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〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第36話】「コロナ禍における税理士試験」
〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第36話】 「コロナ禍における税理士試験」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一 「ほんとに・・・やれるのかな・・・」 中尾統括官は、パソコンの画面を見ながらつぶやく。 「東京オリンピックですか?」 机の上の申告書を整理していた浅田調査官は、振り向いて尋ねる。 「いや、税理士試験のことだよ。」 中尾統括官は、大きな声で応える。 「えっ、こんな時に・・・試験をするのですか?」 浅田調査官は、驚いた表情をする。 「大学でも・・・コロナの感染を嫌って、オンラインなどの遠隔授業を行っているのに・・・税理士試験って、何万人も受験するのでしょ?」 浅田調査官は中尾統括官の顔を見る。 「税理士試験の受験者数は毎年減っているといわれているが、2019年の受験者数は29,779人で、延べ人数は41,158人らしい・・・」 パソコンの画面を見ながら、中尾統括官は説明する。 「それはともかく・・・今年は受験生に対して、国税庁は「新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を踏まえた注意事項」をホームページで公開している・・・」 中尾統括官は、浅田調査官にパソコンの画面を見せる。 「これって・・・どう思う?」 中尾統括官の傍らにやって来た浅田調査官の顔を下から覗く。 「・・・次に該当する方は、他の受験者への感染のおそれがあるため、受験できません・・・となっていますね。」 浅田調査官は注記事項に記載された説明を読み上げる。 「①③④はともかく・・・問題は、この②の項目だな。この体温については、試験会場でサーモグラフィー等による計測を行い、これによって37.5度以上の発熱が認められた場合は、受験できないとなっている。」 中尾統括官は、再び浅田調査官の顔を覗く。 「・・・しかし、この『37.5度以上の発熱』という形式的な基準で、一律に受験者を排除することについては・・・問題があるのでは・・・」 浅田調査官はつぶやく。 「そうなんだ・・・厚労省が発表している新型コロナ疑いでの相談・受診の目安は、5月11日の事務連絡では次のような表現に変わっており、『37.5度以上の発熱が4日以上』という具体的な基準は削除されている・・・」 「受験生だったら・・・息苦しさや強いだるさがたとえあったとしても、受験したいという気持ちが強ければ、結局、黙って受験するだろう・・・そして、試験官は、受験生の呼吸困難や倦怠感を外見から発見することは難しいと思う。」 中尾統括官は、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」を見ながら言う。 「・・・その意味では、受験資格に37.5度以上の発熱という形式的な基準を設けるメリットはあるのかもしれない・・・」 中尾統括官は、苦笑いをする。 「しかし、1年間、受験勉強をしてきた受験生に対して、37.5度以上の発熱という形式基準を適用して、受験資格を剥奪するというのも、少しかわいそうな気がしますが・・・」 浅田調査官は、真面目な顔になる。 「そうだなあ・・・たまたまその日、コロナ以外の何らかの原因で37.5度以上になるということもありうる・・・また、もともと体質的に平熱が高く、37.5度であっても体調として問題はないという人もいるだろう・・・」 そう言いながら、中尾統括官は、パソコンの検索で「日本人の平均体温」について、次の記述を発見する。 「そうですよね・・・平熱に個人差があることから、37.5度以上の発熱という形式基準を設けること自体、問題がありそうですね・・・」 浅田調査官は、頸を傾げる。 「この基準を厳格に貫くと、試験会場で受験生とのトラブルが多発するかもしれない。」 中尾統括官は、渋い顔をする。 「・・・ところで、中尾統括官は、もう税理士資格は持っているのでしたね。」 浅田調査官は、笑いながら尋ねる。 「私は、税務職員の勤務が23年以上あるから、税理士法8条1項10号イの規定で、税理士の資格は取得しているよ・・・」 中尾統括官は、税理士の資格取得の根拠条文をスラスラと言う。 「僕はまだ勤務年数が短いので・・・税理士資格を取得するためには、税務職員として働き続けなければなりません・・・」 浅田調査官は、舌を出して、頭を掻く。 (つづく)
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《速報解説》 「会社法改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正案」がパブコメに付される~原則、令和3年3月1日からの施行を予定~
《速報解説》 「会社法改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正案」がパブコメに付される ~原則、令和3年3月1日からの施行を予定~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2020(令和2)年9月1日、法務省は、「会社法改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正」に関する改正案を公表し、意見募集を行っている。 これは、「会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)及び「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(令和元年法律第71号)の施行に伴い、会社法施行令、会社法施行規則、会社計算規則などについて改正するものである。 意見募集期間は2020年9月30日までである。 本稿では、会社法施行規則及び会社計算規則の改正に関する事項について解説する。