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「生産等設備投資促進税制」適用及び実務上のポイント 【第2回】「適用にあたっての基本要件」

「生産等設備投資促進税制」 適用及び実務上のポイント 【第2回】 「適用にあたっての基本要件」   マネーコンシェルジュ税理士法人 税理士 村田 直   ◆要件把握のポイント 前回の第1回は、「生産等設備投資促進税制」について、導入された経緯や背景、税制の全体像と条文構成をお伝えした。 今回からは、具体的な要件の検討に入っていきたい。 大まかに述べると、「生産等設備投資促進税制」は以下の①及び②の要件を満たした場合、新たに国内において取得等をした機械・装置について、30%の特別償却又は3%の税額控除(法人税額の20%を限度)を認める、というものである。 従来の投資優遇税制と大きく異なるのは、投資する固定資産1単位当たりの取得価額要件が全くなく、「国内における生産等設備への年間総投資額」に対しての要件として規定されている点である。 ただし、「国内における生産等設備への年間総投資額」に対する要件は前提条件に過ぎない。実際に特別償却や税額控除の対象になるのは、「生産等設備」ではなく、「機械・装置」となる。 このあたりの要件が持つ意味をしっかり理解しておくことが、この税制を活用する上での大きなポイントとなるであろう。 さらに、この「生産等設備投資促進税制」においては、「生産等設備」や「比較取得資産総額」などといった耳慣れない用語が登場する。こういった用語の定義もしっかり把握しておく必要があるだろう。 また、特別償却については30%であるため、通常の設備投資税制と変わりないが、税額控除については“3%”であるところもこの税制の特徴である。 既存の「中小企業投資促進税制」などについては、税額控除は7%となっており、その違いを意識しておかなければならない。   ◆基本項目についての要件確認 では、まずは基本項目について、「生産等設備投資促進税制」の要件を確認していくこととする。 〈対象者〉 対象者は、「青色申告書を提出する法人」、「青色申告書を提出する個人」となっている。 法人については、青色申告のみが要件となっているため、中小企業者かどうかを問わず、大企業も含めて適用できる。 これは、特別償却だけでなく税額控除についても同様で、資本金要件などはないため、大企業でも税額控除が適用できる制度となっている。 〈対象期間〉 対象期間は、法人の場合、「平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度」となっており、2年間の時限措置となる。ただし、設立の日(外国法人にあっては外国法人に該当することとなった日、公益法人等及び人格のない社団等にあっては収益事業を開始した日)を含む事業年度、解散(合併による解散を除く)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度を除く、とされている。 これは、設立事業年度は前事業年度との比較ができないこと等を踏まえての規定と推察される。 個人については、「平成26年又は平成27年の各年」とされている。ただし、平成26年又は平成27年に事業を開始した個人のその開始した日の属する年(相続又は包括遺贈によりその事業を承継した日の属する年を除く)及びその事業を廃止した日の属する年を除く、とされており、法人と同様の規定がされている。 〈生産等設備の「取得等」〉 またこの税制においては、「生産等設備の取得等」が前提となるわけだが、その「取得等」については、取得又は製作若しくは建設をいう、とされている。 なお、法人の場合には、合併、分割、贈与、交換、現物出資又は法人税法2条12号の6に規定する現物分配による取得その他代物弁済としての取得を除く、としている。個人の場合も同様に、相続、遺贈、贈与、交換又は法人税法2条12号の6に規定する現物分配による取得その他代物弁済としての取得を除く、としている。 所有権移転外リースについては、平成20年4月1日から原則売買処理に変更になっており、税制においても、平成19年度税制改正によって売買処理が原則となっている。そのため、本税制においても、所有権移転外リース取引により取得した機械等は税額控除の対象になる。ただし、特別償却については対象外となる(個人も同様)。 〈特別控除の留意点〉 また、特別控除については、適用対象年度における税額控除限度額が、その法人の適用対象年度の所得に対する法人税の額の20%に相当する金額を超えるときは、その控除を受ける金額はその20%に相当する金額が限度となり、その20%超部分についての翌期への繰越しは認められていない(個人も同様)。 〈特別償却の留意点〉 なお、特別償却については、機械等の償却費として損金に算入した金額が、普通償却費と特別償却費(取得価額の30%)の合計額に満たない場合には、その機械等を事業の用に供した事業年度の翌期の所得の金額の計算上、その機械等の償却費として損金に算入する金額は、その機械等の普通償却費とその満たない金額以下の金額で損金に算入した金額との合計額に相当する金額とすることができる(個人も同様)。 次回は、本制度適用時の重要なポイントとなる「生産等設備」「年間総投資額」の要件について解説する。 (了)

