《速報解説》 公益法人等への不可欠特定財産の現物寄附は みなし譲渡課税の対象外に(特例対象に追加) ~平成29年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香 個人が、現金以外の土地・建物などの財産を法人に寄附した場合には、これらの財産は寄附時の時価で譲渡があったものとみなされ、これらの財産の取得時から寄附時までの値上がり益に対して所得税が課税される。 ただし、これらの財産を公益法人等に寄附した場合において、その寄附が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することなど一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、この所得税について非課税とする制度が設けられている。 このたび公表された平成29年度税制改正大綱(p34)において、この承認に係る特例の対象の範囲に、 が追加された(下線筆者)。 これにより、従来からの下記の要件3つを満たした上で、更に公益社団法人又は公益財団法人の役員等以外からの現物寄附については、その財産が法人の公益目的事業にとって不可欠特定財産であれば、みなし譲渡課税が課されないことになる申請書の提出後1月以内に承認又は不承認の決定がなかったとき当該申請の承認があったものとみなされる特例対象になる。 「公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産」は、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」という)第5条第16号において、公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産があるときは、その旨並びにその維持及び処分の制限について、必要な事項を定款で定めなければならないと規定されており、公益認定の要件の一つとなっている。 また、内閣府公益認定等委員会から平成20年4月に公表されている「公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン)」のⅠ15.では、 と説明している。 なお、不可欠特定財産がある旨の定款の定めについては、財産種別や場所・物量等を列記するなどの方法により、どの財産が不可欠特定財産に該当するのかが分かるように定款に具体的に記載する必要がある。(内閣府「新たな公益法人制度への移行等に関するよくある質問(FAQ)」問Ⅵ‐3‐②) これらは、設立者・寄附者の意思を尊重する観点から、公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産の安易な処分を防止することを目的としている。 金融資産や通常の土地・建物は、処分又は他目的への利用の可能性があり、不可欠特定財産には該当しないため、これらの寄附は今回の改正の対象とはならない。 (了)
《速報解説》 上乗せ措置の中小企業経営強化税制への改組等、 中小企業向け法人税の設備投資促進税制の改正事項 ~平成29年度税制改正大綱~ 税理士 小谷 羊太 平成28年12月8日に公表された「平成29年度税制改正大綱」(与党大綱)において、法人が取得する一定の減価償却資産に係る特別償却及び特別控除制度について、新設・延長・拡充等の整備が明記された。 以下、それぞれの内容を概観する。 1 設備投資促進税制の概要 設備投資促進税制とは、地域における産業活性化等の向上に繋がる設備投資について、特別償却又は特別控除などの優遇措置が受けられる制度である。 ① 特別償却制度 (イ) 又は (ロ) (※) 上記の金額を上限として償却費として損金経理した場合に、損金算入が認められる。 (※) 特別償却制度は課税の繰延制度である。 (※) (ロ)の一定額が「通常の減価償却費」であるときは、結果的に取得価額の全額が償却(即時償却)できる。 ② 特別控除制度 (※) 当期の法人税額の一定額(20%など)を上限として、税額控除が認められる。 (※) 特別控除制度は課税の減免制度である。 