〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第15回】 「別表13(2) 保険金等で取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入に関する明細書」 公認会計士・税理士 菊地 康夫 Ⅰ はじめに 本稿では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 第15回目は、実務で比較的採用するケースがあるにもかかわらず一般的な書籍等では解説される機会があまり多くない、「別表13(2) 保険金等で取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入に関する明細書」を採り上げる。 Ⅱ 概要 この別表は、固定資産の滅失又は損壊により保険金等を取得した法人が、その保険差益金等に関し法人税法第47条から第49条まで(保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)の規定の適用を受ける場合に記載する。 本制度は、いわゆる圧縮記帳と呼ばれるものである。 そもそも法人が災害等により支払を受けた保険金等でも、滅失による損失等を上回る部分(保険差益)について、法人税法上は益金の額に算入されるものであるが、これをすべて課税対象とすると滅失等した資産に代わる新たな資産の取得が資金的に困難となり、本来の保険金としての意義が損なわれてしまうことから、一定期間内に滅失等した所有固定資産に代替する同一種類の固定資産(代替資産という)を取得等した場合に、保険差益金の額を基礎として計算した圧縮限度額の範囲内で、代替資産の帳簿価額を損金経理により減額する方法等により、その課税の繰延べを認めるという制度である。 圧縮記帳の対象となる保険金等とは、固定資産の滅失又は損壊により支払を受ける保険金、共済金又は損害賠償金で、固定資産の滅失等のあった日から3年以内に支払の確定したものをいう。なお、棚卸資産を対象とする保険金等は圧縮記帳の対象とならず、事業の休廃業等により減少する収益の補てん又は発生する費用の補てんに充てるものとして支払を受けるものも、圧縮記帳の対象とならない。 また、代替資産は保険事故等があった事業年度内に取得されることが原則であるが、その事業年度内に代替資産を取得することができない場合には、保険金等の支払を受ける事業年度の翌事業年度開始の日から2年以内に取得した代替資産についても圧縮記帳の特例が適用できる。この場合、保険差益金の額を特別勘定として経理しておき、実際に代替資産を取得した事業年度で圧縮記帳を行うことになる。 圧縮限度額の計算方法は次のとおり。 (※1) 保険差益金の額=(改訂保険金等の額)-(滅失した固定資産の被害直前の帳簿価額) (※2) 改訂保険金等の額=(取得した保険金等の額)-(滅失等により支出する経費の額) ▼ 注意!▼ 滅失等により支出する経費の額は、その滅失等があった所有固定資産の取壊費、焼跡の整理費、消防費等、直接関連して支出される経費のことであり、類焼者に対する賠償金、けが人への見舞金、被災者への弔慰金等といった固定資産の滅失等に直接関連しない経費は含まれない。 なお本別表は、各災害ごとに、かつ、滅失した固定資産の種類ごとに用紙を改めて記載することになる。 Ⅲ 「別表13(2)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成28年4月1日以後終了する事業年度。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) 圧縮記帳に関する計算と仕訳例 (単位:円) 〔前期〕 ◆事故発生時 ◆経費支出時 〔当期〕 ◆保険金取得時 ◆代替資産取得時 〔圧縮限度額の計算〕 ◆滅失等により支出した経費(焼跡の整理費)の建物への按分 ◆建物に係る改訂保険金額 ◆保険差益のうち建物に係る金額 ◆建物の圧縮限度額 (5) 別表の各記載欄の説明 「保険金等を受けた場合」 「代替資産の交付を受けた場合」 「帳簿価額の減額等をした場合」:「保険金等を受けた場合の計算」 「帳簿価額の減額等をした場合」:「代替資産の交付を受けた場合の計算」 「特別勘定に経理した場合」 (了)
連結会計を学ぶ 【第2回】 「連結の範囲・支配の概念」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 連結財務諸表は、支配従属関係にある2つ以上の企業からなる集団(企業集団)を単一の組織体とみなして、親会社が当該企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を総合的に報告するために作成するものである(「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)1項)。 【第2回】では、連結財務諸表の範囲を決定するための親会社と子会社の定義について述べる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 親会社と子会社 前述のとおり、連結財務諸表は、支配従属関係にある2つ以上の企業からなる集団(企業集団)に関する財務諸表なので、「支配」の概念がポイントになる。 