#No. 22(掲載号)
#村田 直
2013/06/06

中小企業のM&Aでも使える税務デューデリジェンス 【第3回】「ケース・スタディ(中小企業の買収)」

中小企業のM&Aでも使える 税務デューデリジェンス 【第3回】 「ケース・スタディ(中小企業の買収)」   公認会計士・税理士 並木 安生   第3回では、前回までに解説した各買収形態における税務上の取扱い、及び税務デューデリジェンスの具体的内容を、実際の買収時にどのように当てはめ活用するかについて、事例を用いて解説する。   1 前提 買い手B社が、オーナー株主(個人)が所有する中小企業A社に対して、株式交換の手法による買収を申し出たとする。 A社とB社は買収以前において資本関係が全く存在しない、競合他社同士であるとする。   2 税務デューデリジェンス結果の活用 税務デューデリジェンスの結果発見した税務リスクの性質次第で、買収価額への反映方法、買収実行の対応が異なってくる。 以下、関係会社間取引に係る寄附金認定の税務リスクが発見された場合を例として、パターンごとの対応を記載する。 ① 税務リスク額が試算可能な場合 A社に対して税務デューデリジェンスを実施した結果、過年度における関係会社への役務提供の際に用いた取引価額が税務上の時価を上回っている可能性があることが判明したとする。買い手としては、法人税基本通達9-4-2(子会社再建のための支援損に係る通達)等を検討した結果この差額について損金算入できるかどうか疑わしいと判断したため、税務上寄附金として認定する必要があったと考えたが、過年度の法人税確定申告書上で加算・社外流出処理を行っていなかったものとする。 買収交渉の結果、最終的にオーナー株主もその税務リスクの内容について合意し、かつ、税務上の時価が算定できる場合は、リスク金額を株式交換比率算定の基礎となるA社株式買収価額に織り込むことになる。 この点、株式価額の算定方法としていわゆるDCF法を用いる場合は、将来納税する可能性のある追徴税額を試算し、割引現在価値を算出する基礎となる将来のキャッシュ・フローを減額させることとなる。また、いわゆる時価純資産価額法を用いる場合は、税務リスク金額を未払法人税や繰延税金資産・負債の額へ反映させ、時価資産額を減額させることとなる。 ② 買収交渉で見解の相違が生じた場合又は税務リスク額が試算不可能な場合 関係会社への役務提供の取引価額に係る税務上の時価の考え方について、買い手と売り手との間で見解の相違が生じてしまった場合(例:オーナー株主としては、実際の取引価額は税務上の時価と一致しており、寄附金認定リスクは生じる恐れはないものと主張する場合)、実務上は買収契約書(株式交換契約書)上に「表明保証条項」を織り込むことで対応するケースが多い。 つまり、A社におけるこの役務提供取引に関して税務リスクはないとオーナー株主(売り手)に表明させ、買収後の税務調査で寄附金認定による追徴課税を受けた場合は、納税による金銭的負担を売り手に負わせるという条項を織り込むことで、買い手は税務リスクを回避・軽減することが可能となる。 また、役務提供の取引価額に係る税務上の時価について試算・算出が困難な場合(例:役務提供の内容と取引価額との関係性が明らかにアンバランスであり、適正な税務上の時価に基づく取引を行っていない可能性が高いと考えられるものの、その算出の明確な指針がないこと等から時価の算定が困難である場合)についても、上記と同様に表明保証条項を買収契約書上に織り込むことで対応するケースが多いといえる。 ③ 買い手にとって税務リスクが受入困難な場合 役務提供に係る寄附金認定の税務リスクが定量的・定性的に非常に大きく、買収の実行に著しい悪影響を及ぼすと判断された場合、買収自体を断念せざるを得ないケースもある。 ただし、株式交換以外の買収形態に変更することで税務リスクを遮断し、買収を実行するという解決策も考えられる。 株式交換の場合は、買収対象会社A社の買収前の事業年度に係る税務リスクを買収後も引き継ぐことになるが、例えば事業譲渡等の他の方法を採用した場合は、原則として買収前の税務リスクを引き継ぐことはなくなるため、解決策として適した代替的方法であると考えられる(前回参照)。   3 株式交換の実行可能性の検討 株式交換は税務上の組織再編行為に該当するため、組織再編税制適用下の影響を検討した上で、株式交換が買収形態として利用できるか否かを判断することが必要である。 主な検討ポイントは、次のとおりである。 ① 適格要件の判定及び非適格再編時の課税への影響 本事例は、買収直前の時点において、買収対象会社A社と買い手B社との間に資本関係がないことから、資本関係が50%以下の場合の適格要件、いわゆる共同事業要件(下表aからgまでのすべてを満たす必要がある。ただし、e-1とe-2はいずれか1つを満たせばよい)を判定する必要がある。 なお、この株式交換が非適格再編として判定される場合、A社が保有する一定の資産に関して評価損益を税務上認識しなければならない。特に資産評価益は課税対象となるため、納税による資金負担の影響は非常に大きくなる可能性がある。 そのため、買収前における事前判定の結果、非適格再編として認定される恐れがある場合は、予め評価対象となる資産を洗い出し、その評価損益を試算しておくことが有用であるといえる。 ② 代替案の検討 上記2③でも触れたとおり、税務デューデリジェンスの結果次第では、他の買収形態へ変更せざるを得ないケースもある。 その場合、予め網羅的な検証を行い、買収手続を抜かりなく進めるためにも、同時並行的に代替案の検討も行っておくことが効果的である。 例えば、代替案として事業譲渡が考えられる場合、事業譲渡対象資産・負債の時価及び譲渡損益の試算、消費税計算に与える影響等を分析しておくことが望まれる。 〈株式交換を活用する際のポイント〉 [ステップ1] [ステップ2] (了)