なお、以下で引用する法令の条番号は、改正会社法、改正整備法又は、特に断らない限り、本政省令改正案による改正後のものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 会社法施行規則関係 1 定義規定の改正 社外取締役を置くことが義務付けられること(会社法327条の2)、業務執行の社外取締役への委託に関する規定が設けられたこと(会社法348条の2)から、次の定義規定を改正する。 2 株式交付子会社に関する規定の新設 「株式交付」(会社法2条32号の2)について、同号の委任に基づき、株式交付により他の株式会社を子会社としようとする場合における子会社(株式交付子会社)の範囲を定める規定(会社法施行規則4条の2)を新設する。 3 全部取得条項付種類株式の取得及び株式の併合における事前開示事項に関する規定の改正 全部取得条項付種類株式の取得又は株式の併合を利用し、現金を対価として少数株主の締出しをする場合における端数処理手続(会社法234条及び235条)について、開示事項を拡充する改正を行う(会社法施行規則33条の2第2項4号及び33条の9第1号ロ)。 4 株主総会参考書類に関する規定の改正 5 取締役等の報酬等に関する規定の新設 6 役員等賠償責任保険契約に関する規定の新設 「役員等賠償責任保険契約」(会社法430条の3第1項)に該当しない保険契約を定める規定を新設する(会社法施行規則115条の2)。 7 事業報告に関する規定の改正 次の改正を行うとともに、所要の規定の整備を行う(会社法施行規則133条3項1号など)。 8 社債に関する規定の改正 9 株式交付に関する規定の新設及び改正 株式交付に関する規定の新設(会社法774条の2から774条の11まで、816条の2から816条の10まで等)に伴い、株式交付計画の承認に関する議案を株主総会に提出する場合における株主総会参考書類に記載すべき事項に関する規定(会社法施行規則91条の2)を新設するほか、次の改正を行う。 10 株主総会資料の電子提供制度に関する規定の新設及び整備 株主総会資料の電子提供制度(会社法325条の2から325条の7まで)の新設に伴い、電子提供措置をとる方法に関する規定(会社法施行規則95条の2)、電子提供措置をとる場合における招集の通知の記載事項に関する規定(会社法施行規則95条の3)及び書面交付請求をした株主に対して交付する書面(電子提供措置事項記載書面)に記載することを要しない事項に関する規定(会社法施行規則95条の4)を新設するほか、所要の規定の整備を行う(会社法施行規則41条7号、54条7号等)。 Ⅲ 会社計算規則関係 1 株式交付に関する規定の新設及び整備 株式交付に関する規定の新設(会社法774条の2から774条の11まで、816条の2から816条の10まで等)に伴い、次の改正を行うほか、所要の規定の整備を行う(会社計算規則54条2項及び55条2項10号)。 2 取締役等の報酬等として株式を交付する場合に関する規定の新設及び整備 取締役又は執行役の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行することができる(会社法202条の2、205条3項から5項まで、209条4項、445条6項等)ことに伴い、その場合に増加する資本金の額等について定める規定(会社計算規則2条3項34号、42条の2、42条の3及び54条の2)を新設するほか、所要の規定の整備を行う。 3 株主総会資料の電子提供制度に関する規定の新設 株主総会資料の電子提供制度(会社法325条の2から325条の7まで)の新設に伴い、連結計算書類に係る監査報告又は会計監査報告に記載され、又は記録された事項に係る情報についての電子提供措置に関する規定を新設する(会社計算規則134条3項)。 Ⅳ 施行時期及び経過措置 本政省令改正案については、改正法の施行日(令和3年3月1日を予定)から施行する予定である(改正省令案附則1条本文)。 ただし、弁護士会登記令、独立行政法人等登記令及び組合等登記令の改正規定は、整備法附則第2号に掲げる規定の施行の日(同年2月15日を予定)から、会社法施行規則、会社計算規則及び一般法人法施行規則に係る改正規定のうち、株主総会資料の電子提供制度に関する改正規定(改正省令案附則1条ただし書に規定する規定)は、改正法附則1条ただし書に規定する規定の施行の日から(改正省令案附則1条ただし書)施行することを予定している。 経過措置が規定される予定である。 (了)
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《速報解説》 5G導入促進税制、関連法の施行に合わせ本日(令和2年8月31日)より制度開始
《速報解説》 5G導入促進税制、関連法の施行に合わせ本日(令和2年8月31日)より制度開始 Profession Journal編集部 令和2年度税制改正で創設された5G導入促進税制が、関連する法令(特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(以下、5G導入促進法)及び同政省令等)の施行に合わせ、令和2年8月31日より制度が開始された。 5G導入促進税制(認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(措法42の12の5の2、10の5の4の2、措令27の12の5、5の6の4)は、青色申告法人で5G導入促進法の認定(導入計画が必要)を受けた事業者(認定導入事業者)が、認定特定高度情報通信技術活用設備(※)を取得等し事業供用(貸付けの用に供した場合を除く)した場合に、その供用年度において下記①②のいずれかを受けられる制度のこと。 (※) その法人の認定導入計画に記載された機械及び装置、器具及び備品、建物附属設備並びに構築物で、特定高度情報通信技術活用システムを構成する上で重要な役割を果たすものとして経済産業大臣及び総務大臣が定めるもの。 5G導入促進税制の対象期間は5G導入促進法の施行の日から令和4年3月31日までとされていたが、このたび8月28日付け官報(号外第178号)で同法の施行日を「令和2年8月31日」と定める政令及び関連する法令が公布された。 〈イメージ図〉 (※) 国税庁ホームページより また、同じ8月28日付け官報第321号では、本税制に関する改正省令(租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令)も公布されている(措規20の10の2、5の12の2)。 なお、本税制の適用手続のページ(計画ひな形や申請書等様式)は、本稿公開時点ではまだ公表されていない模様。 (了)
