法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第6回】「循環取引の実務対応②(初動対応後)」
企業においては、社内調査等によって判明した循環取引発生の背景事情等を踏まえ、その原因等を分析した上、適切な再発防止策を策定する必要がある。
再発防止策の策定は、企業の将来的な損害を防止するのは勿論のこと、金融機関等の債権者を含むステークホルダーとの関係において信用回復を図るとともに、特に上場企業等においては、内部統制システムがなお有効に機能していることを明らかにする意味合いがあり、いずれにしても非常に重要である。
〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例18】株式会社大戸屋ホールディングス 「第34回定時株主総会における議案の一部否決に関するお知らせ」(2017.6.29)
今回取り上げる適時開示は、株式会社大戸屋ホールディングス(以下「大戸屋」という)が平成29年6月29日に開示した「第34回定時株主総会における議案の一部否決に関するお知らせ」である。
同社は、平成29年5月10日、従業員等に対してストックオプションを付与するという内容の「ストックオプション(新株予約権)の付与に関するお知らせ」を開示していた。そのストックオプションの付与が、平成29年6月28日開催の定時株主総会において否決されたのである(翌日の平成29年6月29日ではなく平成29年6月28日中に開示すべきであったが)。
組織再編時に必要な労務基礎知識Q&A 【Q4】「企業が合併して余剰人員が生じた場合、有期雇用のパート社員を解雇できるか」
【Q4】 企業が合併して余剰人員が生じた場合、有期雇用のパート社員を解雇できるか
家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第19回】「信託契約作成上の留意点⑥」-受益者及び帰属権利者等の地位-
受益者とは、受益権を有する者であり、受益権とは信託財産に関して受益者が受託者に対して請求できる権利及びその確保のために有する権利をいう(信託法第2条第6項・第7項)。
すなわち、受益者は受託者を通じ信託財産から発生する利益を享受する立場にあり、受託者が信託事務を正当に遂行することを確保するために、後述するように、受託者への監督権限等の権限を有する。
法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第5回】「循環取引の実務対応①(初動対応)」
【第1回】で述べたとおり、循環取引については「不正の兆候が表れにくく発見が容易でない」という特徴があり、首謀者の財政破綻により売掛金の回収が遅延する又は循環取引に関与した取引先から接触があったことを契機に発覚するのが典型的であるが、それ以外にも、例えば次のような契機により発覚する場合がある。
税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第15回】「実務の現場における判断能力の判定方法(その1)」
私は30年近く税理士をしておりますが、ここ数年、認知症高齢者の判断能力が関わってくる相談が増えたことを実感しています。
これまでの連載で、判断能力とはどのようなものであるのか、その有無を判定するにはどのようなものが証拠になるのか等についての一般的知識はよくわかりました。
その一方で、普段の税理士業務の現場において「いま目の前のいるこの人が、法律上の判断能力を有しているのか」が問題となった場合に、具体的にどのような方法を用いて判断すればよいのか、いまいちイメージがつかめません。
医学的な専門知識がない私でも判定できるような実践的方法はありますか。
事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第9回】「政府系金融機関における危機対応融資に係る顧客資料の改ざんと不正隠ぺい」
政府系金融機関であるS中金では、①社内の稟議書に添付する試算表の改ざん(本件改ざん行為)と、②社内調査での隠ぺい(本件隠ぺい行為)が発覚し、2017年5月9日、経済産業省、財務省、金融庁、農林水産省より、業務改善命令を受けた。
本件は、半官半民の企業が陥りやすい問題を内包しており、また、ノルマによる従業員へのプレッシャーが原因の一旦にもなっている点、不正を認めたくない組織体質など、参考となる企業や団体は多いと思われる。
役員インセンティブ報酬の分析 【第6回】「譲渡制限付株式②」-平成29年度税制改正後-
税法上の役員報酬制度は、平成18年度税制改正で整備されて以来、制度そのものが大きく見直されることはなかった。すなわち、損金算入可能な役員報酬は、法人税法の定める、定期同額給与、事前確定届出給与又は利益連動給与の各要件を満たした制度でなければならないとされていた。一方、退職給与と新株予約権は、別に損金算入要件が認められていた。
平成29年度税制改正では、定期同額給与、事前確定届出給与又は利益連動給与という損金算入可能な役員報酬の3類型は維持しつつ、退職給与や新株予約権も役員報酬の中に含めて損金算入の可否を考えることとなった。
外国人労働者に関する労務管理の疑問点 【第5回】「外国人留学生(専門学校生)を社員として雇うとき(「留学」から「技術・人文知識・国際業務」の在留資格への変更)」~「専門士」の社員採用について、大学生との違いは~
大学生に比べて、専門学校の卒業生(「専門士」の資格を持つ外国人)は、専門学校で学んだ内容と、会社で従事する業務の関連性が、より厳密に審査されます。
例えば、経理専門学校の留学生なら、会社での従事業務は、経理業務・事務業務に従事することが前提です。また、留学生が大学生の場合は学部・学科を問わずに「翻訳・通訳」業務の申請が可能ですが、専門学校の留学生の場合は、学校で翻訳・通訳に関することを学んでいなければ、「翻訳・通訳」業務の申請ができません。
これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第6回】「役員の任期到来の時期の特定」-実践編-
本稿では、任期管理とその役員変更の登記手続に携わる実務担当者が、本連載【第2回】で紹介した「会社主導で中長期的に管理し続けられる体制づくり」を実現するための実際の手順を解説する。
まず、役員の任期到来の時期を特定し、役員変更の登記手続をするための前段階として、自社の役員の任期管理の状態を認識しよう。