#No. 22(掲載号)
#並木 安生
2013/06/06

他の者を介して金銭の支出をした場合の使途秘匿金課税

他の者を介して 金銭の支出をした場合の 使途秘匿金課税   日本税制研究所研究員 朝長 明日香   企業の違法又は不当な支出を抑制するという目的の下、平成6年度税制改正において使途秘匿金課税制度が創設されたことは、周知のとおりである。 本稿では、法人が他の者を介して金銭の支出をした場合の使途秘匿金課税制度の適用関係について解説することとする。 金銭の支出が他の者を介して行われた場合には、その支出をした法人の帳簿書類には他の者の氏名等が記載されており、他方、他の者の帳簿書類にはその金銭を受け取った者の氏名等が記載されていないことが考えられる。 このようなケースにおいては、その金銭の支出が使途秘匿金の支出に該当するとされるのか否か、また、使途秘匿金の支出に該当するとされる場合には、いずれの者に対して追加課税がなされるのかといった疑問が生ずることとなる。   1 使途秘匿金課税制度の概要 法人が使途秘匿金の支出をした場合には、その法人の各事業年度の所得に対する法人税の額は、その使途秘匿金の額に40%を乗じた金額を加算した金額とされている(措法62①)。 この「使途秘匿金の支出」とは、法人がした金銭の支出(贈与、供与その他これらに類する目的のためにする金銭以外の資産の引渡しを含む)のうち、相当の理由がなく、相手方の氏名等をその法人の帳簿書類に記載していないものをいい、取引の対価としてされたことが明らかなものは除かれる(措法62②)。 相手方の氏名等を帳簿書類に記載しているのか否かの判定は、その事業年度終了の日に行うこととされており(措令38①)、その事業年度に係る確定申告の期限までに帳簿書類に記載されている場合には、その事業年度終了の日に記載があったものとみなされる(措令38②)。 使途秘匿金課税制度は、「使途秘匿金の支出」を課税標準として追加的に法人税を課すという税額の計算に関する仕組みであり、同制度の適用関係を考えるに当たっては、所得の金額の計算の場面と使途秘匿金課税制度による税額の計算の場面とを混同しないように注意しなければならない。 所得の金額の計算においては、法人税法22条3項各号(各事業年度の所得の金額の計算)に掲げる額のいずれかに該当するものが損金とされる。 例えば、ある会社から商品を仕入れたがその会社の名称や所在地を帳簿書類に記載していないという場合においても、仕入の事実を推認し得るときには、その仕入金額は損金の額に算入されることとなる。 ただし、金銭の支出の事由(使途)が明らかでない場合には、その金銭の額は、法人税法22条3項各号に掲げる額に該当するものと認めることができず、損金不算入とされる(法基通9-7-20)。 金銭の支出に係る取引自体が架空と認められる場合には、その金銭の額は、寄附金と認められない限り、損金の額に算入する余地がないこととなる。 このような所得の金額の計算に対し、使途秘匿金課税制度による税額の計算においては、相手方の氏名等の帳簿書類への記載の有無を「使途秘匿金の支出」に該当するのか否かの判断基準としているため、相当の理由がなく、相手方の氏名(名称)、住所(所在地)及びその事由を帳簿書類に記載していない場合(注)には、その金銭の支出は「使途秘匿金の支出」に該当することとなり、その支出した額に対して追加課税がなされることとなる。 (注) 租税特別措置法62条2項においては、「その相手方の氏名又は名称及び住所又は所在地並びにその事由」を帳簿書類に記載していないものと規定されているため、「若しくは」と「又は」という用語を用いて規定される場合とは異なり、「氏名又は名称」、「住所又は所在地」と「その事由」の3つのいずれをも帳簿書類に記載していないもののみが「使途秘匿金の支出」ということになる。   このように、使途不明金の支出に該当するものが、直ちに、「使途秘匿金の支出」として追加課税の対象となるわけではなく、その金銭の支出に損金性があるのか否かということと「使途秘匿金の支出」に該当するのか否かということは明確に区別して判断する必要がある。   2 他の者を介して金銭の支出をした場合の使途秘匿金課税 金銭の支出の相手方の氏名等を故意に伏せている場合には、その支出をした法人に対して、法人税の追加課税が行われることとなるわけであるが、使途秘匿金の支出を隠ぺいするために、下図のように、他の者を介して金銭を支出するといったケースも見受けられる。 ※A社及びB社、B社及び「仕入先」との間の外注と仕入の取引はいずれも実態のないものであり、売上割戻しや交際費その他対価性のある支払いでもない。   他の者を介して金銭を支出するといったケースにおいては、金銭の支出をした法人(A社)及び他の者(B社)の双方に使途秘匿金課税制度による追加課税がなされるのか、それとも、A社又はB社のいずれか一方に追加課税がなされるのか、という疑問が生ずることとなる。 また、いずれか一方に追加課税がなされるという場合には、A社とB社のいずれに追加課税がなされるのか、という疑問も生じてくる。 このような疑問を解決するために、租税特別措置法施行令38条3項において、次の規定が設けられている。 このように、租税特別措置法施行令38条3項においては、帳簿書類に記載された者が単なる名義人であって、その者以外の者に金銭の支出がなされていると認められるものについては、その支出をした法人(上図においては、A社)の「使途秘匿金の支出」に該当するものとされている。 他の者を介して金銭の支出をした場合におけるその金銭の支出がその支出した法人の「使途秘匿金の支出」に該当することは上記のとおりであるが、租税特別措置法施行令38条3項に規定する「その記載された者」(上図においては、B社)における金銭の受取り及び支払いの処理をどのように行うのか、ということに関しては、疑問が残るところである。 A社から無償で金銭を受け取ったと考えれば、「受贈益の額」として益金の額に該当することとなり、仕入先へ無償で金銭を交付したと考えれば、法人税法37条(寄附金の損金不算入)の「寄附金の額」に該当することとなる。これらの処理は、B社における消費税法上の課税売上割合や仕入税額控除の計算にも影響を及ぼすこととなるため、慎重に判断しなければならない。 しかし、本件のように、他の者を介して金銭の支出をするといったケースにおいては、B社がA社から受け取った金銭を仕入先へ支出することが当初から決められていると考えられること、そして、租税特別措置法施行令38条3項において、本件のB社が該当することとなる「その記載された者」が使途秘匿金を支出するに当たって通ずる者と理解されていることからすると、B社においては、A社において「使途秘匿金の支出」とされるものに関しては、単に自己を通過する金銭と考えて、「仮受金」等の科目をもって処理するのが適当であると考えられる。 以上の点を踏まえて、上図のケースのA社及びB社の処理を是正する場合の取扱いを考えてみると、次の2のとおりとなる。   2 上記1の図のケースにおける各法人の税務上の取扱い (1) A社における取扱い ① B社への「外注費」2,000,000円のうちの1,500,000円の取扱い A社がB社への「外注費」として支出した2,000,000円のうち、1,500,000円については、実際にA社がB社に外注を行ったという事実がなく、架空の取引であると認められるものであり、法人税法22条3項各号に掲げる額に該当しないため、損金の額に算入されない。 また、この1,500,000円の支出に関しては、「使途秘匿金の支出」に該当することから、600,000円(1,500,000円×40%)の追加課税がなされることとなる。 ② B社への「外注費」2,000,000円のうちの500,000円の取扱い A社がB社への「外注費」として支出した2,000,000円のうち、500,000円は、B社に不正行為に加担してもらうために支払われた金額である。 このため、このB社への不正加担料500,000円は、法人税法55条1項(不正行為等に係る費用等の損金不算入)の「隠ぺい仮装行為に要する費用の額」に該当し、損金の額に算入されないこととなる。 (2) B社における取扱い ① A社からの「売上」2,000,000円のうちの1,500,000円の取扱い B社がA社からの「売上」として支出した2,000,000円のうち、1,500,000円についても、「売上」の事実がない架空の取引によるものであり、法人税法22条2項の「収益の額」に該当しないため、益金の額に算入されない。 この1,500,000円に関しては、「仮受金」等として処理するのが適当であると考えられる。 ② A社からの「売上」2,000,000円のうちの500,000円の取扱い B社が不正行為に加担したことで受け取った不正加担料500,000円に関しては、A社に対する役務提供の対価であることは間違いなく、法人税法22条2項の「収益の額」に該当するものであるため、「雑収入」等として益金の額に算入される。 ③ 仕入先への「仕入」1,500,000円の取扱い B社が仕入先への「仕入」として計上した1,500,000円については、上記(1)①と同様の理由により、架空の取引であると認められるため、損金の額に算入されない。 また、B社における仕入先への1,500,000円の支出は、A社からの「仮受金」等の払出しとして処理するのが適当であると考えられる。 (了)

