〔まとめて確認〕 会計情報の四半期速報解説 【2024年1月】 第3四半期決算(2023年12月31日) 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 3月決算会社を想定し、第3四半期決算(2023年12月31日)に関連する速報解説のポイントについて、改めて紹介する。基本的に2023年10月1日から12月31日までに公開した速報解説を対象としている。 公開草案及び適用時期が将来のものは、基本的に記載の対象外としている。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 Ⅱ 会計関係 企業会計基準委員会及び日本公認会計士協会は次のものを公表している。 これは、改正された「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号)上の電子決済手段の発行及び保有等に係る会計上の取扱いを示すものである。 ① 実務対応報告第45号「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」等の公表 ② 会計制度委員会報告第8号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」の改正について Ⅲ 金融商品取引法関係 次のものが公布・公表されている。 ① 「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(法律第79号)(内容:四半期報告書制度廃止、有価証券とみなされる権利の範囲の見直し、金融経済教育推進機構の設置など) ② 「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の改正(内容:株式報酬として交付される株式が譲渡制限付である場合に、有価証券届出書の提出を不要とする特例に関して、取締役等の死亡などの事由の取扱いについて明確化を図るもの) Ⅳ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 〇 業種別委員会研究資料第2号「Web3.0関連企業における監査受嘱上の課題に関する研究資料」及び「公開草案に対するコメントの概要及び対応」の公表について(内容:Web3.0関連企業における監査受嘱上の課題について研究したもの) Ⅴ 監査役等の監査関係 監査役等の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① グループ監査における親会社監査役会の役割と責務(内容:グループガバナンスの視点から、グループ監査における監査役の役割と責務について研究活動を行い、取りまとめたもの。日本監査役協会関西支部 監査役スタッフ研究会) ② 「企業のサステナビリティへの取組み及び監査等委員会の関与の在り方〈人的資本編〉」(内容:「人的資本」に関する議論を整理し、有価証券報告書における開示の分析及びサステナビリティに関するアンケートを行ったもの。日本監査役協会 監査等委員会実務委員会) ③ 「多様化するリスクの把握と監査活動への反映及びその開示」(内容:多様化するリスクに対する各社の取組状況の紹介や今後の監査の実効性向上に向けた提言を取りまとめたもの。日本監査役協会 ケース・スタディ委員会) ④ 「有価証券報告書の作成プロセスに対する監査役等の関与について-実態調査に基づく現状把握と事例紹介-」(内容:有価証券報告書の作成プロセスに対する監査役等の関与に関して、監査役等としての対応を検討する上でのポイントについて述べたもの) ⑤ 改定版「会計監査人の評価及び選定基準策定に関する監査役等の実務指針」(内容:「監査に関する品質管理基準」の改訂、監査上の主要な検討事項(KAM)の導入、倫理規則の改訂などへの対応。日本監査役協会 会計委員会) Ⅵ 過年度に公表されている会計基準等 過年度に公表されている会計基準等のうち、2023年4月1日以後に適用されるもの(早期適用を含む)として、次の会計基準等がある。 ① 「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」(2022年8月26日、実務対応報告第43号)(内容:「金融商品取引業等に関する内閣府令」における電子記録移転有価証券表示権利等の発行・保有等に係る会計上の取扱いを示すもの。2023年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。ただし、実務対応報告の公表日(2022年8月26日)以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用することができる) ② 「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(2022年10月28日、改正企業会計基準第27号)等(内容:税金費用の計上区分(その他の包括利益に対する課税)及びグループ法人税制が適用される場合の子会社株式等(子会社株式又は関連会社株式)の売却に係る税効果についての取扱いを示すもの。2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる) (了)
