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活力ある会社を作る「社内ルール」の作り方 【第9回】「良心が発揮されるルールへの進化」
活力ある会社を作る 「社内ルール」の作り方 【第9回】 (最終回) 「良心が発揮されるルールへの進化」 特定社会保険労務士 下田 直人 このシリーズもついに最終回となった。 前回は、企業文化を体現した就業規則の作成について、プロジェクト方式で従業員を巻き込む方法を紹介した。 今回は、さらに踏み込んで、就業規則の作成を通して、労使が一枚岩となり、お互いの良心を発揮できるようにする取組みを紹介したい。 なお、この方法は私のオリジナルではなく、仲間の社労士が取り組んでいるものであることを最初にお断りしておく。 しかし、大変意義のある取組みと思うので、シェアしておきたい。 〈「やさしい」組織〉 企業の価値観を大切にし、それをベースとした就業規則を作成するにあたっては、従業員が落ち着いて仕事に集中し、各人のパフォーマンスをフルに発揮できるような「安心感」を与えるものであることが、より重要になってくる。 働くことにビクビクしていたら100%の力を発揮することは難しいし、心から企業の価値観に共感などできないからだ。 「安心感」というと、健康に関連した福利厚生策などを思い浮かべるかもしれない。 もちろん、それも大事ではあるが、ここで言っているのはもっともっと抽象的なことであり、ただし、とても重要なことである。 それは、「やさしさ」である。 つまり「やさしい」組織であるかどうかである。 「やさしい」というのは、仕事がゆるいということではない。 「愛情がある」とも言える。 このような力は、人間がそもそも心に持っているもので、能力開発や勉強で学ぶものではない。 「良心」というようなものであると思う。 では、この「良心」が発揮されやすい職場という観点から就業規則を作成したら、どんな就業規則ができるのであろうか。 私の仲間がそういった観点から、従業員にルールを考えてもらい就業規則に落とし込んでいる。 〈「みんなの就業規則」へ〉 例えば、こんな例がある。 身元保証書を従業員の家族や親戚などから取る会社がある。 通常の就業規則では、 などの選任基準や期間を定めたものがほとんどである。 これを法定な側面からではなく、「良心」が発揮されやすい組織づくりという観点から考えると、力点が置かれる場所が異なってくる。 ある会社では、 というルールになっている。 つまり、「実際に会う」というプロセスがクローズアップされるのだ。 こうすることで、社長や管理職が実際にその従業員の家族と顔を合わせることになる。家に行き、その従業員の親や配偶者、子供に会うと、そこに感情(情)が芽生える。 すると、実際にその従業員が働き始めた後、問題行動を起こした場合の会社(社長)による対応が、全く異なってくるのだ。 例えば、その従業員に遅刻が多く、イマイチ仕事に身が入っていなかったとしよう。 たいていの場合、社長や管理職は「あのやろうふざけやがって!」という感情でその人間を指導する。 これは、指導のようで自分の感情をぶつけているだけだ。それでは、全く本人にも響かないし、ギクシャクした組織か、ピリピリした組織が出来上がるだけだ。 その時に、社長がその従業員の家族と会話をしていたらどうだろう。 その従業員を見たときに、きっとその家族のことも思い出す。 そうすると、単なる怒りではなく、 「おまえなぁ、奥さんや子供を悲しませるようなことをするなよ。」 という感情(情)での指導に変わっていく。 同じ指導をするのでも、この差は大きい。後者は愛情にあふれた指導だからだ。 また、本人の家族を知れば、単なる仕事としての業務命令から 「あいつの家族を幸せにするためには、きついかもしれないがこの仕事をやり遂げて、あいつに一皮むけてもらわなければならない。」 という利他の心が入った指導に変わっていく。 これを頭でわかってやるのではなく、本当に腹落ちしてやるのには、こういったプロセスが必要なのだ。そういう機会を提供するために、身元保証書をもらうという場面が活用されるのである。 以上を見てみると、表面上は近親者から身元保証書をもらうということに変わりはないが、そのルールの成立過程が全く変わってくるのである。 従業員とここまで考えて就業規則をつくることできたら、「みんなの就業規則」になっていくのだ。 〈まとめ~企業文化で統治する時代~〉 最後にまとめよう。 今回紹介した例は、今までと少し毛色が違うように感じるかもしれないが、深い部分では同じことを言っている。 つまり、良心の発揮は、良心が発揮された状態が企業文化の根底をなしている。 そして、ここまで既に何回も述べているよう、規定により企業を統治することは限界に近づきつつある。 そうではなく、自社の価値観、文化というものの戦略的に作り上げ、それを基に企業統治を行い、就業規則は、就業規則として独立してあるものではなく、価値観・文化との連動性の中で考えていく時代が来ているのだ。 (連載了)