#No. 22(掲載号)
#朝長 明日香
2013/06/06

法人税の解釈をめぐる論点整理 《減価償却》編 【第1回】

法人税の解釈をめぐる論点整理 《減価償却》編 【第1回】   弁護士 木村 浩之   1 はじめに 減価償却をめぐっては、もとより、税務調査等において、資本的支出と修繕費の区分が問題となることが非常に多いといえるが、そのほか、減価償却資産とその他の資産との区分(減価償却資産の範囲)、固定資産の取得価額、少額の減価償却資産等の判定、耐用年数表の適用、除却損失の計上など、その論点は多岐にわたっている。 また近年、減価償却に関する重要な税制改正が相次いでなされており、償却限度額を計算するに当たっても、留意すべき事項は多いといえる。 そこで、本稿では、減価償却をめぐる主要な論点について整理し、6回にわたって解説することとしたい。取り上げる予定のテーマは、以下のとおりである。   2 減価償却資産の範囲 (1) 減価償却資産の一般的要件 減価償却の対象となる資産は、法人税法上、「建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう」とされている(法法②二十三)。 これを受けた政令は、「棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)」として、減価償却資産に該当する資産を具体的に列挙した上で、その範囲から一定の資産を除外している(法令13)。 また、明文に規定はないものの、他人の保有する資産を事業の用に供したとしても、それは自己の減価償却資産とはならないのであるから、減価償却の対象となる減価償却資産については、「自己が保有するものであること」が当然の前提であると解されている。 そこで、減価償却資産に該当するための一般的な要件として、 という要件が導かれる。以下、順に解説する。 (2) 棚卸資産等に該当しないこと ア 棚卸資産との区分 棚卸資産とは、法人税法上、「商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産で棚卸しをすべきものとして政令で定めるものをいう」とされ(法法②二十)、政令がこれらをより具体的に列挙している(法令10)。 列挙されているものに共通する考え方は、棚卸資産となるのは、販売用の資産であるか、あるいは販売用資産の製造等に使用されて短期間に消費されるものであるということである。 したがって、次の要件のいずれかを満たすものは棚卸資産に該当し、減価償却資産と区分されることになる。 例えば、①についていえば、販売促進を目的とした展示物がある場合、それを後に販売する予定であれば棚卸資産に該当することとなり、販売が予定されていなければ減価償却資産に該当することとなる。 また、②についていえば、製造に使用される資材がある場合、それが反復継続して使用されず、短期間に消費されるものであれば、棚卸資産(貯蔵品)に該当することとなり、反復継続して使用されるものであれば、減価償却資産に該当することとなる。 イ 繰延資産との区分 繰延資産とは、法人税法上、「法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもので政令で定めるものをいう」とされ(法法②二十四)、政令は、「法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるもの」として、繰延資産に該当するものを具体的に列挙した上で、その範囲から一定のものを除いている(法令14①)。 この繰延資産から除かれるものとして、「資産の取得に要した金額とされるべき費用(固定資産の取得価額を構成するもの)」がある。このことから、法人が支出する費用のうち、固定資産の実質的な対価となるものについては繰延資産には該当せず、そのような対価関係のない事実上の効果を有するにすぎないものが繰延資産に該当することになる。 例えば、商標や意匠(デザイン)等の作成費用については、権利として登録する場合には、その実質的な対価として権利(固定資産)の取得価額を構成するのに対して、権利として登録しない場合には、そのような対価関係のない事実上の効果を有するにすぎないものとして、固定資産ではなく、繰延資産に該当し得ることになる。 (3) 事業の用に供していること 「事業の用に供している」というためには、単に「資産を保有している」というにとどまらず、その資産を実際に使用し、それが収益を生む源泉となっていると認められることが必要である(最判平成18年1月24日・民集60巻1号252頁参照)。 したがって、いわゆる稼働休止資産については、収益を生む源泉とはなっていないことから、事業の用に供しているとはいえず、減価償却資産とはならない。 もっとも、現実に収益を生んでいないとしても、単に保管するだけにとどまらず、いつでも事業の用に供することができるように維持管理等されているものについては、潜在的には収益の源泉となるべきものであるから、減価償却資産に該当し得ると解される。 例えば、賃借人のいないマンションであっても、入居者を募集している場合には事業の用に供しているといえるのであり、減価償却資産に該当することになる。また、稼働休止中の資産であっても、稼働中の資産の控え(スペア)等としてメンテナンスを継続されている場合には、減価償却資産に該当することになる(法基通7-1-3参照)。 (4) 時の経過により減価すること 減価償却資産に該当するためには、時の経過により減価する(価値が低減する)ものであることが必要である。ここでいう減価には相場の変動といったものを含まず、資産そのものが消耗等することによって減価するものであることが必要である。 したがって、土地等が減価償却資産には該当しないことはもちろん、美術品、芸術品、骨董品、クラシックカーなど、主にその資産が持つ物理的な効用以外に大きな価値が認められているものについては、減価償却資産には該当しない(法基通7-1-1参照)。 (5) 自己が保有する資産であること 減価償却の対象となる資産は、原則として、自己が所有する資産である必要がある。ただし、次の例外がある。 ア 形式的な所有権の場合 自己が所有する資産であっても、その所有権が形式的なものにすぎない場合には、実質的な資産価値を保有するものとはみられず、減価償却資産とはならない。逆に、他人が所有する資産であっても、その所有権が形式的なものにすぎず、自己が実質的な資産価値を保有するとみられる場合には、減価償却資産となり得る。 例えば、自己所有の資産を譲渡担保によって所有権移転した場合であっても、その所有権移転は担保提供を目的とした形式的なものであり、実質的な資産価値の移転を伴ったものとはいえないことから、その資産は自己が保有するものといえる。 また、同様に、自己が購入した資産を所有権留保によって所有権移転していない場合であっても、その留保された所有権は担保目的の形式的なものであり、実質的な資産価値の移転はあるといえることから、その資産は自己が保有するものといえる。 イ 他人の資産に対する資本的支出の場合 他人の資産に対する資本的支出であっても、その価値を実質的に保有するとみられる場合には、減価償却資産となり得る(耐通1-1-4参照)。すなわち、賃借した他人の土地や建物に資本的支出をした場合であっても、その価値が増加した部分を自己が使用収益し、かつ、その使用収益に関する何らかの権利性が認められるのであれば、自己の保有する減価償却資産に該当することになる。 裁判例においても、自己の事業の用に供している他人の資産につき、資本的支出があった場合には、仮にその資産を正当に使用する権限がなかったとしても、実際に使用収益しており、かつ、費用償還請求権などの権利を有している場合には、その実質的な価値を保有するものとして、自己が保有する減価償却資産に該当することが認められている(大阪高判昭和38年7月18日・税資37号795頁参照)。 これに対して、資本的支出によって価値が増加した部分に権利性があるとまでは認められず、その実質的な価値を保有するものではない場合には、繰延資産又は寄附金に該当することとなる。 なお、賃借建物に対する造作についても、以上と同様に解することができる(耐通1-1-3参照)。 次回は固定資産の取得価額について整理する。 (了)

