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[無料公開中]平成29年度税制改正を踏まえた設備投資減税の選定ポイント 【第4回】「地域中核企業向け設備投資促進税制(地域未来投資促進税制)」

筆者:アースタックス税理士法人

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平成29年度税制改正を踏まえた設備投資減税の選定ポイント

【第4回】

「地域中核企業向け設備投資促進税制(地域未来投資促進税制)」

 

アースタックス税理士法人
代表社員  税理士 島添 浩 
シニアマネジャー 税理士 小嶋 敏夫
壽命 正晃
發知 諭志

 

本連載では、平成29年度税制改正における中小企業者等の設備投資減税の全体像を確認し、対象資産ごとに選択できる税制について整理・解説することを主旨として、【第1回】では、3つの設備投資減税(①中小企業経営強化税制、②中小企業投資促進税制、③商業・サービス業・農林水産業活性化税制)の概要を確認した。続いて、【第2回】【第3回】では、平成29年度税制改正において創設された中小企業経営強化税制の要件、対象資産、手続き等さらに固定資産税の特例措置について確認した。

また、平成29年度税制改正では、中小企業者等に対する上記3つの設備投資減税とは別に、地域経済を牽引する中核企業等が、地域経済に波及効果のある新たな事業に挑戦するために行う設備投資を対象に、特別償却又は税額控除が選択適用できる制度が創設された。

そこで今回は、この「地域未来投資促進税制」について確認する。

 

1 制度の概要

平成29年度税制改正で創設された地域中核企業向け設備投資促進税制は、地域未来投資促進税制とも呼ばれ、地域で伸びゆく成長分野への投資を促進するため、将来の市場規模拡大が見込まれ、また、地域との親和性も高い、地域経済の発展に寄与する波及効果の高い地域経済牽引事業を創出することを税制面から支援するものである。

この税制措置は「企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の一部を改正する法律」(以下「地域未来投資促進法」(※)という)の改正が前提となっており、同改正法案は、6月2日に公布され、7月31日に施行される

本税制は、地方公共団体(都道府県・市町村)が地域との親和性の高い地域経済牽引事業の基本計画を策定し、基本計画に沿って事業者が策定する「地域経済牽引事業計画」を認定し、この「認定地域経済牽引事業計画」に基づき機械装置、器具備品、建物及びその附属設備並びに構築物を取得し事業供用した場合に、事業供用年度において、その取得価額の40%相当額(建物及びその附属設備並びに構築物については20%相当額)の特別償却と取得価額の4%相当額(建物及びその附属設備並びに構築物については2%相当額)の税額控除との選択適用ができる制度である。

(※) 地域未来投資促進法の基本スキームは、国の基本方針に基づき、市町村及び都道府県が策定し、国が同意した基本計画に従い事業者が作成する「地域経済牽引事業計画」を都道府県知事が承認する。そして、承認された事業につき地域経済牽引事業者を人材、設備投資、財政・金融、情報等の多方面から集中的に支援を行うものである。

 

2 地域経済牽引事業計画と地域経済牽引企業

本税制の適用を受けるためには、地域未来投資促進法のスキームに従い事業者が作成した「地域経済牽引事業計画」につき都道府県の承認を受け「地域未来牽引企業」に選定される必要がある。「地域未来牽引企業」は、地域経済の大黒柱部門、未来挑戦部門があり、新たな地域の牽引役として期待される成長分野の例として、経済産業省は以下のような事業を挙げている。

  • 成長ものづくり(医療機器、航空機部品、バイオ、新素材)
  • 農林水産、地域商社(農林水産品の海外市場獲得、地域産品のブランド化)
  • 第4次産業革命関連(Iot、AI、ビッグデータを活用、IT産業の集積を地方に構築、データ利活用による課題解決、高収益化)
  • 観光、スポーツ、文化、まちづくり(民間ノウハウを活用したスタジアム・アリーナ整備、訪日観光客の消費喚起、文化財の活用)
  • 環境、エネルギー(環境ビジネス、省エネルギー、再生可能エネルギー)
  • ヘルスケア、教育サービス(ロボット介護機器開発、健康管理サポートサービス、専門職の専修学校整備)

