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商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用・申告のポイント 【第2回】「認定支援機関等からのアドバイスを受けた旨を明らかにする書類」

商業・サービス業・農林水産業活性化税制の 適用・申告のポイント 【第2回】 「認定支援機関等からのアドバイスを受けた旨を明らかにする書類」   税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 石田 寿行   商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、中小企業者等が、認定経営革新等支援機関や認定経営革新等支援機関に準ずる法人(以下「認定支援機関等」という)からアドバイスを受け、そのアドバイスの中で経営の改善に資する資産であるとして指導及び助言を受けた器具及び備品又は建物附属設備を取得、製作又は建設(以下「取得等」という)して、指定事業の用に供した場合に、認定支援機関等からのアドバイスを受けた旨を明らかにする書類の写しを納税申告書に添付することで、30%の特別償却又は7%の税額控除が受けられるものである。 そのため、適用を受けるためには、「認定支援機関等からのアドバイスを受けた旨を明らかにする書類」の写しを申告書に添付することが必要となる。今回はこの添付書類の作成に関する留意点について解説していく。   1 申告書に添付する書類の記載事項 添付書類には、以下のような事項が記載されていることが求められている。 なお、書類の作成は、税制措置の適用を受けようとする中小企業者等、認定支援機関等のどちらでも行うことができるが、②~⑤については認定支援機関等側での記載が求められている。   2 書類の書式 書類の書式については、上記1の記載事項があれば自由であり、特段形式が定まっているわけではないが、認定支援機関等の氏名、名称などの記載には必ず押印する必要がある。また、認定支援機関等が法人の場合の代表者氏名は、法人の登記上の代表者の氏名を記入する必要がある。 この場合の押印は、認定支援機関の支部組織等であれば、支部組織、部署名の名称の印でも問題ないが、必ず認定支援機関のどの機関に該当するかわかるようにする必要がある。例えば「A商工会議所B支部」の場合、「B支部」だけではなく、「A商工会議所」という名称も記載する必要がある。 また、取得等をしようとする設備、取得等をした設備の明細の記載については、申告時に、書類に記載されたものと、申告書に添付する明細書との整合、その設備が本税制措置の対象の設備となるかどうかのチェック等がされることになる。 そのため、認定支援機関等で設備の明細を書類に記載する場合、一般的な商品名(例えばパソコン、レジスター、冷凍ショーケースなど)に加えて、明細書に記載することになる「対象資産の種類等」の記載とそろえるため、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(耐用年数省令)を基にして、 などを記載する必要がある。加えて、取得等をしようとする設備が経営の改善に資することを書類上、明らかにする必要がある。 アドバイスを行った日が複数日にわたる場合に、例えば、平成27年6月1日、6月15日、6月30日にアドバイスをした場合、それぞれの日を併記することも、「平成27年6月1日から1ヶ月」のような記載も可能である。   3 その他の留意点 (1) アドバイス記録の管理 認定支援機関等は中小企業者等にアドバイスを行った後、アドバイスの記録を残す必要がある。特段、記録簿等を備えつける必要はないため、中小企業者等に渡した書類のコピーの保存でも可能である。法人税については9年間、所得税については5年間の更正期間があるため、それぞれの期間中はアドバイス記録を保存しておくことが望ましいと考えられる。 (2) 認定経営革新等支援機関が書類を発行する場合 認定経営革新等支援機関が記名押印した書類を発行する場合の、その書類における認定支援機関等の名称等については、経済産業局長等からの認定通知書に記載された名称等を記載する必要がある。   4 書類の記入例 書類の記入例を示すと以下のとおりである。なお書式イメージのワードデータについては中小企業庁ホームページ(こちら)から入手することができる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (追記2015/10/28) 上記記入例のうち、年度表記に誤りがありましたので修正いたしました。 (了)

#No. 141(掲載号)
#石田 寿行
2015/10/22

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第37回】「電算機計算の特例による場合の所得税及び復興特別所得税の処理」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第37回】 「電算機計算の特例による場合の 所得税及び復興特別所得税の処理」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   当社では、給与計算の際、平成27年分源泉徴収税額表により所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しています。平成27年分源泉徴収税額表によらず、電算機計算の特例により所得税及び復興特別所得税を源泉徴収できるそうですが、どのような特例なのかよくわかりません。 電算機計算の特例による場合の所得税及び復興特別所得税の処理についてご教示ください。   1 概要 電算機計算の特例とは、給与計算をパソコンなどの事務機械によって処理している場合には、下記2の者に対して支給する下記3の給与・賞与について、財務大臣が定める方法(財務省告示)により所得税及び復興特別所得税を源泉徴収できる特例をいう。 2 対象者 「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社へ提出している者(甲欄適用者) 3 対象になる給与・賞与 支給期が毎月、毎半月、毎旬又は月の整数倍の期間ごとと定められている給与 前月中に通常の給与を受けていない者に支払う賞与 前月中の通常の給与の10倍を超える賞与 4 計算方法 所得税及び復興特別所得税は給与計算ソフトにより自動計算される。具体例を用いて計算過程を解説する。 (1) その月の社会保険料等控除後の給与等の金額を計算する その月の社会保険料等控除後の給与等の金額=役員報酬700,000-(健康保険35,394円+厚生年金55,267円)=609,339円 (2) 第1表より、給与所得控除の額を計算する 給与所得控除の額=その月の社会保険料等控除後の給与等の金額609,339円×10%+100,000円=160,934円(1円未満切上) (3) 第2表より、配偶者控除の額、扶養控除の額、基礎控除の額を計算する 基礎控除の額:31,667円 (4) その月の課税給与所得金額を計算する その月の課税給与所得金額=(1)-((2)+(3))=416,738円 (5) 第3表より、源泉徴収する所得税及び復興特別所得税を計算する 源泉徴収する所得税及び復興特別所得税=その月の課税給与所得金額416,738円×20.42%-36,374円=48,720円(10円未満四捨五入) (出典:国税庁ホームページ「月額表の甲欄を適用する給与等に対する税額の電算機計算の特例について(平成27年分)」) 5 平成27年分源泉徴収税額表との差異 下記表によると、その月の社会保険料等控除後の給与等の金額609,339円、かつ、扶養親族等の数0人の場合、源泉徴収する所得税及び復興特別所得税は48,750円である。 上記4の48,720円と30円差異が生じるが、年末調整により精算されるため問題ない。 表 平成27年分源泉徴収税額表(一部抜粋) (出典:国税庁ホームページ「給与所得の源泉徴収税額表(平成27年分)」) (了)

