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平成29年度税制改正における『組織再編税制』改正事項の確認 【第2回】

筆者:佐藤 信祐

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平成29年度税制改正における

『組織再編税制』改正事項の確認

【第2回】

 

公認会計士 佐藤 信祐

 

連載の目次はこちら

3 スクイーズアウト税制

(1) 対価要件の見直し

平成29年度税制改正では、スクイーズアウト税制として、以下の見直しがなされている。

⑤ 吸収合併及び株式交換に係る適格要件のうち対価に関する要件について、合併法人又は株式交換完全親法人が被合併法人又は株式交換完全子法人の発行済株式の3分の2以上を有する場合におけるその他の株主に対して交付する対価を除外して判定することとする。

⑥ 全部取得条項付種類株式の端数処理、株式併合の端数処理及び株式等売渡請求による完全子法人化について、株式交換と同様に、組織再編税制の一環として位置づけ、次の措置を講ずる。

イ 企業グループ内の株式交換と同様の要件を満たさない場合におけるその完全子法人となった法人を、非適格株式交換等に係る完全子法人等の有する資産の時価評価制度等の対象に加える。

ロ 企業グループ内の株式交換と同様の適格要件を満たす場合におけるその完全子法人となった法人を連結納税の開始又は連結納税グループへの加入に伴う資産の時価評価課税の対象から除外するとともに、その完全子法人となった法人の連結納税の開始等の前に生じた欠損金額をその個別所得金額を限度として、連結納税制度の下での繰越控除の対象に加える。

⑦ 非適格株式交換等に係る完全子法人等の有する資産の時価評価制度及び連結納税の開始又は連結納税グループへの加入に伴う資産の時価評価制度について、時価評価の対象となる資産から、帳簿価額が1,000万円未満の資産を除外する。

(※) 平成29年度与党税制改正大綱70-71頁より抜粋

このうち、⑤であるが、発行済株式の3分の2以上を支配した後に、現金交付型合併又は現金交付型株式交換を行ったとしても、金銭等不交付要件に抵触しないことを意味している。そして、法人税法上、支配関係が成立しているかどうかは、合併又は株式交換の直前とその後の継続見込みで判断する。

そのため、発行済株式の3分の2を取得してから合併又は株式交換を行う場合には、50%超100%未満グループ内の組織再編に該当することから、事業継続要件及び従業者引継要件を満たせば、税制適格要件を満たすことができる。

この点につき、法人税法2条12号の8、同号の17では、合併法人又は株式交換完全親法人が保有する株式に限定されていることから、間接保有を含めたうえで発行済株式の3分の2以上を保有しているかどうかの判定をするわけではないという点に留意が必要である。また、当然のことながら、同一の者によって、発行済株式の3分の2以上が保有されている場合についても適用されない。

また、無対価合併及び無対価株式交換を行った場合には、従前通り、対価の交付を省略したとみることができる場合についてのみ、税制適格要件を満たすことができることとされた。これに対し、次回(【第3回】)解説するように、スクイーズアウトでは、無対価スクイーズアウトを行ったとしても、税制適格要件を満たすことができるようにされている。

そして、現金交付型合併又は現金交付型株式交換を行った場合には、現金を受け取った株主において、みなし配当を認識する必要はないものの、株式譲渡損益を認識する必要があるものとされた(法法24①、なお、61条の2②⑩では、金銭等を交付しない合併又は株式交換のみについて譲渡損益を認識しないこととしている)。

さらに、合併法人の純資産の部であるが、法人税法施行令8条1項5号では、適格合併に係る被合併法人の当該適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時における資本金等の額から当該合併による増加資本金額等(当該合併により増加した資本金の額又は出資金の額並びに当該合併により被合併法人の株主等に交付した金銭並びに当該金銭及び当該法人の株式以外の資産の価額の合計額をいう)と抱合株式の当該合併の直前の帳簿価額を減算した金額が、適格合併により増加する資本金等の額として規定されている。すなわち、被合併法人の少数株主に対して交付した金銭については、資本金等の額のマイナス要因として処理することになる。