2 平成29年度税制改正大綱における改正案 ▷【新設される制度】 地域中核企業向け設備投資促進税制の創設 青色申告書を提出する法人が、特定事業計画に基づき、一定の施設等を新設し、又は増設した場合において、その特定施設等を構成する機械装置、器具備品、建物及びその附属設備並びに構築物を取得等し、その事業の用に供したときは、特別償却又は特別控除との選択適用ができる。 ① 特定事業計画 特定承認地域中核事業計画 ⇒承認地域中核事業計画(仮称)のうち、地域未来投資促進法による一定の基準に適合することについての国の確認を受けた計画 ② 一定の施設等 ①の事業計画に係る地域未来投資促進法(仮称)の同意地域中核事業促進地域(仮称)内における特定地域中核事業施設等。 取得価額の合計額が2,000万円以上のもの(本制度の対象となる金額は100億円が限度となる)がその対象となる。 ③ 特別償却費 ④ 特別控除額 なお、この改正案は、「企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律」の改正が前提となる。適用期限は同法の改正法の施行の日から平成31年3月31日までの間に新設等された施設を構成する資産に係るものとされる。 ▷【拡充される制度】 「中小企業投資促進税制の上乗せ措置」の「中小企業経営強化税制」への改組 平成29年3月31日で適用期限を迎える中小企業投資促進税制の上乗せ措置(生産性向上設備等に係る即時償却等)が、サービス業も含めて広く中小企業の生産性の向上に資することを目的に、「中小企業経営強化税制」へ改組されることとなった。 中小企業経営強化税制は、青色申告書を提出する中小企業者等で、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたものが、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に、生産等設備を構成する「機械装置、工具、器具備品、建物附属設備及びソフトウェア」で、その法人の認定を受けた経営力向上計画に記載された経営力向上設備等(「特定経営力向上設備等」という)に該当するもののうち、一定の規模以上のものの取得等をして、その特定経営力向上設備等を国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合には、特別償却(即時償却)又は特別控除との選択適用ができる制度となる。 上記の通り改組後は、一定の経営向上設備等を取得等した場合の固定資産税の半減特例と同様に「中小企業等経営強化法」の認定を必要とする制度になる。 ① 生産等設備 指定事業の用に直接供される減価償却資産で構成される設備をいう。なお、事務用器具備品、本店、寄宿舎等に係る建物附属設備、福利厚生施設に係るもの等は該当しない。 ② 経営力向上設備等 中小企業等経営強化法に規定する次の設備をいう。 なお上述の通りこの特例の適用を受けるのは、経営力向上設備等のうち、認定を受けた経営力向上計画に記載されたもの(特定経営力向上設備等)に限る。 「生産性向上設備」は改組前(上乗せ措置)の「先端設備(A類型)」、「収益力強化設備」は改組前(上乗せ措置)の「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」(B類型)に該当するが、それぞれ改組前の対象設備(機械装置、ソフトウェア等)に、器具備品・建物附属設備等が加わった。なお、建物・構築物は除外されている。 経済産業省によると、サービス業は器具備品や建物附属設備の設備投資を行うケースが多いとしており、この改正によりサービス業も適用しやすい制度になったと考えられる。一方で後述のように、中小企業投資促進税制の対象設備からは器具備品が除外されている。 ③ 特別償却費(即時償却) ④ 特別控除額 ▷【延長等される制度】 ◆中小企業投資促進税制について、対象資産から器具備品を除外した上、その適用期限を2年間(平成31年3月31日まで)延長する。 ◆特定中小企業者が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は特別控除制度(商業・サービス業・農林水産業活性化税制)の適用期限を2年間(平成31年3月31日まで)延長する。 ▷【その他の整備】 上記の特別控除制度(中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制)における控除税額の上限において、控除税額の合計で、当期の法人税額20%を上限とする所要の整備を行う。 * * * 中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の関係をまとめると、下図のとおりとなる。なお、固定資産税の課税標準の特例措置については[こちらの別稿]を参照されたい。 【参考図】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 経済産業省ホームページより (了)
