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給与計算の質問箱 【第48回】「有給休暇と残業代」

給与計算の質問箱 【第48回】 「有給休暇と残業代」   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 従業員が有給休暇を取得した場合の残業代の計算についてご教示ください。 なお、給与計算に関する情報は以下のとおりです。 A 有給休暇は、実働時間に含まれないとされる。 以下、具体例1~3にて解説する。 * * 解 説 * * 〇 具体例1 金曜日に有給休暇を取得し、土日休みの場合、1週間の実働時間は32時間である。 この場合、残業時間は0時間なので、残業代は0円である。   〇 具体例2 金曜日に有給休暇を取得し、土曜日に8時間勤務し、日曜日が休みの場合、実働時間は40時間である。 この場合、残業時間は土曜日の8時間である。実働時間は、法定労働時間の1日8時間、週40時間を超えていないので、25%の割増なしで残業代を計算する。 8時間分の残業代の計算は、以下のとおりである。   〇 具体例3 具体例2のケースで、金曜日に有給休暇を取得せずに働いた場合について検討する。土曜日に8時間勤務し、日曜日が休みの場合、実働時間は48時間である。 この場合、残業時間は土曜日の8時間である。実働時間が法定労働時間の週40時間を超えているので、25%の割増で残業代を計算する。 8時間分の残業代の計算は、以下のとおりである。 (了)

#No. 549(掲載号)
#上前 剛
2023/12/21

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第48回】「減価の査定にそれなりの判断を伴う土地(その2)」~地上阻害物(高速道路、鉄道高架線、高圧線等)が存在する場合~

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第48回】 「減価の査定にそれなりの判断を伴う土地(その2)」 ~地上阻害物(高速道路、鉄道高架線、高圧線等)が存在する場合~   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに 前回は、減価の査定にそれなりの判断を伴う土地の1回目として、地下阻害物(地下鉄等)が存在する土地の評価について取り上げました。 ところで、土地利用に影響を与える阻害物と呼ばれるものは地下だけでなく、地上にも存在します。例えば、高速道路、鉄道高架線、高圧線等がこれに該当します。対象地の近くにこのような阻害物があったり、高架下を建物の敷地の用に供したりしている場合には様々な影響を受け、利用価値が低下していることが多いといえます。 そこで、今回は、地上阻害物が存在する土地の評価について取り上げます。   2 地上阻害物が存在する土地の鑑定評価 最初に、鉄道高架線の下にある土地(以下、「高架線下地」といいます)を想定して解説を行います(高速道路の下にある土地も同じ状況だと考えていただいて構いません)。 このような土地の鑑定評価を依頼された場合には、高架線下地という個別的要因を反映させた価格を求めることとなります。その際の要因としては、例えば住宅地の場合には、高架線下地であるが故の高さ制限、快適性のマイナスなど環境面に与える影響(騒音・振動、日照・採光の不良ほか)等が考えられます(商業地、工業地の場合も、土地利用に影響を受ける内容やその程度の差はありますが、同様に減価要因として作用します)。これらの格差率は、高架線下地という項目では(前回紹介した)「土地価格比準表」に直接示されてはいませんが、実務では次の考え方や査定方法が採用されています。 以上述べてきたような事情は、高圧線下地(上空に高圧の電線が通過している土地)に関しても同様です(高圧線のイメージ写真を以下に掲げます)。 〈資料1〉 高圧線のイメージ ちなみに、高圧線下にある宅地は、それだけで心理的な不安感や不快感を伴うことは事実です。また、状況によっては土地の最有効使用が妨げられるケースも発生します。後者の例として、当該部分の上空を高圧線が通過していなかったならば5階建ての建物が建築できるところ、その影響により4階建てに制限されてしまうといったケースがあげられます。そして、高圧線による価格への影響は用途(住宅地、商業地、工業地等)によっても異なると考えられます。 一般的には、大工場地域に属している土地は住宅地域内にある土地に比べ、高圧線が存在することによる快適性への影響度は少ないですし、また、商業地域内にある土地と比べた場合でも使用可能な容積率からして、建物の建築可能階層が制限される度合いは少ないと思われます(工業地に指定される容積率は200%が多いのに対し、商業地の場合はそれ以上(400~500%、あるいはこれ以上)のケースが多いからです)。 ただし、高圧線の電圧が170,000Vを超えるような場合には、その真下部分及び高圧線からの水平距離3m以内に建物を建築することができないとされている点には留意すべきです。このように、高圧線下にある宅地は、その地上高にもよりますが、一般的にはこれがない状態での宅地に比べ相応の減価を伴うといえます。   3 税務の評価では 相続税や固定資産税の評価においても、地下阻害物が存在する場合と同様に、地上阻害物が存在する土地の評価をどのようにすべきかが問題となります。 そこで、以下、前回と同様に相続税評価及び固定資産税評価それぞれの場合に分けて評価の考え方を述べ、鑑定評価との相違を対比させておきます。 (1) 相続税の評価では ① 騒音、振動その他の要因により利用価値が著しく低下している宅地について 国税庁タックスアンサーNo.4617では、「利用価値が著しく低下している宅地の評価」について10%の評価減を行うことができる旨の解説があります。 詳細は同庁ホームページを参照いただくこととし、その要旨は以下のとおりです(下線は筆者によります)。 〇国税庁タックスアンサーNo.4617(一部抜粋) 上記の趣旨に当てはめた場合、対象地が高速道路や鉄道高架線等の近隣にあり、騒音・振動等の影響を著しく受ける場合には評価減を行うことができると考えられます。 ② 高圧線下地の宅地の評価について 対象地の上空に高圧線が通過している場合、区分地上権(その内容は前回紹介しました)や、高圧線の架設を目的とする地役権が設定されているのが通常です(上空に地役権が設定されている場合、その土地の所有者は高圧線を中心に上下の一定範囲につき利用制限を受けるとともに、建物の建築可能な階数も制約されることがあります)。また、地役権が設定されている場合も、その実態は区分地上権に近いといえます。 したがって、高圧線下地の宅地の評価額については、区分地上権に準ずる地役権の評価に関する下記規定(下線は筆者によります)に当てはめて、区分地上権に準ずる地役権の価額を計算し、これを自用地としての価額から控除して求めるということになります。 〇財産評価基本通達27-5(区分地上権に準ずる地役権の評価) この規定にも登場するとおり、区分地上権に準ずる地役権の価額を求めるに当たっては(前回紹介した)土地利用制限率を基にする方法を原則としつつも、納税者の評価上の便宜に資するため、家屋の建築が全くできない場合と構造・用途等に制限を受ける場合とに分けて、それぞれ簡便的な割合を用いることも認められています。 なお、高速道路や鉄道高架線等の下にあり建築物の建築に制限を受ける場合も、同じ考え方が適用できるものと思われます。 (2) 固定資産税の評価では 固定資産評価基準においては(地下阻害物のある土地の場合と同様に)地上阻害物のある土地についての評価規定は存在せず、このような土地につき評価額に反映させる必要があると市町村が判断した場合には、所要の補正という形で評価額の減額を行っているケースがあります。以下、A市の例を掲げておきます(これはあくまでも一例であり、他の市ではその実情に応じてA市と異なる補正率を定めているというケースもあります)。 〈資料2〉 高圧線下補正率表 (了)