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常識としてのビジネス法律 【第6回】「契約に関する法律知識(その2)」
常識としてのビジネス法律 【第6回】 「契約に関する法律知識(その2)」 弁護士 矢野 千秋 1 契約書の形式 私的自治の原則と、それから派生する契約自由の原則中の方式の自由から、契約書の方式には原則として、何の決まりもない(例外として有価証券、遺言、定款、寄付行為、建築請負契約、小作契約、労働協約、保証契約等がある。これらは種々の理由から法が方式を決めていたり、書面を要求しているものである)。 したがって、文書の内容から何らかの合意が読み取れるものなら、すべて「契約書」と言える。このため、注文書と注文請書を併せて合意が読み取れる場合でも、併せて契約書と呼べるし、注文請書をとれないような場合には、注文書コピーの余白に相手方の確認の記載(最低限署名のみでも)をとっておけば、それをもって契約書、すなわち後日契約成立の強力な証拠となる。 2 契約書の表題・内容 (1) 表題 「契約書」「念書」「覚書」「協定書」「確認書」等、どのような表題でも、内容から合意が読みとれれば契約書である。 ただし一般的には、「念書」は一方的な義務負担を規定し、「覚書」は基本契約書に付随する細目的事項を規定し、「協定書」はなんらか当事者間の決定事項を書面化し、「確認書」は事実関係や法律関係を確認する際に用いられる。 また、より具体的な表題の付け方としては、契約の効力には一応無関係であるが、「売買契約書」「賃貸借契約書」等、一見して契約の種類が解るような表題を付けることが望ましい。 ここで「一応」無関係と言ったのは、契約内容が不明瞭な場合には、表題が「売買契約書」とされていれば、売買契約寄りで内容が解釈判断されることになる可能性が高く、このように表題が補充的効力を持つことがあるからである。 ただし、契約内容を変更する(契約内容が明瞭なのにそれに反した解釈を表題等から導く)効力はない。 (2) 前文 前文には、契約締結に至る事情や背景、契約当事者が誰であるかなどを記載する。 しかし近時、日本の契約書においては、双方当事者、契約の簡単な内容の記載程度に止める例が多い。これらは文書における4Wのうち3Wに当たっており、契約書のカバーページを見ただけで、ほぼその契約書を特定できるからである。 なお、残る1Wの契約日は、通常契約書末尾に調印の日付を入れる欄があり、この日と食い違っては困るので前文には入れない例が多い。 (3) 本文 本文は、契約の要素を落とさず、簡潔明解に記載するべきである。 例えば売買契約なら、物と金銭が交換的に給付されるから、 の記載が当事者間に暗黙の了解でもない限り、最低限必要である。 その他にも、交付前に物が滅失した場合の処理(危険負担)、違約金、物が約束と違った場合の処理、遅延利息、管轄裁判所等も記載することが望ましい。 これらはいわばアクシデントが発生した場合の対策である。 継続契約なら、即時解除条項、期限の利益の喪失約款の記載も望ましい。これらは継続契約では契約期間内に相手方に資力信用の悪化が発生することが単発的な契約より多く、それに対処するための規定である。 【例】 一般の契約書においては、契約全体を無効にするような有害的記載事項は少ない(例外、手形)。不適当な記載でもその部分が無効になるだけである。それは、契約自由の原則(内容決定の自由)が基本的に働くからである。 ただし、公序良俗、強行法規に反するような内容は制約され、場合によっては契約全体を無効とすることがある。この判断は「契約内容に社会的合理性と経済的合理性があるかどうか、社会的経済的に優位な立場に乗じて不当ないし差別的な条件を他方当事者に押しつけていないか」ということである。 上記を整理すると、 などである。 (4) 末文 末文には、作成した契約書の通数やその所持者などを記載する。 契約書の最後の条文の真下に記載するので、後で条文を無断で付け加えたりされるのを防げる意味がある。 (5) 作成年月日 作成年月日の記載により、契約日を特定する。 法や商慣習の適用や解釈、締結権限や能力の有無等も、この日が一応の基準となる。 (6) 当事者の住所、氏名、押印 当事者が個人の場合は「住所・氏名・押印」、会社の場合は「会社住所・会社名・代表者の肩書・代表者名・代表者印(担当者の場合は下記)」の押捺をする。 印章は、個人なら市区町村役場に届け出た「実印」、会社なら法務局に届け出た「代表者印」が望ましい。重要な契約であれば、印鑑登録証明書(3ヶ月以内に発行されたもの)ももらっておくべきである。 認印(実印以外の印章)でも契約は成立するが、後日相手方本人が押印したことを否定して契約の成立を争ってきた場合に、「本人が間違いなく契約をした」という事実の立証が難しい。 以下、当事者に関する具体的問題を考える。 (了)
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〔税理士・会計士が知っておくべき〕情報システムと情報セキュリティ 【第10回】「連結決算と情報システム」
〔税理士・会計士が知っておくべき〕 情報システムと情報セキュリティ 【第10回】 「連結決算と情報システム」 公認会計士 坂尾 栄治 連結決算とは 「連結する」というと、何を想像するだろう。 会計と無縁の人は、列車の「連結」を思い浮かべるのではないだろうか。 会計に携わる人は、連結といえば連結決算を思い浮かべる人が多いと思うが、実際にはどのくらい連結決算を正しく理解しているのだろうか。 ざっくりと説明するのであれば、連結決算は「足して引く」ということなのだが、足し方にも引き方にもそれなりのルールがある。それを正しく理解できている人は思いのほか少ないのが現実である。 以前は単体決算主体の開示が求められていたが、2000年3月期以降は連結決算主体での開示が求められるようになった。 それまでは単体決算の“補助的資料”であった連結財務諸表が注目を浴びるようになってから14年が経つ。 「もう14年」ともいえるが、単体会計の歴史から考えれば「まだ14年」である。 連結決算についての知識を持っている人が少ないのも頷ける。 加えて連結決算を行う必要があるのは、子会社を有する企業に限定されるため、連結決算とは無縁の会社が、中小企業を中心として数多く存在する。 ここで連結決算について定義してみよう。 連結決算とは、親会社が、子会社等(親会社を含む)の支配従属関係にある企業集団を単一の組織体とみなして、その経営成績や財政状態を連結財務諸表(「連結貸借対照表」、「連結損益計算書」、「連結剰余金計算書」及び「連結キャッシュフロー計算書」)を作成し総合的に報告することである。 連結決算をプロセスで記すのであれば、複数の会社の財務諸表をつなぎ合わせ、さらにそれらの会社がもしひとつの会社であったらと仮定して修正を加えていくことである。 これらの修正は通常は仕訳で行われ、この仕訳を「連結修正仕訳」という。 連結決算のシステム化の流れ 連結決算を行っている企業は、開示情報で連結財務諸表が主体となった2000年3月期ごろから、連結決算のシステム化を加速させることとなった。 当時は、連結システムといっても連結処理の自動化レベルは低く、手作業による部分が数多く存在していた。 連結決算では、各子会社の財務情報を収集する必要があるが、2000年当時は、Web画面から直接子会社が財務データを入力するなどということは当然できなかった。そのため、子会社の財務情報をExcelに入力してもらい、それを集めて親会社で連結システムに読み込んでいた。 その際少しでも効率化を図ろうと、Excelから連結システムへデータを読み込めるツールが開発され、当該ツールと一体で連結システムを導入することで効率化を実現していた。 とはいえ、当時は、メールを使えない人も数多く存在したため、子会社の財務情報を入力したExcelをフロッピーディスクに入れてもらい、郵送してもらうのが通常であった。 それから、メールが一般化するようになり、子会社のやり取りがメールで行えるようになったが、子会社からの財務情報の収集は相変わらずExcelのままであった。 