理由付記の不備をめぐる事例研究
【第42回】
「寄附金(売上値引・特別拡売費)」
~売上値引が寄附金に該当すると判断した理由は?~
千葉商科大学商経学部講師
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して行われた「得意先からの特別拡売費の負担依頼を受けて行った売上値引が寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた前橋地裁平成15年9月5日判決(税資253号順号9425。以下「本判決」という)を素材とする。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算・減算して更正しました。
(加 算)
1 売上計上もれ 2億7千万円
貴法人は、貴法人の売上先であるB社のD副事業部長から特別拡売費の負担依頼を受け、後日、D事業部長と「覚書」で合意した金額2億7千万円を売上値引として売上から減算処理していましたが、当該売上値引は、値引額算定に係る合理的基準がなく、かつ貴法人が負担する合理的理由が認められないので、当該金額を当期利益に加算しました。
2 寄附金の損金算入限度超過額 〇〇〇円
減算事項1に基づいて当社が負担した売上値引額2億7千万円は、貴法人からB社に対する寄附金となります。したがって、寄附金の損金算入限度額を計算した結果、当該限度額△△△円を超える金額〇〇〇円は、損金の額に算入されないので、当期利益に加算しました。
(減 算)
1 寄附金認容 2億7千万円
加算事項の1にかかる売上値引額2億7千万円は、B社からの特別拡売費の負担依頼に基づき売上値引処理したものですが、当該売上値引額の算定に係る合理的基準がなく、かつ貴法人が負担する理由が認められないので、貴法人からB社に対する寄附金として損金に算入しました。
2 消費税の損金算入額認容(未払消費税) 〇〇〇円
加算事項1にかかる未払消費税を認容し、当期利益から減算しました。
(注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
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