公開日: 2019/02/07 (掲載号:No.305)
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「働き方改革」でどうなる? 中小企業の労務ポイント 【第1回】「年次有給休暇が取得できる仕組みづくり(その1)」-法改正による有給休暇取得義務化の概要-

筆者: 飯野 正明

「働き方改革」どうなる?

中小企業労務ポイント

【第1回】

「年次有給休暇が取得できる仕組みづくり(その1)」

-法改正による有給休暇取得義務化の概要-

 

Be Ambitious社会保険労務士法人 代表社員
特定社会保険労務士
飯野 正明

 

連載開始にあたって

昨年(2018年)の6月29日に各種労働法の改正を行う法律、いわゆる「働き方改革関連法」が参議院本会議で可決・成立し、一部の法律は、今年(2019年)の4月1日から早くも施行が始まります。

中小企業は、これらの法改正に対し企業として手当てが必要となる一方で、ここ数年は、そもそも人手不足などの社会問題を背景に、従業員の働き方の見直しの必要性にせまられています。

例えば、生産性・効率性を上げるための有給休暇取得推進や残業時間の見直しをはじめ、人材の獲得・離職防止等を目的とした従業員のライフスタイルに合わせた制度(副業・兼業の容認、テレワーク・フレックス制度の導入等)の整備、また、今後ますますの拡大が予想される海外人材の採用・管理への対応など、労務において検討すべきことが数多くあります。

そこでこの連載では、改正法への対応だけではなく、中小企業における上記のような広い意味での「働き方改革」を進めるにあたって押さえておきたい労務上のポイントについて、わかりやすく解説をしていきます。

 

▷はじめに

日本のサラリーマンは、1年間でどのぐらい年次有給休暇(以下「有給休暇」といいます)を利用しているでしょうか。

厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、平成29年の有給休暇の取得率は、51.1%、付与日数18.2日に対して9.3日利用をしています。取得率は、例年このような感じで、1年間に付与された分の半分くらいを取得している状況が続いています。

政府はこの取得率を2020年までに70%とする目標を掲げています。そうすると、前述の付与日数から算出される利用日数は、「12.7日」となり、かなり高いハードルのように感じられます。

また、「働き方改革関連法」により2019年4月1日から5日間の有給休暇の取得が義務付けられることもあり、中小企業にとって年次有給休暇制度の見直しは必須と言えるかもしれません。

そこで今回は、「有給休暇」をテーマに2回に分けて解説していきます。まず、【第1回】では改正法による有給休暇取得義務化の概要について、【第2回】では有給休暇を取得しやすい環境づくりに向けた具体的な施策や管理の方法や、取得に関する留意点について述べていきます。

 

▷年次有給休暇制度の基本

有給休暇は、6ヶ月の継続勤務、その期間中の全労働日の8割以上出勤している正社員に対して、「10日」付与されます。その後1年経過ごとに、直近1年間の出勤要件であるを満たせば、勤続年数に応じて次の〔図表1〕の通りの有給休暇が付与されます。

〔図表1〕

出勤要件の「全労働日の8割以上の出勤」とは、厳しい要件だと感じる方もいるかもしれません。しかし、「全労働日」が「240日程度」が一般的な企業の水準です(土日祝祭日に年末年始、夏休みを加えれば休日数は120~125日程度)。そのうちの8割出勤といっても「192日程度」となり、ちょうど2日に1回出勤していれば満たせる要件となっているのです。

なお、パートタイマーやアルバイトについても所定労働日数に応じて有給休暇が付与されます(下記〔図表2〕)。

〔図表2〕


これを見ると、週1日勤務のパートタイマーであっても要件を満たせば最大3日の有給休暇が付与されることが分かります。

 

▷2019年4月から有給休暇5日取得が義務付けられる!