その後、キャッシュフロー計算書の作成機能や、投資と資本の消去処理の高度化、外貨ベースでのグループ間の消去処理といった機能強化が行われていったが、大きな転機はWebシステムの一般化によりもたらされた。 連結システムは多くの子会社からデータを収集する必要があるため、各子会社が連結システムにアクセスしデータを直接登録できると大幅に効率化する。 そのため、Webシステムの一般化により、子会社が直接連結システムに財務情報を登録できる仕組みが開発された。 ここで特徴的なのは、子会社が連結システムに直にデータを打ち込むのではなく、子会社は今まで通りExcelに財務情報を登録し、当該Excelを連結システム登録するという方法をとったことである。Excelを連結システムに登録することで、子会社のデータは連結システムに取り込まれるのである。 こうして、連結システムの多くは、Excelに極めて近い入力画面を有するシステムとして進化していった。 この方法であれば、子会社は今までのExcelへの入力作業をほとんど変えずに連結決算業務を大幅に効率化することができる。 本来であれば、子会社の業務も効率化できるような進化を進めるべきなのだが、親会社のシステムが更新されるたびに手順や操作が変更されると、必ずと言っていいほど子会社の一部はそれについていくことができない。そこで、連結システムでは子会社の業務を極力変えずに、効率化していけるような機能強化が行われてきた。 そのため、子会社によるExcelへの入力業務はそのままに、Excelから連結システムへのデータ取込みや子会社の作業状況の管理、子会社のデータ収集以降の業務の効率化が進められていった。 連結会計システムの必要性 連結会計システムは、単体決算主体から連結決算主体への流れの中で、連結決算の重要性が増したことからその必要性が増したのだが、連結システムの導入をより加速化させたのは、以下の理由によるものと考えられる。 一つは子会社数の増加である。 子会社数が20社に満たない場合には、Excelで集計しながら連結決算を行うことも可能だが、20社を超え始めるとExcelでは処理が難しくなるのが一般的である。 そのため、子会社数が増えて担当者の手に負えなくなり連結システムを導入した会社が数多く存在する。 また、もう一つはIRに対する意識が徐々に変わっていき、早期に決算発表を行うことが重要だと考えられるようになったことである。 加えて、東京証券取引所が決算短信の期末日後45日以内での開示を求める、いわゆる「45日ルール」の適用により、多くの企業が決算の早期化を行う必要に迫られ、早期化のツールとして連結会計システムが求められるようになった。 連結会計システムの範囲 「連結会計システム」といえば、連結決算を行うシステムということになるが、その対象となる範囲は変化してきている。 当初、親会社だけが使うシステムであった連結会計システムは、Web化により、利用者の範囲を子会社にまで広げることとなった。 まずは利用者という視点で、連結システムはその範囲を大きく広げたのである。 ついで、業務の範囲としてはどうなのかというと、こちらについても大きくその範囲を広げている。 当初は、半期、年次の開示用連結財務諸表の作成システムであったが、四半期開示の要請に合わせて四半期での連結財務諸表作成がその範囲に含まれていった。さらに、制度連結に加えて連結予算の作成を行えるようになった。 連結予算を作成できるようになると、今度は毎月予算と実績を比較したくなる。 そのため、月次での連結決算が行えるようになっていった。 さらに、製品別や詳細な地域別での売上情報やその他の詳細な情報の集計も連結会計システムの範囲になっていった。 まとめ 当初、連結決算業務の効率化のために、親会社の経理部だけ使っていた連結システムは、企業集団での共通システムとしてグループ経営にまつわる情報を広範囲に取り扱うシステムへと進化していった。 今後はさらに子会社の会計システムとより密接に結合し、子会社の仕訳1本1本までをも連結システムから参照できるようになっていくのではないだろうか。 (了)
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顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第28回】「経費管理のKPI(その② 経費支払)」
顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第28回】 「経費管理のKPI (その② 経費支払)」 株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦 はじめに 今回は、経費管理を構成する複数のKPIから、経費管理の効率性を評価するKPIを取り上げる。 経費管理では、僅少な金額の取引も含む多種多数の取引が対象となるため、その事務処理に相応の負荷が伴う。そこで、経費管理を適正に行いたいと考える会社の経営者は、経費経理が効率的に行われているのか、その人員配置は適正なのか、外部委託をするべきか等といった問題について、業務改善の解決策に思いをめぐらす。 そこで、今回は、経費管理の効率性や適正人員配置の判断に関する経営意思決定に有用な情報を提供するKPIを紹介しよう。 KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 経済産業省スタンダードでは、経費管理において、会社が担う一般的な機能を、「年度予算管理」と「日常管理」に分けている。 今回解説するKPIは、「日常管理」を構成する「通常経費処理」、「仮払決済」、「差額決済」に共通して現われる経費支払に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:経費管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より) さらに、経済産業省スタンダードでは、経費支払に関連する業務プロセスを「通常経費処理」に対応させて明記していないが、「仮払決済」と「差額決済」に対応させて次のようにまとめている。 〈経済産業省スタンダード:7.4.1使用内容精査〉 〈経済産業省スタンダード:7.4.2振替計上〉 〈経済産業省スタンダード:7.5.1差額決済準備〉 〈経済産業省スタンダード:7.5.2支払依頼〉 〈経済産業省スタンダード:7.5.5差額決済準備〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より) 「通常経費処理」における経費支払では、その経費を必要とする主管部門が、その支出内容に対して適切な処理方法を確認し、勘定科目、取引日、取引金額、取引先等を明記した支払依頼書を作成する。支払依頼書の内容が承認されれば、経費として計上される。支払依頼書を支払伝票と呼ぶ会社もあるだろうが、両者は機能において同じである。 経済産業省スタンダードは、この業務プロセスを「通常経費処理」に対応させる形式を取っておらず、「差額決済」に対応させている。 「差額決済」における経費支払では、取引先との債権債務関係が存在する場合に、重複する債権債務を相殺した差額のみを支払うことを前提に、支払依頼書を作成する。この場合も、差額を確認する作業を除けば、支払依頼書を作成する点において通常経費処理と差はない。 「仮払決済」における経費支払では、まず金銭の支出が先行し、その後、勘定科目、取引日、取引金額、取引先等を明記した振替伝票を作成する点が、通常経費処理や差額決済と異なるが、取引を特定するという点に限れば、それが事前に作成する支払依頼書ではなく、事後に作成する振替伝票による相違であると整理できる。 今回のKPIは、支払依頼書、支払伝票、振替伝票といった経費伝票の枚数が経費管理の業務量に比例する傾向があることに着目し、効率性の観点から、経費管理担当者1人あたりの経費伝票枚数を問うものである。 定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 KPIの算出式の分子にあたる「経費伝票枚数」の定義は明らかだろうから、それを分子に置いた意義を押し広げてみる。 KPIの分子には、経費管理業務量に影響を与える要素が適切である。そこで業務内容を概観すると、経費管理は、経費内容の精査、経費伝票の起票、経費伝票の承認、支払伝票又は振替伝票の起票、予算実績管理までの一連の活動から構成される。 既に述べたとおり、その特徴は、管理対象となる取引が反復継続し起票数が多いことである。 そして、取引の発生に応じて経費伝票は増えるので、経費管理の一連の活動の発生原因となりその業務量に最も影響を与えるのは「経費伝票枚数」であると着目される。 すなわち、コストドライバーである。 KPIの算出式の分母にあたる「経費管理担当者のべ人数」とは、経理財務部門における経費伝票管理者が経費管理に費やす時間をのべ人数で表したものをさす。 