給与計算の質問箱 【第49回】 「割増賃金の計算の基礎となる賃金から除外できるもの」 税理士・特定社会保険労務士 上前 剛 Q 従業員A、B、Cは3人とも10時間残業をしました。それぞれの残業代の計算についてご教示ください。なお、給与計算に関する情報は以下のとおりです。 A 以下の①~⑦は、割増賃金の計算の基礎となる賃金から除外できる。例示ではなく限定列挙なので①~⑦以外の賃金は全て算入しなければならない。 以下、従業員A~Cの残業代の計算についてそれぞれ確認する。 * * 解 説 * * 〇 従業員Aの残業代 上記②と⑤に該当する通勤手当10,000円と住宅手当10,000円は除外となる。 割増賃金の計算の基礎となる賃金は1,200円である。 よって、従業員Aの残業代は15,000円となる。 〇 従業員Bの残業代 上記②に該当する通勤手当10,000円は除外となる。 割増賃金の計算の基礎となる賃金は1,263円である。 よって、従業員Bの残業代は15,790円となる。 〇 従業員Cの残業代 上記①と⑤に該当する家族手当10,000円と住宅手当10,000円は除外となる。 割増賃金の計算の基礎となる賃金は1,200円である。 よって、従業員Cの残業代は15,000円となる。 (了)
税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第49回】 「減価の査定にそれなりの判断を伴う土地(その3)」 ~対象地のなかに道路拡幅予定地が含まれている場合~ 不動産鑑定士 黒沢 泰 1 はじめに 鑑定評価の対象地のなかに将来の道路拡幅予定地が含まれている場合があります。これは自治体が策定する都市計画において事業予定地として組み込まれた(=都市計画決定された)ものであり、将来、自治体による用地買収が行われる土地です。 今回は、このようなケースについて鑑定評価の拠り所となっている考え方を解説します。 2 道路拡幅予定地と鑑定評価 ある土地が公道(県道又は市道等)に面しており、その幅員を拡幅することが都市計画で決定された結果、当該土地の一部が道路拡幅予定地に編入されたというようなケースをしばしば耳にします。そのイメージを以下に示します。 〈都市計画道路拡幅予定地のイメージ〉 道路、公園、下水道のような施設を都市施設と呼び、これらに関し都市計画決定がなされたものを都市計画施設と呼んでいますが、このような都市計画施設の予定地内で建築物の建築を行おうとする場合、都市計画法による規制を受けることとなります。 ちなみに、都市計画法第53条第1項には、次の規定が設けられています。 その際、許可を受けることのできる建築物についても同法第54条に規定されており、2階建て以下(地階を有しない)で、主要構造部も木造をはじめ容易に移転・除去が可能なものでなければ許可を受けることができない仕組みとなっています(これについては、地方公共団体の条例により、「2階建て以下」を「3階建て以下」に緩和している例も見受けられます)。 上記のとおり、対象地が都市計画施設の予定地に組み込まれることにより建築規制を受ける結果、近隣地域では5階建ての共同住宅の建築が可能で、かつ、これが標準的な使用方法であるにもかかわらず、対象地には2階建てまでしか建築できない等の影響を受ける場合には、これに見合う分の減価が必要となります(最有効使用ができなくなることによります)(※1)。 (※1) なかには、近隣地域の標準的な使用方法が2階建ての戸建住宅であるため、上記のような建築制限が土地の最有効使用に影響を及ぼさない(=減価の必要はない)というケースもありますが、本稿ではこのようなケースは除いて考えています。 その際の評価の考え方ですが、【第47回】及び【第48回】で紹介した「公共用地の取得に伴う損失補償基準」に基づいて算定した「利用制限(階数制限)を受けることによる対象地の価値割合」を評価の過程に反映させることとなります。 ここで、階数制限を受ける範囲が対象地の一部のみである場合は、全体面積に占めるその面積割合に相当する部分が減価の対象となります(〈都市計画道路拡幅予定地のイメージ〉のようなケースでは、道路拡幅による階数制限を受けるのは全体の一部といえます)。 なお、事業の実施が都市計画決定の段階から1歩進み、道路拡幅等の事業認可が行われた段階(※2)へと移行した場合、建物の建築制限が一段と厳しくなりますが、その反面、道路用地の近隣における時価(正常価格)での買収が現実化してくるなど特に減価を織り込む必要のないケースも生じ得ます。 (※2) 都市計画決定の段階と事業認可が行われた段階とでは、事業の進行のスピードが著しく異なってきます。 このように、都市計画決定の段階にとどまっている場合と事業認可後では鑑定評価上の取扱い方が異なってくることも大きな特徴といえます。 3 税務の評価では 相続税や固定資産税の評価においても、道路拡幅予定地となっている土地の評価をどのようにすべきかが問題となります。 そこで、以下、前回と同様に相続税評価及び固定資産税評価それぞれの場合に分けて評価の考え方を述べ、鑑定評価との相違を対比させておきます。 (1) 相続税の評価では 財産評価基本通達24-7では、以下の規定を設けています(下線は筆者によります。以下同様)。ここでは、納税者の申告の便に供するという目的もあり、鑑定評価と比べて画一的な要素が織り込まれています。 〇財産評価基本通達24-7(都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価) (2) 固定資産税の評価では 固定資産評価基準においては道路拡幅予定地となっている土地についての評価規定は存在せず、このような土地につき評価額に反映させる必要があると市町村が判断した場合には、所要の補正という形で評価額の減額を行っているケースがあります。 以下、A市の例を掲げておきます(これはあくまでも一例であり、他の市ではその実情に応じてA市と異なる補正率を定めているというケースもあります)。 〈A市における所要の補正の例〉 (了)
《税理士のための》 登記情報分析術 【第8回】 「登記申請の仕方」 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 1 登記申請について 司法書士に登記を依頼すると、様々な書類を顧客から取り付けているのを目にすることがあると思う。税理士としても登記申請はどのように行うのか、どのような書類が必要になるのかを知っておくと顧客への案内をスムーズに行うことができる。 2 登記申請書と添付書面 登記申請は、「登記申請書」と「添付書面」を管轄の法務局に提出して行う。登記申請書とは、所有権の移転登記など法務局に登記してほしい内容を記載した書面である。添付書面とは、登記申請された売買などの事実があったことを裏付けるために提出するものである。登記申請書や添付書面は、申請する登記の内容によって記載内容や提出するものが異なる。不備があると法務局で補正を命じられることや、却下されてしまうことがあるため司法書士はかなり気を使って準備している。 【登記申請書と添付書面のイメージ】 3 登記申請の方法 登記申請の方法は、インターネットを利用して行う「オンライン申請」と、書面で行う「書面申請」がある。司法書士が登記申請を行う場合は、オンライン申請が主流である。遠方の不動産の相続登記など、管轄の法務局が司法書士の事務所から離れていても、オンライン申請の場合はあまり支障がない。 2において、登記申請には「登記申請書」と「添付書面」が必要であると解説したが、オンライン申請の場合は、登記申請書については登記申請書の内容を記載したデータを提出することになる。添付書面については、権利証などデータにできないものもあるため、現状では原本を郵送で提出する方法によることが多い。登記申請書はデータで送信し、添付書面を郵送で提出するため、「半分だけオンライン」という意味で、「半ライン申請」と呼ぶことがある。 4 所有権移転登記の添付書面 登記申請に必要な添付書面は登記する内容によって様々であるが、一例として売買による所有権移転登記に必要な添付書面について紹介する。司法書士は添付書面を含めて、登記手続に必要な書類の案内を行うが、売主側(登記義務者)と買主側(登記権利者)に分けて対応する。 【売主側(登記義務者)の必要書類】 ※⑥、⑦については、法務局に提出する添付書面ではないが、司法書士が本人確認を行ったり、売主が司法書士への委任状に対して実印を押したりする必要があるため案内を行う。 【買主側(登記権利者)の必要書類】 ※③、④については、法務局に提出する添付書面ではないが、司法書士が本人確認を行ったり、買主が司法書士への委任状に押印(認印可)したりする必要があるため案内を行う。 それぞれの添付書面の意義や注意点については別の回にて詳しく解説を行うが、売主側の方が多くの書類等を準備する必要がある。これは所有権移転登記によって売主側は登記の名義を失うことになるため、本当に売主側が不動産を売り渡す意思があったのかを法務局が添付書面を通じて確認するためである。添付書面のなかには準備に時間がかかるものもあるため、税理士としては早めに必要書類を司法書士に確認するとよいだろう。 (了)