#No. 141(掲載号)
#上前 剛
2015/10/22

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第38回】サンリン株式会社「社内調査委員会調査報告書(平成27年9月10日付)」

  〔会計不正調査報告書を読む〕 【第38回】 サンリン株式会社 「社内調査委員会調査報告書(平成27年9月10日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【調査委員会の概要】   【サンリン株式会社の概要】 サンリン株式会社(以下「サンリン」と略称する)は、1934(昭和9)年12月設立のエネルギー関連商社。連結売上高32,121百万円、連結経常利益1,134百万円(数字はいずれも平成27年3月期)。従業員数492名。本店所在地、長野県東筑摩郡。JASDAQ上場。   【調査報告書のポイント】 1 不正行為が発覚した経緯 8月3日付リリースによれば、不正行為は、監査法人による四半期レビューの過程において端緒が発見され、ヒアリング・裏付け調査の結果、発覚したものである。   2 調査委員会の構成 調査委員会の概要に記したとおり、サンリンは、従業員不正行為の調査にあたり、第三者委員会ではなく、社外監査役である弁護士を委員長とした社内調査委員会を組成している。この方針に関し、8月3日付けリリースは次のように説明している。   3 調査報告書により判明した事実 (1) 従業員による不正行為の手口 不正行為の当事者である従業員は、当初、自身の前勤務先であり、また、サンリンと取引関係にある、父親が経営する有限会社A商店(以下「A商店」という)の請求書と領収書を偽造することにより、請求代金を支店の手許現金から支払わせ、着服を繰り返していた。 支店には「買掛金諸口支払」という制度(サンリンの電算システムに仕入先コードを設けず、単発のスポット取引を処理する方法)を悪用したものではあったが、手口としては単純であり、また着服金額も比較的少額だった(平成21年9月~平成23年9月)。 (2) 巧妙化する不正行為の手口 平成23年10月以降、架空仕入の対象を小口の請負工事からリフォーム工事・太陽光発電設備工事へと広げ、着服金額も大きくなっていく。 その結果、サンリンが業績分析指標としている差益率(売上高に対する売上総利益の割合)が悪化するため、架空仕入を未完成の工事原価(棚卸資産)に計上して、売上原価の調整を図ることとなる。 しかし、この方法では棚卸資産残高が増加するため、架空売上を計上して架空の棚卸資産をその売上原価として処理し、架空売上に係る売掛金の回収には新たな架空仕入の計上により着服した金員を流用するようになり、一気に不正行為の金額が増加することとなった。 (3) 不正行為の全容   4 有価証券報告書の訂正報告書 9月11日に提出された有価証券報告書の訂正報告書には、訂正の経緯及び会計処理として、次のような記述がある。 訂正された平成27年3月期有価証券報告書によれば、連結貸借対照表関係の注記として、不正行為に関連して発生したものとして、「長期未収入金」が154百万円計上され、同額の貸倒引当金が設定されている。同じく、連結損益計算書に関する注記として、同期の貸倒引当金繰入額69百万円が営業外費用として計上されていることが記載されている。   5 再発防止に向けた改善策(調査報告書p.43以下) 調査委員会が指摘した改善策の概要は以下のとおりである。 とりわけ紙数を割いているのが、社内ルールの不備に対する提言である。 不正行為の当事者が行った架空仕入・架空売上の計上は、買掛金諸口支払制度が悪用され、内務担当者が郵送すべきであると定めた請求書郵送ルールの例外を認めてしまい、未整備であった新規口座開設ルールや未完成工事分棚卸資産の現地確認ルールの不備などが発覚を遅らせたものといえ、こうした原因に対処するための提言としては現実的なものとなっている。また、ルールの遵守状況に対するモニタリングについても、各部門の役割が記述されており、提言内容に沿った施策をとることは、再発防止に効果があるものと評価する。 それに引き換え、少し物足りなく感じるのは「リスクマネジメント体制の再構築」としてまとめられた項目である。 「監査等による不正行為把握の可能性(p.41)」の中で、調査委員会は、以下のように指摘している。 であるとすれば、なぜ、異常値が検知できなかったのか、異常値を検知するために監査部門はどうあるべきかといった視点での改善策が提言されるべきではないのか、というのが筆者の印象である。   6 調査報告書の特徴 (1) 厳しい責任追及(p.42) 不正行為の当事者については、調査の結果から、「単独犯行と断定」でき、「一義的には、全責任を当事者が負うべきものである」と断罪したうえで、社内規程により懲戒解雇処分とするとともに、可及的速やかに「業務上横領容疑にて刑事告訴を行う」こととしている。 当事者の上司である、現支店長、前支店長については監督責任を負う立場にありながら適切な管理を行わず、今回の事態を招いたとして、社内規程に基づき「降格」処分とすることが記されている。 さらに、支店および本社関連部署の関係者についても、 社内規程等諸規則の把握に努めるべきであったこと 支店等からの報告を含め計数管理を行う立場にあったこと にもかかわらず、適正な管理業務に関し、過失があったとして、社内規程による懲戒処分とすることが記されている。 なお、調査報告書は、取締役等の責任については触れていないが、9月10日付リリースでは、代表取締役以下取締役および常勤監査役は「経営責任を明確にするため」月額報酬の一部を自主返納することとしている。 (2) 自店内親族取引 調査委員会による再発防止策の中の「社内ルール事案に対する改善策(p.43)」には、 という、他社には見られない施策が提言されている。 不正行為の当事者が利用したのは、サンリン入社前に自らも勤務していたA商店であり、経営者は当事者の父であった。不正の手口で見てきたように、当事者は父の経営するA商店からの仕入を装って請求書を発行しあるいはA商店に対する売上を架空計上して棚卸資産残高の増加を防ぎ、不正の発覚を免れてきた。 サンリンの取扱品目がLPガスや石油製品の販売、リフォーム事業であることから、社員およびその親族との取引が発生することはやむを得ないことであろうが、少なくとも、社員の親族が経営する会社との取引に関しては何らかのルールを設けておくべきであった。 A商店の経営者が当事者の父であったことを当事者の上司である支店長が知っていたかどうかは報告書に記載がないので不明であるが、知らなかったということであれば、与信管理上問題であるし、知っていて放置していたとすれば、支店長としての任務を果たしていたとは言えないことになろう。 (3) ギャンブル依存症と不正 筆者が本事例に興味を持ったのは、「当事者」と称されている社員が、「競馬に対し、ギャンブル依存症というレベルまでのめりこんでいた」という調査委員会の評価をその一因としている。 競馬で借金がかさんだ挙句、平成20年3月には個人再生手続を裁判所に申し出て、平成23年8月に返済が完了した、ということもあり、彼のギャンブル依存症は、少なくとも、家族は知っていたのではないか、同僚のうちにも知っている人間がいたのではないかと思うのだが、そうした調査が行われたかどうかは不明である。 ギャンブルによる不正というと想起されるのは、大王製紙事件であるが、精神科医の帚木蓬生氏は、ギャンブル依存を次のように説明している、 (出典) 帚木蓬生『やめられない-ギャンブル地獄からの生還』(集英社、2010年) 調査結果によれば、「当事者」である社員の着服額は、平成25年から一気に増加している。これは、もしかすると、彼のギャンブル依存が進行し、少額の賭けでは満足できない精神状態に陥っていたことに起因しているのかもしれない。 そうした可能性が排除できないのであれば、社員のメンタルヘル対策として、提携した医療機関でカウンセリングを受けられるような仕組みを整えることも、再発防止策として有効なのではないだろうか。 早い段階、たとえば本事例の場合、平成24年までに、不正行為を発見するなり、彼のギャンブル依存症に気づくことができれば、懲戒解雇したうえで刑事告訴という最悪の結末は迎えなくても済んだのではないかという点から考えても、不正の早期発見のための施策は、会社の損失を防ぐためだけに必要なものではなく、従業員を守ることにもつながることを強調しておきたい。 (了)