上記の事業の具体的な例としては、「飯田航空宇宙プロジェクト(長野県飯田市)」、「市街のテストヘッド化とICTオフィスの構築による産業集積(福島県会津若松市、会津大学、アクセンチュア(株))」、「地域商社によるアジア圏への農水産物輸出支援事業(福岡県福岡市)」、「インバウンド観光事業による温泉地の再興(長野県下高井郡山ノ内町、八十二銀行及びREVIC等)」などが挙げられている。

 

3 適用対象法人

(1) 青色申告書を提出する法人であること

(2) 地域未来投資促進法の改正法の施行日(平成29年7月31日)から平成31年3月31日までの間に、「地域経済牽引事業計画」を作成し、都道府県の承認を受け、当該計画に基づき「特定地域経済牽引事業施設等」を新増設し、その施設等を構成する機械装置、器具備品、建物・建物附属設備・構築物(「特定事業用機械等」)を取得して、当該牽引事業の用に供すること

なお、本連載において紹介してきた他の中小企業者向けの設備投資減税と異なり、資本金等による制限がないため、資本金1億円以上の企業でも要件を満たせば適用を受けられる可能性がある。

 

4 適用対象事業と適用対象区域

適用対象事業は、都道府県から承認を受けた「承認地域経済牽引事業計画」に従って行われる地域経済牽引事業であり、一定の基準に適合することについて主務大臣の確認を受けたものとされる。

また、本税制の適用対象区域は、市町村及び都道府県が策定した基本計画に定められた促進区域である。

 

5 適用期間

改正地域未来投資促進法の施行日(※)から平成31年3月31日まで。

(※) 施行日は、同法の公布の日(平成29年6月2日)から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日とされており、平成29年7月31日に施行される

 

6 対象設備と税制措置

本税制の適用対象資産は、「地域経済牽引事業計画」に定められた施設又は設備(「特定地域経済牽引事業施設等」)で、取得価額の合計額が2,000万円以上のものの新設又は増設に係る機械装置、器具備品、建物及びその附属設備並びに構築物(「特定事業用機械等」)である。

本税制は、適用対象法人が適用期間内に、適用対象事業に係る適用対象区域内において「特定事業用機械等」を取得し、「承認地域経済牽引事業」の用に供した日を含む事業年度において、特別償却と税額控除の選択適用ができる制度である。

対象設備ごとの特別償却限度額と税額控除限度額は、以下のとおりである。

(1) 特別償却

特別償却限度額は、適用対象となる「特定事業用機械等」が機械装置及び器具備品である場合には取得価額の40%、建物、建物附属設備及び構築物である場合には取得価額の20%である。ただし、「特定事業用機械等」の取得価額の上限は100億円とされているため注意が必要である。なお、所有権移転外リース取引により取得した特定事業用機械等は特別償却の適用除外資産とされている。

(2) 税額控除

税額控除限度額は、適用対象となる「特定事業用機械等」が機械装置及び器具備品である場合には取得価額の4%、建物、建物附属設備及び構築物である場合には取得価額の2%である。なお、税額控除額は、その事業供用年度の法人税額の20%が上限となっている。
なお、「地域経済牽引事業計画」に従い新たに取得した建物・構築物・土地については、固定資産税及び不動産取得税が免除又は減税される自治体があるので確認いただきたい。

 

7 申告要件等

地域未来投資促進税制の適用を受ける場合の申告要件は、以下のとおりである。

(イ) 特別償却の場合

・特別償却額につき損金経理していること(ただし、会計監査等が必要な企業の場合には、特別償却準備金方式が望ましい)

・確定申告書等に「特定事業用機械等」の償却限度額の計算に関する明細書を添付すること

(ロ) 税額控除の場合
確定申告書に控除の対象となる「特定事業用機械等」の取得価額、控除を受ける金額及びその金額の計算に関する明細を記載した書類を添付すること

ただし、「特定事業用機械等」の取得価額の合計額が100億円を超える場合には、100億円にその「特定事業用機械等」の取得価額がその合計額のうちに占める割合を乗じて計算した金額が、特別償却限度額又は税額控除限度額の計算における取得価額の上限となる。つまり、本税制の対象となる取得価額の上限は100億円ということになる。

