組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第14回】
この場合の「主要な資産及び負債」の具体的な内容については、当時の財務省主税局が公表した資料からは見つけることができなかった。しかし、その後の国税局からの解説により、ある程度の内容は推測することができるようになっている。さらに、阿部泰久氏により、売掛金・買掛金・棚卸資産が、主要な資産に該当しないことが指摘されたため(※1)、主要な資産及び負債には、固定資産のような流動しておらず、かつ、事業を営むために必要不可欠な資産及び負債が含まれるのであろうと言われていた。
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第36回】「寄附金(社員旅行負担金)」~グループ3社の共同社員旅行の負担金が寄附金に該当すると判断した理由は?~
今回は、青色申告法人X社に対して行われた「グループ3社の共同社員旅行の負担金の一部が寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所平成3年7月18日裁決(裁決事例集42号128頁。以下「本裁決」という)を素材とする。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例56(法人税)】 「株式移転完全子法人から設立の日以後最初に受ける配当は100%益金不算入になると説明し、多額の配当が実行されたが、実際には50%が益金算入となる配当であったため、正しい説明を受けていれば配当は行わなかったとして損害賠償請求を受けた事例」
株式移転完全親法人である依頼者より、株式移転完全子法人である子会社からの配当による資金調達について相談を受けた際、株式移転完全子法人から設立の日以後最初に受ける配当は「受取配当金の益金不算入」の規定により100%益金不算入になると説明したため、多額の配当が実行された。
しかし、実際には、100%益金不算入となる配当には該当せず、50%が益金算入となる配当であったため、正しい説明を受けていれば配当は行わなかったとして損害賠償請求を受けた。
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第13回】
【第10回】で解説した適格合併と同様に、平成13年度税制改正直後の法人税法2条12号の11イ、同施行令4条の2第4項において、100%グループ内の適格分割の要件が定められている。条文構成はほとんど同じであり、法人税法施行令4条の2第4項第1号にて親子関係、同項第2号にて兄弟関係がそれぞれ定められている。合併に比べて、条文構成がやや複雑であることから、1号と2号をそれぞれ分けて解説を行う。
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第12回】
法人税法2条12号の11、同施行令4条の2第4項から第6項(現行4条の3第5項から第8項)では、適格合併の定義が定められている。まず、平成13年度税制改正直後の法人税法2条12号の11柱書では、以下のように規定されている。
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第35回】「分掌変更退職給与」~分掌変更による役員退職給与の損金算入が認められないと判断した理由は?~
今回は、青色申告法人X社に対して行われた「分掌変更による役員退職給与の損金算入の否認」に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた東京地裁平成17年12月6日判決(税資255号順号10219。以下「本判決」という)を素材とする。
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第11回】
上記(1)が従業者引継要件と言われているものであり、(2)が事業継続要件と言われているものである。いずれも「見込まれていること」という不確定概念が設けられているが、後発事象に該当するものは考慮しないという点で、【第10回】で解説した資本関係の継続見込みの考え方と変わらない。そして、会社分割と異なり、主要資産等引継要件が定められなかった理由として、「合併においては、税制上、被合併法人の資産等の移転に係る要件を設けるまでもなく、その全部が合併法人に移転するものとなっていることから、被合併法人の資産等の移転に係る要件は設けられていません。」(※1)とされている。
~税務争訟における判断の分水嶺~課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第17回】「売買契約書は当事者の真の意思に基づかずに作成されたと推認された事例」
甲社会社(甲社)は、乙に本件土地を平成9年9月30日に譲渡したことにより売却損が生じたとして、その金額を損金の額に算入した。これに対して、原処分庁は、本件土地の売買の事実は存在しないとして更正処分等を行った。
山本守之の法人税“一刀両断” 【第40回】「通達を適用した更正請求」
法人税基本通達9-2-32は役員の分掌変更の場合の退職給与について、次のように取扱いを置いています。
この通達はバブル時代に節税専門の税理士によって利用され、課税の公平を阻害していました。
例えば、A社が土地を譲渡して多額の利益が生じた場合に常勤の代表取締役甲を平取締役をとし、後継者である長男乙を平取締役から分掌変更し代表取締役とする。
この際、甲に数億円の退職給与を支給し、土地の譲渡益を相殺するという節税手法です。