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《速報解説》 国税庁、パブコメを経て所得税基本通達59-6を改正~令和2年3月の最高裁判決を受け表記を見直し~
《速報解説》 国税庁、パブコメを経て所得税基本通達59-6を改正 ~令和2年3月の最高裁判決を受け表記を見直し~ 税理士 菅野 真美 国税庁は令和2年8月28日付けで「「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)」を公表、本年2月の最高裁判決に係る補足意見を受け所得税基本通達59-6《株式等を贈与等した場合の「その時における価額」》の見直しを行った。なお本改正は6月30日付けでパブリックコメントに付されていた。 〔所得税基本通達59-6はどのような通達か〕 所得税法59条において、個人が法人に対して著しく低い価額で資産を譲渡した場合は、その時における価額に相当する金額(時価)により、資産の譲渡があったものとみなすと定められていることから、譲渡した資産の譲渡時の時価がいくらなのかが重要である。 取引相場のない株式の場合は、所得税基本通達59-6により、原則として、財産評価基本通達により算定した価額とされている。つまり、所得税における取引相場のない株式の時価の算定方法は、相続税や贈与税のための算定方法が借用されている。しかし、所得税は 財産を譲渡した者に課税され、相続税や贈与税は財産を取得した者に課税されることから、同通達(1)において定める「同族株主」に該当するかどうかは、株式を譲渡又は贈与した個人の当該譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定することと定められていた。 〔通達の改正点は何か〕 今回、財産評価基本通達188の(1)に定められる「同族株主」だけでなく、「取得した株式」や「株式の取得者」、「株式取得後」については、「譲渡又は贈与した株式」、「株式を譲渡又は贈与した個人」、「株式の譲渡又は贈与直前」と読み替えるような改正が行われた。この改正により所得税法上の取引相場のない株式の時価は、譲渡又は贈与した者の議決権等に基づくことが明確化された。なお国税庁は、今回の改正により「これまでの取扱いに変更を生じさせるものではない」としている。 〔改正の原因となった最高裁判決はどのような事案だったのか〕 この改正の原因となったのは、令和2年3月24日の最高裁判決(TAINSコード:Z888-2296)である。これは代表取締役であった個人が持株を法人に配当還元価額(1株あたり75円)で売却したが、課税庁が、類似業種比準価額(1株あたり2,505円)が時価であるとして更正処分等をしたことから、その個人の相続人(納税者)が不服であるとして訴えたものである。なお、株式発行法人は同族株主のいない会社で、譲渡直前の議決権割合は譲渡人単独で15.88%、同族関係者を含めると22.79%であり、譲渡後は、譲受法人が7.88%であった。つまり、所得税法上の時価は、譲渡人を基準とすると類似業種比準価額となるが、譲受人を基準とすると配当還元価額となる。 納税者は、所得税基本通達において同族株主の判定は譲渡前と定められているが、同族株主のいない会社の議決権割合に基づく株主区分の判定は定められていないから、取得後の議決権割合で判断すべきと主張した。地裁(東京地判平成29年8月30日)は譲渡直前の譲渡人の議決権割合によるとして納税者の主張を退け、不服な納税者が控訴したところ、高裁(東京高判平成30年7月19日)では、通達で株主区分について譲渡前の議決権によるという明文の定めがないことから原判決を変更、課税処分を取り消し、不服な課税庁が上告した。 〔最高裁判決のどこが改正につながったのか〕 最高裁は、譲渡所得は、譲渡人が保有していた期間の増加益に対する課税だから、譲渡人の会社への支配力の程度に応じた評価方法を用いるべきとして、国の敗訴部分を破棄して高裁に差し戻した。 なお 宇賀、宮崎裁判官が、相続税法の通達を借用して作成した所得税法の通達について、わかりやすくするような改善が望まれるという補足意見(※)を述べたことが今回の通達改正につながったと考える。 (※) 補足意見の一部は上記パブコメページ(参考法令等)にて閲覧可能。 〔類似業種比準価額の斟酌割合について〕 今回の改正につき意見募集をしたところ、通達59-6(2)で、株式を譲渡又は贈与した個人が、発行会社にとって「中心的な同族株主」に該当するときは「小会社」として株式を評価するが、評価方法として類似業種比準価額と純資産価額の折衷が認められており、この類似業種比準価額の算定上の斟酌割合について明確化の要望があった。 この要望に対して国税庁は、大会社は0.7、中会社は0.6、小会社は0.5の斟酌割合であることが文理上明らかなため通達の見直しは行わず、ホームページで解説を掲載する予定であると述べた。 (了)
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プロフェッションジャーナル No.383が公開されました!~今週のお薦め記事~
2020年8月27日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.383を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
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山本守之の法人税“一刀両断” 【第74回】「法人税低率国に拠点を移す節税を防ぐ方法」