#No. 141(掲載号)
#米澤 勝
2015/10/22

金融商品会計を学ぶ 【第13回】「時価のある有価証券の減損処理」

金融商品会計を学ぶ 【第13回】 「時価のある有価証券の減損処理」   公認会計士 阿部 光成   今回より、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)に規定する「有価証券の減損処理」について解説する。 本稿では、「時価のある有価証券」の減損処理を対象とする。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 有価証券の減損処理 1 減損の用語 「有価証券の減損」とは、評価差額が純損益に計上される売買目的有価証券以外の有価証券に係る時価又は実質価額の著しい下落に伴って、当該時価又は実質価額を翌期首の取得原価とするために、取得原価を強制的に切下処理し、当該切下額を当期の損失として認識すべき場合を指す用語である(金融商品実務指針283-2項)。 2 減損処理の規定 金融商品会計基準及び金融商品実務指針は、有価証券の減損処理の会計処理について、次の図表のように規定している。 金融商品会計基準は、「時価が著しく下落した場合」の会計処理について、市場価格の有無に係わらせて、従来の考え方を踏襲して規定しているため、ここでのポイントは、時価のあるものかどうかにわけて理解するところにあると解される(金融商品会計基準83項)。 なお、社債その他の債券の会計処理については次回以降で述べる予定である。   Ⅱ 時価のある有価証券の減損処理 1 減損処理の規定 金融商品実務指針は、時価のある有価証券の減損処理について、次のように規定している(金融商品実務指針91項)。 上記によると、減損処理に関するポイントは次の事項である。 2 時価が著しく下落したとき 金融商品実務指針は、「著しく下落した」ときとは、必ずしも数値化できるものではないとしつつ、次のように規定している(金融商品実務指針91項)。 3 回復する見込みがあるとき 金融商品実務指針は、著しく下落した時価について、「回復する見込みがある」と認められる場合を次のように規定している(金融商品実務指針91項)。 回復する見込みがあると判断された銘柄以外の有価証券は、減損処理することになる(金融商品実務指針91項)。 上記によると、時価の回復可能性の判断のポイントは次の事項である。 4 株式の時価の回復可能性 株式の時価の回復可能性に関する判断のポイントは次のとおりである(金融商品実務指針91項、284項)。 上述の③は、通常回復する見込みが少ないと一般的に考えられる例示である。 このため、十分な根拠に基づいて反証することができ、その例示として次のことが挙げられている(金融商品実務指針284項)。 *  *  * 次回は「時価を把握することが極めて困難と認められる株式・債券」の減損処理について解説する。 (了)

