特定株主等によって支配された欠損等法人の
欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)の取扱い
~「繰越欠損金の使用制限」が形式的に適用される事例の検討~
【第4回】
「〈事例2〉欠損等法人が既存事業を廃止して
新しい事業を開始するケース(第2号事由)」
公認会計士・税理士
税理士法人トラスト パートナー
足立 好幸
〈事例2〉
欠損等法人が既存事業を廃止して新しい事業を開始するケース(第2号事由)
P社(内国法人。決算日は3月31日。50%超の株式等を直接及び間接に所有する株主はいない)は、平成24年10月1日に、Q社からA社(内国法人。決算日は3月31日)の発行済株式のすべてを取得した。
A社は、買収前から飲食店事業を行っていたが、業績不振が続いており、業績の回復の見込みがないため、平成27年3月31日付でその事業をすべて廃止した(店舗をすべて閉鎖した)。そして、今期(平成28年3月期)において、平成28年1月1日に、新たに不動産賃貸業を行うことを検討している。その際、A社は、P社からの出資、あるいは、借入れによって資金調達をすることを考えている。
A社では、買収前から継続して繰越欠損金が生じている。
また、A社に対する債権について、債務免除及び現物出資を行う予定はない。
この場合、欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の規定(法法57の2、60の3)については適用されるのであろうか。
《検討》
本ケースのように、買収した会社がうまくいかない場合に、買収時の事業を廃止し、改めて新しい事業を開始しようとするケースがある。
しかし、第2号事由に該当する場合、適用事業年度以後に、適用事業年度前の事業年度に生じた繰越欠損金の使用制限が生じることとなる。また、同様に、欠損等法人の特定資産の譲渡等損失額の損金算入制限が生じることとなる。
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