〔判決からみた〕
会計不正事件における当事者の損害賠償責任
【第4回】
「「会計監査人」の損害賠償責任」
税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝
-本稿の目的-
粉飾決算による有価証券虚偽記載があった場合において、監査報告書に無限定適正意見を表明していた会計監査人がどのような責任を負うのか。東芝事件では、新日本有限責任監査法人(以下「新日本監査法人」と略称する)に対して、金融庁は「財務書類の虚偽証明に対する課徴金納付命令」を発出して、21億円を超える課徴金の納付を命じたことは記憶に新しい。
こうした行政処分に引き換え、株主や管財人等が損害賠償請求訴訟を提起した事件では、会計監査人たる監査法人の責任を認めない判決が出されている。一方、連載【第1回】で取り上げたエフオーアイ事件では、会計監査人と株主は和解に至っており、他にも、同様に和解している事件が報告されている。
そこで、本稿では、監査報告書において無限定適正意見を表明してきた会計監査人を被告として、株主らがその損害賠償責任を追及した2つの事件の判決を検討するかたちで、裁判所の判断の過程を考えてみたい。
取り上げる判決は、【第2回】【第3回】に引き続きニイウスコー事件第1審判決(東京地方裁判所平成26年12月25日判決)と、アイ・エックス・アイ事件第1審判決(大阪地方裁判所平成24年3月23日判決)である。
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