連結会計基準は支配の概念を中心にして、親会社及び子会社などについて、次のように定義している(連結会計基準5~6項、8項)。 【企業】 会社及び会社に準ずる事業体をいい、会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む)を指す。 【親会社】 他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。以下「意思決定機関」という)を支配している企業をいう。 【子会社】 ① 上記の「親会社」の定義における「他の企業」をいう。 ② 親会社及び子会社又は子会社が、他の企業の意思決定機関を支配している場合における当該他の企業も、その親会社の子会社とみなす(いわゆる孫会社。「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号)17項)。 【連結会社】 親会社及び連結される子会社をいう。 また、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」は、次の用語について定義している(連結財務諸表規則2条1号、4号、5号、6号、4条1号)。 【連結財務諸表提出会社】 法の規定により連結財務諸表を提出すべき会社及び指定法人をいう。 【企業集団】 連結財務諸表提出会社及びその子会社をいう。 【連結会社】 連結財務諸表提出会社及び連結子会社をいう。 【連結子会社】 連結の範囲に含められる子会社をいう。 【非連結子会社】 連結の範囲から除かれる子会社をいう。 基本的なイメージは次の図のとおりである。 Ⅲ 支配の概念 1 持株基準と支配力基準 平成9年6月に改訂された「連結財務諸表原則」以前の連結原則では、子会社の判定基準として、親会社が直接・間接に議決権の過半数を所有しているかどうかにより判定を行う「持株基準」が採用されていた。 これに対して、平成9年6月に改訂された「連結財務諸表原則」では、①議決権の所有割合が100分の50以下であっても、その会社を事実上支配しているケースもあること、②国際的には、実質的な支配関係の有無に基づいて子会社の判定を行う「支配力基準」が広く採用されていたことを踏まえ、子会社の判定基準として、議決権の所有割合以外の要素を加味した「支配力基準」を導入し、他の会社(会社に準ずる事業体を含む)の意思決定機関を支配しているかどうかという観点から、連結会計基準は設定されている(連結会計基準54項)。 2 支配の概念の具体的な適用 連結会計基準は、「他の企業の意思決定機関を支配している企業」とは、次の企業をいうとしている。ただし、財務上又は営業上もしくは事業上の関係からみて他の企業の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる企業は、この限りでない(連結会計基準7項)。 なお、より具体的な規定については、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号)などに規定されているので、これらについては次回以降で解説する。 【他の企業の意思決定機関を支配している企業】 (了)
税理士が知っておきたい [認知症]と相続問題 〔Q&A編〕 【第8回】 「相続人が認知症であった場合の対応」 クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎 [設問08] 私が同居している父は5年前より認知症が始まり、現在ではほとんど判断能力のない状態です。 父には兄と弟がおりますが、先月、この兄、すなわち私の伯父さんが亡くなりました。 ◆ ◆ ◆ 伯父さんは遺言書を特に残してはおらず、妻を先に亡くし子供もいなかったため、兄弟である父と父の弟の2人が法定相続人となりました。 伯父さんの遺産は、約2,000万円の預貯金と自宅の土地建物(時価約2,000万円)です。 父の弟とは、判断能力がない父に代わって私が遺産分割に関する話合いを進めていますが、今のところ、預貯金はすべて父の弟が、土地建物は父が相続することになりそうです。 ◆ ◆ ◆ この内容に沿った遺産分割協議書を作成し、私が父の名前を代筆する形で進めることで問題ないでしょうか。 1 高齢社会と相続をめぐるもう一つの側面-“相続人自身の高齢化” 「高齢化が進む」ということは、人が亡くなる年齢、つまり「相続が発生する年齢も高齢化する」ことを意味する。 そうなれば必然的に、「相続する側=法定相続人」の年齢もまた高齢化することになり、今後、相続人自身において、判断能力が低下したり、認知症にかかっているというケースが増えることが予想される。 これが【設問08】のテーマである。 【設問08】では、被相続人である相談者の伯父は遺言書を残していないということであるから、法定相続人間で、伯父の遺産について遺産分割協議を行う必要がある。 この際、遺産分割も法律行為である以上、分割協議を有効に行うためには、法定相続人(ただし、相続放棄した法定相続人は除く)の各人が判断能力を有する必要がある。 2 判断能力が失われている場合の対応(1)-成年後見人の選任 【設問08】のように、相続人自身が相続発生時点で既に判断能力をほとんど失っている場合、原則的な対応方法としては、家庭裁判所に対し、成年後見人の選任を求めて申立てを行うことになる(実際、遺産分割協議の際の必要性を動機として、成年後見の申立てへと踏み切るケースは少なくない)。 