《速報解説》 経営力向上設備等取得に係る固定資産税の課税標準の特例措置、 地域・業種限定で対象設備を拡充 ~平成29年度税制改正大綱~ 税理士 小谷 羊太 平成28年12月8日に公表された「平成29年度税制改正大綱」(与党大綱)では、中小事業者等が取得する一定の機械・装置に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、残り2年の適用期限に限り、地域・業種を限定した上で、対象設備が拡充されることが明記された。 1 償却資産に係る固定資産税の計算 償却資産に係る固定資産税の計算方法は下記の通りである。 (※) 課税標準額は、各資産の評価額を資産が所在する区ごとに合算した額(決定価格)。 (※) 課税標準額が150万円未満の場合は、課税されない。 (※) 課税標準の特例の適用を受ける資産がある場合は、その資産の評価額にそれぞれ特例率を乗じて得た額を基に課税標準額を算出する。 2 中小企業等経営強化法に基づく固定資産税の軽減措置の確認(現行制度) ① 概要 経営力向上計画に基づいて新たに導入した機械及び装置について、上記1の算式中にある固定資産税の課税標準額が、3年間半額になる。この措置は固定資産税の軽減措置としては、中小企業の設備投資を促進する目的から、平成28年7月より導入されたものである。 ② 対象者:中小企業者、中小事業者 ③ 対象設備 その他この特例措置の現行制度については、本誌掲載の下記記事を参照されたい。 3 平成29年度税制改正大綱における改正案 上記2の固定資産税の課税標準の特例措置について、地域・業種を限定した上で、その対象に、測定工具及び検査工具、器具・備品並びに建物附属設備(償却資産として課税されるものに限る)のうち、一定のものを加える措置がとられる。 今回の改正により、地域・業種を限定してではあるが、現行制度の機械装置に、「工具」、「器具・備品」、「建物附属設備」が対象資産として加えられることとなった。なお、この拡充措置は、この軽減措置(3年間の時限措置)の残り2年間(※)に限っての適用となる。 (※) 総務省公表資料によると、この措置は「その期限の到来をもって終了するものとし」と記載されている。 「地域・業種の限定」、「対象資産」については、次に掲げるものとなる。 ① 地域・業種 (※) 経済産業省の資料によると、最低賃金が全国平均以上となっている地域は「東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都」の7都府県のみであり、これらの地域については、労働生産性が全国平均未満の業種(小売業、宿泊業、飲食業、理美容、自動車整備業、東京以外の医療業、東京以外の社会保険・福祉・介護業などのサービス業)についてのみ、特例の対象とされる。 ② 対象資産 ③ 取得価額基準 * * * なお、中小企業向け法人税の設備投資に係る特例措置の改正事項については、[こちらの別稿]を参照されたい。 (了)
《速報解説》 増加型の廃止に伴う総額型の控除率見直し、 サービス開発の適用等、研究開発税制の改正事項 ~平成29年度税制改正大綱~ 辻・本郷税理士法人 税理士 安積 健 以下では、平成29年度税制改正大綱(与党大綱)で示された研究開発税制(及び中小企業技術基盤強化税制)の改正内容についてまとめることとする。増額型の廃止に伴う総額型の控除率の見直しや2年間の拡充措置、試験研究費へのサービス開発の追加などが行われている。 改正の全体像 改正前 改正後 (1) 総額型 (2) 上乗せ措置 (3) 時限措置(2年間) (4) 試験研究費の範囲 (5) オープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度) (了)
本誌連載 「小説 法人課税第三部門にて。」(筆者:八ッ尾順一氏)が マンガになりました!!
