役員インセンティブ報酬の分析 【第6回】「譲渡制限付株式②」-平成29年度税制改正後-
税法上の役員報酬制度は、平成18年度税制改正で整備されて以来、制度そのものが大きく見直されることはなかった。すなわち、損金算入可能な役員報酬は、法人税法の定める、定期同額給与、事前確定届出給与又は利益連動給与の各要件を満たした制度でなければならないとされていた。一方、退職給与と新株予約権は、別に損金算入要件が認められていた。
平成29年度税制改正では、定期同額給与、事前確定届出給与又は利益連動給与という損金算入可能な役員報酬の3類型は維持しつつ、退職給与や新株予約権も役員報酬の中に含めて損金算入の可否を考えることとなった。
外国人労働者に関する労務管理の疑問点 【第5回】「外国人留学生(専門学校生)を社員として雇うとき(「留学」から「技術・人文知識・国際業務」の在留資格への変更)」~「専門士」の社員採用について、大学生との違いは~
大学生に比べて、専門学校の卒業生(「専門士」の資格を持つ外国人)は、専門学校で学んだ内容と、会社で従事する業務の関連性が、より厳密に審査されます。
例えば、経理専門学校の留学生なら、会社での従事業務は、経理業務・事務業務に従事することが前提です。また、留学生が大学生の場合は学部・学科を問わずに「翻訳・通訳」業務の申請が可能ですが、専門学校の留学生の場合は、学校で翻訳・通訳に関することを学んでいなければ、「翻訳・通訳」業務の申請ができません。
これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第6回】「役員の任期到来の時期の特定」-実践編-
本稿では、任期管理とその役員変更の登記手続に携わる実務担当者が、本連載【第2回】で紹介した「会社主導で中長期的に管理し続けられる体制づくり」を実現するための実際の手順を解説する。
まず、役員の任期到来の時期を特定し、役員変更の登記手続をするための前段階として、自社の役員の任期管理の状態を認識しよう。
家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第18回】「信託契約作成上の留意点⑤」-受託者の地位-
受託者は、信託契約上の当事者となり、委託者から信託財産を受託し、信託財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う(信託法第2条第5項)。
すなわち、家族信託においては、受託者は家族信託の対象となる財産を高齢者である委託者から信託され、委託者に代わって管理を行い、必要に応じて売却するような立場となる。
税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第14回】「認知症患者の親族が負う監督責任」-JR東海認知症事件-
事故の原因を発生させた高齢者本人の認知能力が低下し、不法行為責任の前提となる「責任能力」(その内容については前回参照)すら欠く状態にあった場合、いったい誰が、どのような条件のもとに法的責任を負うのか。
この点に関し、最高裁平成28年3月1日判決は、【設問13】におけるような「事実上の後見人」(法定後見の申立てがされないまま、事実上、親族等が身の回りの面倒や財産管理を行っている状態)の監督義務・責任につき、民法714条1項が定める法定監督義務者の解釈に関連して次のように判示した。
法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第2回】「法務からみた循環取引」
法務からみた循環取引の知識が必要となる場面は、主に循環取引の破綻時において、当事者が自らの直接の取引先に対して、未払の売掛金等を請求する場面である。そこで、本稿では、循環取引に基づく請求の可否の判断枠組み及びこれを前提とした具体的な裁判事例について、解説を行う。
〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例17】ソレキア株式会社「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付けの結果並びに主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」(2017.5.24)
今回取り上げる適時開示は、ソレキア株式会社(以下「ソレキア」という)が平成29年5月24日に開示した「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付けの結果並びに主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」である。佐々木ベジ氏(以下「佐々木氏」という)が同社に対して公開買付を行い、その結果、同社の主要株主である筆頭株主になったという内容だが、「5.今後の見通し」は次のように記載されている。
組織再編時に必要な労務基礎知識Q&A 【Q3】「企業が合併した場合、消滅会社の従業員の労働契約はどうなるか」
【Q3】
企業が合併した場合、消滅会社の従業員の労働契約はどうなるか
家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第17回】「信託契約作成上の留意点④」-委託者の地位-
委託者は信託財産の元の保有者であり、「信託契約の当事者」として重要な立場にある。
そして、信託契約の締結により、信託財産の所有権は受託者に移転し、信託財産が賃貸不動産であるような場合には、賃貸人たる地位も同時に受託者に移転する。
法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第1回】「循環取引とは何か」
循環取引(特に「架空循環取引」等と呼ばれるもの)は、昭和の時代から登場する企業不祥事の一類型であるが、企業担当者等において問題の大きい取引であることが概ね認識されながらも、根絶に至ることなく定期的に発生しており、なお企業不祥事類型としての重要性は高いと言える。