理由付記の不備をめぐる事例研究
【第12回】
「寄附金と営業権」
~営業権の譲受代金の支払ではなく、寄附金に該当すると判断した理由は?~
中央大学大学院商学研究科 博士後期課程
(酒井克彦研究室所属)
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して、X社が営業権の譲受代金債務と貸付金債権の相殺を行ったことについて、営業権の譲受代金ではなく、貸付金を免除する目的で贈与された寄附金に該当するものとした法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所平成3年3月27日裁決(裁決事例集41号219頁。以下「本裁決」という)を取り上げる。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(寄附金の損金不算入額 〇〇〇円)
貴法人は、×7年2月15日付、A社と20,000,000円の営業権の追加契約をしていますが、これは次の理由により営業権とは認められません。
1 貴法人とA社との営業権譲渡契約は、×3年4月1日に有効に成立しています。
2 営業権の追加契約というのは、一般的にあり得ない行為であるとともに、当初契約から4年が経過したにもかかわらず、当該行為ができたのは、お互いに同族関係会社にあったからであります。
3 ×7年3月31日にA社に対して有する貸付金と相殺した20,000,000円は、営業権の譲受け代金ではなく、同社に対して有する貸付金を免除する目的で贈与された寄附金に該当します。
(注) 素材とした本裁決の裁決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。