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第74回】 「法人税低率国に拠点を移す節税を防ぐ方法」 税理士 山本 守之 1 EUによるアップルへの追徴課税 アイルランドの法人税率は12.5%と異常に低く、このような低税率国に巨大IT企業は拠点を移して節税をしています。そのうえ、税優遇まで受けていることをEUの政策執行機関である欧州委員会は問題視していました。 そこで、欧州委員会は2016年にアイルランド政府がアップルに違法な税優遇をしたとして、過去の優遇分や利息を取り戻すように指示しましたが、EU司法裁判所では、この指示を取り消す判断を示しました(2020年7月15日)。 このような判決は出たものの、米国の巨大IT企業(GAFA等)などが、アイルランドやルクセンブルクなどの低税率国に拠点を置いて節税していることを、欧州委員会は引き続き問題視しています。 2 OECDによるデジタル課税の枠組み案 2015年の米国の代表的株価指数であるS&P500の構成企業の市場価値割合は「機械・不動産などの有形資産」が13%、「無形資産」が87%となっています。そこで、OECDは巨大IT企業等を対象とした、次の3ステップで行うデジタル課税の枠組み案の合意を目指しています。 なお、「一定の算定率」をめぐる合意はかなり難しく、「売上高」についても拠点を置く国と消費者がいる国をめぐり、どのようなルールづくりをするのかにおいて注目されます。 米国の巨大IT企業(GAFA等)が法人税率の低いアイルランドやルクセンブルクに拠点を移すことに対して、OECDは一定の算定率で課税することができないので、上記の無形資産による利益を売上高に応じて分割する案などを提出しましたが、いまだ合意できないでいます。 3 日本の場合 グーグルは日本での広告事業収入をシンガポール法人に計上していましたが、2019年12月期から売上高を日本法人に計上しています。また、千葉県内にデータセンターを建設し、これを恒久的施設とするとしました。 現在の法律による恒久的施設の概念は古く、残念ですがまだその基準に基づく課税を考えているのが現状です。 また、グーグルと同様にフェイスブックジャパン(東京)は、日本での広告事業の売上高をアイルランド法人に計上していましたが、日本法人での計上に切り換えます。 巨大IT企業による問題とされている手法をまとめると、次のようになります。 グーグル、フェイスブックが日本において売上高を計上する方針を出したことで、他の法人がこれに追従すると問題は大きく変わります。このような方針とした背景には、企業として持続的成長をするために社会的責任に向き合う必要があったのではないかと考えられます。 4 今後の是正に関する私見 「BEPS(税源浸食と利益移転)」と呼ばれるOECDがまとめた行動計画では、主に次のようになっています。 【企業の過度な節税を防ぐ行動計画】 現実として、恒久的施設(PE)の存在を前提とする古い考え方と各国の納税義務に関する歪みが大きくなっていることは明らかです。 本稿で指摘しているグーグルやフェイスブックより前に、アマゾンは日本法人に売上高を計上する方針に転換しました(2017年と2018年の2年間で計300億円弱の法人税を納付)。 それまで(2014年期)はアマゾン日本法人の売上高は316億円、法人税は4億円でしたが、同期の米国法人の日本事業売上高は8,600億円と大きな差異がありました。いかに「節税」が行われていたか分かると思います。 アマゾンの日本での納税額が増えた理由は、日本事業を日本法人が直接担当するようになったことです(日本での納税額は2014年に比べ2018年は10倍超)。 アマゾン、グーグル、フェイスブックは日本事業の売上高を日本法人に計上し、それまでの高額な節税を是正しました。巨大IT企業として残るのは、アップル、ツイッター、エアビーアンドビー等となります。 このように税務当局が是正するのではなく、企業がデータを日本の恒久的な資産として捉え、是正しているのです。 そこで、私としては当局は次のような是正を行うべきだと思います。 (了)
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谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第42回】「租税法律主義と実質主義との相克」-税法の目的論的解釈の過形成⑥【補論】-
谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第42回】 「租税法律主義と実質主義との相克」 -税法の目的論的解釈の過形成⑥【補論】- 大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫 Ⅰ はじめに 前回まで22回にわたって「租税法律主義と租税回避との相克と調和」という主題の下、租税回避について様々な観点から検討してきたが、その検討は前回でひとまず擱くこととして、次回からは租税法律主義それ自体の意義、内容等について改めて検討することにしたい。その前に、今回は、第15回の「租税法律主義と実質主義との相克-税法の目的論的解釈の過形成⑥」についてその「補論」として最近の判例を基に改めて検討しておくことにする。 第15回では、法人税法22条4項の規定が採用する企業会計への委任立法の形式が、少なくとも結果的には、税法の目的論的解釈の「過形成」を助長してきたことを明らかにしたが、その背景には、近時ビックカメラ事件等の下級審において裁判所が公正処理基準の法的意義に関して明示的に採用するようになってきた「法人税法独自(固有)観点説」ともいうべき考え方がある旨の理解を述べた。 その際、法人税法独自(固有)観点説は、ビックカメラ事件・東京地判平成25年2月25日訟月60巻5号1103頁が判示するように(控訴審・東京高判平成25年7月19日訟月60巻5号1089頁も同旨)、法人税法1条を参照して同法の目的を「適正な課税及び納税義務の履行の確保」として捉えた上で、「[この目的を有する同法の]公平な所得計算という要請とは別の観点に立って定められた」会計基準を、公正処理基準から除外する、換言すれば、企業会計の観点から定められた会計処理基準のうち、「適正な課税及び納税義務の履行の確保」を目的とする法人税法独自(固有)の観点に適合しないものを、公正処理基準から除外する、という意味・機能を有する旨の理解を述べたところである。 