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今回のお話は、すでにご自身なりの原稿の書き方を確立している方々には少し退屈かもしれませんので、その点はご容赦ください。
まだ執筆経験の浅い著者の方が、編集者との諸々の打合せを経て、いよいよ『原稿を書く!』という段階まで進んだとします。
ここまでの経緯で膨らんだ構想と熱意をぶつけるべく、パソコンの画面に一文字目を入力し、原稿を書き始めます。
・・・・そこから時は過ぎ・・・・
「・・・。よし、原稿を書き終えたっ!」
という状況に至ると思われがちですが、実際には、そのようなケースは意外とまれです。
多くの場合、途中で指が止まってしまい、原稿が書けなくなってしまいます。
それも原稿のはじめあたり、章立てでいうと第1章や第2章の途中で、息切れしてしまいます。
「・・・原稿を書くのがこんなに難しくて、時間がかかるとは思わなかった」
原稿の締め切りを過ぎてから、このようなご連絡をいただきます(その一報を聞いた編集者は、当然ながら汗が止まりません)。
そこで、その時点で書き上がった原稿を見せていただくと、『内容が完璧で、かつ、予定以上にボリュームのある、壮大な序章の原稿』を手渡され、編集者も一緒になって「・・・・」という沈黙が続きます。
実はこのようなケースは、性格のまじめな先生ほどあてはまります(つまり国家資格をお持ちの実務家の方であれば、ほとんどが該当するわけです)。
書籍において序章は、その本の位置づけや存在意義、解説するテーマの根幹にある問題点などが述べられます。
まだ原稿を書き慣れていない方は、序章に思いをぶつけがちで、完璧に仕上げたい(仕上げなければいけない)という使命感や、無事に原稿が書けるだろうかという不安から、同じ箇所を何度も読み返し、原稿を加筆し、詳細なグラフや図表をたくさん作成し・・・
その結果『壮大な序章』を書き終えたところで、気持ちが切れてしまうのです。
ただし、大切なのは原稿を書き上げること、特に実務書にとっては、序章以降(その多くは中盤の章)の解説こそが、その価値の根幹です。そして、原稿の完成が遅れることは、出版時期を遅らせることを意味し、適切な時期に読者へその本を届けられない、結果として出版社としても販売に影響してしまうという、誰にとっても悲しい結果になります。
若かりし頃の編集Xはこのようなケースを何度も経験し、自身も原稿を書かせていただくようになってから、必ず原稿を書いていただく前に、こうお伝えします。
「先生、原稿は冒頭(序章)から書かなくても大丈夫です。先生にとって書きやすい章から、とりあえず書き進めてみてください」
そして
「その書きやすい章も、完璧を目指さず、ある程度のところで止めてもらって他の章を書き進めていただき、まずはざっくりと、書籍全体の原稿を書いてみてください」
さらに
「ざっくりとした書籍全体の原稿ができたら、『書き上げられるか』というご不安も一旦解消されると思いますので、あらためて各章の細部を詰めていただき、原稿を完成させてください。何なら、はしがきや序章の原稿は、原稿全体を俯瞰していただいてから、最後にいただくことでもけっこうです」
個人的には、『原稿を書き始める前』こそがその書籍にとって最も大切な段階と考えており、著者の方々と何度も細かい打合せを重ねることがあります。
ちなみに、多くの原稿を書かれている方は、すでにこのような方法を実践されていたり、達人の域になれば苦労なく、序章から最終章まで順番に書かれる方もおられますので、無用なご助言は控えています。
最後にいくつか、細かい点と同業者への苦言を呈しますと、
実務書の原稿を書きはじめる前には、当然ながら章立て(いわゆる書籍の全体像)を考えていただくと思いますが、できることなら章立てだけではなく、より細かい、各章の中を構成する中見出し・小見出しまで考えていただいてから、書き始めていただくのがよいと思います。さらに一定の分量ごとに、何をどの順番で書くかをメモしてから書き進めると、途中で指が止まることは少ないです。見出しや本文の構成は書きながらどんどん修正・変更していけばよいと思いますが、ないと今回お話したようなケースに陥りやすいと思います。
また、期日までに原稿が仕上げられない場合、その編集者の責任も大きいです。原稿(入稿)が遅れたとき、著者から「原稿を書き進められない(息切れしてしまった)」という相談を受ける関係性が構築できていたか、事前の的確なアドバイスや一定期間ごとのフォローアップができていたか、振り返ってみるとよいでしょう。
(注)この連載に書かれている内容は筆者の私見であり、所属する組織とは一切関係ありません<(_ _)>
(つづく)
「書く論」は、不定期の掲載となります。






