成年後見人が選任された後は、後見人が本人に代わり、他の法定相続人との間で遺産分割協議に臨むことになる。 その際の留意点としては、成年後見人は本人の権利確保を図る立場にあるから、原則として、法定相続分に見合う価値の遺産は最低でも確保するようにしなければならない。つまり、成年後見人の独自の判断で相続放棄をしたり、法定相続分を大きく下回るような内容での遺産分割協議を成立させることは許されない。 そして、協議がまとまれば、成年後見人が本人の法定代理人として遺産分割協議書に署名捺印する。法定代理人以外の者が署名捺印しても無効である。【設問08】のケースでは、成年後見人ではない相談者(私)が遺産分割協議書に代筆しても、法的効力は生じない。 その後、相続した不動産の維持管理は、本人の他の財産と一緒に成年後見人が行っていくことになる。 この点、成年後見申立ての動機が遺産分割協議の必要性にあった場合でも、いったん成年後見人が選任されたならば、遺産分割協議が完了して以降も引き続き成年後見人としての活動を継続しなければならないことに留意する必要がある。 3 判断能力が失われている場合の対応(2)-特別代理人の選任 以上が原則的な対応方法であるが、成年後見の申立て準備から行うとなれば、実際に後見人が選任されるまでには、どうしても数ヶ月程度の期間が必要となってしまう。 中には、時間的余裕がなく、緊急を要するケースもあり得る。この場合、遺産分割調停ないし審判の場合で家事事件の手続が遅滞することにより損害が生ずるおそれがあるときは、家庭裁判所に特別代理人の選任を求めて申立てを行う方法が考えられる。 この場合には、当該遺産分割に限っての特別の代理人を選任してもらうことになる。実務上は、特別代理人選任の申立書の附属書類として、遺産分割協議書の文案を添付することとされている。 申立てを受けた裁判所は、文案の内容も考慮した上で(例えば、当該文案による分割協議の内容が、申立人本人の法定相続分を確保できているか等)、特別代理人の選任を許可することになる。 特別代理人が有効に選任された後は、この者の調停への出席により、遺産分割協議が有効に成立する。 なお、相続の以前から既に成年後見人が選任されていた場合で、後見人自身が法定相続人の立場を有している(つまり「2つの立場を兼ねている」)という場合には、利益相反を防ぐため、やはり特別代理人の選任が必要である。 4 “相続人自身の高齢化”に向けた予防策 以上のように、相続人自身が高齢となり、判断能力に問題が生じているケースでは、原則として成年後見人等の選任が必要となるため、余計な時間と労力を要する。 そこで、【設問08】における伯父としては、やはり生前に遺言書を作成しておくことが、このような事態を回避する最も良い方法といえる。 適切な遺言書が作成されていれば、仮に相続発生時において相談者の父が判断能力をほぼ失っている場合でも、遺言書を使って相続登記の申請が可能となる。 ただ、厳密に言えば、相談者の父が登記申請を依頼する司法書士に対して有効な委任を行い得るのか(司法書士への委任状が有効か)という問題は残る。 しかし、遺産分割を一から行うのと異なり、「遺産となる不動産を自分がもらうことを承諾し、登記申請を依頼するかどうか」というように、内容が単純で、かつ、本人にとって有利な事項が問題とされるのであるから、この場合における司法書士への依頼に際しては、それほど高度な判断能力は要求されないものと思われる(判断能力が、問題となる行為や契約毎に個別に判断されるものであることについては、解説編【第3回】の2を参照)。 よって、仮に遺言者が生前から、法定相続人の各人に対して法定相続分通りの割合で分配することを考えていたとしても、適切な遺言書を作成しておくことは、無用な紛争と労力を回避するために大きな意味を有するのである。 (了)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例14】 クックパッド株式会社 「平成28年12月期決算短信」 (2017.2.9) 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、クックパッド株式会社(以下「クックパッド」という)が平成29年2月9日に開示した「平成28年12月期決算短信」である。この連載で同社の開示を取り上げるのは2回目であり、【事例4】において同社が平成28年3月24日に開示した「代表執行役の異動に関するお知らせ」を取り上げた。 前回【事例13】で取り上げた株式会社あみやき亭の「平成29年3月期第3四半期決算短信」は、開示時期の早さにおいてすごい開示であったが、このクックパッドの開示は特にすごい開示というわけではない。 この開示で目を引くのは、業績予想に関する記載である。 サマリー情報の「3.平成29年12月期の連結業績予想(平成29年1月1日~平成29年12月31日)」には、次のように記載されている。 また、同社は、これと同時に開示した「2016年12月期決算説明資料」の中の「今後のディスクロージャーに関する考え方」においても、「長期の目線にたった大胆、かつ柔軟な意思決定を行っていくため将来のコミットメントにしばられる経営は目指しません。」