理由付記の不備をめぐる事例研究
【第36回】
「寄附金(社員旅行負担金)」
~グループ3社の共同社員旅行の負担金が寄附金に該当すると判断した理由は?~
千葉商科大学商経学部講師
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して行われた「グループ3社の共同社員旅行の負担金の一部が寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所平成3年7月18日裁決(裁決事例集42号128頁。以下「本裁決」という)を素材とする。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(寄附金の損金不算入 〇〇〇万円)
貴法人が、福利厚生費勘定において、××年5月17日に計上したZ社への支払額1,000,000円と同月24日に戻入計上したB社からの入金額500,000円との差額500,000円(以下「本件負担額」といいます。)は、貴法人、A社及びB社のグループ3社が合同で行ったバンコクへの慰安旅行の負担金であるところ、次のとおり、本件負担額と貴法人が負担すべきであるとして認められる金額148,111円との差額である351,889円は、A社が負担すべきものを貴法人が負担したもので、貴法人からA社への経済的利益の無償の供与であり、法人税法第37条に規定する寄附金と認められます。
したがって、法人税法施行令第73条の規定により計算した寄附金の損金算入限度額△△△円を超える〇〇〇円は、法人税法第37条の規定により損金の額に算入されないので、所得金額に加算しました。
① 当該慰安旅行の総額は2,666,000円で、参加人員18名であるので、1人当たりの費用は148,111円となる。
② 貴法人からの参加者はD男とE男の両名であるが、前者はA社の取締役、後者はA社の代表取締役を兼務しており、勤務状況からして同社と貴法人で折半すべきものと認められるため、X社の負担額は148,111円となる。
(注) 素材とした本裁決の裁決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
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