これまで有給休暇は、従業員が「有給休暇を使って休みます!」と請求しないまま、時効の2年が経過すると、その権利は消滅していました。「有給休暇なんて一度も使ったことない!」といった従業員がいても何の問題もなかったのです。

しかし、2019年4月1日以降は違います。そういった従業員のおかげで会社が処罰を受けることもあるのです。

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【第1回】

「年次有給休暇が取得できる仕組みづくり(その1)」

-法改正による有給休暇取得義務化の概要-

 

Be Ambitious社会保険労務士法人 代表社員
特定社会保険労務士
飯野 正明

 

連載開始にあたって

昨年(2018年)の6月29日に各種労働法の改正を行う法律、いわゆる「働き方改革関連法」が参議院本会議で可決・成立し、一部の法律は、今年(2019年)の4月1日から早くも施行が始まります。

中小企業は、これらの法改正に対し企業として手当てが必要となる一方で、ここ数年は、そもそも人手不足などの社会問題を背景に、従業員の働き方の見直しの必要性にせまられています。

例えば、生産性・効率性を上げるための有給休暇取得推進や残業時間の見直しをはじめ、人材の獲得・離職防止等を目的とした従業員のライフスタイルに合わせた制度(副業・兼業の容認、テレワーク・フレックス制度の導入等)の整備、また、今後ますますの拡大が予想される海外人材の採用・管理への対応など、労務において検討すべきことが数多くあります。

そこでこの連載では、改正法への対応だけではなく、中小企業における上記のような広い意味での「働き方改革」を進めるにあたって押さえておきたい労務上のポイントについて、わかりやすく解説をしていきます。

 

▷はじめに

日本のサラリーマンは、1年間でどのぐらい年次有給休暇(以下「有給休暇」といいます)を利用しているでしょうか。

厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、平成29年の有給休暇の取得率は、51.1%、付与日数18.2日に対して9.3日利用をしています。取得率は、例年このような感じで、1年間に付与された分の半分くらいを取得している状況が続いています。

政府はこの取得率を2020年までに70%とする目標を掲げています。そうすると、前述の付与日数から算出される利用日数は、「12.7日」となり、かなり高いハードルのように感じられます。

また、「働き方改革関連法」により2019年4月1日から5日間の有給休暇の取得が義務付けられることもあり、中小企業にとって年次有給休暇制度の見直しは必須と言えるかもしれません。

そこで今回は、「有給休暇」をテーマに2回に分けて解説していきます。まず、【第1回】では改正法による有給休暇取得義務化の概要について、【第2回】では有給休暇を取得しやすい環境づくりに向けた具体的な施策や管理の方法や、取得に関する留意点について述べていきます。

 

▷年次有給休暇制度の基本

有給休暇は、6ヶ月の継続勤務、その期間中の全労働日の8割以上出勤している正社員に対して、「10日」付与されます。その後1年経過ごとに、直近1年間の出勤要件であるを満たせば、勤続年数に応じて次の〔図表1〕の通りの有給休暇が付与されます。

〔図表1〕

出勤要件の「全労働日の8割以上の出勤」とは、厳しい要件だと感じる方もいるかもしれません。しかし、「全労働日」が「240日程度」が一般的な企業の水準です(土日祝祭日に年末年始、夏休みを加えれば休日数は120~125日程度)。そのうちの8割出勤といっても「192日程度」となり、ちょうど2日に1回出勤していれば満たせる要件となっているのです。

なお、パートタイマーやアルバイトについても所定労働日数に応じて有給休暇が付与されます(下記〔図表2〕)。

〔図表2〕


これを見ると、週1日勤務のパートタイマーであっても要件を満たせば最大3日の有給休暇が付与されることが分かります。

 

▷2019年4月から有給休暇5日取得が義務付けられる!

これまで有給休暇は、従業員が「有給休暇を使って休みます!」と請求しないまま、時効の2年が経過すると、その権利は消滅していました。「有給休暇なんて一度も使ったことない!」といった従業員がいても何の問題もなかったのです。

しかし、2019年4月1日以降は違います。そういった従業員のおかげで会社が処罰を受けることもあるのです。

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連載目次

筆者紹介

飯野 正明

(いいの・まさあき)

特定社会保険労務士
Be Ambitious社会保険労務士法人 代表社員

社会人歴27年は社労士業界一筋。現在は、経営者として8名の職員の「働き方改革」に取組ながら、中小企業の労務管理を支援している。これまで、社長とその母親の2名の印刷業から、1万名超規模の不動産業、その業種は、オフィス製品の製造販売、建設業、警備業、小売業、金融業、飲食業、IT関連企業や外資系企業など多種多様な企業の労務管理に携わる (関与先企業数600社以上) 。

ホームページ: http://www.sr-iino.com/
お問い合わせ: http://www.sr-iino.com/contact/contact.php

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