谷口教授と学ぶ
国税通則法の構造と手続
【第10回】
「国税通則法15条(及び16条)」
-納税義務の成立と確定-
大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫
国税通則法15条(納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定)
(納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定)
第15条 国税を納付する義務(源泉徴収等による国税については、これを徴収して国に納付する義務。以下「納税義務」という。)が成立する場合には、その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する国税を除き、国税に関する法律の定める手続により、その国税についての納付すべき税額が確定されるものとする。
2 納税義務は、次の各号に掲げる国税(第1号から第13号までにおいて、附帯税を除く。)については、当該各号に定める時(当該国税のうち政令で定めるものについては、政令で定める時)に成立する。
一 所得税(次号に掲げるものを除く。) 暦年の終了の時
二 源泉徴収による所得税 利子、配当、給与、報酬、料金その他源泉徴収をすべきものとされている所得の支払の時
三 法人税及び地方法人税 事業年度の終了の時
四 相続税 相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。)による財産の取得の時
五 贈与税 贈与(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。)による財産の取得の時
六 地価税 課税時期(地価税法(平成3年法律第69号)第2条第4号(定義)に規定する課税時期をいう。)
七 消費税等 課税資産の譲渡等若しくは特定課税仕入れをした時又は課税物件の製造場(石油ガス税については石油ガスの充塡場とし、石油石炭税については原油、ガス状炭化水素又は石炭の採取場とする。)からの移出若しくは保税地域からの引取りの時
八 航空機燃料税 航空機燃料の航空機への積込みの時
九 電源開発促進税 販売電気の料金の支払を受ける権利の確定の時
十 自動車重量税 自動車検査証の交付若しくは返付の時又は届出軽自動車についての車両番号の指定の時
十一 国際観光旅客税 本邦からの出国の時
十二 印紙税 課税文書の作成の時
十三 登録免許税 登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定又は技能証明の時
十四 過少申告加算税、無申告加算税又は第68条第1項、第2項若しくは第4項(同条第1項又は第2項の重加算税に係る部分に限る。)(重加算税)の重加算税 法定申告期限の経過の時
十五 不納付加算税又は第68条第3項若しくは第4項(同条第3項の重加算税に係る部分に限る。)の重加算税 法定納期限の経過の時
3 納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する国税は、次に掲げる国税とする。
一 所得税法第2編第5章第1節(予定納税)(同法第168条(申告、納付及び還付)において準用する場合を含む。)の規定により納付すべき所得税(以下「予定納税に係る所得税」という。)
二 源泉徴収等による国税
三 自動車重量税
四 国際観光旅客税法第18条第1項(国際観光旅客等による納付)の規定により納付すべき国際観光旅客税
五 印紙税(印紙税法(昭和42年法律第23号)第11条(書式表示による申告及び納付の特例)及び第12条(預貯金通帳等に係る申告及び納付等の特例)の規定の適用を受ける印紙税及び過怠税を除く。)
六 登録免許税
七 延滞税及び利子税
1 はじめに
国税通則法は、これまで検討してきた「第1章 通則」に続き、「第2章 国税の納付義務の確定」について規定しているが、今回は、第2章の「第1節 通則(第15条・第16条)」について、「納税義務の成立」と「その納付すべき税額の確定」(以下「納税義務の確定」という)を定める国税通則法15条の規定を中心に検討することにする。
ここで「納税義務」とは、「国税を納付する義務」(税通15条1項)をいうが、国税通則法は「納税義務」と「納付義務」(税通5条等)という文言を使い分けており、前者を租税実体法を含む場面で、後者を租税手続法のみの場面でそれぞれ用いていると解される(第6回3参照)。ただし、国税通則法15条1項はその括弧書において、納税義務に源泉徴収による国税に係る徴収納付義務という専ら租税手続法上の義務が含まれる旨の「別段の定め」を規定していると解される。この「別段の定め」の意義については次の解説がされている(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)263-264頁。下線筆者。ほかに、磯邊律男『研修国税通則法』(新都心文化センター・1984年)77頁、武田昌輔監修『DHCコンメンタール国税通則法』(第一法規・加除式)1129頁も参照)。
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