《顧問先にも教えたくなる!》 資産づくりの基礎知識 【第9回】 「どう準備する? 社長の退職金戦略」 株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役 一般社団法人公的保険アドバイザー協会 理事 日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー(CFP®) 山中 伸枝 経営者のみなさんは、ご自身の退職金をどのように準備されているでしょうか。 〇生命保険と予定利率 生命保険を使って準備しているという方も多いかもしれません。ただ保険に関していえば、ここ20年程度は予定利率が非常に低いので、支払った保険料の割には思ったような金額が準備できないということもありえます。 「予定利率」というのは、預金でいうところの金利です。保険には保障の部分と運用の部分がありますが、みなさんが期待する退職金としての保険の活用方法は、退職のタイミングで解約しその返戻金を退職金に充てるというものだと思います。この返戻金の成長率を示すのが予定利率なので、予定利率が低ければ、資産はあまり増えないということになります。 筆者がいろいろなところにお話を聞くと、毎月の保険料がいくらなのかは把握しているけれど、何歳時点で解約返戻金がピークに達して、いくら受け取れるのかまではっきり把握していない、という方が少なくありません。解約返戻金は解約のタイミングで金額が変動するので、計画性を持って利用することが重要です。 〇小規模企業共済と請求事由 小規模企業共済に加入しているという方もいるでしょう。こちらは掛金が全額所得控除になるので、節税という意味合いで税理士の先生から紹介されたというお話もよく聞きます。 小規模企業共済の掛金は月7万円が上限です。年間84万円ものお金を個人の所得から差し引けるのでその節税効果は絶大です。 では、いついくらの資金が受け取れるのでしょうか。小規模企業共済で受け取れる共済金は、請求事由により以下の4種類に分かれています。それぞれの事由により、同じ期間掛金を拠出したとしても受け取れる金額が異なります。 (※) 解約手当金は、払い込んだ掛金を下回ることもあると解説されています。 では、共済金が実際いくら受け取れるのかを小規模企業共済の案内サイトからご紹介しましょう。以下は掛金が月1万円、納付期間が20年の場合(掛金合計240万円)の例です。 〈共済金の受取額(掛金月1万円、納付期間20年の場合)〉 請求事由により、金額がずいぶん異なることがわかります。なお、小規模企業共済の基本的な予定利率は現状1%であると公表されています。 共済金は、金額によって選択肢が異なりますが、原則として一括受取、年金受取、あるいは併用が選べます。一括受取の場合は退職所得控除が、年金受取の場合は公的年金等控除が適用されます。 〇iDeCoと企業型DCの比較 他にも確定拠出年金を活用する方法もあります。確定拠出年金には個人型(iDeCo)と企業型(企業型DC)があり、今回は社長個人としてどちらを利用した方のメリットが大きいのかを解説します。 まず、厚生年金に加入している社長であれば、iDeCoの掛金は月23,000円、企業型DCの掛金は月55,000円を上限として拠出が可能です。もちろん企業型DCは会社の退職金制度として導入するので、従業員への拠出も必須ですが、今回は社長だけにフォーカスを当ててお伝えします。 拠出可能年齢は、iDeCoは65歳まで、企業型DCは70歳までを設定できます。就業規則の変更等が必要となるため、実際に企業型DCを70歳まで拠出可能とする会社は少ないようですが、法律上は最大70歳まで掛金が拠出できます。 iDeCoの掛金は、個人で拠出し所得控除としますが、企業型DCの掛金は会社が拠出します。その際、その掛金は全額損金計上ができ、なおかつ社会保険料算定対象ではないので、その分効率良く会社から社長本人への資金移転が可能です。 退職金をいくら作れるのかという点にポイントを絞れば、企業型DCの方が効率良く資金を作れることになります。ただし、企業型DCを導入する際には、金融機関に支払う費用がかかるので、相見積もりを取り検討されることをお勧めします。 〇確定拠出年金の特徴 会社から社長個人へ拠出された掛金は、社長本人から見ても所得とみなされないので、所得税の対象ではありませんし、同時に社会保険料の対象ではありません。 また万が一、社長が自己破産といったことになったとしても、確定拠出年金の資金は差し押さえ対象とならず保全されます。これは60歳までなにがあっても引き出せないお金、すなわち公的年金と同等の意味合いを持っているからです。 小規模企業共済と異なり、確定拠出年金では加入者自らが運用を行います。仮に3%運用が可能であれば、月々55,000円の掛金を20年間積み立てることによって約1,800万円もの退職金が準備できます。5%運用であれば、約2,200万円です。「たられば」の話だと思われるかもしれませんが、金融庁のレポートによれば、世界中の株式や債券に分散して積立投資を行った場合、過去の実績では平均4~6%の運用利回りであったと発表されています。 〇小規模企業共済と確定拠出年金の併用 いずれにしても、だれにとっても老後資金は必要なものなので、有効な方法があれば取り入れ早めに準備をすることが大切です。