#No. 141(掲載号)
#阿部 光成
2015/10/22

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第98回】外貨建取引⑦「在外子会社の換算」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第98回】 外貨建取引⑦ 「在外子会社の換算」   仰星監査法人 公認会計士 上村 治   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 決算時の米国子会社の財務諸表の換算結果は以下のとおりとなります。なお、収益及び費用の換算は期中平均為替レート(原則処理)によっています。 (※1) 収益、費用及び当期純利益は期中平均為替レートで換算 (※2) 親会社との取引は取引発生時の為替レートで換算 (※3) 円建金額の貸借差額 5,900+17,250-18,400-4,600=150 (※1) 資産及び負債は決算時の為替レートで換算 (※2) 親会社による株式取得時の為替レートで換算 (※3) 損益計算書で計算された当期純利益 (※4) 円建金額の貸借差額 24,000-7,200-10,000-4,600=2,200   〈会計処理の解説〉 1 在外子会社の換算手順 在外子会社財務諸表の換算の手順は以下のとおりです。 2 損益計算書の換算方法 収益及び費用については、会計期間を通して発生するものであるため、原則として期中平均為替レートにより換算します。ただし、決算時の為替レートにより換算することも認められています。 なお、親会社との取引による収益及び費用の換算については、親会社が換算に用いる為替レートにより換算します。これは、連結財務諸表を作成する際に取引高の相殺消去を行うためです。この場合に生じる差額は当期の為替差損益として処理します(外貨基準三.3.)。 事例では、親会社への売上があり、これについては取引時の為替レートは118円/ドルで換算し、その他の収益及び費用は期中平均為替レートである115円/ドルで換算(原則処理)します。換算する為替レートが複数あることから換算差額150円が生じ、この差額を為替差損とします。 3 貸借対照表の換算方法 資産及び負債については、決算時の為替レートにより換算します(外貨基準三.1.)。 純資産に係る項目は、取引発生時の為替レートで換算されます(外貨基準三.2.)。具体的には、親会社による株式の取得時における資本に属する項目については、株式取得時の為替レートにより換算し、親会社による株式の取得後に生じた利益剰余金は、利益剰余金の発生時の為替レート(当期純利益が発生した会計期間の損益項目を換算する為替レート)により換算します。 これにより生じた換算差額については、為替換算調整勘定として純資産の部に記載します(外貨基準三.4.)。 事例では、資産及び負債については決算時の為替レートである120円/ドルで換算し、資本金は設立時の為替レート100円/ドルで換算します。また、利益剰余金については、X1年3月期の損益項目を換算するレートである期中平均為替レート115円/ドルで換算します。 これにより貸借対照表の換算差額2,200円が生じますが、これを為替換算調整勘定とします。 (了) ※11月は1株当たり情報について取り上げます。