2016年12月15日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.198を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第38回】 「平成29年度税制改正大綱における 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 与党の平成29年度税制改正大綱が12月8日に取りまとめられた。 今回の大綱の大きなテーマは、「一億総活躍社会の実現」であり、そのための両輪として「働き方改革」と「イノベーション」が掲げられている。 「イノベーション」の観点からは、研究開発税制における増加インセンティブの強化、コーポレートガバナンス改革・事業再編の環境整備などの法人課税関係の改正が盛り込まれている。 一方、「働き方改革」の観点からは、経済社会の構造変化を踏まえた個人所得課税改革が盛り込まれた。今回の大綱では、その第一弾として、就業調整を解消し、働きたい人が就業時間を調整することを意識せずに働くことができる環境を整備し、また最低賃金が引き上げられていく中でも人手不足を解消できるよう、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しを行うこととされた。この改正は平成30年分以後の所得税について適用される。 ▷配偶者特別控除の拡充 具体的には、所得控除額38万円の対象となる配偶者の給与収入の上限を現在の103万円(給与所得控除の最低額65万円+38万円)から150万円に引き上げることとされた。なお、この引き上げは、配偶者控除の対象となる配偶者の給与収入の上限を見直すことはせずに、配偶者特別控除の控除額が、配偶者の給与収入が103万円から150万円までの間、38万円に固定することによって実現するものである。つまり、103万円の内訳である65万円と38万円の水準については何ら変更はない。 この150万円の意味合いは、安倍内閣が目指す最低賃金1,000円で、1日6時間、週5日働いた場合の年収を上回る水準である。 現在の配偶者特別控除の所得控除額は、配偶者の給与所得103万円から141万円にかけて段階的に逓減する仕組みであるが、改正後は、配偶者の給与所得103万円から150万円までの間は38万円で固定であり、その後、150万円から201万円にかけて段階的に逓減することとなる。 ▷配偶者控除及び配偶者特別控除の適用の所得制限 ただし、この見直しによって、配偶者特別控除の減税額が増加することから、税収中立の観点から、配偶者控除及び配偶者特別控除を適用できる納税者の所得制限を導入することとされた。 現在は、配偶者控除には所得制限はなく、配偶者特別控除には給与収入1,220万円(給与所得控除(220万円(平成29年分から))適用後の合計所得金額1,000万円)以下という所得制限があったが、改正後は、給与収入1,220万円超の納税者には配偶者控除も適用されなくなる。さらに、給与収入1,120万円超1,170万円以下(合計所得金額900万円超950万円以下)の納税者には、通常の配偶者控除及び配偶者特別控除の額のほぼ3分の2、また、給与収入1,170万円超1,220万円以下(合計所得金額950万円超1,000万円以下)の納税者には、通常の配偶者控除及び配偶者特別控除の額のほぼ3分の1の所得控除額が適用される。 【改正後の所得控除額】 ▷ 今後の個人所得課税改革 今回の配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しはあくまでも第一弾であり、今後も改革は続くことが見込まれる。 今回の大綱では、まず、所得再配分機能の回復の観点から、基礎控除などの人的控除等の「控除方式」の見直しが掲げられており、これまでの「所得控除方式」から「ゼロ税率方式」や「税額控除方式」あるいは所得控除方式を維持しつつ高所得者について税負担の軽減額が逓減・消失する仕組みが提示されている。 次に、多様な働き方を踏まえた給与所得控除等の所得の種類に応じた控除と人的控除とのあり方を全体として見直すことが掲げられている。これは所得の種類に応じた控除から人的控除に重点を移すことが念頭にあるものとみられる。 最後に、老後の生活に備えるための自助努力を支援するための企業年金、個人年金、貯蓄・投資、保険等に関連する公平な制度の構築が挙げられている。 (了)