法人税法独自(固有)観点説は、旧武富士事件・東京地判平成25年10月30日訟月60巻12号2668頁及び控訴審・東京高判平成26年4月23日訟月60巻12号2655頁でも採用されたものと解されるが(佐藤英明・判例評論672号(2015年)8頁、9頁参照)、その後、同事件と同様の問題(過年度に収受した制限超過利息の返還に伴う更正の請求の要件該当性)が争われたクラヴィス事件において裁判所の判断に興味深い展開がみられた。 まず結論をみておくと、クラヴィス事件・大阪地判平成30年1月15日判タ1458号139頁(以下「本件大阪地判」という)は請求棄却、控訴審・大阪高判平成30年10月19日判タ1458号124頁(以下「本件大阪高判」という)は原判決取消し、上告審・最判平成2年7月2日(未公刊・裁判所ウェブサイト。以下「本件最判」という)は原判決破棄の各判断を示した。 以下では、これらの判決の比較検討を通じて、法人税法独自(固有)観点説の当否を改めて論じることにしたい。まず本件各判決について公正処理基準に関する判示をみておこう。 Ⅱ 公正処理基準に関する本件各判決の判断内容 1 本件大阪地判 本件大阪地判は、まず、法人税法独自(固有)観点説について次のとおり判示した(❶。下線筆者)。 その上で、次のとおり判示して(下線筆者)、前期損益修正の公正処理基準該当性を認め(❷)、「事業を停止した本件破産会社について継続企業の公準は妥当せず、前期損益修正により当該効果を得ることはできないから、公正処理基準が保障する法的救済の観点から、過年度に遡って益金の減算が認められなければならない旨」の原告の主張を採用しなかった(❸)。 2 本件大阪高判 これに対して、本件大阪高判は、前期損益修正の処理だけでなく過年度遡及会計基準(企業会計基準委員会・企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」[平成21年12月4日])による遡及処理も公正処理基準に合致する余地は十分にあることを認め、さらに、次のように判示して(下線筆者)、それらの処理のみが「公正処理基準に合致する唯一の会計処理としなければならないと解するのは相当ではない。」とし(ⓐ第1段落)、その上で、本件会計処理(過年度の確定した決算を遡及的に修正する会計処理)を公正処理基準に合致するものとして是認した(ⓐ第2段落及びⓑ)。 3 本件最判 これに対して、本件最判は、次のとおり判示して(下線筆者)、前期損益修正の公正処理基準該当性を認め(㋐)、これと異なる本件会計処理のような会計処理について公正処理基準適合性を認めなかった(㋑)。 Ⅲ 過年度課税関係調整事由に係る前期損益修正の「原則的排他性」 1 公正処理基準と前期損益修正の排他性 以上でみたように、本件各判決は、本件(「法人が受領した制限超過利息等を益金の額に算入して法人税の申告をし、その後の事業年度に当該制限超過利息等についての不当利得返還請求権に係る破産債権が破産手続により確定した場合」(本件最判の前掲判示㋑))のように過年度課税関係調整事由が生じた場合における税務処理として、公正処理基準の枠内で、前期損益修正のみを認めるか又は本件会計処理のような異なる会計処理をも認めるか、という問題につき、それぞれ異なる判断を示した。 この問題は、過年度課税関係調整事由に係る租税手続法上の調整手続についていわれる更正の請求の排他性に擬えていえば(更正の請求の排他性も取消訴訟の排他性に擬えたものであるが)、前期損益修正の排他性の問題といってもよかろう。この問題は、租税実体法(課税要件法)上の問題であるが、前期損益修正の排他性を認めるか否かによって更正の請求の許容範囲が異なってくるという意味において、更正の請求の排他性と密接に関連する問題である。 前期損益修正の排他性につき、本件大阪地判と本件最判はこれを肯定したのに対して、本件大阪高判はこれを否定した。ただ、本件大阪地判と本件最判とは、同じく前期損益修正の排他性を肯定する立場に立ちながら、その理由づけに関する論理構成を異にすると解される。ここでは、まず、両判決の論理構成の違いを検討しておくことにしよう。 本件最判の前掲判示㋑は、「事業年度を超えた課税関係の調整」の可否を専ら実定法人税法の規定に基づいてのみ判断する考え方を示し、この考え方によって本件会計処理の公正処理基準該当性を否定した。確かに、本件大阪地判の前掲判示❸も、その前半では、「事業年度を超えた課税関係の調整」に関する実定法人税法の規定について説示しているが、しかし、その後半で原告による本件会計処理の公正処理基準該当性の主張を斥けるに当たっては、本件最判の上記の考え方ではなく、法人税法独自(固有)観点説にいう「法人税の適正な課税及び納税義務の履行の確保を目的とする法人税法の公平な所得計算という要請」を援用している。 このように、本件最判と本件大阪地判はともに、本件会計処理の公正処理基準該当性を否定し、少なくともその限りで前期損益修正の排他性を肯定したが、ただ、本件最判は、本件大阪地判の前掲判示❶とは異なり、法人税法独自(固有)観点説には言及せず「法人税の適正な課税及び納税義務の履行の確保を目的とする法人税法の公平な所得計算という要請」を援用しなかった。 法人税法独自(固有)観点説は、第15回Ⅱで述べたように、税法の目的論的解釈の「過形成」という、租税法律主義の下では許されるべきでない結果をもたらす考え方であることからすれば、本件最判がこの考え方に言及せず、専ら実定法人税法の規定に基づいてのみ判断したのは、租税法律主義の見地からみて妥当である。 本件最判が前期損益修正の排他性を肯定するに当たり、本件大阪地判とは異なり法人税法独自(固有)観点説に言及しなかったことは、公正処理基準にいう「公正妥当」を専ら企業会計の観点からみた「公正妥当」の意味に解する立場に立つことを前提としているものと解されるが(前掲判示㋐も参照)、そのような立場は公正処理基準の「第三者性」の観点からみても妥当である(拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)【414】【417】参照。そのような立場を支持する傾向が伝統的には強かったこと及び公正処理基準の「第三者性」との関係については、第15回Ⅲ1・2参照)。 