理由付記の不備をめぐる事例研究 【第34回】「役員退職給与」~役員退職給与の額が過大であると判断した理由は?~
今回は、青色申告法人X社に対して、「前代表取締役に対する役員退職給与の額が過大であること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた岡山地裁平成21年5月19日判決(税資259号順号11202。以下「本判決」という)を素材とする。
〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第20回】「別表13(5) 特定の資産の買換えにより取得した資産の圧縮額等の損金算入に関する明細書」〈その1〉
この別表は、法人が、租税特別措置法第65条の7から第65条の9まで(特定の資産の買換えの場合の課税の特例等)の規定の適用を受ける場合に記載する。
本制度は、いわゆる圧縮記帳と呼ばれるもののうち、特定資産の買換特例に係るものである。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例55(法人税)】 「関与税理士に代わり資本政策のみを実行し、署名押印を行った決算期につき、破産管財人から、過大納付消費税額を賠償するよう求められた事例」
依頼者の関与税理士であった別の税理士が、資本政策に不慣れなことから、平成X1年3月期及び平成X2年3月期において、当該別の税理士に代わり資本政策を実行した。そして、同決算期の決算業務については別の税理士が行ったが、その内容を十分に検証することなく、申告書等に署名押印を行った。
その後、依頼者が破産し、破産管財人から署名押印を行った申告において、売上が過大に計上され、消費税の過大納付税額が発生していた(法人税等は欠損のため発生していない)として損害賠償請求を受けたものである。
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第9回】
国税局や税務専門家からの見解に影響を受けていないピュアな財務省主税局の見解は、『改正税法のすべて』を見ることで、ある程度は理解することができる。もちろん、『改正税法のすべて』が公表されるのは、7月下旬頃であることから、すでに国税局や税務専門家からの影響を受けている可能性はあり得るが、それでも、退官後に語られた個人的な見解に比べれば、ピュアな財務省主税局の見解に近いものであるということが言える。
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第8回】
前回で述べたように、組織再編税制を理解するうえで重要になるのは、上記のうち、②子会社の設立時に、株式等の保有割合が95%未満となることが見込まれていないことである。
この規定が導入されたのは、平成10年度税制改正であり、共同事業を行うための組織再編成の要件の1つである株式継続保有要件における「見込まれる」という考え方について、平成13年3月23日の租税研究会の会員懇談会での質疑応答において、「現行の特定の現物出資により取得した有価証券の圧縮額の損金算入制度(法法51、法令93)において、現物出資により取得した株式の持分割合につき、具体的な保有期間を定めず、95%未満となることが『見込まれているものでないこと』の要件が付されていますが、これと同様に考えることとなります」と、財務省主税局の朝長英樹氏(当時)が回答を行っている(※2)。
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第33回】「役員給与」~代表者の配偶者に対する交際費の支出が代表者に対する役員給与に該当すると判断した理由は?~
今回は、青色申告法人X社に対して行われた「代表者の配偶者に対する交際費の支出が代表者の役員給与(賞与)に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた横浜地裁平成22年7月28日判決(税資260号順号11483頁。以下「本判決」という)を素材とする。
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第7回】
「第四 各種引当金の引継ぎ等」では、「会社分割・合併等により移転する資産の譲渡損益の計上が繰り延べられる場合には、その資産に関して適用される諸制度や引当金等の引継ぎについても、基本的に従前の課税関係を継続させるとの観点から、組織再編成の形態に応じて必要な措置を考えるべきである。」としたうえで、細かな処理方法について、別紙に記載している。この具体的な内容については、平成13年度に制定された組織再編税制の条文を見ながら確認していきたい。ただし、繰越欠損金について、以下のように記載されている点だけは、ここで指摘しておきたい。
山本守之の法人税“一刀両断” 【第39回】「有姿除却の課税は国のエネルギー政策に反する」
使用を廃止しているが、解撤、廃棄、破砕を行っていない資産についても、既に固定資産としての命数や使用価値が尽きていることが明確なものについて、現状有姿のまま除却処理を認めようとするものが「有姿除却」です。
すなわち、次のような資産については、その帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を、有姿のまま除却損として損金の額に算入することができることとしているのです(法基通7-7-2)。
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第6回】
【第3回】で解説したように、被合併法人又は分割法人における譲渡損益の計上は「移転資産に対する支配の継続」で考えるのに対し、株主における株式譲渡損益の計上は「投資の継続」で考えることから、両者は異なるものである。すなわち、被合併法人又は分割法人で譲渡損益を計上する場合であっても、金銭などの株式以外の資産の交付を受けていないのであれば、投資が継続していると考え、株式譲渡損益は認識しないことになる。
