理由付記の不備をめぐる事例研究
【第13回】
「交際費と外注費」
~外注費ではなく交際費等に該当すると判断した理由は?~
中央大学大学院商学研究科 博士後期課程
(酒井克彦研究室所属)
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して、外注費を否認して、交際費等に該当するものとした法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた那覇地裁平成15年12月24日判決(税資253号順号9498。以下「本判決」という)を取り上げる。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(交際費等の損金不算入額 〇〇〇円)
貴法人は、帳簿上、×年×月×日付けでK小学校改造防音工事(以下「本件防音工事」といい、本件防音工事のうちの機械室工事を以下「本件機械室工事」といいます。)をB社に外注したものとして、同社に対する外注費2,904万6,000円を損金の額に算入していますが、税務調査の結果、次の点が把握されたことからすると、当該金額は外注工事として施工した事実がなく支払ったものであり、本件防音工事の受注に際して便宜を図ってもらった謝礼として支払ったものと認められます。
したがって、2,904万6,000円のうち消費税額を差し引いた2,820万円を交際費等の額に算入し、交際費等の損金不算入額を計算したところ、所得金額が〇〇〇円増加しました。
① 貴法人らJV(ジョイントベンチャー)の決算書中、外注費に計上されているのは、C社とD社に係る外注費用のみであり、本件機械室工事に係る金額は含まれていない。
② 貴法人がB社に支払った2,904万6,000円は、貴法人らJVの決算書による利益9,682万円のうち、貴法人の分配金5,809万2,000円を単純に折半して算出したものである。
③ B社の帳簿には、本件機械室工事の工事代金2,904万6,000円が完成工事高に計上されているものの、本件機械室工事に係る同社の工事原価が計上されていない。
④ B社の代表者が、本件機械室工事を一切行っていない旨述べている。
⑤ 貴法人らJVがK町に提出した本件防音工事の工事日誌に、B社が本件防音工事に従事したことを示す記載が一切ない。
(注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
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