なお、本件最判が、本件大阪地判の前掲判示❶と異なり、大竹貿易事件・最判平成5年11月25日民集47巻9号5278頁(以下「大竹貿易事件最判」という)を引用しなかったのは、同じく公正処理基準の問題とはいえ事案が異なること(過年度収益の修正と収益の計上時期)を考慮したからかもしれないが、別の見方として、大竹貿易事件最判にいう「法人税法の企図する公平な所得計算という要請」を「法人税の適正な課税及び納税義務の履行の確保を目的とする法人税法の公平な所得計算という要請」と読み換え、もってこの要請による公正処理基準の限定解釈(目的論的限定解釈)を正当化しようとする法人税法独自(固有)観点説に対して、消極的な態度を示したものとみることもできるように思われる(上記の2つの「要請」が意味内容を異にすることについては、拙稿「公正処理基準の法的意義-税法における恣意の排除と民主的正統性の確保-」近畿大学法学65巻3・4号(2018年。八ツ尾順一教授ほか退任記念号)213頁、237-243頁参照)。 2 前期損益修正の排他性の例外 ところで、大竹貿易事件最判は、本件大阪地判と反対の結論を示した本件大阪高判でも、その前掲判示ⓐで引用されているが、このことをどのように理解すればよいのであろうか。 本件大阪高判は前掲判示ⓐで、大竹貿易事件最判を引用して「収益・費用等の帰属年度をめぐり、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(公正処理基準)に適合する会計処理は必ずしも単一ではないと考えられる」と述べた上で、そのことから、「本件のよう[な]場合の収益・費用等の帰属年度に関し、前期損益修正による処理又は過年度遡及会計基準による遡及処理のみが公正処理基準に合致する唯一の会計処理としなければならないと解するのは相当ではない。」と判示し、もって「法人税法の企図する公平な所得計算という要請に反するものでない限り」本件会計処理を公正処理基準に合致するものとして是認した。 そして、その実質的な理由づけについて前掲判示ⓑで、「本件破産会社の場合は、①企業会計基準が全面的に適用されるべき理由はなく、②会社法上も本件計算書類関係諸規定は適用されない上、③過去の確定決算を修正しても、通常の株式会社の場合のような弊害が生じることもないのであるから、本件会計処理は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行と矛盾しないし、④控訴人が本件会計処理を行うことは、本件破産手続の目的に照らして合理的なものというべきであり、法人税法の企図する公平な所得計算という要請に反するものでもない」と判示しているが、これらの理由づけのうち①~③は消極的理由づけであり④は積極的理由づけである(①~③を「許容性」、④を「必要性」を示す理由づけとして理解・整理するものとして西中間浩「判批」税経通信74巻6号(2019年)176頁、181頁参照)。 上記④の積極的理由づけは、本件大阪地判が採用しなかった「公正処理基準が保障する法的救済の観点から、過年度に遡って益金の減算が認められなければならない旨」の原告の主張を肯定的に考慮したものと解されるが、その理論的根拠は金子宏教授の次の見解(同『租税法〔第23版〕』(弘文堂・2019年)350-351頁)に見出すことができよう。 金子教授は、この見解について根拠を明示的には述べておられないが、その根拠は、金子教授が租税法律主義の内容として従来から一貫して説いてこられた「納税者の権利保護」の要請(同・前掲書81頁)にあると解される。金子教授の租税法律主義論について、筆者は、最近、公益財団法人日本税務研究センターの「憲法と租税法」共同研究会(第34回Ⅰ参照)における共同研究の成果の中で、次のとおり述べた(日税研論集77号(近刊)所収の拙稿「租税法律主義(憲法84条)」の「Ⅰ 租税法律主義の法的性格・法的構成」の「4 租税法律主義の機能的考察-法の支配による租税法律主義のコーティング-」(4))。 ここで「法の支配」という観念は、「①法が一般的抽象的であり、②公示され、③明確であり、④安定しており、⑤相互に矛盾しておらず、⑥遡及立法(事後立法)が禁止され、⑦国家機関が法に基づいて行動するよう、独立の裁判所によるコントロールが確立していること」(長谷部恭男『憲法〔第7版〕』(新世社・2018年)19頁)など、「一国の法秩序において、法が法として機能するための条件、言いかえれば人が法に従いうるための最低限の条件となる要請」(同129-130頁)という意味で用いたのであるが、金子教授が説かれる「納税者の権利保護」の要請(特に司法的救済の保障の原理)は、上記⑦に対応するものとして、法が法として具備すべき最低限度の条件といってよかろう。 そうすると、本件大阪高判が公正処理基準に「法的救済の観点」を読み込んだのは、「法的救済の観点」を法人税法が法として具備すべき最低限の条件として認めたからにほかならないと解される。このような理解によれば、本件大阪高判は、本件大阪地判が依拠した法人税法独自(固有)観点説とは異なる「法一般観点説」ともいうべき考え方に依拠して、法の支配の要素としての「法的救済の観点」から、前期損益修正の排他性を否定し本件会計処理を許容したといってよかろう。 法一般観点説は、法解釈方法論の観点からみると、公正処理基準に対して憲法(租税法律主義)適合的解釈を加えることによって、公正処理基準に「法的救済の観点」を読み込むものである。では、本件最判が前期損益修正の排他性を肯定し本件会計処理を許容せず本件大阪高判を破棄したのは、公正処理基準の憲法(租税法律主義)適合的解釈によると、問題のある判断であるということになるのであろうか。 この問題については、「法の支配は、法が備えるべき条件の一つにすぎず、他の要請の前に譲歩しなければならない場合もあることに注意しなければならない。」(長谷部・前掲書20頁)といわれるように、租税法律主義の他の要請との関係をも視野に入れて、検討する必要があると考えられる。とりわけ課税要件法定主義及び合法性の原則との関係では、納税者の権利保護の要請も、原則として、これを認める明文の規定が実定税法上定められている限りにおいて、妥当すると考えるべきである。このような考え方は、判例が従来から採用してきたところである。 例えば、第1に、納税申告の錯誤無効の主張について最判昭和39年10月22日民集18巻8号1762頁は次の判断を示した(下線筆者)。 