理由付記の不備をめぐる事例研究
【第47回】
「交際費等(外注費)」
~英文添削料の差額負担額が交際費等に該当すると判断した理由は?~
千葉商科大学商経学部講師
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して、「英文添削料の差額負担額が交際費等に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた東京地裁平成14年9月13日判決(税資252号順号9189。以下「本判決」という)を素材とする。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(交際費等の損金不算入額 〇〇〇円)
貴法人は、病院の医師等から英文添削の依頼を受け、その添削業務をアメリカ合衆国に所在する法人であるA社等の各添削業者に外注しているところ、貴法人が本件英文添削の対価として医師等から受領する収入は別表1〔筆者注:掲載省略〕のとおりの単価で計算されているのに対し、貴法人が各添削業者に支払う外注費は別表2〔筆者注:掲載省略〕のとおりの単価で計算されています。
貴法人は、別表3〔筆者注:掲載省略〕のとおり、本件各事業年度における本件英文添削に係る収入及び外注費の額を、それぞれ益金及び損金の額に算入しており(以下、それぞれ「本件英文添削収入」及び「本件英文添削外注費」といいます。)、本件各事業年度において、本件英文添削収入の3.7倍ないし5.1倍もの本件英文添削外注費を支出し、その差額を貴法人自らが負担しています(以下「本件差額負担額」といいます。)。
この本件差額負担額は、次のことから、病院等の医師等との関係を円滑にすることを目的として負担されたものと認められ交際費等に該当すると認められます。
① 貴法人が医師等から受領した英文添削料金と貴法人がこれらの添削のため支出した外注費との間に、著しく開差があり、英文添削を依頼した医師等に対して、経済的利益を供与していると認められること
② 英文添削の依頼者である医師等は、貴法人の医薬品の納入先に勤務する者で、医薬品の処方ができる資格を有している者であり、購入する医薬品の決定に影響力を行使しうる立場にある者、または、その者の指導下にある者であること
③ 依頼者の医師等は、貴法人の医薬情報担当者の業務である医薬情報の収集に関する情報を有する者であり、それらの医薬品等の情報を提供しうる者であること
④ 貴法人の英文添削サービスは、一般的に開示されたものでなく貴法人の医薬情報担当者が窓口となり個々に依頼を受けることから、英文添削の依頼ができる者は、貴法人の取引先に限られていること
したがって、本件差額負担額〇〇〇円を交際費等の額に算入し、交際費等の損金不算入額を計算したところ、所得金額が〇〇〇円増加しました。
以上
(注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。