理由付記の不備をめぐる事例研究
【第38回】
「寄附金(貸倒損失・債権放棄)」
~子会社に対する貸倒損失が寄附金に該当すると判断した理由は?~
千葉商科大学商経学部講師
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して行われた「子会社に対する貸倒損失が寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた東京高裁平成7年5月30日判決(税資209号940頁。以下「本判決」という)を素材とする。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(損金と認められない貸倒損失 2億円)
貴法人が子会社である(株)Rに対する債権金額2億円を債権放棄し、貸倒損失として計上した金額は、次の理由により、(株)Rに対する寄付金と認められ、貸倒損失とは認められませんので所得金額に加算します。
① (株)Rの貸借対照表(×2年3月27日)によれば同社の換価しうる資産の額は貴法人に対する債務以外の債務の額を上回っており、貴法人に対する債務以外の債務を全て弁済しても貴法人に対する弁済は可能であり、また(株)Rの有するゴルフ場は×1年8月にオープンしたばかりであり、会社整理、破産、強制執行、会社更生などの事実もなく債権放棄すべき特段の事情は存在しない。
② (株)Rに対する債権を放棄しなければ貴法人が今後より大きな損失を被ることとなる相当な理由が存在することは認められない。
(注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。