#No. 549(掲載号)
#黒沢 泰
2023/12/21

《税理士のための》登記情報分析術 【第7回】「特殊な登記原因「真正な登記名義の回復」」

《税理士のための》 登記情報分析術 【第7回】 「特殊な登記原因「真正な登記名義の回復」」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   1 特殊な登記原因について 【第6回】では実務上よく見かける登記原因について解説を行った。登記原因のなかには、見かけることは多くないけれども、専門家であれば知っておきたい特殊なものがある。今回は税務の観点から税理士が関与することもある、「真正な登記名義の回復」について解説を行う。   2 「真正な登記名義の回復」 「真正な登記名義の回復」とは、本来は所有者をAとして登記すべきところ、誤ってBが所有者として登記されてしまったような場合に、所有者の名義を真の所有者であるAに変更する場合に用いられる登記原因である。 通常は所有者を誤って登記するということは起こりえないが、登記申請を司法書士に依頼せず当事者自身で行った場合や、関係者間での連絡の不備で誤って登記してしまったようなケースで発生することがある。 本来、誤って登記がされた場合には、誤って登記された所有権の登記を抹消し(錯誤抹消)、改めて正しい所有者への所有権移転登記を行う。しかし、担保権者の承諾が得られない場合や、前所有者の協力が得られない場合には、真正な登記名義の回復を登記原因として処理を行うことになる。 【記載例1:誤ってされた所有権の登記を抹消し、真の所有者に所有権移転登記をする方法】 【記載例1】の事例において、誤って登記された所有権の登記を抹消してから、真の所有者に所有権移転登記をするためには、旧所有者である「山田一郎」が登記手続に協力することが必要となる。 また、「山田次郎」が所有権移転登記を行ったタイミングで担保権等を設定している者がいた場合、山田次郎の所有権の登記の抹消をすると、設定された担保権等も抹消することとなるため、当該担保権者等の承諾が必要となる。 旧所有者の協力や、担保権者等の承諾が得られない場合は、誤ってされた所有権の登記を抹消する方法により真の所有者の名義に変更することは困難となる。 【記載例2:「真正な登記名義の回復」により、真の所有者に所有権移転登記をする方法】 「真正な登記名義の回復」を原因として、誤って登記された所有者から真の所有者に所有権移転登記を行う場合、【記載例2】の事例では誤って登記がされた「山田次郎」を登記義務者、真の所有者である「山田三郎」を登記権利者として登記を申請する。 旧所有者である「山田一郎」の協力は不要となり、山田次郎が所有権を取得した時点で担保権等を設定した担保権者等は影響を受けないためその承諾も不要となる。 【記載例3:登記申請書(真正な登記名義の回復)】 真正な登記名義の回復を原因とした所有権移転登記は、虚偽の登記申請を防止するために、なぜ誤った登記がなされたのかを詳細に記載した登記原因証明情報を作成する必要がある。実務的には、当事者から資料の提供を受け、慎重に検討を行い事前に法務局と相談のうえ登記申請を行うケースが多い。申請にあたっては、登記名義が変わることにより課税のおそれがないかなど、税理士に相談するケースもある。読者のところに相談が持ち込まれる可能性もあるので、理解しておくとよいだろう。 (了)