とした上で、「将来の業績目標、予測・見通しは開示しません。」と記載している。 2 これまでも クックパッドは、この決算短信から業績予想を開示しないこととしたようである。といっても、これまでも業績予想の開示に対して積極的ではなかったようである。「平成27年12月期決算短信」の「3.平成28年12月期の連結業績予想(平成28年1月1日~平成28年12月31日)」には、次のように記載されているだけである。 「平成24年4月期決算短信」までさかのぼると、もう少し積極的な姿勢がうかがえた。その「3.平成25年4月期の業績予想(平成24年5月1日~平成25年4月30日)」には、次のように記載されている。 そして、「添付資料3ページ」には、次のような記載がある(下線部は筆者による)。 しかし、「合理的に予想可能となった時点で速やかに開示いたします。」としておきながら、結局、業績予想は開示せず、平成25年6月7日、「平成25年4月期決算短信」と同時に「2013年4月期業績の前期との差異に関するお知らせ」を開示している(こうした開示が適切とはいえない理由は【事例5】を参照)。 このように業績予想を「合理的に予想可能となった時点で速やかに開示」することができなかったからなのか、「平成25年4月期決算短信」からは、添付資料の中の「合理的に予想可能となった時点で速やかに開示いたします。」という記載もなくなっている。 そして、ついに「平成28年12月期決算短信」において、売上や利益が前期を上回る見込みであるという記載すらせず、「業績予想をまったく開示しない」という宣言を行うに至ったのである。 3 最低限の開示だけ 決算短信を開示する時点において、業績予想を合理的に算定できないのならば、決算短信に業績予想を記載すべきではない(合理的でない業績予想を記載すれば、むしろ投資家の投資判断を誤らせてしまう)。しかし、業績予想を合理的に算定できる時点になったら、業績予想を開示すべきである(どんなに遅くても、決算期末後、業績の概算額を算定できれば、開示できるはず)。クックパッドはそうした開示も行わないつもりなのだろうか。そうだとしたら、上場会社の適時開示に対する姿勢として、いかがなものだろうか。 「2016年12月期決算説明資料」の中の「今後のディスクロージャーに関する考え方」では、「長期の目線にたった大胆、かつ柔軟な意思決定を行っていくため将来のコミットメントにしばられる経営は目指しません。」の後に続けて、「一方で、投資家向けにタイムリー、かつ正確な情報の開示は確実に実施していきます。」と記載されている。要するに、「必ず行わなければならない開示は仕方なく行うが、それ以上の積極的な開示を行うつもりはない」ということのようである。 4 実施していないのでは? クックパッドは平成29年3月24日に「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を開示しているが、その【コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由】には、「当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則について、全て実施しています。」と記載している。しかし、コーポレートガバナンス・コードの次の原則を実施しているといえるのだろうか。 「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を訂正し、この原則を実施しない理由をきちんと記載すべきだろう。 5 佐野氏の本音 【事例4】で、筆者は次のように述べたが、クックパッドの適時開示に対する姿勢を見ていると、「クックパッドは自分の会社だ。株主にとやかくいわれたくない」というのが、同社の創業者で現取締役・執行役の佐野陽光氏の本音だということがわかる。やはり上場会社の経営者には相応しくない人物であるといわざるを得ないだろう。 6 開示漏れ? 最後に、この開示を見て気になった箇所がもう一つあったので、触れておく。 連結経営成績の対前期増減率だが、売上収益はプラス26.3%、税引前利益はマイナス36.2%、当期利益はマイナス74.8%、親会社の所有者に帰属する当期利益はマイナス77.2%である。 業績予想を開示していない場合でも、売上については10%以上、利益については30%以上、前期の実績値と当期の実績値との間に乖離が生じた場合、それに関して開示が必要になる(クックパッドが平成25年6月7日に開示した「2013年4月期業績の前期との差異に関するお知らせ」のように)。 売上収益、税引前利益、当期利益、親会社の所有者に帰属する当期利益、いずれも前期の実績値と当期の実績値との間で開示が必要となる乖離が生じている。しかし、同社はそうした開示を行っていないようである。 (了)