これは、経費管理を構成する活動にかかる費用を集計するためのコストプールとなる。 担当者が、経費管理業務とそれ以外の業務を兼務している場合、合理的な比率で経費管理業務にかかるのべ人数を算出する。 例えば、1人の担当者が1ヶ月の業務時間の全時間を、もう1人の担当者が1ヶ月の業務時間の半分の時間を経費管理業務に費やしている場合、「1.5人月」と記入する。 「経費伝票枚数」や、「経費管理担当者のべ人数」のデータを取る場合、1年のデータを取ることが望ましいが、1年を通して季節性や変動が少ない場合は、調査対象となる月として、最も平均的業務量と思われる1ヶ月を選んでデータを取り、12倍して算出してかまわない。 KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルでこのKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、経費管理にかかる人員を適正なレベルに保ち、もし余剰人員が生じている場合は、より付加価値の高い活動に人的資源を配分することが望ましいという価値判断に基づいて、その経営判断を支援する客観的判断材料を提供するために設定されている。 そこで、経費管理担当者1人あたり処理される経費伝票枚数を会社間で比較し、効率性のレベルを測ることにしたのである。スコアリングモデルでは、この枚数が多い会社が少ない会社よりも相対的に望ましいと考えている。 さらに、このKPIの分子と分母を逆にすると、経費伝票1枚あたりの活動時間が求められ、さらに、経費管理担当者のべ人数に人件費単価を乗じた指標を使えば、経費伝票1枚あたりの人件費が算出される。 そこで、このKPIをそのまま使えば、本社と子会社経費管理の効率性を比較し、非効率な組織の発見、非効率の原因の特定、経費管理の集約化や標準化の策定が可能となる。 また、経費伝票1枚あたりの管理にかかる人件費を使えば、経費管理をサービスとして提供する外部業者が提示するサービス価格と比較し外部委託の是非を判断することができる。 顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、経費伝票を使って経費支払を行う業務プロセスが組み込まれていることを確認していただきたい。 それを前提に、例えば、一定期間の経費伝票一覧を閲覧し、経費伝票枚数を確認する。 同じ期間における業務時間実績報告表を閲覧し、経費管理時間を1人あたり所定労働時間で割り戻した数値を算出する。経費管理業務以外の業務を兼務している場合、合理的な比率で経費管理業務にかかるのべ人数を算出していただきたい。 いずれも、母集団は、繁忙の影響を除外した一定期間から定めることが重要である。 さて、読者の顧問先において、経費管理担当者1人あたりの経費伝票枚数は何枚になったであろうか。 * * * 次回も、引き続き「経費管理」を構成する複数のKPIから、経費支払の「支払承認」に関連する業務プロセスを評価するKPIを取り上げる。 (了)
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〔知っておきたいプロの視点〕病院・医院の経営改善─ポイントはここだ!─ 【第23回】「平均在院日数の計算方式の見直し及び1入院包括払いの適用」
〔知っておきたいプロの視点〕 病院・医院の経営改善 ─ポイントはここだ!─ 【第23回】 「平均在院日数の計算方式の見直し及び 1入院包括払いの適用」 東京医科歯科大学医学部附属病院 特任講師 井上 貴裕 1 平均在院日数短縮の重要性 急性期病院にとって、集中治療を行い平均在院日数の短縮を図ることは大切な取組みである。平均在院日数の短縮は入院診療単価の向上をもたらし、経済性の向上のためにも不可欠である。 このことはDPC/PDPSにおける点数設定に如実に反映されており、さらに機能評価係数Ⅱで高い評価を受けるためにも、平均在院日数の短縮は必須である。 機能評価係数Ⅱで在院日数の評価が行われているものとしてはじめに思い浮かぶのが効率性係数だが、地域医療係数における定量評価指標についても、地域の中でのシェアが評価されている。 地域への貢献が評価された地域医療係数を高めるためには、在院日数を短縮し病床回転率を高めることが必要である。