これに対し、現金交付型株式交換については、法人税法施行令119条1項10号では、金銭等不交付株式交換のみに対して適用されることから、現金交付型株式交換を行った場合には、交付した金銭に相当する価額が株式交換完全子法人株式の受入価額となる。そのため、資本金等の額は増減しない。

このように、現金交付型合併又は現金交付型株式交換を行ったとしても、税制適格要件を満たすこととされた。諸外国の税制を見てみると、例えば、少数株主が10%であり、当該少数株主に対して金銭を交付した場合には、法人レベルにおいて、10%だけ譲渡損益を認識するという制度を導入することも可能であった。これに対し、改正法人税法では、そのような考え方は採られておらず、適格合併であれば、すべての譲渡損益を認識せず(法法62の2①)、適格株式交換であれば、すべての評価損益を認識しない(法法62の9①)という制度となっている。

それが故に、組織再編税制全体に影響を及ぼすものではなく、スクイーズアウトと足並みを揃える制度にすることを優先した制度であったということも言える。

(次号(4/27)に続く)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

連載目次

平成29年度税制改正における

『組織再編税制』改正事項の確認

  • 【第2回】
    3 スクイーズアウト税制
    (1) 対価要件の見直し
  • 【第3回】
    (2) 全部取得条項付種類株式、株式併合及び株式等売渡請求
    ①  基本的な取扱い
    ② 無対価スクイーズアウト
    ③ 連結納税制度への影響
  • 【第4回】
    4 支配関係継続要件の見直し
    5 株式継続保有要件の見直し
  • 【第5回】
    6 2段階組織再編成の見直し
    7 資産調整勘定の償却の見直し
    8 繰越欠損金、特定資産譲渡等損失の見直し
    9 むすび
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筆者紹介

  • 佐藤 信祐

    (さとう・しんすけ)

    公認会計士・税理士、法学博士
    公認会計士・税理士 佐藤信祐事務所 所長

    平成11年 朝日監査法人(現有限責任あずさ監査法人)入所
    平成13年 公認会計士登録、勝島敏明税理士事務所(現 デロイトトーマツ税理士法人)入所
    平成17年 税理士登録、公認会計士・税理士佐藤信祐事務所開業
    平成29年 慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了(法学博士)

    【主な著書】
    ・『ケース別に分かる企業再生の税務』(共著、中央経済社)
    ・『企業買収・グループ内再編の税務─ストラクチャー選択の有利不利判定─』(共著、中央経済社)
    ・『組織再編税制 申告書・届出書作成と記載例』(共著、清文社)
    ・『制度別逐条解説 企業組織再編の税務』(共著、清文社)
    ・『組織再編における株主課税の実務Q&A』(共著、中央経済社)
    ・『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』(中央経済社)
    ・『債務超過会社における組織再編の会計・税務』(共著、中央経済社)
    ・『グループ法人税制における無対価取引の税務Q&A』(共著、中央経済社)
    ・『組織再編・グループ内取引における消費税の実務Q&A』(共著、中央経済社)
    ・『実務詳解 組織再編・資本等取引の税務Q&A』(共著、中央経済社)
    ・『これだけ!組織再編税制』(共著、中央経済社)
    ・『グループ法人税制・連結納税制度における組織再編成の税務詳解』(共著、清文社)
    ・『消費税 個別対応方式の実務 プラス 100Q&A』(共著、清文社)
    ・『組織再編による 事業承継対策』(共著、清文社)
    ・『組織再編の会計と税務の相違点と別表四・五(一)の申告調整』(共著、清文社)
    ・『中小企業のための組織再編・資本等取引の会計と税務』(共著、清文社)

    その他M&A、グループ内再編、事業再生及び事業承継に関する書籍多数。

       

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