公開日: 2013/03/21 (掲載号:No.11)
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平成26年1月から施行される「国外財産調書制度」の実務と留意点【第7回】

筆者: 小林 正彦

参考資料

【本法】下線は筆者)

○改正国外送金等調書法第6条(過少申告加算税又は無申告加算税の特例)

1 国外財産に関して生ずる所得で政令で定めるものに対する所得税(以下この条において「国外財産に係る所得税」という。)又は国外財産に対する相続税に関し修正申告書若しくは期限後申告書の提出又は更正若しくは決定(以下この条において「修正申告等」という。)があり、国税通則法第65条又は第66条の規定の適用がある場合において、提出期限(前条第1項の提出期限をいう。以下この条において同じ。)内に税務署長に提出された国外財産調書に当該修正申告等の基因となる国外財産についての同項の規定による記載があるときは、同法第65条又は第66条の規定による過少申告加算税の額又は無申告加算税の額は、これらの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額から当該過少申告加算税の額又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で当該修正申告等の基因となる国外財産に係るもの以外のもの又は隠蔽し、若しくは仮装されたもの(以下この項において「国外財産に係るもの以外の事実等」という。)があるときは、当該国外財産に係るもの以外の事実等に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額。次項において同じ。)に100分の5の割合を乗じて計算した金額を控除した金額とする。

2 国外財産に係る所得税に関し修正申告等(死亡した者に係るものを除く。)があり、国税通則法第65条又は第66条の規定の適用がある場合において、前条第1項の規定により税務署長に提出すべき国外財産調書について提出期限内に提出がないとき、又は提出期限内に税務署長に提出された国外財産調書に記載すべき当該修正申告等の基因となる国外財産についての記載がないとき国外財産調書に記載すべき事項のうち重要なものの記載が不十分であると認められるときを含む。)は、同法第65条又は第66条の規定による過少申告加算税の額又は無申告加算税の額は、これらの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額に、当該過少申告加算税の額又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。

3 前二項の国外財産調書は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める国外財産調書とする。

一 前二項の修正申告等が所得税に関するものである場合  その修正申告書、期限後申告書、更正又は決定に係る年分に係る国外財産調書(当該年分のその年の中途において当該修正申告等の基因となる国外財産を有しないこととなった場合における当該国外財産にあっては、その年に提出すべき国外財産調書)

二 第1項の修正申告等が相続税に関するものである場合  次に掲げる国外財産調書のいずれか

イ 当該相続税に係る相続の開始の日の属する年(以下この号において「相続開始年」という。)に被相続人(遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。ロにおいて同じ。)をした者を含む。イにおいて同じ。)が提出すべきであった国外財産調書(相続開始年において提出期限までの間に被相続人が提出すべきであった国外財産調書を提出しないで死亡した場合にあっては、被相続人が相続開始年の前年に提出すべきであった国外財産調書)

ロ 相続開始年の翌年に相続人(遺贈により財産を取得した者を含む。)が提出すべき国外財産調書

4 前条第1項の規定により提出すべき国外財産調書が提出期限後に提出され、かつ、修正申告等があった場合において、当該国外財産調書の提出が、当該国外財産調書に係る国外財産に係る所得税又は国外財産に対する相続税についての調査があったことにより当該国外財産に係る所得税又は国外財産に対する相続税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、当該国外財産調書は提出期限内に提出されたものとみなして、第1項又は第2項の規定を適用する。

5 前二項に定めるもののほか、第1項又は第2項の規定及び国税通則法第68条の規定の適用がある場合の過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税の額の計算の基礎となるべき税額の計算その他第1項及び第2項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

(過少申告加算税又は無申告加算税の特例に関する経過措置)

第60条 新国外送金等調書法第6条の規定は、平成26年1月1日以後に提出すべき新国外送金等調書法第5条第1項に規定する国外財産調書に係る新国外送金等調書法第6条第1項に規定する国外財産に係る所得税又は国外財産に対する相続税に関し同項に規定する修正申告等があった場合における当該所得税又は相続税について適用する。

【施行令】下線緑色字による強調は筆者)

○改正国外送金等調書法施行令第11条(過少申告加算税又は無申告加算税の特例の対象となる所得の範囲等)

