年末調整とは

源泉徴収義務扶養控除年末調整源泉徴収票給与支払報告書法定調書

解説:信澤 奈津美(税理士)

給与等の支払者が年末調整を行う際の対象者、扶養控除等申告書、配偶者控除等申告書や保険料控除申告書、住宅借入金等特別税額控除申告書など給与所得者が提出すべき書類、源泉徴収票の作成など給与等の支払者が提出すべき書類の詳細、事業者が作成し提出する法定調書など、年末調整の全般について概要を解説します。
初めて年末調整を行う経理や総務人事、事務など年末調整担当部署のご担当者様など、実際に実務に携わる方でも安心して年末調整の流れや書類の書き方をご理解いただけるよう、このページで解説する内容を、易しくかつ実務に即して詳細に解説するDVDセミナー講座も当ページでご案内しております。

年末調整

1. 源泉徴収義務

国内で居住者に対し給与等の支払いをする場合に、その支払者はその給与等について所得税を徴収し、徴収月の翌月10日までに、これを国に納付しなければなりません。これを源泉徴収義務といい、給与等の支払者を源泉徴収義務者といいます。

(1)賞与以外の給与等

月給、日給等の別、「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出の有無、その申告書に記載されている人的事情等を考慮して、所定の税率表により求めた税額が源泉徴収すべき所得税額となります。

(2)賞与

前月の給与等の支払いの有無、「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出の有無、その申告書に記載されている人的事情等を考慮して、所定の税率表により求めた率を賞与の金額に乗じて計算した税額が源泉徴収すべき所得税額となります。

なお、給与等の支払いを受ける者が常時10人未満である源泉徴収義務者が、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、1月から6月までの徴収税額は7月10日までに、7月から12月までの徴収税額は翌年1月20日までに納付することができる特例があります。

2. 年末調整

1年間に源泉徴収する所得税額の合計額は、その給与等を受取る者が納付すべき所得税額の年税額とは、通常一致しません。それは、毎月の給与等の金額が変動したり、年の中途で扶養親族等に異動がある場合等があるためです。

そこで不一致を精算するためにその年最後の給与等を支払う際に、年末調整を行います。

年末調整の対象となる者、ならない者があるので、注意しなければなりません。

・対象となる者

1年を通じて勤務している者、中途入社で年末まで勤務している者で、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した者が対象となります。

・対象とならない者

  • ・「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない者
  • ・その年中の給与等の金額が2,000万円を超える者
  • ・2箇所以上から給与等を受ける者で他社で年末調整を受ける者
  • ・年の中途で退職した者(死亡退職は除かれます)
  • ・国内に住所または居所を有していない者(非居住者)

その年中に源泉徴収した金額と比較する年税額は、その年最後に給与等の支払をする時の現況で、所定の別表により求めた給与所得控除後の給与等の金額から雑損控除額、医療費控除額及び寄附金控除額以外の所得控除額の合計額を控除した金額について計算した税額となります。

その年中に源泉徴収した合計額が年税額を超える場合には、その年最後に支払う給与等から源泉徴収すべき所得税に充当し、充当しきれない超過額(過納額)があるときは、その過納額を還付します。

その年中に源泉徴収した合計額が年税額に不足する場合には、その年最後に支払う給与等の支払いをする際、その不足額を徴収します。徴収しきれない不足額があるときは、その翌年において給与等の支払をする際、これを徴収することとされています。

3.年末調整を行うために給与所得者が提出すべき書類

(1)扶養控除等申告書

国内において給与等の支払いを受ける居住者は、毎年最初に給与等の支払いを受ける日の前日までに、基礎控除以外の人的控除(注)に関する事項等を記載した給与所得者の扶養控除等申告書をその支払者を経由して納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされています。
(注)ここで、人的控除とは障害者控除、寡婦(夫)控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除をいいます。
但し、配偶者控除及び配偶者特別控除に関する事項については、居住者本人の合計所得金額が900万円以下(給与収入1,120万円以下)であり、かつ、配偶者の合計所得金額の見積額が85万円以下(給与収入150万円以下)である場合に限り、記載をします。(該当する配偶者を「源泉控除対象配偶者」といいます。)

(2)配偶者控除等申告書

配偶者に関する事項については、毎年最初に給与等の支払いを受ける日の前日までに提出した上記(1)の申告書に「源泉控除対象配偶者」としての記載をしている場合がありますが、居住者本人及び配偶者のその年分の合計所得金額により控除額が変動するため、改めて、その年最後に給与等の支払いを受ける日の前日までに申告書を提出することにより配偶者控除額又は配偶者特別控除額が確定し、年末調整においていずれかの控除を受けることができます。

(3)保険料控除申告書

社会保険料控除額(給与から差引かれるもの以外の社会保険料)、小規模企業共済等掛金控除額(給与から差引かれるもの以外の共済等掛金)、生命保険料控除額、地震保険料控除額を記載した申告書です。その年中に支払った保険料等がある場合には、その年最後に給与等の支払いを受ける日の前日までに申告書を提出すれば年末調整で生命保険料控除、地震保険料控除等を受けることができます。

(4)住宅借入金等特別税額控除申告書

年末調整を受ける給与所得者が居住の用に供した年の翌年以後9年間は、住宅借入金等特別税額控除申告書を提出すれば、年末調整により住宅借入金等特別税額控除の適用を受けることができます。

なお、居住の用に供した年は確定申告によってその特別控除が適用されることとされており、2年目以後は、税務署長から交付された証明書と金融機関等から交付された借入金の年末残高等証明書とあわせて、その年最後に給与等の支払いを受ける日の前日までに申告書を提出することにより、年末調整で当該特別税額控除の適用が受けられることになります。

4.源泉徴収票の作成と交付

税年末調整の計算により、確定した所得税の年税額や所得控除額などを記載した書類を作成し、これを給与等の支払いを受ける者に交付します。

5.給与支払報告書の提出

給与等を支払う者が給与等の支払いを受ける者の住所地の市区町村に対して提出する書類を給与支払報告書といいます。給与支払報告書は「個人別明細書」と「総括表」を、翌年1月1日現在の住所である市区町村宛に翌年1月31日までに提出し、市区町村ではこの明細書を基に給与等の支払いを受ける者の住民税の金額を算定することとされています。

6.法定調書の提出

事業者が給料、報酬、料金、利子、配当などを支払う場合に、支払先の住所、氏名、支払金額などを記載した書類を税務署長に提出する書類が法定調書です。

その年中の支払分を取りまとめて作成し、支払った年の翌年1月31日までに提出しなければなりません。主なものは次のとおりです。

  • ・給与所得の源泉徴収票
  • ・退職所得の源泉徴収票
  • ・報酬、料金、契約金および賞金の支払調書
  • ・不動産の使用料等の支払調書
  • ・不動産の譲受けの対価の支払調書
  • ・不動産の売買または貸付けのあっせん手数料の支払調書

これらの法定調書に「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を作成し、併せて提出します。

実務において正しい処理ができるようになるために

給与所得から源泉徴収された所得税の過不足を年末に給与等から精算する年末調整。実務において年末調整の正しい処理を行うには、所得税の基礎知識を理解するのみならず、年末調整に附随する書類作成の知識が必要となります。

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