理由付記の不備をめぐる事例研究
【第14回】
「交際費と福利厚生費」
~福利厚生費ではなく交際費等に該当すると判断した理由は?~
中央大学大学院商学研究科 博士後期課程
(酒井克彦研究室所属)
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して、一部の役員及び従業員が酒食するために支出した費用を、福利厚生費ではなく交際費等に該当するものとした法人税更正処分(再更正処分)の理由付記の十分性が争われた、東京地裁昭和56年4月15日判決(税資117号4頁。以下「本判決」という)を取り上げる。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(交際費等の損金不算入額 〇〇〇円)
貴社が福利厚生費として損金経理した△△△円のうち、一部の役員および従業員が社外のバ-および小料理店で飲酒した行為につき支出したものは別紙の日付、摘要ならびに金額で示すとおり合計□□□円であります。これらの支出額は、租税特別措置法61条の4第4項の括弧書で示される通常要する費用に該当しないので、福利厚生費でなく交際費等になります。したがって、この金額を申告額に加算して、損金算入限度超過額を計算すると、〇〇〇円が損金不算入となります。
(別紙)
(注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
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