1 法第6条第1項に規定する国外財産に関して生ずる所得で政令で定めるものは、次に掲げる所得とする。

一 国外財産から生ずる所得税法(昭和40年法律第33号)第23条第1項に規定する利子所得

二 国外財産から生ずる所得税法第24条第1項に規定する配当所得

三 国外財産の貸付けによる所得

四 国外財産の譲渡による所得

五 前各号に掲げるもののほか、国外財産に基因して生ずる所得で財務省令で定めるもの

2 法第6条第1項に規定する国外財産に係るもの以外の事実等に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額は、国税通則法(昭和37年法律第66号)第65条又は第66条の規定による過少申告加算税又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額のうち次の各号に掲げる場合(次項の規定の適用がある場合を除く。)の区分に応じ当該各号に定める税額の合計額とする。

一 法第6条第1項に規定する税額の計算の基礎となるべき事実(以下この条において「税額の計算の基礎となるべき事実」という。)で同項に規定する国外財産に係るもの以外の事実(国税通則法第68条第1項又は第2項に規定する隠蔽し、又は仮装されていない事実に係るものに限る。)がある場合  当該国外財産に係るもの以外の事実のみに基づいて修正申告等(法第6条第1項に規定する修正申告等をいう。次項及び次条において同じ。)があったものとした場合における当該修正申告等に基づき国税通則法第35条第2項の規定により納付すべき税額

二 税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装された事実がある場合  国税通則法第68条第1項又は第2項の規定により過少申告加算税又は無申告加算税に代えて重加算税を課する場合における当該過少申告加算税又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額

3 法第6条第1項の規定の適用があり、かつ、同条第2項の規定の適用がある場合には、まず、同項の規定の適用がある国外財産に係る事実(国税通則法第68条第1項又は第2項に規定する隠蔽し、又は仮装されていない事実に係るものに限る。)のみに基づいて修正申告等があったものとした場合における当該修正申告等に基づき国税通則法第35条第2項の規定により納付すべき税額(税額の計算の基礎となるべき事実で法第6条第1項及び第2項の規定の適用がある国外財産に係るもの以外の事実(国税通則法第68条第1項又は第2項に規定する隠蔽し、又は仮装されていない事実に係るものに限る)があるときは、当該国外財産に係る事実及び当該国外財産に係るもの以外の事実のみに基づいて修正申告等があったものとした場合における当該修正申告等に基づき国税通則法第35条第2項の規定により納付すべき税額から当該国外財産に係るもの以外の事実に基づく税額として前項第1号の規定に準じて計算した金額を控除した税額)を法第6条第2項に規定する過少申告加算税の額又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(以下この項において「第2項適用対象税額」という。)とし、次に、国税通則法第65条又は第66条の規定による過少申告加算税又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(税額の計算の基礎となるべき事実で法第6条第1項に規定する国外財産に係るもの以外の事実等があるときは、当該国外財産に係るもの以外の事実等に基づく税額として前項の規定に準じて計算した金額を控除した税額)から第2項適用対象税額を控除した税額を法第6条第1項に規定する過少申告加算税の額又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額とする。

(死亡した者に係る修正申告等の場合の過少申告加算税又は無申告加算税の特例の規定が適用される場合における国外財産調書等の取扱い)第12条

1 法第6条第1項に規定する国外財産に係る所得税につき所得税法第124条又は第125条の規定の適用があり、かつ、当該国外財産につき国外財産調書を提出しないで死亡したことにより法第5条第1項ただし書の規定の適用がある場合において、その死亡した者に係る修正申告等があったときにおける法第6条の規定の適用については、同条第3項第1号に定める国外財産調書は、その死亡した日の属する年の前年に当該死亡した者が提出すべきであった国外財産調書とする。

2 法第6条第1項又は第2項の規定及び国税通則法第68条第1項又は第2項の規定の適用があり、同条第1項又は第2項の規定により過少申告加算税又は無申告加算税に代えて重加算税を課する場合において、同法第65条又は第66条の規定による過少申告加算税又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき事実(法第6条第1項又は第2項の規定の適用がある国外財産に係る事実を含む。)で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該重加算税の額の計算の基礎となるべき税額は、当該過少申告加算税又は無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額から当該隠蔽し、又は仮装されていない事実のみに基づいて修正申告等があったものとした場合における当該修正申告等に基づき国税通則法第35条第2項の規定により納付すべき税額を控除した税額とする。