特に、公の仕組みである小規模企業共済と確定拠出年金については、優先順位を上げて検討されるとよいでしょう。 実は小規模企業共済と確定拠出年金を併用すると受取りの際もメリットが得られます。どちらも一括で受け取ると退職所得控除が利用可能ですが、先に確定拠出年金を受け取り、少なくとも5年時間を空けて共済金を受け取ると、退職所得控除をそれぞれ相殺されることなく利用が可能です。 例えば、2つの制度を40歳から65歳までの25年間活用したとしましょう。それぞれの制度の加入期間は25年ずつ、すなわち退職所得控除は1,150万円ずつ適用されます。しかし65歳で2つの退職金を同時に受け取ると、片方の退職所得控除は消滅してしまうので、利用できる控除額は1,150万円となります。しかし先に確定拠出年金を受け取り、70歳で共済金を受け取ると、65歳時点での退職所得控除が1,150万円、70歳時点での退職所得控除が1,150万円それぞれ利用でき、合計2,300万円までは非課税で受け取ることが可能になるのです。 * * * このように退職金を作る場合には、それぞれの制度の特徴を理解したうえで計画的に取り組まれるのが得策です。複数の制度をまたいだ情報は少ないかと思いますが、ご参考にしていただければ幸いです。 (了)
《速報解説》 国税庁、令和6年能登半島地震の関連情報まとめた特設ページを開設 ~延長・猶予等制度に加え酒税・印紙税・自動車関係の救済措置も紹介~ Profession Journal編集部 令和6年1月1日に発生した令和6年能登半島地震を受け、既報のとおり国税庁は同月5日に石川県及び富山県に納税地のある個人・法人を対象とした国税の申告期限・納付期限の延長方針を示していたが、同ページで予告された通り1月12日付の官報にて正式に告示(富山県及び石川県における国税に関する申告期限等を延長する件(国税庁一))が公布されたことを受け、今回の地震で被害を受けた場合の税制上の措置(手続)等をまとめた特設ページを同日、国税庁ホームページ内に開設した。 特設ページでは、上記の国税の申告期限等の延長に関する情報(地域指定の対象地域以外の場合含む)に加え、納税者(個人・法人)への申告書等用紙の発送状況(見合わせ等)について説明しているほか、被災者向け支援情報として、雑損控除の方法や災害減免法に定める税金の軽減免除の方法、災害を受けたときの納税猶予制度等についての周知を図っている。 その他、今回の被災地域が酒処であることを踏まえ、販売のために所持していた酒類が地震により被災(容器の破損により酒類が流出)した場合の救済措置や、印紙税、自動車重量税関係の情報も織り込まれている。 (了)
《速報解説》 子育て世帯等に対する住宅借入金等特別控除及び住宅リフォーム税制の拡充 ~令和6年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 令和5年12月22日に閣議決定された令和6年度税制改正大綱では、子育て世帯に関係する改正事項がいくつか示されている。本稿では、その中から「子育て世帯等に対する住宅借入金等特別控除の拡充」と「子育て世帯等に対する住宅リフォーム税制の拡充」について取り上げる。 なお、どちらの措置も、急激な住宅価格の上昇を踏まえ令和6年に先行的に拡充を行うが、扶養控除等の見直しと併せて令和7年度税制改正に向けた議論の中で再度検討されると言及されている。 以下、解説を行う。 【1】 住宅借入金等特別控除の拡充 (1) 借入限度額の令和5年ベースの維持 新築・買取再販住宅に係る住宅借入金等特別控除は、令和6年に居住を開始した場合には、令和5年に居住を開始した場合と比べ、借入限度額が引き下げられる。引き下げられる金額は、認定住宅で500万円、特定エネルギー消費性能向上住宅(ZEH水準省エネ住宅)とエネルギー消費性能向上住宅(省エネ基準適合住宅)でそれぞれ1,000万円である(措法41⑪)。 大綱では、子育て特例対象個人に限り、令和5年と同額の借入限度額を維持することが示された。ただし、令和6年限りの措置とされている。 なお、子育て特例対象個人とは、19歳未満の扶養親族を有する者又は自身もしくは配偶者のいずれかが39歳以下の者をいう(以下同様)。 〈現行:令和6年・7年居住開始分〉 〈大綱:令和6年居住開始分に限る〉 (注1) 所得税額から控除しきれない額については、現行制度と同じ控除限度額の範囲内で住民税から控除する。 (注2) 東日本大震災の被災者向け措置についても、同様に子育て特例対象個人の借入限度額の上乗せ措置が講じられる(令和6年居住開始分に限り、借入限度額5,000万円)。 (2) 床面積要件の緩和 子育て世帯においては、駅近等の利便性がより重要視されること等を踏まえ、新築住宅の床面積要件を合計所得金額1,000万円以下の者に限り40㎡に緩和することが示された。