公開日: 2026/07/02 (掲載号:No.675)
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《税務必敗法》 【第13回】「中間申告・納付のお知らせを忘れた」

筆者: 森 智幸

《税務必敗法》

【第13回】

「中間申告・納付のお知らせを忘れた」

 

公認会計士・税理士 森 智幸

 

【事例】

X会計事務所の顧問先のA社は、夫婦と従業員1名の計3名で工業用塗料の製造・販売を行う小規模な株式会社である。

A社はインボイス登録事業者であり、簡易課税を適用している。決算期は3月で、課税期間は1年である。資本金は1,000万円であり、申告は電子申告で行っている。

A社の経営成績は芳しくなく、法人税等は地方税の均等割のみとなる年が多く、これまで中間申告・納付は行ったことはない。また、消費税等も毎期納付しているものの、中間申告・納付を行ったことはない。

しかし、×7年度は大口の注文があり、売上が例年よりも増加した。その結果、法人税等は地方税の均等割のみであったものの、消費税等は国税部分が48万円を超え、48万円超400万円以下となった。そのため、A社は×8年度に年1回の中間申告・納付を行うことになった。

一方、X会計事務所の税理士甲は、A社がこれまで中間申告・納付を行ったことがなかったことから、×8年度に中間申告・納付が必要であることに気付かず、その旨をA社に伝えていなかった。

×8年に入ると中東情勢が悪化し、A社は原材料の仕入れが困難となってきた。その結果、製品を製造・販売することができず、売上が伸び悩み、資金繰りが徐々に悪化していった。

このような状況の中、×8年10月下旬、A社に所轄税務署から「消費税及び地方消費税の中間申告書」が送付された。

驚いたA社は、甲に対し「消費税の中間申告書兼納付書が税務署から送られてきましたが、これは何でしょうか。当社は5月に消費税を納付しています。なぜ、再度納付が必要なのですか?」と問い合わせた。

これに対して甲は「調べたところ、×7年度は消費税の国税分が48万円を超えたからですね。この場合は中間納付が必要となります。」と回答した。

A社は「当社は現在、中東情勢の影響のため、資金繰りが悪化しています。このようなことは事前に説明していただけなかったのでしょうか。」と不満を示した。

その後、A社は緊急融資を受けながら資金を工面し、11月末日までに中間納付を行った。

しかし、中間納付後、A社は別の税理士から中間申告においては「仮決算」の方法があることを聞いて驚いた。

A社は甲に対して「中間申告は仮決算による方法も選択できると聞きました。仮決算をすれば、中間納付額を少なくできたかもしれません。なぜ提案していただけなかったのですか?」と問いただした。

すると、甲は「確かに仮決算の方法もありますが、年度を通して計算すれば最終的な税額は同じですよ。」と回答した。

これに対してA社は「そういう問題ではないんですよ。なぜ、当社の資金繰りを考えていただけないのですか。」と憤慨した。

最終的に、A社からはX会計事務所に対し「担当者を変更し、さらに顧問報酬も値下げしてほしい」というクレームが寄せられた。

 

1 はじめに

本連載は、税務を行う上で「これをやったら失敗する」という必敗法を紹介するものである。今回は「中間申告・納付のお知らせを忘れた」である。

本事例は、税務上のミスは発生していないものの、顧問先の資金繰りを考慮しなかったためにトラブルとなったものである。

現在、中東情勢の影響により資金繰りが悪化している企業も増えてきている。

中間申告・納付は年度途中で発生するため、突然知らされると顧問先も納税資金の確保ができないこともある。そのため、税理士は、顧問先には事前に中間申告の納付予定額・納付期限・納付回数をお伝えしておくことが望まれる。

なお、本稿は私見であることにご留意いただきたい。

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《税務必敗法》

【第13回】

「中間申告・納付のお知らせを忘れた」

 

公認会計士・税理士 森 智幸

 

【事例】

X会計事務所の顧問先のA社は、夫婦と従業員1名の計3名で工業用塗料の製造・販売を行う小規模な株式会社である。

A社はインボイス登録事業者であり、簡易課税を適用している。決算期は3月で、課税期間は1年である。資本金は1,000万円であり、申告は電子申告で行っている。

A社の経営成績は芳しくなく、法人税等は地方税の均等割のみとなる年が多く、これまで中間申告・納付は行ったことはない。また、消費税等も毎期納付しているものの、中間申告・納付を行ったことはない。