#No. 22(掲載号)
#木村 浩之
2013/06/06

交際費課税Q&A~ポイントを再確認~ 【第2回】「交際費に該当しない支出」

交際費課税Q&A ~ポイントを再確認~ 【第2回】 「交際費に該当しない支出」   公認会計士・税理士 新名 貴則   税務上の交際費等は、以下のとおり定義されている(措法61の4③)。 ただし、次に掲げる費用のいずれかに該当するものは除くとしている。 このうち②については次回以降に解説することとし、今回は①及び③について解説する。 まず①については、「交際費等」と「福利厚生費」の区分の問題である。 会社としては従業員に対する福利厚生のつもりで支出したものでも、そのすべてが税務上も福利厚生費として認められるとは限らない。つまり、会社としては福利厚生費のつもりでも、税務上は交際費等や給与に該当してしまう場合もある。 そこで、「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用」は、税務上の交際費等には該当しない(福利厚生費になる)と規定されている(措法61の4③一)。 また、この他にも次のような費用は、交際費等ではなく福利厚生費として扱う(措通61の4(1)-10)。 しかし、やはりここでも「通常要する費用」の判断が必要になる。あくまで「社会通念上妥当な範囲の支出」であるかどうか、という基準で判断することになるので、判断が難しいケースも多い。 ひとつの判断材料として、社員旅行費用を福利厚生費として処理できる基準は以下のとおりとされる。 ただし、上記の条件を満たしている場合でも、旅行に参加しなかった者に金銭を支給する場合には、参加・不参加に関係なく全員に対して給与を支給したと判断されるので、注意が必要である。   次に③ついて、この「政令で定める費用」には、以下のものがある(措令37の5②)。 (了)