#No. 141(掲載号)
#上村 治
2015/10/22

[平成27年9月30日施行]改正労働者派遣法のポイント 【第4回】「特定労働者派遣事業区分の撤廃等」

[平成27年9月30日施行] 改正労働者派遣法のポイント 【第4回】 (最終回) 「特定労働者派遣事業区分の撤廃等」   特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ   最終回である第4回は、「特定労働者派遣事業区分の撤廃」や派遣労働者の処遇に関する事項等についてみていく。   1 特定労働者派遣事業区分の撤廃 (1) 2つの区分 改正前は、派遣事業は「特定労働者派遣事業」と「一般労働者派遣事業」の2つに区分されていた。 「特定労働者派遣事業」は、派遣元で常時雇用される労働者のみを派遣する事業で「届出制」とし、一度届出を行えばよく、更新の必要はなかった。一方、「一般労働者派遣事業」は、いわゆる登録型の派遣事業で、資産要件等の一定の基準を満たす必要がある「許可制」とし、3年ごとの更新が必要だった。 「特定労働者派遣事業」は、派遣労働者の雇用の安定が図られていることから、許可を受ける一般労働者派遣事業とは異なり「届出制」としていたが、実態としては必ずしも雇用が安定しているとは言えない状況にあった。なぜなら、派遣される常時雇用される労働者には、期間の定めがない者だけでなく、有期雇用を反復更新し1年超の雇用実績がある者や雇用見込みがある者も含まれていたため、契約期間満了で雇用契約が終了することもあったからだ。 また、特定労働者派遣事業を対象とする行政処分も多く、厚生労働省の資料によると、平成26年度に労働者派遣事業に改善命令や事業停止命令等の行政処分を行った件数は67件で、そのうち約9割にあたる60件が特定労働者派遣事業を対象としたものとなっていた。その中には、許可基準を満たせないために特定労働者派遣事業と偽り一般労働者派遣事業を実施している例もあったようだ。 (2) すべて「許可制」へ 改正後は、派遣事業の健全化を図るため、「特定労働者派遣事業(届出制)」と「一般労働者派遣事業(許可制)」の2つの区分が廃止され、すべて「許可制」となっている。 許可基準は、今回の改正を踏まえて、雇用安定措置やキャリアアップ措置を追加する等見直しが行われている。なお、許可基準のひとつである資産要件についてはこれまでと同じだが、小規模の派遣元については、次の基準については、次の暫定的な配慮措置が設けられている。 ① 現行基準 ② 小規模の派遣元に対する暫定的配慮措置 ◆1つの事業所のみを有する常時雇用する派遣労働者数(※2)が10人以下の事業主 ◆1つの事業所のみを有する常時雇用する派遣労働者数(※2)が5人以下の事業 (※1) 基準資産額とは、資産の総額から負債の総額を控除した額をいう。 (※2) 常時雇用している派遣労働者数は、過去1年間の月末における派遣労働者(日雇派遣労働者を含む)の平均人数をいう。 (3) 経過措置 施行日(平成27年9月30日)時点で特定労働者派遣事業を行っている派遣元については、施行日から3年間は、許可を受けることなく引き続き「派遣労働者が常時雇用される労働者のみである労働者派遣事業」を行うことが可能となる。 また、施行日(平成27年9月30日)時点で、一般労働者派遣事業の許可を受けて派遣事業を行っている派遣元も、当該許可の有効期間中はそのまま派遣事業を行うことが可能となる。   2 派遣労働者の処遇 派遣労働者の均衡待遇の強化等、派遣労働者の処遇に関して次の事項が変更となっている。 なお、「配慮しなければならない」(配慮義務)とある場合は、努力義務よりも強い責務が課されており、目的の実現に向けて具体的に取り組むことが求められる。 ① 待遇に関する説明義務  [派遣元] 派遣元は、改正前より、派遣先の労働者との均衡等を考慮して派遣労働者の賃金の決定や教育訓練等の必要な措置を講ずるよう配慮する義務があったが、改正後は、派遣労働者から求められた場合は、その際に考慮した事項を説明しなければならない。 ② 賃金に関する情報提供等  [派遣先] 派遣先は、派遣労働者の賃金が適切に決定されるようにするため、派遣元から求められた場合は、次の情報を提供するよう配慮しなければならない。 ③ 教育訓練の実施  [派遣先] 派遣先は、派遣先の労働者に対して業務関連の教育訓練を行う場合は、派遣元からの求めに応じて、既に必要な能力を有している場合や同様の訓練を派遣元で実施できる場合等を除き、派遣労働者に対しても実施するよう配慮しなければならない。 ④ 職務関連の情報提供 [派遣先] 派遣先は、派遣元からの求めに応じて、派遣労働者の職務遂行状況や職務遂行能力の向上度合に関する情報を提供するよう努めなければならない。 ⑤ 福利厚生施設の利用  [派遣先] 派遣先は、派遣労働者に対して、派遣先の労働者が利用している福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)の利用の機会を与えるように配慮しなければならない。   3 その他 その他の変更事項として、次のものがあげられる。 ① 事業報告書の提出期限等  [派遣元] 「労働者派遣事業報告書」の提出期限は、改正前は毎事業年度の終了日から1ヶ月以内であったが、改正後は毎年6月30日に統一されている。 また、事業報告書の記載事項に、雇用安定措置の実施状況やキャリアアップ措置の実施内容等が追加されている。 ② 記載すべき事項の追加等 新しい期間制限の考え方への変更や雇用安定措置の強化等により、次の書面等に記載すべき事項等が変更されている。 ③ 派遣元責任者の基準   [派遣元] 派遣元責任者の基準に、過去3年以内に派遣元責任者講習を修了していることが追加されている。なお、これは「一般労働者派遣事業」においては改正前も求められていた事項となる。 ④ 社会保険に関する事項  [派遣元] 社会保険の適用促進を図るため、次の事項が変更されている。   連載終了にあたって 以上、4回にわたり改正労働者派遣法のポイントをみてきたが、今回の改正には、これまでの考え方を刷新する大幅な変更が含まれていることをご理解いただけたであろう。 本稿では、関連する「法律」、「政令」、「省令」の情報を中心にご紹介したが、派遣元・派遣先それぞれにおいて自社に合わせた対応が必要であり、本稿がそれを行う上での一助になれば幸いである。 なお、実務の場面では、「業務取扱要領」等で詳細情報の確認が必要となるため、そちらも参照されたい。 (連載了)

