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平成29年度税制改正における『組織再編税制』改正事項の確認 【第5回】

筆者:佐藤 信祐

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平成29年度税制改正における

『組織再編税制』改正事項の確認

【第5回】
(最終回)

 

公認会計士 佐藤 信祐

 

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6 2段階組織再編成の見直し

T&Amaster675号15頁の「二次・三次再編の税制適格要件を見直し」では、二次再編が見込まれている場合だけでなく、三次再編が見込まれている場合についても改正法人税法施行令で規定されることが報道されていた。この点、法人税法施行令4条の3第25項を確認すると、二次再編が適格合併である場合には、「当該適格合併に係る合併法人は、当該適格合併後においては当該各号に定める法人とみなして、当該各号に規定する規定及びこの項の規定を適用する。」と規定されている。これにより、二次再編の合併法人が適格合併により解散することが見込まれている場合にも、「当該各号に定める法人」とみなされることから、一次再編を適格組織再編として取り扱うことが可能になる。

ただし、実際の条文を見てみると、すべての組織再編に対応したものとはなっていない。例えば、合併については、法人税法施行令4条の3第3項2号において、同条2項2号を読み替えることにより、実質的に同令25項が適用されるため、同一の者が適格合併により解散することが見込まれる場合の取扱いについては、50%超100%未満グループ内の合併においても対応しているように思われる。しかし、法人税法本法にはこのような規定がないことから、合併法人が適格合併により解散することが見込まれる場合における従業者引継要件、事業継続要件については、三次再編に対応していないということが言える。

これは、共同事業を行うための合併における従業者引継要件、事業継続要件についても同様である。この点については、財務省の立法担当者による「平成29年版改正税法のすべて」を確認する必要があろう。

 

7 資産調整勘定の償却の見直し

平成29年度与党税制改正大綱では、資産調整勘定及び差額負債調整勘定について、月割計算を行うことが記載されている。実際の条文については、法人税法62条の8第4項、7項を確認されたい。

 

8 繰越欠損金、特定資産譲渡等損失の見直し

平成29年度税制改正前は、特定資産譲渡等損失相当額における「特定資産」の定義が「支配関係発生日において有する資産」、特定資産譲渡等損失額の損金不算入における「特定資産」の定義が「支配関係発生日前から保有していた資産」とされていた。

そのため、例えば、3月決算法人であるA社を×1年7月1日に買収したときは、A社において、×1年4月1日から×1年6月30日までに発生した損失は、支配関係発生日(×1年7月1日)には存在しないことから、特定資産譲渡等損失相当額に該当しないと解されていた。これに対し、特定資産譲渡等損失額の損金不算入の計算では、支配関係発生日前には有していることから、該当する余地があると解されていた。

この点につき、平成29年度税制改正では、「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度のうち支配関係がある法人間でみなし共同事業要件を満たさない適格合併等が行われた場合における欠損金の制限措置及び特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入制度について、支配関係発生日の属する事業年度開始の日から支配関係発生日の前日までの間に生じた特定資産の譲渡等損失額を制限の対象に加える(平成29年度与党税制改正大綱72頁より抜粋)」こととされた。

これを条文で確認すると、法人税法62条の7第2項2号では、特定保有資産の定義について、「支配関係発生日の属する事業年度開始の日前から有していた資産」と定められた。このことにより、支配関係発生日の属する事業年度開始の日から支配関係発生日の前日までの間に取得した資産は特定保有資産から除外されることとされ、納税者優位に解することができるようになった。

それと当時に、法人税法施行令123条の8第3項5号では、「第62条の7第2項第1号に規定する支配関係発生日(第12項において「支配関係発生日」という。)の属する事業年度開始の日以後に有することとなった資産及び同日における価額が当該同日における帳簿価額を下回っていない資産」を特定資産から除外することされた。すなわち、特定引継資産からも支配関係発生日の属する事業年度開始の日から支配関係発生日の前日までの間に取得した資産が除外されることが明らかにされている。さらに、時価が帳簿価額を下回っていない場合に特定資産から除外することができるという特例も、その算定基準日が支配関係発生日の属する事業年度開始の日とされた。