《速報解説》 法人税法施行規則等の改正により、平成29年度税制改正を踏まえた 法人税申告書(別表)の新様式が明らかに ~中小企業経営強化税制に係る別表6(22)等が新設 Profession Journal編集部 平成29年度税制改正等を受けた法人税申告書(別表)様式を定めた改正法人税法施行規則が4月14日付官報号外第82号で公布され、その内容が明らかとなった。これら改正後の様式は原則として平成29年4月1日以後終了事業年度から適用される(改正法規附則2)。 (※) 官報同号にて地方法人税及び租税特別措置の適用額明細書の様式改正も行われている。 以下、主な様式の変更内容を紹介する。 まず今年度改正で創設されすでに4月1日からの適用が始まっている中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の12の4))に係る税額控除の様式が、次の別表6(22)「中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」だ。 〈別表6(22) 中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 次に、こちらも創設制度である地域中核企業向け設備投資促進税制(地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の11の2))に係る税額控除の様式は、別表6(17)「地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」として次のように示された。 なおこの制度は、本稿公開日現在、国会(衆議院)で審議中の「企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の一部を改正する法律案」の施行日から平成31年3月31日までの適用となる。 〈別表6(17) 地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 所得拡大促進税制(措法42の12の5)は29年度改正において、中小企業者等以外の法人については適用要件の見直し等、中小企業者等については控除税額の上積みが措置されており、改正箇所を反映した別表6(23)(改正前:別表6(19))が示された。 〈別表6(23) 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 研究開発税制については既報の通り、増加型の廃止(H29.3.31までの間に開始する事業年度まで)に伴い、試験研究費の増減に準じて総額型の控除率にメリハリがつく仕組みが導入され2年間の拡充措置も織り込まれるなどの見直しが行われている。 様式の変更点としては、昨年本誌上でお伝えしたように、繰越税額控除限度超過額等に係る税額控除制度の廃止に伴い従前の3つの様式が別表6(6)「試験研究費の総額に係る法人税額の特別控除は中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除及び特別試験研究費に係る法人税額の特別控除に関する明細書」に統一されていたのだが、今回再び以下の3様式へ分割されることとなった。 別表6(6) 試験研究費の総額に係る法人税額の特別控除に関する明細書 別表6(7) 中小企業者等の試験研究費に係る法人税額の特別控除に関する明細書 別表6(8) 特別試験研究費に係る法人税額の特別控除に関する明細書 その他、災害に伴う税制上の措置の常設化により法人税法27条に規定された「中間申告における繰戻しによる還付に係る災害損失欠損金額の益金算入」制度に伴い「別表4 所得の金額の計算に関する明細書」において該当欄([36])の追加が手当てされている(「別表7(1) 欠損金又は災害損失金の損金算入に関する明細書」においても同様に該当欄を手当て)。 また、過年度改正に係る様式改正として、平成28年1月1日以後の公社債課税の見直しにより(詳しくはこちら)、適用時期の前後で明細を分けたため本表と付表に分割されていた「別表6(1) 所得税額の控除に関する明細書」及び「別表6(1)付表 所得税額の控除に係る元本所有期間割合の計算等に関する明細書」は適用時期を過ぎたことで再び1枚の「別表6(1) 所得税額の控除に関する明細書」へ統合された。 〈別表6(1) 所得税額の控除に関する明細書〉 さらに「別表5(2) 租税公課の納付状況等に関する明細書」では、住民税の利子割の廃止や復興特別法人税の廃止に伴い該当欄の削除等が行われている。 (了) ↓お薦め連載記事↓
《速報解説》 中小企業向け租税特別措置の要件見直し、 基準年度の平均所得金額15億円超の判定に係る改正措置法施行令が公布 ~設立3年以内の法人は適用除外事業者に該当せず Profession Journal編集部 既報の通り、大企業並みの多額の所得のある中小企業への課税強化として、中小企業向けの租税特別措置の適用要件に一定の所得制限を設けることが平成29年度税制改正大綱に明記された。 具体的には「法人税関係の中小企業向けの各租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円を超える事業年度の適用を廃止する措置を講じる。」というもので(大綱p75)、平成31年4月1日以後に開始する事業年度から適用される(法人住民税関係も同様)。 上記の改正については、3月31日公布の改正措置法に続き、4月7日の官報号外第75号においても「租税特別措置法施行令の一部を改正する政令」(以下、改正措令)が公布され、新設法人や合併等一定の場合の平均所得金額の計算方法等が規定された。 * * * まず、3月31日公布の改正措置法における本改正の規定については、中小企業に係る租税特別措置規定の多くが中小企業者(又は中小企業者等)の定義として流用する(※)、研究開発税制を規定した措置法42条の4に着目したい。 (※) 例えば商業等活性化税制(措法42条の12の3)では同条第1項において「中小企業者」の定義を「・・・第42条の4第8項第6号に規定する中小企業者又は・・・」としており、所得拡大促進税制(措法42の12の5)では同条第2項7号において「中小企業者等」の定義を「第42条の4第3項に規定する中小企業者又は農業協同組合等をいう」としている。 この研究開発税制(措置法42条の4)のうち、中小企業向けの特例措置である中小企業技術基盤強化税制を規定した同条第3項で、この制度の適用対象について「中小企業者(適用除外事業者に該当するものを除く)」と括弧書き部分が追加され、この「適用除外事業者」が同条8項6号の2において、次のように定義されている(なお、「中小企業者」の定義自体は内容に変更なし(同条8項6号))。 (※) 上記の改正は法人の平成31年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用される(H29改正法附則62条1項)。 括弧書き部分以外については大綱の表記と概ね同じ内容だが、括弧書き部分については政令に委任している箇所(下線部)があり、4月7日公布の改正措令はこの委任箇所を規定したものとなっている。 改正措令では、基準年度となる前3事業年度内に新設された法人や欠損金の繰戻し還付を受けた場合、合併等を行った場合や連結法人に該当していた場合等について、それぞれのケースで平均所得金額15億円超を判定するための計算方法等を明らかにしている 例えば、判定対象年度の開始の日において法人の設立の日の翌日以後3年を経過していない場合は平均所得金額をゼロとし適用除外事業者に該当しないこと(新措令27条の4第13項1号、14項1号)や、欠損金の繰戻し還付を受けた場合にはその欠損金額を控除した額で判定すること(新措令27条の4第13項2号、14項2号)などが詳細に規定されている(改正措令の施行も平成31年4月1日)。 * * * なお、今回の改正により適用除外事業者に該当し適用除外とされる租税特別措置については、大綱では具体的な制度名が明記されず、中小企業庁の資料に次の図が示されているのみであった。 【参考図】 (※) 中小企業庁ホームページより 今回の一連の法改正において、上記の中小企業技術基盤強化税制を含め、適用対象となる中小企業者のうち「適用除外事業者に該当するものを除く」という規定が織り込まれたのは、次の制度となっている(いずれもH31.4.1以後開始事業年度より適用)。 このように今回の一連の法改正では中小法人の軽減税率や少額減価償却資産の特例、所得拡大促進税制の上乗せ措置等については「中小企業者のうち適用除外事業者を除く」規定が設けられていないが、冒頭に述べたとおり本改正の適用は平成31年4月1日以後開始事業年度であることから、今後の法改正で手当てされる可能性が高く注視が必要だ。 また既報の通り、3月決算法人の場合、すでに前期(平成29年3月期)及び今期(平成30年3月期)は最初に適用除外事業者の判定を行う基準年度に含まれている点にも留意しておきたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓
2017年4月20日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.215を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
これからの国際税務 【第1回】 「変化する国際税務の焦点」 早稲田大學大学院会計研究科 教授 青山 慶二 1 グローバル化の進展と税制 近年の経済のグローバル化の特徴は、①国際経済取引の担い手である多国籍企業間の激しい競争と、②国際取引におけるサービスの比重の拡大である。 これら2つの進展は、国際課税ルールの有効性に深刻な疑問を呈する要因となった。 すなわち、前者の要因からは、各国の財政主権の下で協調が十分に進展しない所得課税法制の良いところ取りをする多国籍企業が、事業体の立地選択などを利用して二重非課税を狙うアグレッシブな租税回避行動を拡大することになったのであり、また後者の要因からは、IT技術や人的資源などの付加価値の国境を越える移転取引(専門的役務提供や無形資産の供与等)に対する伝統的課税ルールの硬直性を利用した源泉地国での課税漏れ狙いのスキームを跋扈させてきたのである。 これら2つの課題に対し、企業の健全な国際競争条件を取り戻し、かつ、税源を侵食された国に正当な税収を回復させる目的で取り組まれてきたのが、G20/OECDによる「BEPS(税源浸食・利益移転)プロジェクト」と「税の透明性を促進するプロジェクト」であった。 両プロジェクトは、2015~2016年にかけて国際協調の下に実行する処方箋をまとめた報告書を採択し、現在は、強力な政治的なイニシアティブに基づき、各国が税制改正や条約改定に取り組んでいる。 これらにより、第2次大戦後約70年にわたって君臨してきた「旧OECD型レジーム」とも呼ぶべき国際課税のスタンダードが、実体法と手続法の両面で大幅に更新される見込みである。 