理由付記の不備をめぐる事例研究
【第22回】
「雑収入(預り金)」
~従業員からの預り金に係る雑収入計上が漏れていると判断した理由は?~
千葉商科大学商経学部講師
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して行われた「従業員からの預り金に係る雑収入計上漏れ」に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所平成26年2月21日裁決(裁決事例集94号1頁。以下「本裁決」という)を素材とする。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(雑収入計上漏れ 30万円)
貴法人は、貴法人の従業員であるJ課長と取り交わした覚書において、J課長から差入れを受けた金額のうち30万円については、平成17年9月27日に当該従業員が貴法人に対し発生させた事業上の損失を補填させるための弁償金として、返金しないこととしたにもかかわらず、帳簿への記録をせず雑収入を除外していた事実が判明しましたので、当該金額を雑収入の計上漏れとして当事業年度の所得金額に加算しました。
(注) 本件理由付記は、素材とした本裁決の裁決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工して作成したものである。
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