#No. 22(掲載号)
#新名 貴則
2013/06/06

小説 『法人課税第三部門にて。』 【第9話】「優良法人の税務調査(その3)」

小説 『法人課税第三部門にて。』 【第9話】  「優良法人の税務調査(その3)」  公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   (前回のつづき) 午後からは、睡魔との戦いである。 伝票をめくる渕崎統括官の手が止まる。瞼が重く、ついつい心地よい眠りに誘われる。 渕崎統括官は、眠りから逃れるために、異常な力を込めて伝票をめくった。 田村上席は、源泉徴収簿からパートの氏名とその支給額を写している。 時計の針は、午後2時を示している。 テーブルを挟んで座っている会長は、先ほどから眼をつむっている。吉田税理士は目を開けているが、時々、眠気を払うように、頭を振っている。齋藤課長は、頭を下げて、完全に眠っている。耳を澄ますと、小さなイビキが聞こえる。 「・・・ところで・・・」 渕崎統括官が声を発する。 「平成23年分の領収書の綴りは、どこにありますか?」 急に声をかけられた齋藤課長は、驚いた様子で頭を上げた。 「・・・平成23年分、ですか?」 齋藤課長は、少しふらつきながら立ち上がると、ゆっくりと部屋の片隅に置かれている段ボールの方へ向かった。 「・・・すみませんが・・・」 今度は、田村上席調査官が吉田税理士に向かって、尋ねる。 「・・・この2人のパートの方、住所が記載されていないのですが・・・」 吉田税理士は立ち上がって、源泉徴収簿を覗いた。 「齋藤課長、この2人の住所・・・分かりますか?」 齋藤課長は、開いた段ボールから領収書の束をつかみながら、振り返る。 「・・・誰の住所ですか?」 「柴田さんと・・・宮崎さんですが・・・」 田村上席の声を聞いて、齋藤課長は頷く。 「住所を書いてませんか?・・・ちょっと調べますから待ってください」 齋藤課長は、段ボールの中から平成23年分の領収書の綴りを取り出し、渕崎統括官に渡してから、応接室を出ていった。 「・・・この人、途中入社ですが、年末調整をしていますね」 田村上席が、吉田税理士に確認する。 「前の会社の源泉徴収票があるのですか?」 吉田税理士が首をかしげる。 「そうですね・・・源泉徴収簿に添付してませんから、本人からもらっていないのでしょうね・・・」 吉田税理士が小さく呟く。 「もっとも、本人からは、所得のないことを確認していると思いますが・・・」 「そうですか。本人から源泉徴収票の提示がない場合、本人の責任を明らかにするため、会社が年末調整をするのではなくて、本人に確定申告させなければ」 田村上席は、眠そうな目をしている吉田税理士に少し強い口調で伝えた。 その時、会議室のドアが開いて、齋藤課長がメモを持って戻ってきた。 「すみません・・・経理の担当者が・・・源泉徴収簿に住所を記載するのを忘れていて・・・これが2人の住所です・・・」 齋藤課長は、田村上席にメモを手渡した。 齋藤課長が席に着くと、会議室は再び静寂に包まれた。 渕崎統括官の領収書をめくる音が、規則的に聞こえる。 時々、会長が咳をする。 「すみませんね・・・風邪ではないのですが、年のせいで喉が弱くなって・・・」 吉田税理士に向かって説明する。 「会長はもう退席されてもいいですよ」 吉田税理士は笑いながら声をかけた。 時計は、午後4時を示している。 会長は、いつも4時過ぎに帰宅することになっている。 渕崎統括官は、壁に掛かっている時計を見る。 附箋の付いている領収書の綴りが、渕崎統括官のテーブルの前に堆く積まれている。 「すみませんが・・・」 渕崎統括官が、齋藤課長に声を掛ける。 「この附箋をした領収書をコピーしていただけますか?」 「・・・この領収書ですね・・・」 齋藤課長は、4つの領収書の綴りを重ねて、運ぼうとする。 一つの綴りがずれて齋藤課長の腕から落ちそうなのを見て、吉田税理士が「1つ持ちましょうか」と声をかけた。 「いえ、大丈夫ですよ」 齋藤課長は、腕でズレを直しながら、領収書の綴りをコピー機のある2階に運んでいった。 再び、渕崎統括官は、時計を見た。 時計は、午後4時20分を示している。 「コピーを頂いたら、今日の税務調査は終わりたいと思っているのですが」 渕崎統括官は田村上席の方をチラッと見ながら、吉田税理士に告げた。 田村上席は既に、テーブルの上を片づけ始めている。 「コーヒーでもいかがですか」 会長が声をかける。 「いいえ、もう、帰りますから結構です。ありがとうございます」 渕崎統括官が礼を言う。 その時、吉田税理士が「・・・損失の処理の件ですが・・・」と渕崎統括官に話しかけた。 「・・・その件は、署で再度検討してからお答えしますので」 渕崎統括官は、机の上に置かれた電卓や筆記用具などを鞄に入れながら、そう答えた。 (つづく)

#No. 22(掲載号)
#八ッ尾 順一
2013/06/06

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載22〕 会社分割によりヘッジ対象資産・ヘッジ手段を移転する場合の税務処理