そして、法人税法施行令112条5項1号においても、

当該対象事業年度を法第62条の7第1項の規定が適用される事業年度として当該被合併法人等が法第57条第3項第1号に規定する最後に支配関係があることとなった日(次項において「支配関係発生日」という。)の属する事業年度開始の日前から有していた資産(同日を法第62条の7第1項に規定する特定適格組織再編成等(次項において「特定適格組織再編成等」という。)の日とみなした場合に第123条の8第3項第1号から第5号まで(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)に掲げる資産に該当するものを除く。)につき法第62条の7第1項の規定(当該対象事業年度が連結事業年度に該当する期間である場合には、法第81条の3第1項に規定する個別損金額を計算する場合の法第62条の7第1項の規定)を適用した場合に同項に規定する特定資産譲渡等損失額となる金額に達するまでの金額

と規定された。

このことにより、「支配関係発生日の属する事業年度開始の日前から有していた資産」が、特定資産として取り扱われることになり、支配関係発生日の属する事業年度開始の日から支配関係発生日の前日までに損失を実現させることにより、繰越欠損金の引継制限、使用制限を回避することはできなくなった。

 

9 むすび

このように、平成29年度税制改正では、組織再編税制の大幅な見直しがなされており、今後の実務への影響は大きいと思われる。

なお、本稿は、「平成29年版改正税法のすべて」が公表される前に校了したものであるため、その内容については触れていない。「平成29年版改正税法のすべて」を確認することにより、その制度趣旨についても理解することができると思われる。

本稿が、皆様のお役に立つことができれば幸いである。

(連載了)

連載目次

平成29年度税制改正における

『組織再編税制』改正事項の確認

  • 【第2回】
    3 スクイーズアウト税制
    (1) 対価要件の見直し
  • 【第3回】
    (2) 全部取得条項付種類株式、株式併合及び株式等売渡請求
    ①  基本的な取扱い
    ② 無対価スクイーズアウト
    ③ 連結納税制度への影響
  • 【第4回】
    4 支配関係継続要件の見直し
    5 株式継続保有要件の見直し
  • 【第5回】
    6 2段階組織再編成の見直し
    7 資産調整勘定の償却の見直し
    8 繰越欠損金、特定資産譲渡等損失の見直し
    9 むすび
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筆者紹介

  • 佐藤 信祐

    (さとう・しんすけ)

    公認会計士・税理士、法学博士
    公認会計士・税理士 佐藤信祐事務所 所長

    平成11年 朝日監査法人(現有限責任あずさ監査法人)入所
    平成13年 公認会計士登録、勝島敏明税理士事務所(現 デロイトトーマツ税理士法人)入所
    平成17年 税理士登録、公認会計士・税理士佐藤信祐事務所開業
    平成29年 慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了(法学博士)

    【主な著書】
    ・『ケース別に分かる企業再生の税務』(共著、中央経済社)
    ・『企業買収・グループ内再編の税務─ストラクチャー選択の有利不利判定─』(共著、中央経済社)
    ・『組織再編税制 申告書・届出書作成と記載例』(共著、清文社)
    ・『制度別逐条解説 企業組織再編の税務』(共著、清文社)
    ・『組織再編における株主課税の実務Q&A』(共著、中央経済社)
    ・『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』(中央経済社)
    ・『債務超過会社における組織再編の会計・税務』(共著、中央経済社)
    ・『グループ法人税制における無対価取引の税務Q&A』(共著、中央経済社)
    ・『組織再編・グループ内取引における消費税の実務Q&A』(共著、中央経済社)
    ・『実務詳解 組織再編・資本等取引の税務Q&A』(共著、中央経済社)
    ・『これだけ!組織再編税制』(共著、中央経済社)
    ・『グループ法人税制・連結納税制度における組織再編成の税務詳解』(共著、清文社)
    ・『消費税 個別対応方式の実務 プラス 100Q&A』(共著、清文社)
    ・『組織再編による 事業承継対策』(共著、清文社)
    ・『組織再編の会計と税務の相違点と別表四・五(一)の申告調整』(共著、清文社)
    ・『中小企業のための組織再編・資本等取引の会計と税務』(共著、清文社)

    その他M&A、グループ内再編、事業再生及び事業承継に関する書籍多数。

       

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