面積要件の緩和も令和6年限りの措置とされている。 (注) 東日本大震災の被災者向け措置についても、面積要件が緩和される。 【2】 住宅リフォーム税制の拡充 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除(工事費用相当額の10%を税額控除する特例措置)について、耐震・バリアフリー・省エネ・三世代同居・長期優良住宅化リフォームの改修工事に関する特例措置を令和7年12月31日まで2年延長することと、子育て特例対象個人が行う一定の子育て対応改修工事を新たに特例措置の対象とすることが示された。 なお、新たに追加される一定の子育て対応改修工事に関する特例措置は、令和6年限りとされている。 (注1) ( )内の金額は、太陽光発電設備を設置する場合 (注2) 省エネ改修工事の対象設備の一部に改正あり (注3) 対象工事の限度超過分及びその他増改築等工事についても一定の範囲まで5%の税額控除 (注4) その年分の合計所得金額が2,000万円を超える場合には、適用不可 ◆対象となる子育て対応改修工事 下記工事のうち、標準的な工事費用相当額が50万円を超えること等一定の要件を満たすもの。 (了)
2024年1月11日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.551を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
monthly TAX views -No.131- 「歳出改革と国民負担の微妙な関係」 東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹 新年早々、年末の予算編成での少子化対策の財源議論を通じて、歳出改革と国民負担について考えるところがあったので、述べてみたい。 * * * 問題意識の出発点は、昨年6月に3.6兆円規模の少子化対策を閣議決定(こども未来戦略方針)した際、岸田総理が「実質的な追加負担を求めない」と強調したことである。 その後11月末に、「実質的な追加負担なし」というのは「社会保障にかかる国民負担率で判断する」と説明した。国民所得を分母に、社会保障の負担を分子とした割合で判断するという趣旨は、今年の春闘で民間企業の賃上げによる所得増が予想され分母が増えるので、医療や介護の保険料が多少上がっても、負担率は抑えられるということである。 民間企業が行う賃上げを前どりして「追加負担なし」とするのは違和感があるが、その後の国会答弁でも、「賃上げと歳出改革によって、国民負担の軽減効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することにより、実質的な追加負担は生じない」と説明した。 その後12月11日に草案が公表され、同月22日決定された「こども未来戦略」では、この辺りがより明確になった。 2028年度までに3.6兆円の安定財源を確保して行う。その内訳は、歳出改革で1.1兆円、支援金の創設で1兆円、規定予算の活用で1.5兆円とする。 具体的には、歳出改革による公費節減と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で、2026年度から段階的に2028年度にかけて、健康保険料に上乗せする形で徴収をする「支援金制度」を構築し、2028年度に1兆円程度の規模を目指す。 新たに設けられる支援金制度は、企業や個人から健康保険料に上乗せして1兆円規模の負担を求めるが、それに伴う負担増(個人でいえば、毎月1人500円程度の増)を相殺する歳出改革、具体的には社会保障の支出抑制を行うことによって実質的な国民の負担増はないようにする、という説明だ。 一方、歳出改革の中身はどうか。「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)における医療・介護制度等の改革を実現することを中心に取り組」むとされ、6年ぶりに医療と介護報酬を同時改定する2024年度予算では、相当規模の歳出改革が期待された。 財務省は、診療所の経営状況が良好なことを受け、診療報酬本体(医師や看護師の人件費等)についてマイナス改定を求めたが、日本医師会や政治家が反対し、0.88%のプラス改定となった。また、予定していた介護保険の利用者負担(2割負担)の範囲の見直し(拡大)は、とん挫した。 この結果、歳出改革による保険料負担の軽減は約3,300億円となったが、一方で新たに負担増となる医療や介護の現場で働く人の賃上げなどに必要な約3,400億円については実質的な負担には含めないとして、「実質的な追加負担なし」と説明された。これに対しマスコミは、「ごまかし」「詭弁」との評価を下した。 このような経緯を経て、2024年度予算案の社会保障費は37.7兆円と前年度に比べて約8,500億円増え、少子化対策として「こども・子育て支援特例公債」という名目のつなぎ国債が2,200億円程度発行されることとなった。