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載22〕 会社分割により ヘッジ対象資産・ヘッジ手段を 移転する場合の税務処理   税理士 朝長 英樹 公認会計士・税理士 有田 賢臣     1 一般的なヘッジ取引の税務処理 平成12年度税制改正により、デリバティブ取引等を時価評価する制度(法法61の5)が創設されると共に、ヘッジ処理に関する制度が創設された。 このヘッジ処理は、いわゆる繰延ヘッジ処理(法法61の6)と時価ヘッジ処理(法法61の7)の2つとなっている。 本件においては、この2つのヘッジ処理のうち、法人税法61条の6(繰延ヘッジ処理による利益額又は損失額の繰延べ)に定められている繰延ヘッジ処理の会社分割における取扱いが問題となる。 法人税法61条の5第1項においては、内国法人が行ったデリバティブ取引のうち、事業年度終了の時に未決済となっているものについて、みなし決済損益額を益金の額又は損金の額に算入するものとされているが、61条の6第1項においては、ヘッジ対象資産等に係る損失額を減少させるためにデリバティブ取引を行っている場合には、そのデリバティブ取引のみなし決済損益額のうち、ヘッジが有効である部分の金額(以下「繰延ヘッジ損益額」という)を益金の額又は損金の額に算入しないものとされている。 また、デリバティブ取引のみなし決済損益額のうち、ヘッジが有効でない部分の金額(以下「ヘッジ損益額」という)は、当該事業年度において、益金の額又は損金の額に算入し、翌事業年度(注)において、損金の額又は益金の額に算入することによって戻入処理が行われる(法令121の5②)。 (注) この戻入処理の時期については、法人税法上、特に定めは設けられていないが、有効性判定を期中に行うことがあること等からすると、翌事業年度の期首において行うものと解するべきである。   2 適格分割でヘッジ対象資産とヘッジ手段のデリバティブ取引を移転する場合の取扱い (1) 分割法人 適格分割によってヘッジ対象資産とヘッジ手段のデリバティブ取引を移転する場合には、まず、その適格分割の直前に有効性判定を行い、みなし決済損益額を「繰延ヘッジ損益額」と「ヘッジ損益額」に区分することが必要となる。 「繰延ヘッジ損益額」に関しては、分割法人において益金の額又は損金の額への計上を行わず(法法61の6②、法令121①)、含み益又は含み損の状態で分割承継法人に引き継ぐこととなる。 また、「ヘッジ損益額」に関しては、分割法人において益金の額又は損金の額に算入され(法令121の3④)、分割承継法人において戻入処理が行われる。改めて言うまでもないが、分割法人の分割事業年度の翌事業年度においては、この戻入処理が行われることはない(法令121の5②括弧書)。 (2) 分割承継法人 適格分割によってヘッジ対象資産とヘッジ手段のデリバティブ取引を分割法人から分割承継法人に移転する場合には、ヘッジ処理を分割法人から分割承継法人に引き継ぐ状態とする措置が講じられている。 適格分割により、分割承継法人がヘッジ対象資産と共にヘッジ手段のデリバティブ取引の移転を受ける場合には、その分割承継法人は、そのデリバティブ取引に係る帳簿要件を満たしているものとみなされる(法法61の6③)。 また、分割承継法人が適格分割後に「繰延ヘッジ損益額」を計算するに当たっては、分割法人において行った直近の有効性判定におけるデリバティブ取引の利益額又は損失額を用いることとされている(法令121の3④括弧書)。 上記1においても述べたが、分割法人の分割事業年度に計上された「ヘッジ損益額」に相当する金額については、分割承継法人の分割事業年度において戻入処理が行われる(法令121の5③)。 【設例】 〈会計上の仕訳〉 ① 分割法人(当社) 単独新設分割により子会社を設立した場合の分割法人の会計処理は、共通支配下の取引として処理される(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(以下「企業結合指針」)260項)。 資産及び負債の適正な帳簿価額を基礎として移転の処理が行われるが、その帳簿価額には、時価(又は再評価額)をもって貸借対照表価額としている場合の当該価額及び対応する評価・換算差額等の各内訳科目(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益及び土地再評価差額金)の額が含まれ、原則として、そのまま引き継ぐこととされている(企業結合指針408項)。 移転するデリバティブ取引に係る分割期日の前日の帳簿価額(前期末の貸借対照表価額)が40、対応する繰延ヘッジ損益の帳簿価額が40である場合の仕訳は以下のとおりとなる。 なお、法人税法上の取扱いと異なり、移転するデリバティブ取引を会社分割直前の時価に評価替えすることや、会社分割の直前に有効性判定を行うことは想定されていないと思われる。 ② 分割承継法人(S社) 単独新設分割により子会社を設立した場合の分割承継法人の会計処理は、共通支配下の取引として処理される(企業結合指針261項)。分割法人から受け入れる資産及び負債は、分割期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する。   〈税務上の仕訳〉 ① 分割法人(当社) まず、有効性判定の結果に基づき、移転するデリバティブ取引のみなし決済損益額について、「繰延ヘッジ損益額」と「ヘッジ損益額」に区分し、後者を益金の額として計上する。 次に、適格分割(分社型分割)による資産及び負債の移転の処理を行う(法法62の3①)。 適格分割(分社型分割)により交付を受けた分割承継法人(S社)の株式の取得価額は、その直前の移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を減算した金額となる(法令119①七)。この移転資産・移転負債には、デリバティブ取引のようなオフバランスの「資産」や「負債」も含まれる。 ② 分割承継法人(S社) 適格分割(分社型分割)により移転を受けた資産・負債の取得価額は、その適格分割(分社型分割)の直前の分割法人における帳簿価額となる(法令123の4)。資本金等の額については、分割法人の適格分社型分割の直前の移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を減算した金額に相当する金額だけ増加する(法令8①七)。上記①の場合と同様に、この移転資産・移転負債には、デリバティブ取引のようなオフバランスの「資産」や「負債」も含まれる。 分割法人において益金の額に算入された「ヘッジ損益額」は、分割承継法人において損金の額に算入することにより戻入処理が行われる。   3 非適格分割でヘッジ対象資産とヘッジ手段のデリバティブ取引を移転する場合の取扱い 分社型分割により完全子会社を新設する場合には、適格要件を満たすことが多いと思われるが、会社分割後に分割承継法人の株式を譲渡することが予定されているような場合には、非適格分割となる。 非適格分割においては、分割法人に適用されていた繰延ヘッジ処理は分割承継法人に引き継がれず、移転するヘッジ対象資産とデリバティブ取引はいずれも時価で譲渡されたものとして処理される(非適格分割によりデリバティブ取引が時価で譲渡される場合の税務処理は、本誌No.17掲載の「会社分割によりデリバティブ契約を移転する場合の税務処理」を参照のこと)。 (了)