#No. 549(掲載号)
#北詰 健太郎
2023/12/21

《顧問先にも教えたくなる!》資産づくりの基礎知識 【第8回】「厚生年金基金から学ぶ“確定拠出年金の歴史”」

《顧問先にも教えたくなる!》 資産づくりの基礎知識 【第8回】 「厚生年金基金から学ぶ“確定拠出年金の歴史”」   株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役 一般社団法人公的保険アドバイザー協会 理事 日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー(CFP®) 山中 伸枝   〇厚生年金基金の背景 今回は、確定拠出年金の歴史を振り返っていきます。 みなさんはAIJ投資顧問事件を覚えていらっしゃるでしょうか。いくつもの厚生年金基金から総額約2,000億円もの資金を預かり、ずさんな運用でその大半を喪失させたという事件です。実はこの事件、現在の確定拠出年金の普及に大いに関係しているのです。 この事件の背景にあったのは、厚生年金基金が直面していた積立不足問題です。厚生年金基金は企業年金の一種で、企業が従業員の老後資金のためにと年金を準備する制度です。しかし、1960年代に始まった厚生年金基金の「代行部分」は、公的年金である厚生年金の資金を借りて運用しその利ざやを企業年金として受け取る仕組みでした。 〈厚生年金基金のイメージ〉 (出典) 日本年金機構ホームページ 当然ながら公的年金から資金を借りるにはそれなりの金利を支払わなければなりません。当時日本の経済は右肩上がりでしたから、4%とも5%とも言われる借入れコスト以上の運用が未来永劫続くことを前提に運営されていたのが厚生年金基金でした。   〇厚生年金基金の限界 しかし、やがてバブル経済も終わり日本の株価は低迷します。すると、当たり前のように高利回りで運用されていた厚生年金基金もやがて運用がうまくいかなくなり、厚生年金から借りている資金の費用さえもまかなえなくなります。 厚生年金基金の誤算は、運用状況だけではありませんでした。徐々に深刻化する高齢化も課題となります。厚生年金基金は退職した社員の年金を終身保障するものでしたので、その支払負担も重くのしかかってきました。 そのうち厚生年金基金の将来性が危惧されるようになりました。いち早く動いたのは厚生年金基金の「単独型」や「連合型」と言われるタイプです。これらは大企業の厚生年金基金あるいはグループ会社で作る厚生年金基金だったので、なんとか資金をかき集めて積立不足を補い国に返金する部分は返金し、現役従業員やOBには年金減額の承認を取り付け早々に厚生年金基金を手放していきました。 しかしそのままずるずると問題を先送りしていたのが「総合型」と呼ばれる基金でした。これは、中小企業が業界で集まる等して作った基金です。寄り合いであるがゆえに、だれも責任がとれないまま積立不足の状態が続いていました。 そのタイミングでやってきたのがAIJ投資顧問です。大手証券会社出身や運用のプロだという人間が、運用知識も乏しい基金の「持ち回り」責任者に嘘を並べ立て資金の引出しを図ります。何しろ、積立不足は顕在化している課題なのですから、総合型厚生年金基金の役員たちは飛びついたのでしょう。少しでも積立不足をなんとかしたいという心の隙にうまく入り込んだAIJ投資顧問がまんまと多額の資金を巻き上げていったというわけです。   〇厚生年金基金の問題点 厚生年金基金はそもそも国の年金資金でスケールメリットを狙う構造であったというところや、昭和のイケイケな雰囲気の中どんぶり勘定であったところが問題でしたが、問題の根本は「将来債務」の存在です。ハイパフォーマンスありきで将来の年金を約束し、結果的にその支払責任が本業を圧迫したのが原因です。   〇確定拠出年金の仕組み この企業年金が直面していた「将来債務」の対策として白羽の矢が立ったのが、確定拠出年金です。これは、年金を従業員に前払いする形で会社の支払債務を前倒しで経費とする企業年金です。 確定拠出年金では、退職金あるいは年金の財源にあたる資金を従業員に前払いします。毎月決まった金額を従業員に支払い(確定拠出)、従業員はその資金を自らが運用し自分の将来の資金とします。会社は掛金を拠出する際その全額を経費計上することで、責任が終了しますから、厚生年金基金で悩まされた「将来債務」は発生しません。 従業員も一旦拠出を受けると、その資金は完全に自分のものですから、万が一会社が倒産しても保全されます。さらに拠出を受けたお金は、所得税も、住民税も、社会保険料もかからないため、100%将来の積立てに回せて効率の良い資産運用ができます。   〇確定拠出年金の導入 2001年に確定拠出年金が日本に導入された段階では、アメリカですでに実績が上がっていたので、日本の企業にとっても確定拠出年金は救世主となるはずでした。 しかし、そう簡単にものごとは進みません。今まで資産運用とは無縁の日本人が、いきなり「掛金を出すからあとは自分で運用しなさい」と言われてすんなり首を縦に振るわけがありませんでした。 筆者も厚生年金基金から確定拠出年金に切り替えたい企業の依頼で、人事と労働組合が対立する緊張感の中、「確定拠出年金とはどういうものなのか」のご説明に伺ったことが何度もありました。 論点は主に2つ、確定拠出年金への変更は会社の責任放棄なのではないかという点と、毎月の掛金を決定する際の「想定利回り」でした。 想定利回りとは、年金制度を移行するにあたって、元の制度であれば将来受け取れたであろう程度の給付額になるよう資産形成するために必要となる運用利回りのことです。当然、想定利回りが高くなれば会社が拠出する金額は少なくなりますし、想定利回りが低くなれば会社の拠出金額が多くなります。企業としては2~4%を想定利回りとしたところが多かったのではないかと思いますが、それでも従業員からすると、その想定利回りと同等あるいはそれ以上の運用利回りを自らが得られるような運用をしなければ、これまで約束されていた給付額にはならないわけで、そこもまた企業との対立を深めることになりました。   〇確定給付企業年金の導入 時を同じくして、確定給付企業年金が導入されたのは、確定拠出年金への反発が大きかったという理由もあるでしょう。将来の金額を予め決める(確定給付する)企業年金は、大枠では厚生年金基金と同じですが、公的年金と切り離して運用される点、今まで以上に管理を厳しく行う点が改善されています。こちらは企業が運用責任を負うので、従業員に運用の負担はありません。 このように、現在企業年金といえば、確定給付企業年金と確定拠出年金の2つの制度が併設されているのには、過去にあった厚生年金基金の反省と制度切り替えの歴史があります。   〇iDeCoの普及 そこから時が流れ、少しずつ貯蓄から投資へと自分自身で将来の資金を運用して増やすという意識が高まるようになってきました。また国は2017年に個人型確定拠出年金の加入資格者を大幅に拡大し、また企業型確定拠出年金のイメージを払拭し「個人型」の印象を良くするためにニックネームを募り「iDeCo(イデコ)」という愛称で新たな普及活動を始めました。 今ではiDeCoも名前が知られ、税制優遇で有利な資産運用ができるという認知も高まっていますが、ここまでくるには20年もの長い道のりがあったのです。今回は、確定拠出年金のこれまでを振り返ってみました。 (了)