しかし、×7年度は大口の注文があり、売上が例年よりも増加した。その結果、法人税等は地方税の均等割のみであったものの、消費税等は国税部分が48万円を超え、48万円超400万円以下となった。そのため、A社は×8年度に年1回の中間申告・納付を行うことになった。

一方、X会計事務所の税理士甲は、A社がこれまで中間申告・納付を行ったことがなかったことから、×8年度に中間申告・納付が必要であることに気付かず、その旨をA社に伝えていなかった。

×8年に入ると中東情勢が悪化し、A社は原材料の仕入れが困難となってきた。その結果、製品を製造・販売することができず、売上が伸び悩み、資金繰りが徐々に悪化していった。

このような状況の中、×8年10月下旬、A社に所轄税務署から「消費税及び地方消費税の中間申告書」が送付された。

驚いたA社は、甲に対し「消費税の中間申告書兼納付書が税務署から送られてきましたが、これは何でしょうか。当社は5月に消費税を納付しています。なぜ、再度納付が必要なのですか?」と問い合わせた。

これに対して甲は「調べたところ、×7年度は消費税の国税分が48万円を超えたからですね。この場合は中間納付が必要となります。」と回答した。

A社は「当社は現在、中東情勢の影響のため、資金繰りが悪化しています。このようなことは事前に説明していただけなかったのでしょうか。」と不満を示した。

その後、A社は緊急融資を受けながら資金を工面し、11月末日までに中間納付を行った。

しかし、中間納付後、A社は別の税理士から中間申告においては「仮決算」の方法があることを聞いて驚いた。

A社は甲に対して「中間申告は仮決算による方法も選択できると聞きました。仮決算をすれば、中間納付額を少なくできたかもしれません。なぜ提案していただけなかったのですか?」と問いただした。

すると、甲は「確かに仮決算の方法もありますが、年度を通して計算すれば最終的な税額は同じですよ。」と回答した。

これに対してA社は「そういう問題ではないんですよ。なぜ、当社の資金繰りを考えていただけないのですか。」と憤慨した。

最終的に、A社からはX会計事務所に対し「担当者を変更し、さらに顧問報酬も値下げしてほしい」というクレームが寄せられた。

 

1 はじめに

本連載は、税務を行う上で「これをやったら失敗する」という必敗法を紹介するものである。今回は「中間申告・納付のお知らせを忘れた」である。

本事例は、税務上のミスは発生していないものの、顧問先の資金繰りを考慮しなかったためにトラブルとなったものである。

現在、中東情勢の影響により資金繰りが悪化している企業も増えてきている。

中間申告・納付は年度途中で発生するため、突然知らされると顧問先も納税資金の確保ができないこともある。そのため、税理士は、顧問先には事前に中間申告の納付予定額・納付期限・納付回数をお伝えしておくことが望まれる。

なお、本稿は私見であることにご留意いただきたい。

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連載目次

筆者紹介

森 智幸

(もり・ともゆき)

公認会計士・税理士

東京都出身。慶應義塾大学商学部卒。神戸の会計事務所を経て、大阪・京都の監査法人に勤務し、京都の監査法人では代表社員を務める。2019年9月に独立し、森 智幸公認会計士・税理士事務所を設立。独立後もPwCあらた有限責任監査法人(現PwC Japan有限責任監査法人)にて、内部監査などガバナンス領域のアドバイザリー業務を担当(~2025年6月)。現在は、株式会社および公益法人の会計・税務、ガバナンス強化支援、内部監査、中小企業の経営支援に従事。近畿税理士会業務対策部部員、日本公認会計士協会租税調査会・租税政策検討専門委員会専門委員、一般財団法人会計教育研修機構 実務補習協議会税務分科会委員、近畿実務補習所専門委員。

【主な著作】
・『税務の異常点の表れ方と見つけ方』(中央経済社2024年)
・『独立する公認会計士のための税理士実務100の心得』(中央経済社2023年)
・『現場で使える「会計上の見積り」の実務』(共著、清文社2022年)
・『「社会福祉充実計画」の作成ガイド』(共著、中央経済社2017年)

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