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今回は「書く」から少し離れ、その先にあるお話を。
書き上げた原稿を依頼先(出版社など)に送って安心していると、ほどなく編集者から校正紙(ゲラ刷り)が送られてきます。
そして、こうお願いされます。
「先生、○○日までに校正をお願いします」
この際、具体的にどのような作業をお願いしたいのか、出版社などから細かい説明がある場合は良いのですが、意外となかったりします。
このため「校正?・・・そうか、間違いがないか読めばいいのか」と考えるのですが、いろいろな誤解から著者校正が機能しないことも多く、その後に大きな問題となることもあります。
では著者の方々は、どのような誤解をされやすいのでしょうか。
まずよくあるのが、図表に関するものです。「原稿段階で完璧に仕上げた図表だから、修正(校正)するような箇所はない」と思われがちですが、WordやExcel、PowerPointなどでいただいた原稿データと、出版に使用するDTPシステムには、以前より改善されたとはいえ完全な親和性はありませんので、基本的には印刷会社などで一から制作(作図)し直します。
また、図表データ内の文字(テキスト)データを流用することもありますが、使用しやすいデータになっているかなどデータの作り込みや仕様によって異なりますので、必ず流用されるとは限りません(そこは印刷会社などの現場で判断されます)。
このため、どうしても人為的なミスが発生したり、著者のこだわりに気づけないこともあり、校正紙の図表は「原稿段階で完璧に仕上げた図表」通りにはなりません(もちろん、著者のこだわりをすべて把握した担当編集者が隙のない指定をすれば完璧に近くはなりますが、リスクはゼロではありません)。
このため、図表についてもしっかり校正していただく必要があるのです。
ちなみに、解像度などの条件をみたせば、いただいた原稿データをそのまま画像として載せる(使用する)こともできますが、その後に文字や罫線、アミ掛けなどの修正を行わないことが前提であり、やむを得ず(画像を)修正した場合は見た目の違和感を生じさせることが多いです。そういうこともあって、基本的には一からの作図が前提になります(申告書・申請書の様式など、公官庁から公表された(追加訂正リスクのない)データであれば、そのまま掲載することもあります)。
次に、図表だけでなく文章についても、いくらしっかり書き上げた自信がおありでも、校正紙として客観的に見ると、いろいろな問題に気づき、直したい箇所が出てくるものです。この点も認識していないと、1回目の校正でさっと読んだ後、2回目以降の校正でその点に気づき大幅な修正を行った結果、スケジュール含むもろもろに影響が出てしまうことも(すごくよく)あります。
3つ目の誤解が、「出版社側(編集者や校正者)がしっかり校正してくれるから大丈夫」というものです。もちろん、それぞれプロの立場からしっかりした校正が行われますが、特に専門的な内容については100%の校正が難しい。そして、誤字脱字などの校正についても、人為的なミスがある限り、校正する人(目)の数は多い方がいい(実際に複数人が何度チェックしても、びっくりするような誤植は起こり得ます)。
なのでやはり、文章部分についても校正をしていただく必要があります。
ここで、ひとことで「校正」と言っても、巷に業界関係者による関連書籍がいくつかあるように(ドラマや小説などのテーマにも取り上げられるように)、その内容はとても深いものがあります。
では校正によって発見され、修正されるべきものは、何でしょうか?
それは「誤字脱字」だけでなく、「字句の不統一」「計算の誤り(=検算を行う)」「日本語としての表記の誤り」「日本語としてより分かりやすくする」「文脈のつながり(前後の内容の矛盾など)」「見出しの構成(番号飛ばしなど)」「図表の体裁のズレや見やすさを調整」「法令の正しさ(改正のアップデート)」等々、非常に多岐にわたります。
さらに校正を行う作業は、当然ながら集中する必要がありますが、不安やストレス、恐怖心と向き合う時間でもあります。
そのような中で、かつ、限られた時間で、上記で列挙したような「発見され、修正されるべきもの」を同時並行的にチェックできるのか。
あえて言えば、人にはできません。
つまり、字句の統一を行っていると字句の統一しか目に入らず、法令の誤りには気づけません。日本語としての分かりやすさに終始していると、前半と後半で違うことを主張しているのにスルーしてしまいます。
意外とこの事実に気づかず、「『校正』という作業で一度にやれる」と考えている人は、同業者にも多いと感じます。
現場頻出の悪い事例を1つ。
最初の校正紙(初校)というのは、上述したように図表などが原稿通りになっておらず、編集者による朱書き(訂正の指示)も多く入っています。著者から見ると、それら体裁の朱書きばかりに目が向いてしまい、完璧に仕上げた図表がその通りになっていない動揺もあって、とにかく体裁のチェックばかりを行い、それで「校正できた」と納得してしまう。
そこに、著者だから気づける内容の誤り(≒編集者としてはそのチェックを重点的にお願いしたい)があったとしても、見逃されてしまうのです。
もしくは、発刊に向けた最終段階の校正で字句の不統一が気になり、その作業に大切な時間を取られた結果、解説内容の大きな穴や矛盾に気づかないまま発刊してしまう。
ではどうすればいいのか?
編集Xは、校正作業には種類があると考えています。
・誤字脱字、字句統一の校正
・校正紙が原稿通りになっているかという校正
・文章や図表をより分かりやすくできないかという校正
・文脈に矛盾がないかという校正
・法令等の誤りはないか(アップデートしているか)という校正
・他に、ページ番号に抜けはないか、柱に誤りはないか 等々
実際にはもう少し細かい区分けもできますが、校正を行う前には「今からこのチェックを行う」と決めて、何度かに分けて取り掛かるのがよいでしょう。このようにタスクごとに行う方が、すべてを同時並行で行うよりも、結果として作業を早く確実に終わらせることができます。
さらに、著者と編集者が二人三脚で、これらのリスクを共有し分担して取り組めば、より校正の精度と効率性は上がり、リスクを1つずつ抑えることができると思います。
最後に、発刊直前の最終段階での、時間がなく、かつ、高ストレス下で行う校正は、体裁や字句統一は置いておき、人名や組織名・法令名などの固有名詞の誤り、数値(計算式含む)の誤り、明らかな内容の誤りのチェックに注力すべきでしょう。これらを見逃すことは、その実務書にとって大きな痛手となるためです。
(注)この連載に書かれている内容は筆者の私見であり、所属する組織とは一切関係ありません<(_ _)>
(つづく)
「書く論」は、不定期の掲載となります。






