#No. 549(掲載号)
#山中 伸枝
2023/12/21

《速報解説》 賃上げ促進税制の拡充及び延長等~令和6年度税制改正大綱~

 《速報解説》 賃上げ促進税制の拡充及び延長等 ~令和6年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 令和5年12月14日、与党(自由民主党及び公明党)より令和6年度税制改正大綱が公表された。 わが国経済は依然としてデフレ構造下にあり、その脱却は積年の課題である。本年度はさらに、国際情勢の緊迫化、労働者人口の減少、円安状況の長期化等に端を発する物価上昇の中、実質賃金の下振れ圧力が強くなっており、こうした環境が持続的な経済成長を目指す取組みに対する重荷となっている。そのような状況下にあって、本年度の税制改正では、「物価上昇を上回る賃金上昇の実現」が最優先課題として設定された。 かかる状況を踏まえ、令和4年度から適用されている「賃上げ促進税制」(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除。措法42の12の5)が強化されることとなった。これにより一層の賃上げを促すほか、子育てと仕事の両立や女性活躍推進の取組みについても支援する税制を目指す。 本稿は、令和6年度税制改正大綱に示されている賃上げ促進税制の改正内容について説明するものである。文中、意見にわたる部分は筆者の私見であり、所属するいかなる組織・団体の公式見解を示すものではないことをあらかじめ申し添える。   2 現行制度の概要 現行の「賃上げ促進税制」は、大企業向けのものと中小企業向けの2種類の設計となっており、適用要件及び控除率の設定が以下の通り異なるものである(※1)。 (※1) 条文上は、第1項の取扱いを原則とする一方、第2項において中小企業者等に該当する法人に対する別途の取扱い(適用要件の充足可能性や控除率について有利なもの)を定めており、これが一般的に「中小企業向けの制度」として理解されているが、中小企業であっても第1項の措置を適用することは可能である。他方、中小企業者等に該当しない法人は1項の原則的な取扱いを選択するほかないが、反射的にこれが「大企業向けの制度」として理解されているということである。  本稿では、中小企業にしか適用されない措置のみを「中小企業向けの制度」と整理する。 (1) 大企業向け制度 (2) 中小企業向け制度   3 改正の概要 (1) 「中堅企業」区分の創設と「大企業」区分の見直し 資本金の額が1億円を超える法人のうち、常時使用従業員数2,000人以下のもの(その法人と支配関係にある法人グループの常時使用従業員数の合計数が1万人を超えるものを除く)を新たに「中堅企業」と位置付けた上で、常時使用従業員数2,000人超の法人を新たに「大企業」として再定義することとなった。 これにより、本税制は「中小企業」「中堅企業」及び「大企業」の3類型に区分して措置されることとなった。以下、どの類型に関する改正内容かを明確にするために、改正項目の横に 大企業・中堅企業・中小企業 を併記する。 (2) マルチステークホルダー方針公表対象企業の拡大 大企業 (1)の改正を踏まえ、マルチステークホルダー方針の公表が求められる法人の範囲に「常時使用従業員数2,000人超の法人」が新たに追加されることとなった。これにより、資本金の額が1億円超10億円以下の法人であっても、常時使用従業員数が2,000人を超えるものについては、マルチステークホルダー方針の公表が必要となる。 なお中堅企業のうち、資本金の額が10億円超かつ常時使用従業員数が1,000名超のものに対してマルチステークホルダー方針の公表が必要とされている点は現行制度から変更はない。 (図表1)改正後の「中堅企業」と「大企業」 (3) マルチステークホルダー方針として公表すべき事項の追加 大企業・中堅企業 公表すべきマルチステークホルダー方針における取引先に、消費税の免税事業者が含まれることが明確化された。インボイス制度の実施に伴い、消費税の免税事業者との適切な関係の構築の方針についての記載が行われるように、記載事項を明確にするための改正である。 (4) 原則控除率の引下げ 大企業・中堅企業 税額控除率の上乗せ措置によるインセンティブを強化するため、原則的な税額控除率を現行の15%から10%に引き下げることとされた。 なお、中小企業者向けの制度については変更されない(15%のまま)。 (5) 税額控除率の上乗せ措置の見直し ① 継続雇用者給与等支給額の増加要件に関する見直し 大企業・中堅企業 現行制度では、継続雇用者給与等支給額が4%以上増加した場合に、税額控除率に10%加算することとされているが、大企業については、より一層の賃上げを促進するため、継続雇用者給与等支給額の増加割合に応じて段階的な上乗せ措置が講じられることとされた。 また中堅企業については、(4)の原則控除率の引下げ部分を埋め合わせる形で、継続雇用者給与等支給額が4%以上増加した場合の上乗せ控除率が15%とされた(図表2参照)。 (図表2)税額控除率の上乗せ措置①(上乗せ控除率) ② 教育訓練費の増加要件に関する見直し 大企業・中堅企業・中小企業 現行制度では、教育訓練費の増加要件については「増加率」のみで判定され、「増加額」は考慮外とされていることから、わずかな教育訓練費の増加でも上乗せ措置の適用を受けることができる状況にあった。 今般の改正により、一定程度の教育訓練費を確保するための措置として、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額に占める割合についても適用要件として考慮することとされた。そのかわり、増加割合要件が緩和されている(図表3参照)。 なお、上乗せされる税額控除率の取扱いに変更はない(大企業・中堅企業:+5%、中小企業:+10%)。 (図表3)税額控除率の上乗せ措置②(適用要件) ③ 厚生労働省の認定制度の適用による上乗せ措置の創設 大企業・中堅企業・中小企業 子育てと仕事の両立支援や女性活躍の推進の取組みを後押しする観点から、こうした取組みに積極的な企業に対する厚生労働省による認定制度(「くるみん」、「えるぼし」)の適用対象企業に対し、税額控除率の上乗せ措置が新設された。 具体的には、一定の「くるみん認定」または「えるぼし認定」を受けている場合、税額控除率に5%を加算するものである(図表4)。 (図表4)税額控除率の上乗せ措置③(適用要件) (※2) 東京都産業労働局「えるぼし認定・くるみん認定」 (※3) 同上 (6) 繰越税額控除制度の創設 中小企業 中小企業向けの措置として、控除限度超過額について5年間の繰越控除が認められることとなった。 これは、中小企業においては未だその6割が欠損法人となっており、税制措置のインセンティブが必ずしも効かない構造となっている現状において、繰越控除制度を創設することによって、これまで本税制を活用できなかった赤字企業に対しても賃上げへの取組みを促すものであると考えられる。 ただし、実際に繰越控除する年度においては、雇用者給与等支給額が前年度から増加していることを要件とすることとされる。 この改正によって、税額控除の適用を受けられない事業年度も含め、全ての事業年度について雇用者給与等支給額の集計と別表記載が必要になると考えられる。 繰越控除の失念により税額控除の適用を受けられないという新たな税務事故を引き起こす可能性があるため、適用には最大限の注意を払う必要があろう。 (7) その他 大企業・中堅企業・中小企業 給与等の支給額から控除する「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に、看護職員処遇改善評価料及び介護職員処遇改善加算その他の役務の提供の対価が含まれないこととされる。   4 地方税の取扱い (1) 法人住民税 本税制は、中小企業者等に係る法人住民税にも適用される。すなわち税額控除後の法人税額を基礎として法人住民税(法人税割)が算定されることとなる。 (2) 事業税(外形標準課税)(※4) 法人税において賃上げ促進税制の適用要件を満たしている場合、事業税(付加価値割)の計算上、控除対象雇用者給与等支給増加額を付加価値割の課税標準から控除できることとする(雇用安定控除との調整等所要の措置が講じられる)。 (※4) 外形標準課税の適用対象法人の拡大については本稿では取り上げない。   5 改正後の制度の概要 (1) 大企業向け制度 ※事業年度終了時の資本金額が1億円超、かつ常時使用従業員数2,000人超 (2) 中堅企業向け制度 ※事業年度終了時の資本金額が1億円超、かつ常時使用従業員数2,000人以下 (3) 中小企業向け制度 ※事業年度終了時の資本金額が1億円以下 6 適用時期 令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度において適用される(3年)。 (了)

#鯨岡 健太郎
2023/12/20

《速報解説》 東証が「金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直しに関する上場制度の見直し等について」を公表~「四半期財務諸表等の作成基準」の暫定版など示す~