第2に、金銭債権の後発的貸倒れに伴う課税関係の是正について最判昭和49年3月8日民集28巻2号186頁は次の判断を示した(下線筆者)。 第3に、租税法律関係における信義則の適用について最判昭和62年10月30日訟月34巻4号853頁は次の判断を示した(下線筆者)。 第4に、延滞税の法定外免除(不発生)について最判平成26年12月12日集民248号165頁は次の判断を示した(下線筆者)。 以上の4つの例をみても、判例は、納税者の権利保護を実定税法上の明文の規定の枠内で認めることを原則とし、「特段の事情がある」・「正義公平の原則にもとる」・「特別の事情が存する」・「明らかに課税上の衡平に反する」等の場合に例外的に、法定外の救済の余地を認める、という判断枠組みを採用してきたといえよう。 本件では、法人税法22条4項が定める公正処理基準の解釈によって前期損益修正以外にも法的救済の余地が認められるか否か(前期損益修正の排他性の有無)が争点となっていたのであって、法定外の救済の余地が認められるか否かが争点となっていたのではない。したがって、本件最判は上記の判断枠組みの下で前期損益修正の排他性を肯定したわけではない。ただ、法人税法22条4項は「一般に公正妥当」という不確定概念を用いる一般条項であることから、その解釈が緩やかに自由に行われ、ひいては法定外の救済の余地を認めるのと実質的に同じ結果をもたらすおそれがあること(問題状況は異なるが一般条項の「危険」については第30回Ⅲも参照)を考えると、本件最判が上記の争点について専ら実定法人税法の規定に基づいてのみ判断したのは、思考方法のレベルでは、従来の判例の前記判断枠組みを踏襲したものといってよいであろう。 本件最判は前掲判示㋑で、「同法[=法人税法]は、破産者である法人であっても、特別に定められた要件と手続の下においてのみ事業年度を超えた課税関係の調整を行うことを原則としているものと解される。」(下線筆者)と判示し、本件について「上記原則に対する例外」(同)を認めなかったが、それでも、別の事案であれば、前期損益修正の排他性について「例外」が認められる余地を残したものと解される。その意味で、本件最判は、前期損益修正について「原則的排他性」を認めたものというべきであろう。 Ⅳ おわりに 最後に、以上の検討を簡単にまとめておこう。 本件大阪地判が依拠した法人税法独自(固有)観点説は、本件最判によって採用されなかった。また、本件大阪高判が依拠した法一般観点説も、本件については本件最判によって採用されなかった。本件最判は、「事業年度を超えた課税関係の調整」の可否を専ら実定法人税法の明文の規定に基づいてのみ判断する考え方を示したのである。 本件最判の示したこの考え方は、「法人税の適正な課税及び納税義務の履行の確保を目的とする法人税法の公平な所得計算という要請」という法人税法独自(固有)の観点も、法人税法が法として具備すべき最低限の条件という意味での法の支配の要素としての「法的救済の観点」も、「事業年度を超えた課税関係の調整」に関する実定法人税法の明文の規定の中で具体化されていることを前提とする考え方であるといってよかろう。 このような考え方は、租税法律主義の見地から妥当であり、公正処理基準に関していえば、これにいう「公正妥当」を専ら企業会計の観点からみた「公正妥当」の意味に解する立場に立つという意味でも、妥当である。 もっとも、公正処理基準の憲法(租税法律主義)適合的解釈の観点からは、事案によっては、例外的に、実定法人税法の枠外でも「事業年度を超えた課税関係の調整」を行う余地が認められるべきであろう。本件最判は、本件についてはその余地を認めなかったが、事案によってはその余地が認められ得ることを排除してはいないものと解される。 (了)
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Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第10回】「〔第1表の1〕株主判定と遺産分割のやり直し」
Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第10回】 「〔第1表の1〕株主判定と遺産分割のやり直し」 税理士 柴田 健次 Q 乙は甲から相続により、非上場会社であるA社の議決権総数のうち6%の株式を取得しています。筆頭株主は戊であり、議決権総数の94%の株式を有しています。A社の役員は、戊のみであり、甲の相続人である乙及び丙はいずれもA社の役員には該当していません。 甲の相続人から依頼を受けて相続税の申告を行ったB税理士法人は特例的評価方式(配当還元価額)によりA社の株式の評価を行いましたが、その後、甲の相続税の税務調査によりA社株式については、特例的評価方式(配当還元価額)は適用できず、原則的評価方式により評価するべきとして、増額更正処分を受けました。 遺産分割協議においては、乙がA社株式を取得する代わりに、丙に代償金を支払うことが前提となっており、代償金の算定においては、配当還元価額で評価したA社株式評価額の2分の1相当額で計算がなされていました。 そこで、当初の遺産分割協議において錯誤があったものとして取消しを主張し、A社の議決権総数6%の株式のうち、3%ずつを乙と丙が取得する旨の遺産分割協議書を作成すれば、更正の請求により特例的評価方式(配当還元価額)は認められるのでしょうか。また、遺産分割協議のやり直しとして、乙から丙に3%の株式の贈与があったものとして贈与税の課税対象になるのでしょうか。 A 特例的評価方式(配当還元価額)は認められないと考えられます。課税負担の錯誤を理由とする更正の請求については、過去の裁判事例において原則として認められないものとされています。なお、更正の請求が認められない場合においても、民法上の錯誤に該当すれば、贈与税の課税は生じません。 ◆ ◆ ◆ ① 同族株主の判定 乙の同族関係者として戊も含まれますので、乙は同族株主に該当し、議決権割合5%以上となる株式を取得していますので、原則的評価方式が適用されます。同族株主がいる場合の株主判定の手順については、本連載【第1回】の「同族株主がいる場合の株主判定の手順」をご確認ください。 