#No. 141(掲載号)
#岩楯 めぐみ
2015/10/22

中小企業事業主のための年金構築のポイント 【第15回】「遺族給付(1)」-遺族基礎年金・寡婦年金・死亡一時金-

中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第15回】 「遺族給付(1)」 -遺族基礎年金・寡婦年金・死亡一時金-   特定社会保険労務士 佐竹 康男   前回までは「老齢の給付」について解説を行ってきたが、今回から遺族年金等の「遺族の給付」について解説する。   1 遺族給付の全体像 (1) 遺族給付の種類 遺族給付の種類として、国民年金から「遺族基礎年金」、「寡婦年金」、「死亡一時金」が、厚生年金保険からは「遺族厚生年金」が支給される。 (2) 遺族給付の種類と遺族の範囲 遺族給付は、死亡した人が加入していた年金制度と遺族の範囲により受給者が決定される。たとえば、夫が死亡した場合における遺族の範囲と遺族年金等の種類は次のようになる。   2 遺族基礎年金 「遺族基礎年金」は、国民年金に加入していた人が死亡したときに、配偶者又は子に支給されるものである。 (1) 遺族基礎年金を受給するための要件 遺族基礎年金は、国民年金の被保険者又は被保険者であった人が次のいずれかに該当する場合に、一定の要件を満たすその人の配偶者又は子に支給される。 ただし、上記①又は②に該当するときは一定の保険料の納付が必要である。 「一定の保険料の納付」とは、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの国民年金の加入期間があるときは、その加入期間のうち、保険料の未納の期間が3分の1以下でなければならない。 ただし、特例により、死亡日が平成38年3月末までのときは、死亡した人が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納期間がないのであれば、保険料の納付要件を満たす。 〈事例1〉 国民年金の加入期間24年のうち、未納期間は18年になり、加入期間の3分の1を超えるが、死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納期間がないので、保険料の納付要件を満たす。 (2) 遺族の範囲 遺族基礎年金を受給することができる遺族は、被保険者又は被保険者であった人の死亡当時、その人によって生計を維持していた配偶者又は子である。 生計を維持されていたとは、関係にあった死亡当時に、その死亡した人と生計を同一にしていた人で、年収850万円以上の収入を将来にわたって得られない人が該当する。 ① 配偶者についての条件 死亡した人の配偶者であって、②に該当する子と生計を同じくこと。 ② 子についての条件 18歳の年度末までの間にある子又は1、2級の障害の状態にある20歳未満の子で現に婚姻していないこと。 〈事例2〉 妻には子がいるが18歳未満ではないので、妻又は子には、遺族基礎年金は支給されない。 (3) 遺族基礎年金の年金額 遺族基礎年金の額は、子の数による定額制である。 ① 配偶者に支給されるとき 配偶者に支給される場合は、子のある配偶者でなければならないため、必ず子の加算額が加算される。 [780,100円(平成27年度価格)+子の加算額] ② 子に支給されるとき   3  寡婦年金 「寡婦年金」は、夫が老齢基礎年金を受給する前に死亡したときに、65歳未満の妻に支給されるものである。 (1) 受給するための要件 寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間又は保険料免除期間が25年以上ある夫が死亡した場合に、生計維持されていた妻との婚姻期間が10年以上継続していたときに、その妻が60歳になったときから65歳まで支給される。 なお、夫が死亡したときに妻が60歳以上のときには、夫が死亡したときから65歳になるまで支給される。 夫が老齢基礎年金を受給していたときは、寡婦年金は支給されない。 (2) 年金額 寡婦年金の額は、夫の死亡日の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に基づき計算される老齢基礎年金の額の4分の3である。 〈事例3〉 死亡した夫は、厚生年金保険に20年加入(国民年金では第2号被保険者)しているが、国民年金の第1号被保険者としての被保険者期間が25年ないため、妻に寡婦年金は支給されない。 一般的に厚生年金保険の加入期間が長い人は、第1号被保険者として被保険者期間25年以上を満たすことは困難であるため、寡婦年金が支給される可能性は低い。   4 死亡一時金 (1) 受給するための要件 第1号被保険者としての保険料納付済期間の月数等が36月以上ある人が死亡した場合には、一定の遺族に「死亡一時金」が支給される。 死亡した人が、老齢基礎年金又は障害基礎年金を受給した場合には支給されない。 また、遺族基礎年金が支給される場合、死亡一時金は、原則として支給されない。 (2) 遺族の範囲 年齢を問わず、死亡した者と生計を同じくしていた①配偶者 ②子 ③父母 ④孫 ⑤祖父母 ⑥兄弟姉妹である。 このうち受給できる人は、この順位の最先順位者である。 (3) 死亡一時金の額 死亡一時金の額は、納付した保険料の月数により、一時金として12万円から32万円である。   《おさらいQ&A》 (了)