本連載では今後、新しい国際課税スタンダードを項目別に順次紹介する予定であり、初回では、まず両プロジェクトの改革理念のエッセンスを概説する。 2 国際的租税回避防止に向けた税制の調和 BEPSプロジェクトは、租税回避行為に対する耐久力劣化が目立つ「旧OECD型レジーム」の主として実体法に着目したオーバーホール作業である。 実体法ルールでは、特に、デジタル経済の進展によるサービス・無形資産取引の変容に対応できる課税ルール見直しに焦点を当て、移転価格税制、タックスヘイブン税制などの抑止措置並びに租税条約の濫用への対応措置等につき改正案を提示している。ただし、改正案の提示に当たっては、各国の租税政策のニュアンスの違いを尊重して、一本化した処方箋のみならず、「ベストプラクティス」や参照すべき「共通アプローチ」を提示しながら、その中で一定の選択肢を各国に許容する方式も項目によっては採用している。 なお、過去1世紀にわたって国際課税の基本理念として信奉されてきた「独立企業原則」及び「事業所得の閾値としての恒久的施設要件」そのものは保持されており、ルールの更新はその実施に向けたガイダンスの追加や修正であると整理されている。しかし、内容を詳細に検証すると、一般的な利子控除制限の導入や移転価格税制における所得相応性基準の導入、更には、抜本的な条約濫用防止規定の常備化など、伝統的課税理論の外延をはみ出す提案も多く含まれており、近年では最大規模の国際課税ルールの更新パッケージと評価できよう。 併せて、租税回避による税源浸食リスクの測定材料を提供し上記新課税ルールの適用を可能にするために、多国籍企業の国別事業体経営情報や課税当局によるルーリングの開示も新たに求められている。 これらの情報開示は、その後の課税当局によるアクション発動にとって不可欠の前提条件と位置付けられ、2年以内の紛争解決を約束すべしとする勧告と並び、実体法勧告に許容されている選択の幅を含まない「ミニマムスタンダード」という強力な勧告形式をとっている。 3 納税者の税務情報の透明化 2016年4月に存在が公表されたパナマ文書では、外国投資家のタックスヘイブン事業体の設立・管理にかかる法務・財務情報が流出し、低課税国事業体への実体を欠く投資を利用した租税計画のリスクを全世界に、改めて警告することとなった。 折しも、米国市民によるスイスUBS口座を利用した脱税スキャンダル(2008年)に端を発した米国の外国口座税務コンプライアンス法施行をきっかけに、OECDを中心としたグローバルフォーラムにおいて、外国金融口座情報の自動的情報交換に向けた合意が達成され、約100か国により2018年からの情報交換開始が期待される状況であった。 我が国を含めた主要国では情報交換に必要な国内法改正をすでに終えており、交換情報のセキュリティ確保に向けた技術的手当ても行われ、現在実施を待つばかりである。 富裕者による海外への投資を介在する金融口座の取引情報の取得に際しては、スイスにみられた銀行秘密の国内法的制約や条約の不備、更には協調した執行体制の不備により、不当な租税計画を防止する上で深刻な障害に長い間直面してきた。 今回の自動的情報交換が実施されると、多国籍企業の租税回避を防止するBEPS勧告と並んで、高額所得者の国境越え租税回避行為の情報端緒が課税当局に常備されることとなり、けん制効果は絶大なものになると考えられる。 4 当面の課題 “So far, so good”で進行してきた上記の新しい国際協調の潮流に、最近影を差す兆候が表れた。「欧州における英国のEU離脱後の税制協調」と「米国におけるトランプ政権の税制改革」の行方である。 いずれも、自国ファーストの政策を掲げてグローバル協調から離脱するベクトルに向かう懸念があり、せっかく達成されたコンセンサスの実現を困難にする可能性もある。それに加えて、アイルランドを舞台とした米国多国籍企業の租税計画に対するEU委員会の課税権の遡及適用は、国際的な税源獲得競争へ転化するリスクも内包している。 両地域を主要市場としてグローバルビジネスを展開する我が国企業への影響は無視できず、当分の間動向を注視する必要があろう。 (了)
日本の企業税制 【第42回】 「政府による電子申告推進の取組み」 -電子申告の義務化実現と法人の利用率100%を目標に- 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 3月29日に、政府の規制改革推進会議(議長:大田弘子政策研究大学院大学教授)は、その傘下の行政手続部会(部会長:髙橋滋法政大学法学部教授)の取りまとめ「行政手続コストの削減に向けて」の報告を受け、行政手続コスト削減を巡る議論を行った。 会議に出席した安倍首相は議論を踏まえ、次のように述べた。 上記報告書では、削減目標を設定して計画的な取り組みを推進するべき「重点項目」として9項目を設定しているが、そのうちの2つが、国税と地方税である。 9つの重点項目については、削減目標として、事業者の作業時間ベースで、20%削減を設定した。また、取組期間は3年をめどとし、場合によっては5年まで許容される。 上記の安倍首相の指示にあるように、重点分野については、各省庁が本年6月末までに基本計画を策定し、7月以降、行政手続部会がその基本計画について幅広く点検をし、必要な改善を求め、各省が平成30年3月までに基本計画を改定するというプロセスを予定している。 