#No. 22(掲載号)
#朝長 英樹、有田 賢臣
2013/06/06

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第8回】リース会計①「オペレーティング・リース取引の会計処理」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第8回】 リース会計① 「オペレーティング・リース取引の 会計処理」   仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① ×1年4月30日(第1回支払日) ② ×1年5月31日(第2回支払日) ③ ×6年3月31日(第60回支払日) 〈会計処理の解説〉 リース取引とは、企業が必要とする機械設備等をリース会社が購入し、これを企業に賃借する取引をいいます。 リース取引の概要を図で示すと、以下のようになります。 リース取引は、法形式的には機械設備等の賃貸借取引ですが、実質的にはファイナンスを利用した機械設備等の購入という金融取引の性質を有しています。 リース取引が金融取引、賃貸借取引のいずれに該当するかは、リース契約の内容から実質的に判断する必要があります。 そこで、会計上は、一定の判断基準に基づき、リース取引を以下のように分類し、異なる会計処理を行うこととしています。 (1) ファイナンス・リース取引 次の要件を満たすリース取引のことをいいます。 (2) オペレーティング・リース取引 ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいいます。したがって、上記の2要件のうち、いずれか1つでも満たしていない場合、当該リース取引はオペレーティング・リース取引となります。 ファイナンス・リース取引は、賃貸借取引の性質よりも、金融取引の性質の方が強い取引です。したがって、会計上はこれを表現するために、「通常の売買取引に係る方法」に準じて会計処理を行います。 一方、オペレーティング・リース取引に該当する場合には、法形式に則って、「通常の賃貸借取引に係る方法」に準じて会計処理を行います。 以上を踏まえ、本事例の会計処理を検討してみましょう。 本事例におけるリース取引は、リース契約の条件からオペレーティング・リース取引と判定されます。なぜなら、リース期間中に解約不能期間がないためです。これは、先ほど示した要件のうち、「解約不能」の要件を満たしていないことになります。 オペレーティング・リース取引に該当する場合には、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行います。そのため、工作機械Aをリースしたことにより発生したリース料を、発生の都度、費用として認識する処理を行うこととなります。 本事例におけるリース取引は、オペレーティング・リース取引と判定されますが、契約条件によっては、ファイナンス・リース取引と判定される場合もあります。同じ工作機械をリースで調達したとしても、契約条件によってオペレーティング・リース取引にもファイナンス・リース取引にもなりうるのです。 次回は、ファイナンス・リース取引に該当する場合の会計処理方法を解説します。 (了)

#No. 22(掲載号)
#大川 泰広
2013/06/06

林總の管理会計[超]入門講座 【第4回】「間接費の考え方(その2)」

林總の 管理会計[超]入門講座 【第4回】 「間接費の考え方(その2)」   公認会計士 林 總   (了)

#No. 22(掲載号)
#林 總
2013/06/06

税効果会計を学ぶ 【第11回】「将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異」

-お知らせ- 適用指針等を織り込んだ最新版の『税効果会計を学ぶ』が好評連載中です。   税効果会計を学ぶ 【第11回】 「将来解消見込年度が長期にわたる 将来減算一時差異」   公認会計士 阿部 光成   前回に引き続き、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号。以下「監査委員会報告第66号」という)を適用する際の留意点について解説を行う。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異 将来減算一時差異には、棚卸資産の評価減や賞与引当金のように(いずれも計上時には税務上、損金算入できないものとする)、スケジューリングの結果、一般に、短期間で解消されるものがある。 一方、退職給付引当金や建物の減価償却超過額に係る将来減算一時差異のように、将来解消年度が長期となる将来減算一時差異も存在する。 将来解消年度が長期となる将来減算一時差異は、企業が継続する限り、長期にわたるが将来解消され、将来の税金負担額を軽減する効果を有するものである(監査委員会報告第66号5(2))。 監査委員会報告第66号は、将来解消年度が長期となる将来減算一時差異については、会社分類(例示区分)に関連付けて次のように規定している(監査委員会報告第66号5(2))。   Ⅱ 税効果会計に関するQ&A 1 将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異のスケジューリング 「税効果会計に関するQ&A」のQ1では、将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異に関して、会社分類(例示区分)③及び④(但書)の場合、例えば、退職給付引当金について5年間(合理的な見積可能期間)のスケジューリングを行った上で、その期間を超えた年度であっても、最終解消年度までに解消されると見込まれる退職給付引当金に係る繰延税金資産については、回収可能性があると判断できると述べられている。 「5年間(合理的な見積可能期間)のスケジューリングを行った上で」と述べられているので、将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異であったとしても、まず5年間(合理的な見積可能期間)についてはスケジューリングを行うことが必要であり、その上で、その期間を超えた年度であっても、最終解消年度までに解消されると見込まれる将来減算一時差異に係る繰延税金資産については回収可能性があると判断できることになると解される。 2 役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異 役員退職慰労引当金については、就任している役員の現在の年齢などによっては、役員を退任し実際の支給が行われるまでに相当の長期間を要することがある。 役員退職慰労引当金についても、監査委員会報告第66号の将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異に該当するのかどうかの論点が考えられる。 これについて、「税効果会計に関するQ&A」のQ1では、役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異については、スケジューリングの結果に基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断するものであり、退職給付引当金や建物の減価償却超過額のように将来解消見込年度が長期となる将来減算一時差異には該当しないと述べられている。 このため、役員退職慰労引当金に係る繰延税金資産の回収可能性については、これまでの役員在任期間の実績や内規などに基づいて役員の退任時期を合理的に見込み、当該役員の退任時期に将来減算一時差異が解消され、税金負担額を軽減できる範囲内で、繰延税金資産を計上することとなる。 3 将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異に関する限定的な取扱い 監査委員会報告第66号では、将来解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異として、退職給付引当金や建物の減価償却超過額に係る将来減算一時差異を挙げている。 本来、繰延税金資産の回収可能性は、一時差異等のスケジューリングに基づいて判断すべきものである。 これに対して、退職給付引当金や減価償却については次の性質を持っている。すなわち、退職給付引当金は、従業員の退職金に関する制度設計に基づいて計上され、基本的に、会社の意思による影響を受けないで、長期間にわたって一時差異等の解消が性格上予定されているものである。また、減価償却費は、会社の採用した会計方針(減価償却方法)に基づいて、計画的・規則的に実施することにより、長期間にわたって、規則的に一時差異等の解消が予定されているものである(手塚仙夫『税効果会計の実務(第7版)』(清文社、2011年6月)57ページ参考)。 前述のとおり、本来、繰延税金資産の回収可能性は、一時差異等のスケジューリングに基づいて判断すべきものであるが、このような退職給付引当金や減価償却の性質に鑑みて、監査委員会報告第66号はこれらについて特例的な取扱いをしたものと解されるので、退職給付引当金や減価償却についての限定的な例示と解すべきものと考える。 (了)

#No. 22(掲載号)
#阿部 光成
2013/06/06
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