3 前二項に定めるもののほか、法第6条第1項又は第2項の規定の適用がある場合における国税通則法第32条第3項に規定する賦課決定通知書の記載事項その他過少申告加算税又は無申告加算税の特例に係る手続に関し必要な事項は、財務省令で定める。

【施行規則】

○改正国外送金等調書法施行規則第13条(過少申告加算税又は無申告加算税の特例の対象となる所得の範囲)

1 令第11条第1項第5号に規定する国外財産に基因して生ずる所得で財務省令で定めるものは、次に掲げる所得とする。

一 国外財産が発行法人から与えられた所得税法施行令(昭和40年政令第96号)第84条の規定が適用される同条各号に掲げる権利である場合における当該権利の行使による株式の取得に係る所得

二 国外財産が所得税法施行令第183条第3項に規定する生命保険契約等に関する権利である場合における当該生命保険契約等に基づき支払を受ける一時金又は年金に係る所得

三 国外財産が特許権、実用新案権、意匠権若しくは商標権又は著作権その他これらに類するもの(以下この号において「特許権等」という。)である場合における当該特許権等の使用料に係る所得

四 令第11条第1項第1号から第4号まで及び前三号に掲げるもののほか、国外財産に基因して生ずるこれらに類する所得

〔凡例〕
・送金等法・・・内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律
・送金等令・・・内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令
・送金等規・・・内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行規則
・通法・・・国税通則法
・通令・・・国税通則法施行令
(例)通法10①三・・・国税通則法10条1項3号

(了)

今後の連載予定項目【全8回】

第1章 制度の概要
1-1 はじめに
1-2 制度のあらまし
1-3 制度創設の背景

第2章 制度の詳細な内容
2-1 国外財産調書の提出の範囲
2-2 財産の所在地の判定
2-3 財産の価額
2-4 記載事項
2-5 加算税の減額・加重措置
2-6 修正申告等があった場合の加算税の計算方法(以上、本稿)
2-7 不提出・虚偽記載・質問検査に対する不答弁等に対する罰則
2-8 国外財産調書の作成上の留意点

平成26年1月から施行される

「国外財産調書制度」の実務と留意点

【第7回】

 

税理士法人トーマツ
パートナー
税理士 小林 正彦

 

(第2章 制度の詳細な内容)

2-6 修正申告等があった場合の加算税の計算方法

調査により修正申告等(更正・決定を含む)が行われた場合の「加算税の計算の基礎となる所得税額又は相続税額」の計算方法は、次のとおりである(送金等法6①②)。

① 修正申告等により追加納付すべき税額に係る事実が国外財産に係る事実のみである場合

→修正申告等により納税すべき税額・・・【計算例1】

② 国外財産に係る事実以外の事実又は隠ぺい・仮装の事実がある場合

→修正申告等により追加納付すべき本税額から、国外財産以外の部分及び重加算税の適用対象となる部分を控除した残額・・・【計算例2】

すなわち、上記の金額から、次の(イ)及び(ロ)の合計額を控除した金額になる。

(イ) 国外財産に係る事実以外の事実(隠ぺい・仮装のないものに限る。以下同じ)のみに基づいて修正申告等があったものと仮定して計算した場合に算出される税額(送金等令11②一)

(ロ) 国税通則法68条の規定に従い算出される重加算税の計算の基礎となる税額(送金等令11②二)

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連載目次

「平成26年1月から施行される「国外財産調書制度」の実務と留意点」(全8回)

筆者紹介

小林 正彦

(こばやし・まさひこ)

デロイト トーマツ税理士法人 東京事務所
移転価格サービス
パートナー/税理士

1957年生まれ
長野県松本市出身

【職歴】
・1980年4月東京国税局採用
・1980年から2006年まで、国税庁、東京国税局調査部、東京国税局管内税務署において移転価格・相互協議、APA審査、法人税調査、所得税調査、源泉税調査事務等国際課税関係事務を中心に幅広い国税に関する実務を経験
・2006年7月税大研究部教授を最後に国税庁を退官、税理士法人トーマツに入社
・2008年7月パートナー就任
・現在、移転価格サービス所属パートナー、租税争訟支援サービスチームのヘッドとして、移転価格を含む税務調査対応、不服申立て、移転価格プランニング、APA申請、相互協議等に幅広い分野に関するコンサルティング業務に従事

【著書】
・『平成25年1月施行の実務に対応!税務調査のすべてQ&A』共著(清文社)

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