#No. 141(掲載号)
#佐竹 康男
2015/10/22

養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第10回】「渉外離縁手続」

養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第10回】 「渉外離縁手続」   弁護士・税理士 米倉 裕樹   [1] はじめに 養親、養子のいずれかが外国人である場合に離縁手続を行うに当たっては、日本国の裁判所で解決することができるか(日本の裁判所に国際裁判管轄があるかどうか)、仮に日本の裁判所に国際裁判管轄があるとして、日本法が適用されるかどうか(準拠法が日本法かどうか)が問題となる。 そこで今回は、国際裁判管轄、準拠法に関する考え方を紹介した上で、準拠法が外国法となる場合に問題となる点についても触れる。 なお、外国人との養子縁組と戸籍・国籍への影響については【第6回】を参照されたい。   [2] 国際裁判管轄 渉外(しょうがい)離縁の国際裁判管轄については、明文の規定が存在しないため、条理に基づいて決定される。 この点、最高裁昭和39年3月25日判決では、国際離婚に関する事案に関し、原則として被告の住所地国に管轄があるものの、例外的に①原告が遺棄された場合、②被告が行方不明である場合、③その他これに準ずる場合には、原告の住所地に国際裁判管轄が認められるとしている。 そのため、国際離縁においても、国際離婚での国際裁判管轄に準じて国際裁判管轄の有無が認められると考えられる。   [3] 準拠法 渉外離縁の準拠法は、養子縁組の当時における養親の本国法である(法通則31②・①前段)。したがって、養子縁組成立当時にA国籍を有していた養親が、その後、帰化等により日本国籍を有するに至ったときでも、離縁の準拠法はA国の法律となる。 渉外離縁は、渉外離婚とは異なり、反致(法通則41)の適用がある。 「反致」とは、国際裁判管轄を有するA国の国際私法によればB国法が準拠法となるものの、B国の国際私法によればA国法が準拠法となる場合に、B国法の国際私法を考慮して、A国法を準拠法とすることをいう。 そのため、日本の国際私法である法の適用に関する通則法第31条第2項、同条第1項前段に従い、養子縁組の当時における養親の本国法が準拠法となるものの、養親の国際私法によれば日本法が準拠法となる場合には、反致により日本法が準拠法となる。 例えば、養親が日本に住所を有する外国人である場合、養親の本国法が準拠法となるものの、養親の本国法が離縁につき養親の住所地法を準拠法として指定している場合には、日本法が適用される。 準拠法が日本法となれば、離縁の拒否、方法、効力、養親の血族との親族関係の終了、実方の血族等との親族関係の復活等、すべて日本法により決せられることとなる。   [4] 手続 1 準拠法が「日本法」である場合 養親が日本国籍の場合には、渉外離縁の準拠法は日本法となる。その場合、日本の民法に従い、普通養子縁組であれば協議離縁が可能である(民811①)。 もっとも、協議離縁を認めている国は韓国、台湾など限られていることから、養親・養子両者の本国法を確認した上で、いずれかの本国法で協議離縁が認められていない場合には、片面的法律関係の発生を防ぐため、調停離縁、審判離縁、または裁判離縁の手続によって離縁するのが望ましい。なお、特別養子縁組の離縁は日本の民法でも審判離縁によってのみなされることから(民817の10②)、協議離縁は認められない(【第8回】参照)。 離縁の方式は、離縁の成立に関する準拠法、または行為地法である(法通則34)。したがって、養親が日本国籍を有していなくとも、行為地である日本で届出を行う場合には、通常の協議離縁届出と同様に、市区町村に備え付けられている養子離縁届を用いる方式により離縁を行うことが可能である。 養親または養子の一方が協議離縁に応じない場合には、国際裁判管轄が日本にあることを前提に、家庭裁判所に離縁調停の申立を行い、調停が成立しない場合には、家庭裁判所に離縁訴訟を提起することになる。 2 準拠法が「外国法」である場合 (1) 準拠法が協議離縁を認めている場合 準拠法が外国法となる場合であっても、当該外国法が協議離縁を認めている場合(韓国・中華民国(台湾)など)には、協議離縁が可能である。 離縁の方式は、縁組当時の養子の本国法で定める方式、または日本法で定める方式に従う(法通則34)。したがって、外国人の養親が日本で離縁するときには、市区町村長に養子離縁届を提出することが可能である。 その際、準拠法上、協議離縁が認められることを証する本国官憲発給の要件具備証明書または出典を明示した法文の写し及びその訳文(戸則63の2)を添付する。 (2) 準拠法が裁判離縁しか認めていない場合 準拠法たる外国法が裁判離縁しか認めていない場合に、日本において調停離縁または審判離縁を行うことができるかが問題となるが、家庭裁判所の実務では調停離縁を認めたものも存在し、戸籍実務においても、アメリカ人(オハイオ州)と日本人未成年者との間の日本の裁判所における調停離縁に基づく離縁届を受理して差し支えないとした例が存在する(昭和44年11月25日民甲1436号民事局長回答)。 しかし、日本にいて調停離縁や審判離縁を行ったとしても、当該外国において裁判離縁と同様の効力を有するとは限らない。そのため、事前に外国公館等への照会等を行い、日本における調停離縁や審判離縁が外国においても有効と認められるかどうか調査・確認する必要がある。 (3) 準拠法が離縁を認めていない場合 準拠法たる外国法が離縁自体を認めていないときでも、その適用が日本の公序に反するときには、外国法の適用が排除される(法通則42)。外国法が準拠法として決定される場合に、その外国法の適用が公の秩序に反する場合には、その外国法は適用されないとする国際私法上の法則に基づくものである。 外国法の適用が排除された後に当然に日本法が適用されるかどうかに関し、水戸家昭和48年11月8日審判、那覇家昭和56年7月31日審判では、改正前の法例第33条(現在の法の適用に関する通則法第42条に相当する)に基づいて外国法の適用を排除し、日本法を適用することで離縁を認めている。 もっとも、仮に日本法に基づき離縁できたとしても、当該外国法においてその効力が認められるかどうかは別途問題となりえる。   [5] 子の復氏 戸籍実務では、外国人の養親と日本人の養子が養子縁組をした場合の子の氏については、子の本国法によるものとされている。そのため、養子縁組がなされても、当然には氏の変更は生じない(昭和23年12月14日民甲2086号民事局長回答、昭和26年12月28日民甲2424号民事局長回答)。したがって、離縁しても当然に復氏することはない。 (了)