《速報解説》 東証が「金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直し に関する上場制度の見直し等について」を公表 ~「四半期財務諸表等の作成基準」の暫定版など示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年12月18日、東京証券取引所は、「金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直しに関する上場制度の見直し等について」を公表し、意見募集を行っている。 「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)により、四半期報告書(第1・第3四半期)が四半期決算短信に「一本化」され、その具体的な方向性については、2023年11月22日に、「四半期開示の見直しに関する実務の方針」が公表されている。 今回の見直し等は、これらを踏まえたものである。 意見募集期間は2024年1月17日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 四半期決算短信の取扱い 1 開示事項 四半期累計期間(第2四半期を除く)に係る決算の内容の開示において、四半期財務諸表又は四半期連結財務諸表(以下「四半期財務諸表等」という)として、少なくとも以下の事項を開示する。 四半期財務諸表等は、四半期会計基準等に準拠するなどして作成するものとし、上記以外の事項については省略できる。 なお、第2四半期累計期間に係る四半期決算短信については、現在の取扱いを維持する。 2 四半期財務諸表等の作成方法 四半期財務諸表等の作成方法については、「四半期財務諸表等の作成基準」を有価証券上場規程施行規則の別添として規定する(「参考」として暫定版が示されている)。 3 その他 その他作成にあたっての留意事項は、「決算短信・四半期決算短信作成要領等」において定める(「参考」として暫定版が示されている)。   Ⅲ 公認会計士又は監査法人によるレビュー 四半期累計期間(第2四半期を除く)に係る四半期財務諸表等に対する公認会計士又は監査法人(以下「公認会計士等」という)によるレビューを受けることは、原則として任意とする。 例外として、レビューを受ける場合が記載されている(直近の有価証券報告書などにおいて、無限定適正意見以外の監査意見が付される場合など)。 これは、財務諸表の信頼性確保が必要と考えられる場合に限り、公認会計士等によるレビューを義務付けるものである。   Ⅳ 上場規則の実効性の確保 1 上場会社による調査及び調査結果の報告 東京証券取引所が必要と認める場合には、上場会社に対して、必要な調査及び調査結果の報告を求めることができるものとする。 会計不正等の疑義が生じた場合などに適用することを想定したものである。 上場会社は、調査結果について開示することが必要かつ適当と東京証券取引所が認める場合には、直ちにその内容を開示する。 2 公認会計士等との情報連携の強化 上場会社は、東京証券取引所が、実効性確保措置の検討に必要と認めて、監査証明等を行う公認会計士等(当該公認会計士等であった者を含む)に対して事情説明等を求める場合には、それに協力するものとする。   Ⅴ 「買収防衛策」の用語の見直し 「買収防衛策」の用語を「買収への対応方針」又は「買収への対抗措置」に改める。   Ⅵ 実施時期等 「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)の施行の日から実施する予定である。 四半期決算短信の取扱いに関しては、施行日以後に開始する四半期会計期間(第2四半期を除く)に係る四半期決算短信から適用する予定である。 「参考」として、「改正規則の適用時期」が示されており、決算期ごとに適用時期が記載されている。 (了)

#阿部 光成
2023/12/20

《速報解説》 「中堅企業」の定義創設及び中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充・延長~令和6年度税制改正大綱~

