理由付記の不備をめぐる事例研究
【第26回】
「有価証券譲渡益計上漏れ」
~有価証券譲渡益の計上が漏れていると判断した理由は?~
千葉商科大学商経学部講師
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して行われた「有価証券譲渡益の計上漏れ」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた東京地裁昭和55年10月28日判決(訟月27巻4号789頁。以下「本判決」という)を取り上げる。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(有価証券譲渡益計上漏れ 5,407,500円)
昭和50年11月、取締役Aに対しT(株)の株式360,500株を1株当り85円、総額30,642,500円で譲渡しているが、同社株式の譲渡日における東京証券取引所の公表価格は1株100円であるので、譲渡価格と公表価格との差額1株当り15円、総額5,407,500円は有価証券譲渡益として当期の益金の額に算入します。
〔筆者注:当該金額が役員賞与に該当し、損金不算入となる旨の理由については掲載省略〕
(注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
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