通勤手当(交通費)の非課税制度とは?

通勤手当(交通費)の非課税制度とは

解説:プロフェッションネットワーク

更新日:2024/04/11

会社に勤務する給与所得者は、ほとんどの場合、会社から通勤手当(交通費)の支給をされますが、会社から支給される通勤手当(交通費)は厳密に捉えると会社からの給与となります。

しかし、通勤手当(交通費)は通勤のためにその金額を消費する(実費弁償的なものである)ため、非課税限度額を設けた上で、所得税を課さない(非課税とする)こととしています。

なお、非課税限度額は、給与所得者が通勤のために利用する交通機関等によって定められています。

当ページでは、通勤手当(交通費)の非課税制度の基礎知識について解説します。

通勤手当(交通費)の非課税制度

会社に勤務する給与所得者は、ほとんどの場合、会社から通勤手当(交通費)の支給をされますが、会社から支給される通勤手当(交通費)は厳密に捉えると会社からの給与となります。しかし、通勤手当(交通費)は通勤のためにその金額を消費する(実費弁償的なものである)ため、非課税限度額を設けた上で、所得税を課さない(非課税とする)こととしています。

所得税の非課税限度額

非課税限度額は、給与所得者が通勤のために利用する交通機関等によって定められています。

なお、平成28年度の税制改正により、給与所得者に支給する通勤手当の非課税限度額が引き上げられ、平成28年1月1日以後に支払われるべき通勤手当についての非課税限度額は下記のとおりとなります。

  1. 通勤のため交通機関又は有料の道路を利用し、かつ、その運賃等を負担することを常例とする者((4)に該当する者を除く。)が受ける通勤手当
    …その者の通勤に係る運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃等の額(1月当たりの金額が150,000円を超えるときは、1月当たり150,000円)
  2. 通勤のため自動車その他の交通用具を使用することを常例とする者(その通勤の距離が片道2キロメートル未満である者及び(4)に該当する者を除く。)が受ける通勤手当 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額
    • ① その通勤の距離が片道10キロメートル未満である場合…1月当たり4,200円
    • ② その通勤の距離が片道10キロメートル以上15キロメートル未満である場合…1月当たり7,100円
    • ③ その通勤の距離が片道15キロメートル以上25キロメートル未満である場合…1月当たり12,900円
    • ④ その通勤の距離が片道25キロメートル以上35キロメートル未満である場合…1月当たり18,700円
    • ⑤ その通勤の距離が片道35キロメートル以上45キロメートル未満である場合…1月当たり24,400円
    • ⑥ その通勤の距離が片道45キロメートル以上55キロメートル未満である場合…1月当たり28,000円
    • ⑦ その通勤の距離が片道55キロメートル以上である場合…1月当たり31,600円
  3. 通勤のため交通機関を利用することを常例とする者((1)及び(4)に該当する者を除く。)が受ける通勤用定期乗車券
    …その者の通勤に係る運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による定期乗車券の価額(1月当たりの金額が150,000円を超えるときは、1月当たり150,000円)
  4. 通勤のため交通機関又は有料の道路を利用するほか、併せて自動車その他の交通用具を使用することを常例とする者(当該交通用具を使用する距離が片道2キロメートル未満である者を除く。)が受ける通勤手当又は通勤用定期乗車券
    …その者の通勤に係る運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃等の額又は定期乗車券の価額と当該交通用具を使用する距離につき(2)①から⑦までに定める金額との合計額(1月当たりの金額が150,000円を超えるときは、1月当たり150,000円)

非課税限度額についての注意点

非課税とされる通勤手当は「その給与所得者の通勤にかかる運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的、かつ、合理的と認められる通常の通勤の経路および方法による運賃等の額」とされていますので、有料道路を利用する場合の料金や新幹線通勤をする場合であっても上記の要件に該当すれば限度額までは非課税とされますが、グリーン車を利用した場合の料金は該当しないため非課税とはされません。

また、タクシー通勤をした場合は、「最も経済的、かつ、合理的と認められる通常の通勤の経路」に相当する金額までは非課税とされますが、それを上回る金額は非課税とはされません。

非課税限度額を超えた場合

非課税限度額を超える通勤手当の支給を受けた場合は、給与所得として課税されますので、源泉徴収の対象となります。
また、通勤手当込みで時給や年棒が設定されている場合は、原則として非課税制度の対象とはなりません。
なお、給与所得として課税された場合でも、一定の要件に該当すれば「給与所得者の特定支出控除」として確定申告することにより控除される場合があります。

社会保険の計算

所得税の計算にあたっては、非課税限度額の範囲内で通勤手当について非課税とする制度がありますが、健康保険や厚生年金保険などの社会保険や労働保険の保険料の算定にあたっては、原則として報酬総額を基礎にすることとされており、通勤手当も報酬に含まれますので、全額、保険料の算定対象となります。

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