なお、国税及び地方税については、①税務訴訟における立証責任が、通常、課税当局側にあるとされていること、②消費税軽減税率制度・インボイス制度の実施、国際的租税回避への対応等に伴い、今後、事業者の事務負担の大幅な増加が不可避であることを考慮し、上記の一律の削減目標ではなく、次のような目標が設定されている。 平成27年度において法人税申告の75.4%が電子申告(e‐Tax)によって行われているが、このうち大規模法人の利用率は52.1%にとどまっている。また地方法人2税(住民税・事業税)の電子申告(eLTAX)については、ようやく平成27年4月に全ての地方団体が接続したという状況もあり、利用率は56.1%である。今回の数値目標は、納税実務に大きなインパクトをもたらすものといえよう。 すでに、政府税制調査会でも、本年1月27日の第9回総会で、4月下旬~5月上旬頃にかけて、委員の海外派遣を実施することを決めたが、その趣旨は、経済活動のICT化や多様化を踏まえ、税務手続の利便性向上及び適正公平な課税の実現に向けた検討のため、諸外国における取組みを参考とする必要があることから、各国の納税実務に係る諸制度やその実際の運用について調査を行うというものであり、今回の規制改革推進会議の取組みと方向性は一致しているものと見られる。 (了)
平成29年度税制改正における 『組織再編税制』改正事項の確認 【第2回】 公認会計士 佐藤 信祐 3 スクイーズアウト税制 (1) 対価要件の見直し 平成29年度税制改正では、スクイーズアウト税制として、以下の見直しがなされている。 (※) 平成29年度与党税制改正大綱70-71頁より抜粋 このうち、⑤であるが、発行済株式の3分の2以上を支配した後に、現金交付型合併又は現金交付型株式交換を行ったとしても、金銭等不交付要件に抵触しないことを意味している。そして、法人税法上、支配関係が成立しているかどうかは、合併又は株式交換の直前とその後の継続見込みで判断する。 そのため、発行済株式の3分の2を取得してから合併又は株式交換を行う場合には、50%超100%未満グループ内の組織再編に該当することから、事業継続要件及び従業者引継要件を満たせば、税制適格要件を満たすことができる。 この点につき、法人税法2条12号の8、同号の17では、合併法人又は株式交換完全親法人が保有する株式に限定されていることから、間接保有を含めたうえで発行済株式の3分の2以上を保有しているかどうかの判定をするわけではないという点に留意が必要である。また、当然のことながら、同一の者によって、発行済株式の3分の2以上が保有されている場合についても適用されない。 また、無対価合併及び無対価株式交換を行った場合には、従前通り、対価の交付を省略したとみることができる場合についてのみ、税制適格要件を満たすことができることとされた。これに対し、次回(【第3回】)解説するように、スクイーズアウトでは、無対価スクイーズアウトを行ったとしても、税制適格要件を満たすことができるようにされている。 そして、現金交付型合併又は現金交付型株式交換を行った場合には、現金を受け取った株主において、みなし配当を認識する必要はないものの、株式譲渡損益を認識する必要があるものとされた(法法24①、なお、61条の2②⑩では、金銭等を交付しない合併又は株式交換のみについて譲渡損益を認識しないこととしている)。 さらに、合併法人の純資産の部であるが、法人税法施行令8条1項5号では、適格合併に係る被合併法人の当該適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時における資本金等の額から当該合併による増加資本金額等(当該合併により増加した資本金の額又は出資金の額並びに当該合併により被合併法人の株主等に交付した金銭並びに当該金銭及び当該法人の株式以外の資産の価額の合計額をいう)と抱合株式の当該合併の直前の帳簿価額を減算した金額が、適格合併により増加する資本金等の額として規定されている。すなわち、被合併法人の少数株主に対して交付した金銭については、資本金等の額のマイナス要因として処理することになる。 これに対し、現金交付型株式交換については、法人税法施行令119条1項10号では、金銭等不交付株式交換のみに対して適用されることから、現金交付型株式交換を行った場合には、交付した金銭に相当する価額が株式交換完全子法人株式の受入価額となる。そのため、資本金等の額は増減しない。 このように、現金交付型合併又は現金交付型株式交換を行ったとしても、税制適格要件を満たすこととされた。諸外国の税制を見てみると、例えば、少数株主が10%であり、当該少数株主に対して金銭を交付した場合には、法人レベルにおいて、10%だけ譲渡損益を認識するという制度を導入することも可能であった。これに対し、改正法人税法では、そのような考え方は採られておらず、適格合併であれば、すべての譲渡損益を認識せず(法法62の2①)、適格株式交換であれば、すべての評価損益を認識しない(法法62の9①)という制度となっている。 それが故に、組織再編税制全体に影響を及ぼすものではなく、スクイーズアウトと足並みを揃える制度にすることを優先した制度であったということも言える。 (次号(4/27)に続く)