#No. 141(掲載号)
#米倉 裕樹
2015/10/22

現代金融用語の基礎知識 【第23回】「特設注意市場銘柄」

現代金融用語の基礎知識 【第23回】 「特設注意市場銘柄」   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 特設注意市場銘柄とは 特設注意市場銘柄制度とは、上場会社が有価証券報告書等に虚偽記載(いわゆる粉飾決算など)を行った場合等であって、その上場会社の内部管理体制等の改善の必要性が高いと認められるとき(下図〈特設注意市場銘柄に指定されるケース〉参照)、証券取引所がその上場会社を特設注意市場銘柄に指定するという制度である(東京証券取引所・有価証券上場規程(以下「上規」という)501条1項)。最近では東芝が平成27年9月15日に特設注意市場銘柄に指定されたところである。 上場会社は、特設注意市場銘柄への指定後1年を経過したときに、証券取引所による内部管理体制等の審査を受け、内部管理体制等が改善されている場合は、指定を解除されるが、改善されておらず、今後の改善も見込まれない場合は、上場廃止とされる(上規501条2項から4項1号、601条1項11号の2c)。ただし、特設注意市場銘柄への指定後1年が経過する前であっても、内部管理体制等の改善の見込みがなくなったと証券取引所が認めた場合は、上場廃止とされる(601条1項11号の2b)。 なお、特設注意市場銘柄への指定後1年を経過したときに、内部管理体制等が改善されていないものの今後の改善が見込まれる場合は、6ヶ月間、特設注意市場銘柄への指定が延長される(上規501条4項2号)。そして、改善状況が確認され、改善されれば指定解除となり、改善されなければ上場廃止となる(上規501条5項から7項、601条1項11号の2e)。ただし、この場合も、延長された6ヶ月間が経過する前であっても、内部管理体制等の改善の見込みがなくなったと証券取引所が認めた場合は、上場廃止とされる(601条1項11号の2d)。 このように、特設注意市場銘柄制度とは、上場会社の内部管理体制等の改善の必要性が高いと認められるとき、一定期間、特設注意市場銘柄に指定して、上場廃止にすべきか否かを審査する制度だといえる。   2 上場廃止基準の明確化とともに制度化 この特設注意市場銘柄制度は、平成25年8月に制度改正されて、現在の形になっているのだが、その制度改正の際、上場廃止基準の明確化も同時に行われた。それまでは、上場会社が有価証券報告書等に虚偽記載を行った場合等で、その影響が重大であると証券取引所が認めたときに上場廃止にするとされていたが、その基準は不明確であるという批判があった(ライブドアは上場廃止になったのに、なぜオリンパスは上場維持?)。 そのため、虚偽記載等により直ちに上場廃止とされるのは、①直ちに上場廃止としなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかなとき(上規601条1項11号)(注)と、②特設注意市場銘柄に指定することができる場合で、内部管理体制等について改善の見込みがないと認められるとき(上規第601条第1項第11号の2a)、の2つに限定され、それ以外で上場会社の内部管理体制等の改善の必要性が高いと認められるときは、特設注意市場銘柄に指定して、上場廃止にすべきか否かを審査することにしたのである。 したがって、現在では虚偽記載等により直ちに上場廃止とされるケースはほとんどなくなり、そうした場合はまず一旦特設注意市場銘柄に指定されるようになっている。しかし、直ちに上場廃止とされなかったとしても、上場廃止を免れたわけではなく、特設注意市場銘柄に指定された後の審査を通過しなければ、上場廃止とされてしまう。現に、これまで、特設注意市場銘柄に指定された後、上場廃止とされた上場会社がある。 平成25年8月の制度改正は、上場会社に対する規制の緩和ではなく、あくまで強化である。改正前の特設注意市場銘柄制度において特設注意市場銘柄に指定されたのは、上図〈特設注意市場銘柄に指定されるケース〉の①と②のケースのみだったのだが、改正により③から⑤のケースが加えられた。改正前であれば上場廃止の対象となることはなかった上場会社も、上場廃止の対象とされるようになったのである。 (注) 「直ちに上場廃止としなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかなとき」とは、例えば、上場前から債務超過であったなど虚偽記載により上場基準の著しい潜脱があった場合や、実態として売上高の大半が虚偽であったなど虚偽記載により投資者の投資判断を大きく誤らせていた場合など、そのまま当該銘柄の上場を維持すれば証券取引所の金融商品市場に対する投資者の信頼を著しく毀損すると認められるような場合をいう(東京証券取引所「特設注意市場銘柄の積極的な活用等のための上場制度の見直しについて」平成25年6月17日)。   (了)

#No. 141(掲載号)
#鈴木 広樹
2015/10/22

《速報解説》 意見募集を経て、「監査等委員会監査等基準」が公表 ~「監査委員会監査基準」「監査報告のひな型」の改定版も確定~

《速報解説》 意見募集を経て、「監査等委員会監査等基準」が公表 ~「監査委員会監査基準」「監査報告のひな型」の改定版も確定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成27年9月29日付で(ホームページ掲載日10月15日)、日本監査役協会は、「監査等委員会監査等基準」、「監査委員会監査基準」、「監査報告のひな型」等について公表した。 公開草案については、平成27年8月4日から意見募集されていた。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   1 公表の状況 この結果、現在、次のものが公表されていることになる。 (※) 「監査等委員会設置会社における監査等委員会規則(ひな型)」、「指名委員会等設置会社における監査委員会規則(ひな型)」は公表済みである(ホームページ掲載日平成27年8月4日)。 2 今後の公表予定 今後、次のものの改定が予定されている。   Ⅱ 監査等委員会関係 周知のとおり、監査等委員会設置会社は、会社法及び法務省令の改正により新たに設けられた機関設計である。 監査等委員会の制度設計は、次のものから構成されている。 1 監査等委員会監査等基準 主な内容は、次のとおりであり、基本的に、監査役監査基準に準じたものとなっている。 改定された監査役監査基準に記載されている補足(各条項に関する補足的な説明をしたもの)については、重複を避けるために、監査等委員会監査等基準には記載していないとのことである。このため、必要に応じて、改定された監査役監査基準をお読みいただきたい。 例えば、次の規定が設けられている。 2 内部統制システムに係る監査等委員会監査の実施基準 内部統制システムに係る監査委員会監査の実施基準に準じている。 例えば、次の規定が設けられている。   Ⅲ 監査委員会関係 1 監査委員会監査基準 主な内容は、次のとおりであり、改定された監査役監査基準と共通する事項は、極力、それとの平仄をとったものとなっているとのことである。 なお、改定された監査役監査基準に記載されている補足(各条項に関する補足的な説明をしたもの)については、上述と同様である。 例えば、次の改定が行われている。 2 内部統制システムに係る監査委員会監査の実施基準 主な内容は、次のとおりである。   Ⅳ 監査報告のひな型 主に次の改定が行われている。 例えば、次の文例が示されている。 (了)

#No. 140(掲載号)
#阿部 光成
2015/10/20
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