生まれてくる子供のための施策を彼ら(子ども世代)が負担するというパラドックスが生じたのである。 では来年度以降、どのような歳出改革が予定されているのだろうか。 昨年暮れに決定された「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」では、全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋における医療・介護制度等の改革となる「能力に応じた全世代の支え合い」として、次のことが掲げられている。 金融資産や金融所得を勘案するには、金融資産や金融所得の正確な把握が必要であり、預貯金口座にマイナンバーを付番することが不可欠となる。しかし、口座付番に国民の合意を得ることは容易ではない。そうなると、これらの歳出改革は絵に描いた餅になりかねない。その場合は、つなぎ国債のはずの「こども・子育て支援特例公債」が赤字国債になる。 * * * 歳出改革は、無駄な歳出を抑えるということだが、国民負担が消えてなくなるわけではない。その本質は、「ゆとりのある者に追加負担をしてもらう」ということで、そこに歳出改革の難しさがある。 (了)
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第127回】 「消費税法判例解析講座(その4)」 中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦 ヘ 消費税法30条7項は仕入税額控除の適用要件か(承前) 上記の点は、東京地裁平成11年3月30日判決(訟月46巻2号899頁)(※1)からも判然とする。 (※1) 判例評釈として、西山由美・税務事例32巻9号1頁(2000)、畑山茂樹・税務事例31巻7号20頁(1999)、高正臣・税通57巻2号90頁(2002)など参照。 同地裁は、次のように説示する。 ト 仕入税額控除の実質的権利性 しばしば、消費税法は仕入税額控除を権利として規定していないと論じられる。 例えば、西山由美教授は、「日本の消費税法では、仕入税額控除をそもそも権利として位置づけていないために、請求権の行使時期に関する規定はない。確定申告に関する規定(消費税法45条1項)において、事業者は課税期間中に国内で行った課税資産の譲渡等に係る課税標準の合計額(課税標準額)に対する消費税額と、当該課税期間中に国内で行った課税仕入れに係る支払対価の金額に108分の6.3を乗じた金額(同法30条1項)を記載することが定められているのみである。」とされる(※2)。 (※2) 西山由美「消費課税におけるインボイスの機能と課題:EU域内の共通ルールと欧州司法裁判所判例を素材として」法学新報123巻11=12号127頁(2017)。 また、仕入税額控除があくまでも税額控除とされていて、課税標準は売上であることからすれば、現在の消費税は売上税としての性質を有するものであるとの議論が展開されているように思われる。 例えば、金子友裕教授は、日本の消費税を、賦課課税かそれとも取引高税かという見地から捉えた場合、最高裁平成16年12月20日第二小法廷判決(集民215号1005頁)に付された滝井繁男裁判官の反対意見が、仕入税額控除を「単なる申告手続上の特典ではない」と位置付けていることを反対解釈し、「我が国の消費税法は、仕入税額控除を『単なる申告手続き上の特典』のように位置付けていることになり、取引高税(aモデル)に恩典的な仕入税額控除を含めたものとして捉えている」と論じられる(※3)。 (※3) 金子友裕「消費税法における仕入税額控除の考察」税法学585号3頁(2021)。 また、今村隆教授は、「仕入税額控除を税額控除のbenefitにとどめている。そうすると、共通対応課税仕入れに区分することにより、仕入税額控除が一部遮断されるとしてもあくまでもbenefitの問題にとどま〔る〕」とされる(※4)。かように、仕入税額控除が権利として規定されていないことや、税額控除に置かれている点には十分な関心を寄せるべきであろう。 (※4) 今村隆・ジュリスト1563号134頁(2021)。 しかしながら、そのような消費税法の構造が認められるとしても、そうであるからといって、仕入税額控除に関して、税制改革法の理念が消費税法に承継されていないとみるべきなのであろうか。再説するが、税制改革法10条2項では、「消費税は、事業者による商品の販売、役務の提供等の各段階において課税し、経済に対する中立性を確保するため、課税の累積を排除する方式によるもの〔下線筆者〕」とする考え方が掲げられているのである。 消費税法上の仕入税額控除が否認要件として位置付けられるとする卑見を前提とすれば、一定の要件が充足されない限り仕入税額控除は否認されないという建付けであることになる。 