理由付記の不備をめぐる事例研究
【第7回】
「棚卸資産計上漏れ」
~棚卸資産の計上が漏れていると判断した理由は?~
中央大学大学院商学研究科 博士後期課程
(酒井克彦研究室所属)
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して、棚卸資産の明細書と商品出納帳との照合により、預け在庫の期末棚卸資産計上漏れを認定した法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた岐阜地裁平成12年12月6日判決(税資249号1002頁。以下「本判決」という)を取り上げる。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(期末棚卸資産計上漏れ 〇〇〇〇円)
貴法人は、×年×月×日に貴法人がB社から仕入れ、C社及びD社(C社及びD社を併せて「C等」といいます。)に染色加工のため預けていた別表記載の生機(以下「本件生機」という。)を売上原価として損金の額に算入していますが、貴法人の帳簿書類である棚卸資産の明細書と商品出納帳とを照合したところ、B社から仕入れ、当事業年度末にC等に預けていた本件生機が期末棚卸資産の額に計上漏れになっていることが判明しました。
したがって、本件生機の購入金額を期末棚卸資産に加算するとともに、同額を売上原価から差し引いて課税所得の計算をしたところ、当事業年度の所得金額が〇〇〇円増加しました。
(注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
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