〔平成29年度税制改正大綱からみた〕 組織再編税制の改正内容と実務への影響 【前編】 公認会計士 佐藤 信祐 1 概要 平成28年12月8日に平成29年度与党税制改正大綱が公表された。税制改正大綱が公表される前はスピンオフ税制のみが報道されていたが、実際に公表されてみると、平成18年度税制改正(会社法への対応)、平成22年度税制改正(グループ法人税制)に匹敵する大改正であったということが言える。 その概要は以下の通りである。 このうち、②から⑤までの改正は、平成29年10月1日の施行が予定されており、それ以外は、平成29年4月1日の施行が予定されている。 詳細な内容については、政省令を確認しないと分からないが、本稿では、税制改正大綱から読み取れる実務上の留意事項について解説を行う。 2 スピンオフ税制 現行法人税法では、支配株主の存在しない新設分割型分割や子会社株式の現物分配は、グループ内の組織再編にも該当せず、共同事業を営むための組織再編にも該当しないことから、非適格組織再編として取り扱われている。このような取扱いが企業の円滑な組織再編を妨げているという批判から、スピンオフ税制が導入された。 スピンオフ税制の対象となる組織再編は以下の通りである(なお、具体的な税制適格要件は、平成29年度税制改正大綱(p68-69)を確認されたい)。 これらはいずれも、他の者(※)による支配関係がないことを前提としていることから、非上場会社で適用されることは稀であり、実務上、上場会社がbad事業を切り離す場合にのみ適用される手法であると思われる。 (※) 「他の法人」としていないことから、個人による支配関係がある場合についても含まれると推定。正確なことについては、改正後の条文を確認する必要がある。 このようなニーズがあることは否定しないが、約3,500社存在する上場会社のうち、スピンオフ税制を適用する会社は極めてわずかであろう。 そのため、多くの税務専門家にとっては、スピンオフ税制の存在を知っておくことは重要かもしれないが、実際に関与することはそれほど多くはないと思われる。 3 スクイーズアウト税制 (1) 対価要件の見直し 平成29年度税制改正大綱を見て、多くの税務専門家が注目したのは、スピンオフ税制ではなく、スクイーズアウト税制であったと言われている。 まず、吸収合併及び株式交換に係る適格要件のうち対価に関する要件について、合併法人又は株式交換完全親法人が被合併法人又は株式交換完全子法人の発行済株式の3分の2以上を有する場合におけるその他の株主に対して交付する対価を除外して判定することになった(p70)。 これは極めて大きな改正であり、発行済株式の3分の2以上を支配した後に、現金交付型合併又は株式交換を行ったとしても、適格合併又は適格株式交換に該当するということを意味している。 しかし、平成29年度税制改正大綱の文言を形式的に読むと、合併法人又は株式交換完全親法人が被合併法人又は株式交換完全子法人の発行済株式の3分の2以上を直接に有する場合に限定されており、間接保有は認められていない可能性があり得る。さらに、同一の者によって、発行済株式の3分の2以上を有する場合については適用されないようにも読める。この点については、2月に公表される改正法案を確認する必要があろう。 そして、税制改正大綱から読み取れないが、発行済株式の3分の2以上を支配した後に、無対価合併又は株式交換を行った場合の取扱いについても注目すべきであろう。この点については、法人税法施行令に規定する支配関係が成立しているかどうかの要件の一つとなっているため、本改正の影響を受けない可能性はあり得る。 なお、例えば、発行済株式の90%を支配している場合に、10%の少数株主に対して現金交付型合併又は株式交換を行った場合には、立法論としては、10%だけ譲渡損益を課税するという考え方もあり得る。平成29年度税制改正大綱を読む限り、そのような考え方は採用されなかったと予想されるが、この点については、念のため、改正法案を確認する必要がある。 さらに、現金交付型合併又は株式交換を行った場合における株主課税の問題、合併法人又は株式交換完全親法人の純資産の部の取扱いについても確認する必要がある。 現金交付型株式交換を行った場合には株式譲渡損益課税になると予想されるが、現金交付型合併を行った場合も同様の取扱いになるのか、みなし配当課税の対象になるのかは、今のところ明らかではない。そして、交付した現金について、合併法人又は株式交換完全親法人における資本金等の額の減額要因になると推定されるが、この点についても、政省令を確認する必要があると考えられる。 なお、現行法上、支配関係が成立しているかどうかは、合併又は株式交換の直前とその後の継続見込みで判断するため、発行済株式の3分の2を取得してから合併又は株式交換を行う場合には、支配関係での組織再編に該当することから、事業継続要件や従業者引継要件を満たせば、税制適格要件を満たすことができる。 この考え方が平成29年度税制改正後も踏襲された場合には、発行済株式の3分の2を取得してから現金交付型株式交換を行うという手法が採用される可能性があり得る(現金交付型合併については、繰越欠損金の引継制限、使用制限、特定資産譲渡等損失の損金不算入の問題があることから、それほど利用されないと思われる)。 (後編(2016/12/22)に続く)
