理由付記の不備をめぐる事例研究
【第10回】
「有価証券評価損」
~有価証券評価損の計上が認められないと判断した理由は?~
中央大学大学院商学研究科 博士後期課程
(酒井克彦研究室所属)
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して行われた有価証券評価損の否認に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた長崎地裁平成18年11月7日判決(税資256号順号10565。以下「本判決」という)を取り上げる。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(損金の額に算入されない有価証券評価損の額 〇〇〇円)
貴法人は、貴法人の有するB社株式(以下「本件株式」といいます。)に係る評価損の額〇〇〇円を当事業年度の損金の額に算入しています。しかしながら、資産の評価損は回復不能の減損を実現した損とみなしていくものであり、法人税法上、有価証券に係る評価損の損金算入が認められるためには、その有価証券の資産価値がその帳簿価格に比べ異常に減少し、その減少が固定的で回復の見込みがない状態であることが要件となるにもかかわらず、貴法人からは、B社が5か年で債務超過を解消する計画である旨の説明あるいは資料の提示はあるものの、本件株式の価額が回復する見込みがないことについての具体的な明示がされていません。
したがって、本件株式の価額については、当事業年度末において、回復の見込みがないとは認められないことから法人税法施行令68条1項2号ロに該当せず、本件株式に係る評価損の額〇〇〇円については、当事業年度の損金の額に算入されません。
(注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
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