「付表 特定の資産の譲渡に伴う特別勘定を設けた場合の取得予定資産の明細書」 「譲渡資産の明細」 「特別勘定金額の計算」 「取得予定資産の明細」 (6) 翌期の別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (7) 翌期の別表の各記載欄の説明 翌期の「別表13(5) 特定の資産の買換えにより取得した資産の圧縮額等の損金算入に関する明細書」 「譲渡資産の明細」 「取得資産の明細」 「帳簿価額の減額等をした場合」 「対価の額の残額の計算」 「特別勘定を設けた場合」 (了)
〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第52回】 「印紙の消印の方法」 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 印紙税の納付を収入印紙により行う場合、収入印紙を課税文書に貼付し消印を行うこととされていますが、消印は契約書などに押した印で消印しなければいけませんか。 また、契約書の作成者が複数の場合は、作成者全員で消印をしなければいけないのでしょうか。 消印は契約書などに押した印でなくても、印章又は署名で消印をすることができる。 また、契約の作成者が複数の場合、作成者のうちの1人の者が消せばよく、作成者全員で消さなくてもよい。 [検討1] 消印の方法 消印は収入印紙の再使用を防止することを目的として行うものであり、これに使用する印章は通常印判と言われているほか、氏名・名称などを表示した日付印、役職名・名称などを表示したゴム印のようなものでもよい。 また、署名は自筆によるものだが、その表示は氏名を表すもののほか、通称、商号のようなものでもよい。 しかし、次のように単に「(印)」と表示したり斜線を引いただけでは、印章や署名には当たらず、消印したことにはならないので留意する。 また、収入印紙は判明に消さなければならないとされていることから、誰が消印したかが明らかになる程度に印章又は署名することが必要であり、鉛筆で署名するように簡単に消し去ることができるようなものは、消印をしたことにはならない。 [検討2] 契約書の作成者が複数の場合の消印 前述のとおり、消印は収入印紙の再使用を防止することを目的としていることから、複数の人が共同して作成した文書に貼り付けられた収入印紙は、作成者全員によって消印する必要はなく、その作成者のうち1人の者が消せばよい。 したがって、甲と乙の共同作成の場合であれば、どちらか一方が消印すればよい。 ▷まとめ 印紙税の納付を収入印紙により行う場合は、課税文書に収入印紙を貼り付け、その文書と収入印紙の彩紋とにかけて判明に収入印紙を消さなければならないとされている。 この場合の消印は印章によることに限られておらず、署名でもよいとされており、その文書に押した印の他、作成者、代理人、使用人、従業員の印章や署名であればどのようなものでも構わない。 (了)
被災したクライアント企業への 実務支援のポイント 〔税務面(所得税)のQ&A〕 【Q2】 「個別指定による期限延長措置」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 〈Q〉 本年(×2年)1月に発生した地震によって自宅が全壊する被害を受け、×2年2月末に被災地から離れた地域に転居した。年末調整を受けた給与所得の他に不動産所得があることから毎年確定申告しているが、×1年分については必要な資料を直ちにそろえることができず、期限までに申告することが難しい状況である。 現在住んでいる地域は、地域指定による期限延長措置の対象となっていないので、個別指定による期限延長措置の適用を受けたい。どのような手続が必要か。 〈A〉 個別指定による期限延長措置の適用を受けるには、転居後の納税地を管轄する税務署長に対し、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出し、承認を受ける必要がある。この申請書は、災害のやんだ日から相当の期間内に提出することとされている。 申請書が提出されると、税務署長は、災害のやんだ日から2ヶ月以内の期日を指定して申告等の期限を延長する。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ 納税地が地域指定による期限延長措置の対象になっていない場合でも、被災したことにより期限までに国税に関する申告や納付等ができないことがある。この場合には、納税地を管轄する税務署長から個別に承認を受けることにより、申告・納付等の期限を延長することができる(通法11、通令3②)。 個別に承認を受けるには、納税地を所轄する税務署長に対し、所定の事項を記載した申請書を提出する(通令3③)。 「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出すると、税務署長が指定した日(災害のやんだ日から2ヶ月以内)まで申告・納付等の期限が延長される。 「災害による申告、納付等の期限延長申請書」【記載例】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 なお、災害のやんだ日とは、個別指定による期限の延長を受けようとしている人が、税務上の申告・納付等の行為をするのに差し支えないと客観的に認められる程度の状態に復した日をいうとされ、「情報」では、例として以下の日が挙げられている。 地震により被災した場合であれば、余震も収まり復旧に向けた活動ができるようになった日やその地域の鉄道が運行を始めた日、台風による浸水被害の場合であれば、家屋から水が引いた日等が該当すると考えられる。 (了)