相続税の実務問答 【第6回】 「遺産分割協議のやりなおし」 税理士 梶野 研二 [答] いったん有効に成立した遺産分割協議をやり直して、当初の分割とは異なる内容の分割を行った場合には、相続人間で贈与又は交換等が行われたものとして、贈与税や所得税の課税の問題が生じることがあります。 ご質問の場合には、あなたからお兄様に国債の贈与があったものとして、贈与税が課税されることとなります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 遺産分割 相続が開始すると、その瞬間に被相続人に属していた財産は、共同相続人の共有財産となりますが、共同相続人の共有となった個々の財産は、遺産分割の手続きを経ることにより、各共同相続人に個別具体的に帰属することとなり、共有状態が解消することとなります。 遺産分割は、共同相続人全員の協議により行うこととなります。しかしながら、共同相続人間に協議が調わないとき又は協議をすることができないときは、家庭裁判所における審判や審判手続きに先立つ調停の手続きによることもあります。 2 遺産分割のやり直し 遺産分割が成立し、相続財産の具体的な帰属が確定したものの、その後、共同相続人の一部からの申出により、遺産分割をやり直すことがあります。 遺産分割をやり直したいという話が起こる背景には様々な原因が考えられます。たとえば、①他の相続人から示された遺産分割協議書の内容を十分に確認することなく、軽率に押印してしまったが、後からその内容を読み返してみると自分に不利な内容となっていることに気づいた場合、②分割の対象となった財産の一部の価値が著しく上昇したり、その逆に下落したような場合(駅前の再開発が進み地価が急騰したり、相続した株式の発行会社が倒産した場合など)、③共同相続人の一部の者の生活状況や事業の状態に著しい変動が生じたような場合、④親の面倒をみることを確約した相続人に多くの遺産を取得させたが、その相続人が約束を守らなかった場合などにおいては、遺産分割のやり直しの話が持ち上がることもあるでしょう。 どのような理由であれ、共同相続人全員の合意により、いったん有効に成立した分割協議を白紙に戻し、その内容とは異なる内容の分割をすることは、第三者の利益を害さない限り、私的自治の原則の支配するわが国の民法の下では、否定されるものではありません。 〇平成2年9月27日最高裁第一小法廷判決 (土地所有権移転登記抹消登記手続請求事件・最高裁判所民事判例集44巻6号995頁) 3 遺産分割のやりなおしがあった場合の課税関係 いったん有効に成立した遺産分割の全部又は一部を取り消して、それとは異なった内容の分割をすることは、それ自体を否定されるものではないとしても、それは相続人間における財産権の移転を目的とした新たな法律行為であると考えられます。 そうしますと、遺産分割のやり直しにより新たに取得することとなった財産は、もはや相続を原因として取得するものではなく、当事者の自由な意思に基づく相続以外の原因による財産の取得ということになり、その態様に応じて贈与又は交換等が行われたものとし、贈与税又は所得税(譲渡所得等)の課税関係が生ずることとなります。 このことを直接的に明らかにしたものではありませんが、相続税基本通達では、相続税法第19条の2に規定する配偶者の税額軽減の規定の適用に関して、「当初の分割により共同相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再分配した場合には、その再分配により取得した財産は、同項(筆者注:相続税法第19条の2第2項)に規定する分割により取得したものとはならないのであるから留意する。」と定め、相続税法の適用において、遺産分割のやり直しにより財産の移転があった場合には、相続とは別の原因による財産の移転として取り扱うことを示しています(相基通19の2-8ただし書き)。 