理由付記の不備をめぐる事例研究
【第49回】
「過収電気料金等の返戻額に係る収益」
~電力会社から過大に徴収された電気料金等の返戻額の収益計上が漏れていると判断した理由は?~
千葉商科大学商経学部講師
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して行われた「電力会社から過大に徴収された電気料金等の返戻額の収益の計上が漏れていること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた新潟地裁平成2年7月5日判決(税資180号1頁。以下「本判決」という)を素材とする。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
昭和60年12月期法人税更正処分
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(過収電気料金等の返戻額の収益計上漏れ 1億5千万円)
貴法人は、T電力に対する電気料金等の過払いが判明し、同社との間で、昭和60年3月29日、過払額を1億5千万円(電気料金〇〇〇円、契約超過違約金〇〇〇円、電気税〇〇〇円の合計額。以下「本件過収電気料金等」といいます。)とする合意を行い、同日付の確認書(以下「本件確認書」といいます。)を取り交しているところ、同日にT電力から支払いを受けた本件過収電気料金等の返戻額は、本件確認書で合意がなされた同日を含む事業年度の益金と認められます。したがって、当該金額を当事業年度の所得金額に加算しました。
(注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
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