老コンサルタントが出会った『問題の多い相続』のお話 【第8回】「その相続対策、早計ではありませんか?」~相続増税と時代の流れで、変わる“優先順位”~
冒頭述べた相続税の税負担増になってから、特に富裕者層をはじめとして、節税対策により高い関心を示す情勢となってまいりました。
ただし、未だ大半の人たちは、
「自分だけはまだまだ死なない!」
「税金がかかるほど財産がない!」
と、極力(無理やり?)意識の外に置いている状態ではないでしょうか。
〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第23話】「男女平等と寡婦(寡夫)控除」
中尾統括官は、昼休みに、椅子にもたれながら書類を見ている。
「・・・それって、税理士会の建議書ですか?」
突然、背後から、声がする。
「えっ!」
中尾統括官が驚いて振り向くと、浅田調査官がニコニコしながら立っている。
「僕もたまに読んでいるのですが、なかなか面白いですよね。えーとこれは・・・令和2年度税制改正に関する建議書・・・ですね。」
令和時代の幕開けに思い馳せる会計事務所経営 【第4回】「あなたはそれでも事業承継をビジネスにしますか」~大廃業時代とどう向き合うか~(後編:独自性マーケティング)
前回に続き「マーケティング」についてお話を展開させていただきます。前回は顧客志向マーケティング、すなわち、顧客理解からその顧客の問題解決を提起することが、マーケティングの第一歩であると綴らせていただきました。
今、中小企業の経営課題は多岐にわたっています。一方で従前の会計事務所のビジネスモデルは陳腐化しつつあり、新たなモデル構築を迫られている。このような環境下で、会計事務所の顧客はまさに中小企業であり、十分な成長可能性を秘めていると確信しています。
老コンサルタントが出会った『問題の多い相続』のお話 【第7回】「自筆証書遺言の改正で公正証書遺言は不要になるか?」~過去の経験からの学び~
皆さまご案内の通り、このたびの民法等の改正に伴い「遺言制度の見直し」が行われました。その中でも特に身近な項目として、①「自筆証書遺言の作成方法の緩和」(2019年1月13日から)と、②「自筆証書遺言の保管制度の新設」(2020年7月10日から)が挙げられます。
私のようなコンサルタントの身としては、遺言書作成のコンサル依頼を受けますと、極力「公正証書遺言」の作成をお勧めしているのですが、その作成の手軽さから、「とりあえず自筆(証書遺言)で。」と言われるクライアントが結構おられます。
〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第22話】「国税庁のビッグデータの開示」
「中尾統括官!」
浅田調査官は、パソコンの画面を見ながら中尾統括官に声をかける。
「国税総合管理システムの導入費用って・・・すごい金額なんですね。」
浅田調査官の声に、調査報告書を読んでいた中尾統括官は、顔を上げる。
「国税総合管理システム?」
中尾統括官は立ち上がり、浅田調査官のパソコンを覗く。
老コンサルタントが出会った『問題の多い相続』のお話 【第6回】「超高齢者の相続対策」~予備的遺言内容の遺言書は必要か~
世の中、まさに高齢化社会、少し大袈裟かもしれませんが、「老老介護時代」はすでに「認認介護時代」へと移行しています。すなわち、認知症の人が認知症患者を介護しなければならないのです。
この原因は、高齢化・少子化・非同居化・・・等々いろいろ考えられます。以前、ある「遺言川柳」の本に、“百歳の相続をする八十歳”との歌が載っていましたが、現にいま私のクライアントが「百三歳の相続をする八十三歳」の状況にあり、母親(103歳)に当たる本人は未だご健在ですが、場合によれば長男(83歳)の方が先に相続開始になる可能性もあります。いわゆる「逆縁」ですね。
令和時代の幕開けに思い馳せる会計事務所経営 【第3回】「あなたはそれでも事業承継をビジネスにしますか」~大廃業時代とどう向き合うか~(前編:顧客志向マーケティング)
辛辣なタイトルですが、まず最初に一言お断りをさせてください。
私は事業承継をビジネスにしている先生方を揶揄しているわけではありません。
すでに事業承継をビジネスにされている先生方が数多くいらっしゃる中で、「時代は事業承継だ! 我々もその分野を強みに会計業界で勝ち残って行こう!!」と新たにこの分野に参入しようとする先生方の方向性は間違ってはいません。
しかし、レッドオーシャン(競争の激しい市場)に準備もなしに入るのは、疲弊するだけではないでしょうか。
〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第21話】「ふるさと納税制度」
「中尾統括官は昨年、いくらふるさと納税をしましたか?」
昼休みに、浅田調査官は座っている椅子をまわして、尋ねる。
「ふるさと納税・・・か?」
新聞を読んでいた中尾統括官は顔を上げる。
「たしか・・・10万円ぐらいだったと思うが・・・」
中尾統括官は自信なさそうに答える。
「統括官は給与収入額が多いから、もっとふるさと納税をしても良かったのではないですか?」
浅田調査官は、笑いながら言う。
令和時代の幕開けに思い馳せる会計事務所経営 【第2回】「自分の“らしさ”をかたちづくる」~独自性の発揮こそブランディングの醍醐味~
みなさん、ご自身のブランディング、事務所のブランディングを大切に育んでいますか。
「ブランド」という言葉の語源は、家畜として飼育している牛の自分所有と他人所有を区別するための焼印(burned)から生まれたとされています。そしてブランディングとは、「そのブランド=個の価値」を顧客に対し高めることを意味します。
そもそもブランドとは焼き印の話に象徴されるように、「個の存在」を表します。いわばそれぞれ1人1人、1社1社の個性とも言えるでしょう。
35,000もの数に迫ると言われる会計事務所ですが、残念ながら多くの事務所が市場に埋もれている、もしくは顧客から見れば、その多くが他の事務所と区別されていないのが実情です。
老コンサルタントが出会った『問題の多い相続』のお話 【第5回】「特別寄与料制度は前途多難」~費用対効果を考えれば生前贈与か遺贈がベター?~
いわゆる従来は相続人にしか認められていなかった寄与者が、六親等内の血族および三親等内の姻族まで「特別寄与者」として認められることになりました。すなわち、同居内の義父母の介護をする息子の嫁にも日の目が当たることになったのです。
ただし、これですべてが解決とは言えず、これまで数多くの相続事例を目の当たりにしてきた筆者としては、かえって揉めごとが増える一因になるのでは、と懸念しています。