〇平成12年1月26日東京高裁判決 (相続税更正処分取消等、贈与税決定処分取消等請求控訴事件・税務訴訟資料246号205頁) もっとも、上記1で述べたように遺産分割のやり直しの原因や経緯は個々の事例ごとに千差万別であり、共同相続人間の意思に従いその態様に応じた課税を行う以上、当初の遺産分割協議後に生じたやむを得ない事情によって当該遺産分割協議が合意解除された場合などについては、合意解除に至った諸事情から贈与又は交換の有無について総合的に判断する必要があるといえるでしょう(『平成27年版 相続税法基本通達逐条解説』326頁(野原誠編・大蔵財務協会))。 4 質問の場合 ご質問の場合、遺産分割協議が調った後に、お兄様の事業が思わしくなくなり、事業の運転資金にも不自由するようになったことから、その支援しようとの趣旨で、遺産分割協議により取得した国債をお兄様に渡したいというものです。遺産分割のやり直しに至った経緯その他の諸事情を総合的にみても、特段のやむを得ない事情があるとは考えられません。 したがって、名目は遺産分割のやり直しということではあっても、その実態は、質問者に有効に帰属している国債を、共同相続人全員の同意を経て、質問者の新たな意思表示によりお兄様に移転するものであって、もはや相続とは切り離された取引であるといえます。 そうしますと、質問者からお兄様が移転を受ける国債は、お兄様が贈与により取得したものと認められますので、お兄様には贈与税が課されることとなります。 (了)
高額特定資産を取得した場合の 納税義務の免除の特例及び簡易課税制度の特例 【第2回】 「高額特定資産を取得した場合」 アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 本改正は、高額特定資産に係る特例規定(納税義務の免除の特例及び簡易課税制度の特例)であるが、その資産を取得(購入等)したものか、自ら建設をしたものなのかで取扱いが異なる。以下、2つに区分して解説していく。 今回は「高額特定資産を取得した場合」について確認する。 ① 高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例 事業者(免税事業者を除く)が、簡易課税の適用を受けない課税期間中に高額特定資産の仕入れ等(注1)を行った場合には、高額特定資産の仕入れ等を行った日の属する課税期間の翌課税期間からその仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、納税義務は免除されない。 (注1) 国内における高額特定資産(棚卸資産及び調整対象固定資産のうち、その価額が1,000万円以上のもの)の課税仕入れ又は課税貨物の保税地域からの引取りをいう。 (注2) 上記の課税資産の譲渡等からは、特定資産の譲渡等を除く。 ② 高額特定資産を取得した場合の簡易課税制度選択届出書の提出の制限 簡易課税の適用を受けようとする事業者が、高額特定資産の仕入れ等を行った場合には、その仕入れ等の日の属する課税期間の初日からその初日以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間は、簡易課税制度選択届出書を提出することができない。 ③ 留意事項 (イ) 適用開始時期 平成28年4月1日以後に高額特定資産の仕入れ等を行った場合に適用される。 (ロ) 経過措置 平成27年12月31日までに締結した契約に基づき、平成28年4月1日以後に高額特定資産の仕入れ等を行った場合には、上記①及び②の規定は適用されない。 (ハ) 高額特定資産を売却等した場合の取扱い 上記①及び②の規定は、事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に高額特定資産の仕入れ等を行った場合に適用されるのであるから、その後に当該高額特定資産を廃棄、売却等により処分したとしても、適用されることに留意する。 (ニ) 高額特定資産の支払対価 資産が高額特定資産に該当するかどうかを判定する場合における課税仕入れに係る支払対価の額とは、当該資産に係る支払対価の額をいい、当該資産の購入のために要する引取運賃、荷役費等又は当該資産を事業の用に供するために必要な課税仕入れに係る支払対価の額は含まれない。 (ホ) 共有に係る高額特定資産 事業者が他の者と共同で購入した資産が高額特定資産に該当するかどうかを判定する場合において、高額特定資産の支払対価の額が1,000万円以上であるかどうかについては、その事業者の共有物に係る持分割合に応じて判定する。 -具体例- 平成28年度の税制改正により、高額特定資産の仕入れ等を行った場合には、その仕入れ等を行った課税期間を含めた3年間は「課税事業者、かつ、原則課税」となる。なお、この期間内で資産を売却しても継続して適用される。 (了)