別言すれば、原則と例外の関係に当てはめると、仕入税額控除の適用は原則であり、例外的に一定の否認要件が充足されると同控除が受けられなくなるという構造である。帳簿・請求書等が不保存でない限り、事業者は仕入税額控除を受けることができると考えるべきなのではなかろうか(なお、ここにいう帳簿・請求書等の不保存の中には、帳簿・請求書等が法定要件を充足していないことをも包摂される。)。 この点は、帳簿書類等の不存在についての主張・立証責任が課税庁側に負わされているという点からも判然とするのである。このように考えると、仕入税額控除の否認には一定のハードルが用意されているというべきである。 もっとも、平成9年度税制改正以前には、「帳簿又は請求書等」の保存がない場合に仕入税額控除の適用がないとされていた消費税法30条7項は、同年の税制改正において、「帳簿及び請求書等」の保存がない場合に仕入税額控除の適用がない旨に改正された。すなわち、帳簿だけの不保存では足りず、請求書等の不保存についても課税庁側は主張・立証をしなければならなくなったのである。一般的に、そのような理解はされていないようであるが、文理に忠実に解釈すれば、仕入税額控除の否認要件が厳しいものとなったとみることができるのである。このように考えると、必ずしも仕入税額控除の否認のハードルが緩和されたとだけみるのは正解とはいえまい。 あくまでも、平成9年度税制改正前は、帳簿「又は」請求書等の保存がないとの主張立証に成功すれば、課税庁側は仕入税額控除の適用を否認することができたのであるが、同年度改正によって、帳簿「及び」請求書等の両方の不存在の主張立証に成功しなければ、仕入税額控除の適用を否認することができなくなったのである(そのことを考慮に入れる必要があると思われるが、この点については、別に論稿を用意することとしたい。)。 チ 本件事案における「保存」 このように、帳簿書類等の保存に係る主張立証については課税当局側に課されていることからすれば、課税庁は、帳簿書類等が存在しないことに対する主張立証責任を負っているということになる。しかし「存在しない」ことの証明とは、いわば「悪魔の証明」であるといってもよい。物が存在しないという点についての証明は事実上不可能であるといってもよいからである。 そこで、この規定を意味のあるものとするには、かかる主張立証活動について一定の緩和が用意されるべきであるということにもなろう。このままの主張立証責任の分配論では、そもそも証拠との距離が遠い税務当局側に保存がないこと、すなわち悪魔の証明に係る責任を課すこととなり、あまりにも均衡を欠くともいえるからである。 その主張立証責任を緩和するためには、例えば、消費税法30条7項にいう帳簿・請求書等の「保存」という概念の意味内容に、帳簿・請求書等の「提出」を読み込ませることとなれば、「保存」のないことに対する主張立証責任が過度に重すぎるという問題は一応解決できるし、このように解せば、悪魔の証明問題も解決することができることになる。 しかしながら、「保存」という概念に「提出」なる意味を読み込ませることは、文理解釈上無理があるといわざるを得ない。そこで、本連載の始めに確認した最高裁平成16年12月16日第一小法廷判決(以下「最高裁平成16年判決」ともいう。)もそのような安易な解釈論に導かれることを避け、「保存」の意味を、あくまでも日本語として通常理解し得る「保存」の意味の範囲内において解釈を展開しているのである。すなわち、「保存」の状態論に持ち込んでいるといってもよいと思われる。 最高裁平成16年判決は、消費税法30条7項の「保存」について、如何なる状態で「保存」することを指すのかという点から議論を展開し、「税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存」することを説示したのである。「保存」にもさまざまな態様による保存があり得る中、消費税法が予定している「保存」については、適宜にこれを提出できる「状態での保存」と読み込むことによって、証拠との距離の遠い課税庁にも主張立証を可能なものとして「保存」の意義を解釈したとみることができるのではなかろうか。 このような考察の上で最高裁平成16年判決を再読すると、同最高裁は、「法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、法30条7項にいう『事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合』に当た〔る〕」こととなり、その場合には仕入税額控除が否認されることになる。税務当局がかかる立証活動に成功すると仕入税額控除は否認されることになるのであるが、他方で、「事業者が災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかったことを証明」することができれば、仕入税額控除が否認されることを障害することになると説示していると解することができるのではなかろうか。 (了)