乙及び丙が議決権割合5%未満となる株式を取得している場合には、乙及び丙は中心的な同族株主に該当せず、戊が中心的な同族株主に該当しますので、特例的評価方式(配当還元価額)の適用が可能となります。 ② 錯誤の有無と贈与税の課税関係 錯誤があったか否かについては、民法95条(令和2年4月1日施行の改正民法)で下記の通り規定がされており、錯誤があった場合には、表意者は意思表示の取消しをすることができるとされています。民法改正前は、錯誤の効果は「無効」でしたが、改正後は「取消し」となりました。 遺産分割のやり直しに対する課税関係については、平成17年12月15日の裁決事例(TAINSコード:J70-4-17)において、次のように判断しています。 したがって、税務上は、錯誤により取消し等がない場合には、当初の遺産分割協議により相続財産が確定的に帰属することになり、新たな遺産分割協議は、贈与として取り扱われることになりますが、無効又は取り消し得べき原因がある場合には、当初の遺産分割協議による財産の取得が失われますので、贈与税の課税関係はないものとされています。 本問の場合においては、遺産分割協議という法律行為の基礎とした事情について錯誤(基礎事情の錯誤)があったかどうか(民法95①二)、その事情が表示されているかどうか(民法95②)、重大な過失はなかったか(民法95③)が問題になります。 まず配当還元価額を前提として遺産分割協議の話し合いが行われていますので、法律行為の基礎とした事情に錯誤があったことになります。次に、配当還元価額を基に代償金の算定がなされていますので、基礎事情の意思表示があったことになると考えられます。 したがって、重大な過失がなければ錯誤として認められることになります。 ③ 更正の請求が認められるかどうか 課税負担の錯誤については、民法上の錯誤に該当した場合であっても、原則として更正の請求はできないと解されています。 平成18年2月23日の高松高裁(TAINSコード:Z256-10328)では、課税負担の錯誤について更正の請求が認められなかった事例となりますが、次のように判示しています。 これに対して、平成21年2月27日の東京地裁(TAINSコード:Z259-11151)では、課税負担の錯誤については、原則として更正の請求を認めないとしつつ、更正請求期間内にされた更正の請求を認めても弊害が生ずるおそれがない特段の事情がある場合には、例外的に認められる場合があるとして、下記の通り判示しています。 本問については、仮に民法上の錯誤に該当した場合においても、自ら誤信に気づき更正の請求をしたものではなく、税務署の増額更正によるものであるため、更正の請求は認められないものと考えられます。 なお、上記の高松高裁及び東京地裁はいずれも民法改正前の「錯誤」で改正後の「錯誤」ではありませんので、改正後の「錯誤」が国税通則法の更正の請求事由にあたるかどうかについては、今後の税制改正や判例で注視すべき内容となりますが、申告納税制度の趣旨・構造を鑑みると、改正後の「錯誤」についても、課税負担の錯誤を理由とする更正の請求は、原則として認められないと考えられます。 ☆実務上のポイント☆ 課税負担の錯誤を理由とする遺産分割協議のやり直しについては、民法上の錯誤に該当しない場合には、贈与税の課税問題が発生し、民法上の錯誤に該当する場合でも原則として更正の請求をすることができないため、実務上は、相続税の申告期限までに株主判定を正確に行い、申告を行うことが重要となります。 (了)
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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例89(消費税)】 「同族会社に対する貸付金を減らすため建物による代物弁済を実行したが、簡易課税を選択しており建物取得に係る消費税の還付が受けられないことから、錯誤で取り消し、原則課税に戻してから再度実行したため、移転費用が二重にかかってしまった事例」
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例89(消費税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆消費税の課税対象と資産の譲渡等(消法4、2①八) 消費税の課税対象となる取引は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物の引取り(輸入取引)である。ここで「資産の譲渡等」とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為を含む)をいう。 ◆代物弁済による資産の譲渡(消基通5-1-4) 上記の「代物弁済による資産の譲渡」とは、債務者が債権者の承諾を得て、約定されていた弁済の手段に代えて他の給付をもって弁済する場合の資産の譲渡をいう。 ◆簡易課税制度と消費税の還付 消費税の納付税額は、課税期間中の課税売上げに係る消費税額からその課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額(仕入控除税額)を控除して計算し、控除しきれない部分があるときは、確定申告により還付される。ただし、みなし仕入率による簡易課税制度を選択した者については、消費税の還付を受けることはできない。 (了)
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令和2年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第9回】「「適用時期」「経過措置」」
令和2年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第9回】 (最終回) 「「適用時期」 「経過措置」」 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 [13] 適用時期 グループ通算制度は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用される(令和2年所法等改正法附則14)。 [14] 経過措置 連結納税制度からの移行に伴う経過措置は次のとおりとなる。 (連載了)