なお、他の特別償却又は税額控除の制度と同様に、租税特別措置法の規定によるこの制度以外の特別償却もしくは税額控除制度等の適用を受ける減価償却資産については、本税制の適用対象資産から除かれることになる。つまり、同じ減価償却資産で2以上の特別償却・税額控除に係る税制の適用を受けることはできない。しかし、地方税である固定資産税の特例措置とは重複して利用することが可能である。

 

8 適用を検討する際の留意点等

地域未来投資促進税制の適用を受けるためには、都道府県及び市町村が策定した基本計画に合致し、地域経済に対して高い波及効果があり、国内外における競争力を有しているなどの項目について、都道府県等の認定を受ける必要がある。

本税制の適用を検討する際には、以下のような点について留意する必要がある。

(1) 地域未来牽引企業に選定されることが大前提

本税制の適用を受けるためには、事業者が地域未来牽引企業の2つの部門(地域経済の大黒柱部門、未来挑戦部門)のいずれかに選定される必要がある。未来挑戦部門については7月21日に推薦の受付が締め切られていることから、今後本税制の適用を検討する事業者は、地域経済の大黒柱部門で選定されることを目指すことになる。

(2) 投資総額2,000万円以上100億円以下

前述したとおり、本税制の適用対象資産は、地域経済牽引事業計画に定められた「特定地域経済牽引事業施設等」で、その取得価額の合計額が2,000万円以上のものである。これに対して、特別償却又は税額控除の適用対象となる「特定事業用機械等」の取得価額の上限は100億円である。このように、本税制の適用を受ける上で対象となる投資額の上限と下限の対象資産が異なるので注意が必要である。

(3) 前年度の減価償却費の10%超の設備投資が必要

地域未来投資促進法では、税法上の要件とは別に、前年度の減価償却費の10%を超える設備投資が要件に課されている。したがって、毎年の減価償却費が大きい企業にとっては、適用のハードルが高くなる。

(4) 地域経済牽引事業計画は共同作成も可能

本税制の適用を受けるためには、前提として事業者が策定した「地域経済牽引事業計画」について都道府県の承認が必要となるが、この事業計画は1社でなく、複数の会社が共同で作成することが可能である。また、投資額等の判定についても共同で事業を行う事業者の合計金額で判定することが可能となっている。例えば、2社が共同で事業を行う場合、2社合計で投資額が2,000万円以上であればよい。

(5) 基本計画の作成や都道府県による承認スケジュール等の確認を怠らないように

「地域未来投資促進税制」を適用するための手続き等を定めた「地域未来投資促進法」の改正案は5月11日に衆議院を通過し、6月2日に公布された。同法の施行日は交付日から起算して3月を範囲内とされており、7月31日に施行される

本税制の適用を受けるためには、事業者が「地域経済牽引事業計画」を策定し、都道府県の承認を受ける必要があるが、事業者が計画の作成を行う前に市町村及び都道府県がその前提となる基本計画(対象区域、事業の要件等)の策定を行うため、実際に制度の適用が始まるのはさらに先になるものと思われる。

本税制の適用を検討する事業者は、今後の具体的な地方公共団体の「基本計画」や地域未来牽引企業選定プロセスなどの情報収集を怠らないことが肝要である。経済産業省が公表している地域未来投資促進法の執行スケジュールは、下記のとおりであるので参考にされたい。

【地域未来投資促進法の執行スケジュール】

6月2日

  • 法律公布

6月中旬~7月上旬

  • 地方公共団体向け説明会

6月下旬~7月上旬

  • 地域中核企業候補の推薦受付

7月中

  • ウェブサイト立ち上げ(経済産業省ウェブサイト内)

7月31日

  • 施行(予定)

夏頃

  • 地域中核企業候補の2,000社リスト公表
  • 地域創生推進交付金 2次公募 締切り

9月上旬

  • 基本計画(第1陣)への同意(予定)

秋頃

  • 都道府県による地域経済牽引事業計画の承認(第1陣)(予定)

なお、「地域未来投資促進法」については、経済産業省から資料が公表されているので、下記も併せて参照されたい。

【参考】 経済産業省ホームページ

「地域未来投資促進法」について

*  *  *

次回からは設備種別ごとの適用税制の選択ポイントについて解説する。

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

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筆者紹介

  • アースタックス税理士法人

    URL  http://www.earth-tax.com

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