《速報解説》 「中堅企業」の定義創設及び 中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充・延長 ~令和6年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   令和5年12月14日に公表された令和6年度税制改正大綱(以下「大綱」という)において、中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充と延長が明らかにされた。また、本制度の改正に関連して、大綱で「中堅企業」の位置付けが明確となり、中堅・中小企業による本制度の利用が可能な改正となった。 本稿では、これらの改正点を踏まえて、まず、新たに位置付けられた「中堅企業」の定義に触れ、次いで中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充・延長について解説する。 なお、大綱の把握に有用と思われる範囲で補足、図解、例示しているが、これらはあくまで大綱からの推定によるものであり、今後の情報に留意されたい。また、文中の意見に関する部分は、所属する団体や組織の公式見解ではなく筆者の私見であることを申し添える。   1 「中堅企業」の定義創設 大綱4頁によれば、「従来の大企業のうち、地域における賃上げと経済の好循環の担い手として期待される常時使用従業員数2,000人以下の企業については、新たに「中堅企業」と位置付け(太字は筆者による)」ており、大綱18頁記載の再掲文をはじめ複数の「中堅企業」の表現がみられる。本稿では、この表現をもって「中堅企業」の定義創設とする。 すなわち、「従来の大企業のうち」「常時使用従業員数2,000人以下の企業」である。 この点、中小企業については中小企業基本法第2条第1項の中小企業者を指し、その反対解釈として大企業は中小企業を除く企業であることから、大綱にしたがって、大企業、中堅企業、中小企業が下図のように整理されたといえる。 《中小企業、中堅企業、大企業の分類イメージ》 (※1) 労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」(中小企業庁:FAQ「中小企業の定義について」Q3参照) (注) 上図につき、大綱及び経済産業省「(資料2)成長力が高く地域経済を牽引する中堅企業の成長を促進する税制措置について(2023年11月)」自由民主党税制調査会資料(令和5年11月13日)、中小企業基本法、中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」(最終アクセス2023年12月17日)を参考に筆者作成。なお、便宜上、中小企業基本法の小規模企業者は省略。 また、中堅企業の定義における従業員数2,000人以下の根拠については、下図も参考になる。 (出典) 経済産業省「(資料2)成長力が高く地域経済を牽引する中堅企業の成長を促進する税制措置について(2023年11月)」自由民主党税制調査会資料(令和5年11月13日)3頁 なお、本稿の執筆時点においては、日本貿易振興機構(JETRO)が示す中堅企業(※2)の定義とは異なるので留意したい。 (※2) 確定済の直近決算の売上高が 1,000 億円未満又は常用雇用者1,000人未満の会社(会社法(平成17年法律第86号)第2条第1号に規定する会社)(日本貿易振興機構(JETRO)「中堅・中小企業の定義について」(最終アクセス2023年12月17日))   2 中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充と延長 (1) 改正前の中小企業事業再編投資損失準備金制度 改正前の中小企業事業再編投資損失準備金制度については、下記拙稿を参照いただきたい。 (2) 改正の趣旨と制度の概要(基本的考え方) 大綱の表現を踏まえれば、「雇用の7割」(大綱17頁)を占め、「経済活動の大黒柱」(大綱6頁)である中小企業の中堅企業への成長を後押しするために、中小企業事業再編投資損失準備金制度が拡充・延長された。その概要は、「成長意欲のある中堅・中小企業が、複数の中小企業を子会社化し、グループ一体となって成長していくことを後押しするため、複数回のM&Aを実施する場合には、積立率を現行の70%から最大100%に拡充し、措置期間を現行の5年から10年に延長する措置を講ずる(太字は筆者による)」(大綱6頁)ものである。この改正によって、「中小企業の従業員の雇用を確保しつつ、成長分野への円滑な労働移転」(大綱6頁)の確保が期待される。 つまり、今回の改正のポイントは、中堅・中小企業の複数回のM&Aが想定される場合の である。 なお、今回の改正を求める背景として、次の点が挙げられている。 第一に、複数のM&A(グループ化)に取り組む企業は、M&Aの実施経験がない企業や1度のM&A実施企業に比べ、売上高、営業利益、労働生産性、修正ROICの点から高い成長と生産性向上を達成している。この点から、複数のM&Aによる企業の成長を後押しするための税制措置が期待されると解する。 (出典) 経済産業省「(資料2)成長力が高く地域経済を牽引する中堅企業の成長を促進する税制措置について(2023年11月)」自由民主党税制調査会資料(令和5年11月13日)11頁 第二に、複数回のM&Aを実施する場合の経営統合のリスクが高く、財務基盤の脆弱化による資本調達コストの上昇といった課題がある。この点から、リスクの軽減を図るための税制措置が講じられることへのニーズが強いと思われる。 (出典) 経済産業省「(資料2)成長力が高く地域経済を牽引する中堅企業の成長を促進する税制措置について(2023年11月)」自由民主党税制調査会資料(令和5年11月13日)12頁 (3) 中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充・延長の主な内容 以下では、大綱の理解に必要な限りにおいて、適宜大綱本文に沿って、筆者の補足情報を加えている。 ① 本制度の対象者 青色申告書を提出する法人で産業競争力強化法の改正法の施行の日から令和9年(2027年)3月31日までの間に産業競争力強化法の特別事業再編計画(仮称)の認定を受けた認定特別事業再編事業者(仮称)が対象である(大綱67頁)。大綱の67頁及び74~75頁では触れられていないが、大綱の前後の記載内容を踏まえれば、本制度の対象者は、前述の要件を満たす中堅・中小企業であると解する。 ② 損金算入要件 改正中小企業事業再編投資損失準備金の損金算入要件は以下の通り。 改正上の留意点 ⇒ 取得価額は1億円以上~100億円以下であり、一定の表明保証保険契約の締結が除かれる。 改正上の留意点 ⇒ 本改正内容に従って最初に取得した株式等については、90%までの損金算入できる(参考:現行70%)。 さらに、今回の改正では、上記ア~ウの例で示した株式等(たとえば対A社株)以外の株式等(たとえばB社株)の取得価額の100%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときの損金算入の拡充も図られた(大綱67頁)。よって、複数回のM&Aの税制メリットが拡大したといえる。 すでに改正前の中小企業事業再編投資損失準備金制度(最大70%損金算入)を活用済みの企業では、改正中小企業事業再編投資損失準備金制度も活用することで、他のM&Aの際に90%損金算入の適用を受け、さらに別のM&Aの際に100%損金算入の適用を受ける可能性も広がる。この点で、目先のキャッシュに対する懸念が和らぐ。 ③ 準備金の取崩し (4) 登録免許税の軽減措置の拡充 本制度の適用に関連して、吸収合併等を伴うグループ化の取組みで発生する登録免許税についての軽減措置が拡充される予定である(大綱47頁)。 このほか、中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充・延長にあたっては、下図も参照されたい。 (出典) 経済産業省「(資料2)成長力が高く地域経済を牽引する中堅企業の成長を促進する税制措置について(2023年11月)」自由民主党税制調査会資料(令和5年11月13日)10頁 (了)

#荻窪 輝明
2023/12/19

《速報解説》 ストックオプション税制の緩和措置~令和6年度税制改正大綱~

 《速報解説》 ストックオプション税制の緩和措置 ~令和6年度税制改正大綱~   税理士 中尾 隼大   令和5年12月14日に自由民主党・公明党が公表した「令和6年度税制改正大綱」では、いわゆるストックオプション税制について緩和措置等が盛り込まれたため、本稿ではそのポイントを解説したい。   (1) 概要と目的 ストックオプションを行使した際に、経済的利益部分の課税が繰り延べられるその権利行使価格の上限について、今回の税制改正対応において最大年3,600万円に引き上げることが示された。現行は1,200万円であるため、3倍の水準となる。 改正の目的は、スタートアップが資金や人材を確保しやすい環境を整えるとともに、出口がIPOに偏重している現状において、M&Aの場面でも機動的に対応できるようにすることで、M&Aを促進することにある旨が示されている。   (2) ストックオプション税制の改正点 現行制度からの改正点は次のようになる。 その他、ストックオプション税制の適用対象者について、取締役や従業員に加え、所定の認定を受けた企業では、高度な知識や技能を有する社外高度人材も含まれるとされていたところ、今回の税制改正大綱にて以下の緩和が実施されると示された。 (了)

#中尾 隼大
2023/12/19

《速報解説》国際最低課税額に対する法人税の見直し~令和6年度税制改正大綱~

《速報解説》 国際最低課税額に対する法人税の見直し ~令和6年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 霞 晴久   市場国への新たな課税権の配分(「第1の柱」)とグローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)の2つからなる国際合意(※1)に基づき、政府与党が12月14日に公表した令和6年度税制改正大綱(以下「大綱」という)では、令和5年度税制改正に引き続き、OECDより新たに発出されたガイダンスや、国際的な議論の内容を踏まえ、一層の法制化を進めることとされた。 (※1) 2021(令和3)年10月8日付のOECD/G20による「BEPS包摂的枠組み」を指す。   1 国際最低課税額に対する法人税等の見直し 「第2の柱」は、年間総収入金額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループを対象とし、一定の適用除外部分を除いた所得について各国ごとに最低でも実効税率15%(最低税率)の課税を確保する仕組みである。「第2の柱」は、①所得合算ルール(IIR(※2))、②軽課税所得ルール(UTPR(※3))、及び③国内ミニマム課税(QDMTT(※4))の3つのルールで構成されており、令和5年税制改正で①が創設された。①は、企業グループの子会社等が軽課税国に所在する場合、その親会社等に対しその所在地国で最低税率に達するまで課税が行われる制度であるのに対し、②は、企業グループの親会社の所在地国における実効税率が最低税率を下回る場合、子会社等の所在地国で最低税率に達するまで課税される制度であるため、②は①による課税を補完する機能を有する。大綱では明示されていないが、令和6年度税制改正において、①及び②は令和5年度税制改正の際の整理に従い同様の対応とされる(※5)。一方、③は、企業グループに属する会社等の所在地国における実効税率が最低税率を下回る場合に、当該所在地国で、その最低税率に達するまで課税する制度であり、他国における①及び②を減殺する効果において、自国に所在する会社等を防衛する機能を有する。③は、2024年以降も引き続きOECDにおける議論が予定されており、国際的な動向を踏まえ、令和7年度税制改正以降の法制化で検討される見込みである。 (※2) Income Inclusion Rule (※3) Undertaxed Profits Rule (※4) Qualified Domestic Minimum Top-up Tax (※5) (企業グループの)構成会社等がその所在地国において一定の要件を満たす自国内最低課税額に係る税を課することとされている場合には、その所在地国に係るグループ国際最低課税額を零とする適用免除基準を設ける等の措置が導入される。 なお、我が国の国際最低課税額に対する法人税の制度適用開始は、2024年(令和6)年4月1日以降開始会計年度とされ、その申告・納付期限は会計年度終了後の1年3ヶ月後とされる。ただし、最初の申告・納付期限は1年6ヶ月以内とされており、3月決算法人の場合の最初の申告・納付期限は2026(令和8)年9月30日となる。   2 地方税との関係 (1) ①IIR及び②UTPRについて 外国に所在する法人等が稼得する所得を基に課税する仕組みであり、課税対象と地方公共団体の行政サービスとの応益性が観念できないため、地方税である法人住民税・法人事業税(特別法人税を含む)の課税は行わないこととされた。他方、現行の税率に基づき、法人税額と地方法人税額(国税)の比率は、907:93となるよう制度が措置される。 (2) ③QDMTTについて ③QDMTTは、内国法人等が稼得する所得を基に課税する仕組みであり、こちらは応益性が観念できることから、国・地方の法人課税の税率の比率を前提とし、法人住民税・法人事業税相当部分は地方法人税に含めて国で一括徴収することとされる。その場合の法人税額と地方法人税額の比率は、753:247となる。   3 外国子会社合算課税との関係 国際的なルールにおいても、「第2の柱」と外国子会社合算税制は併存するものとされている。すなわち、「第2の柱」導入以降も、外国子会社を通じた租税回避を抑制するための措置として、外国子会社合算税制は引き続き重要とされる。しかしながら、対象企業にとって、2つの制度に対応することで追加的な事務負担が生じることは否めない。そこで、大綱では、外国子会社合算税制について可能な範囲で追加的な見直しを行うとともに、令和7年度税制改正以降に見込まれる更なる「第2の柱」の法制化を踏まえて、必要な見直しを検討するとしている。   4 今後の動向 「第1の柱」である市場国への新たな課税権の配分については、現在、多国間条約の早期署名に向け、各国間で議論されている。大綱では、今後、わが国が市場国として新たに配分される課税権に係る課税のあり方、地方公共団体に対して課税権が認められることとなる場合の課税のあり方、条約上求められる二重課税除去のあり方等について、国・地方の法人課税制度を念頭に置いて検討するとしている。 (了)

#霞 晴久
2023/12/19

《速報解説》 事業承継税制における特例承継計画の提出期限延長~令和6年度税制改正大綱~

 《速報解説》 事業承継税制における特例承継計画の提出期限延長 ~令和6年度税制改正大綱~   太陽グラントソントン税理士法人 パートナー 税理士 日野 有裕   令和5年12月14日に公表された「令和6年度税制改正大綱」(与党大綱)において、事業承継税制の承継計画の提出期限について、以下の改正が行われた。 上記の改正は、新型コロナウイルスの影響の長期化や急激な物価上昇により、経営者の事業承継が遅れているため、早期に事業承継への取組みを促すために行われる。 なお、法人版事業承継税制(特例措置)及び個人版事業承継税制の適用期限は、それぞれ2027年(令和9年)12月31日、2028年(令和10年)12月31日と従来のままであるので注意が必要だ。 また、与党大綱では法人版事業承継税制(特例措置)について、「令和9年12月末までの適用期限については今後とも延長を行わない」旨が改めて明記されている(与党大綱18頁)。 (了)

#日野 有裕
2023/12/18
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