さらに、カバー率係数、複雑性係数、効率性係数で評価の対象になるのは年間12症例以上ある診断群分類のみであるが、このハードルは予想以上に高い。 病床規模及び回転率にもよるが、概ね20~30%程の診断群分類のみが評価されており、頻出するもののうちの一部しか評価されていない。年間12症例以上のハードルをクリアするためには、在院日数を短縮し、次の新入院患者を受け入れる体制を整備しなければならない。 平均在院日数を短縮すると病床利用率が低下するため、明確に在院日数短縮を目標として掲げることはできないという病院経営層もいる。 何よりも病床利用率が大切だというのである。 病床が埋まっていればいいという考え方については、適切なたとえではないかもしれないが、喫茶店の経営において、コーヒー一杯しか頼まないが長時間居座る客でも、大勢いれば安心するという考え方と似通っている。 もちろん喫茶店ならば、そのようなそのような顧客でも足しげく通ってくれる常連は大切にすべきであろう。しかし、保険医療機関として、さらに急性期病院としてその姿勢でいいのか、改めて考え直す必要がある。 急性期を志向するならば病床利用率を重視する姿勢を是正すべきであり、仮に病床利用率が下落してでも平均在院日数の短縮を図っていくことが望ましいと筆者は考えている。ただし、それでは固定費が多くを占める病院において経済的に破たんしかねない。 そこで、目標として掲げるべきなのは新入院患者数であり、急性期病院ならば病床回転率が2回転以上になるよう効率的な病床運営を行うことが期待される。 2 平均在院日数算定方式変更の影響 平均在院日数の短縮に関するインセンティブが数々設けられているにもかかわらず、「病床」という既得権を持った病院は、相変わらず病床利用率を重視する姿勢を変えない。 この状況に対して、ついに政策も方針転換を図る方向に舵を切った。 この議論は、当初2万床を想定して新設したものの35万床を超えるまで増大した7対1入院基本料の絞込みの議論の一施策として展開されている。 現在、平均在院日数の算定は、90日超えなどの特定除外患者を除き原則としてすべての入院患者が評価の対象となっている。この方式では、白内障やEMRなどの短期滞在手術が多い病院や前立腺生検などの検査入院が多い病院では平均在院日数が短くなる。 このような病院は見かけ上、平均在院日数が短いだけであり、急性期病院らしく重篤な患者を受け入れて集中治療を行った結果として在院日数が短いわけではない。平均在院日数は短くても、DPC/PDPSにおける効率性係数では決して高い評価は受けないであろうし、入院診療単価も同規模病院と比較して高い水準にはないだろう。 つまり、急性期機能が高いとはいえない。 そこで、厚生労働省の入院医療等の調査・評価分科会において4泊5日以内の短期手術等の症例を除いて平均在院日数を算定しようという報告がなされており、2014年度の診療報酬改定で実現する可能性が高い。短期手術・検査等を計算式から外した場合、全国平均では0.6日の平均在院日数が延びるという報告がある。しかし、筆者が試算したところ、1日から4日程度平均在院日数が延びるケースが多いようである。 現行の診療報酬では、7対1入院基本料を届け出るためには18日以内の平均在院日数が求められているが、現在13.9日が全国平均であり、平均+1SDでも16.6日であるため、この基準はさらに短縮されるであろう。結果として、7対1入院基本料を算定する病床は減少する可能性もある。さらに、19程度の疾患については1入院包括払いを提供することも提案されている。 このような議論が展開されるに至ったのは、DPCの浸透によって診療内容の標準化が進んだことに加え、急性期病院で手術・検査等の外来化が急速に進んでいることが関係しているものと考えられる。特に2012年度診療報酬改定において、DPC対象病院を3つの医療機関群に分けたことの影響は大きい。 Ⅱ群病院ではすでに短期滞在手術・検査等を外来化していたところは少なくないし、Ⅲ群病院でもハードルが高かった手術1件当たり外保連手術指数や1日当たり包括範囲出来高平均点数である診療密度を高めるために、手術等の外来化に着手した医療機関は多数存在する。 今回の政策的な意図は「外来でできることは入院させないで治療する」ことが望ましく、すでに積極的に短期滞在手術・検査等の外来化を図り、入院病床をより重症患者のために活用する効率的な病床運用を行う医療機関を見習うように、とも捉えることができる。 入院が必要のない患者を空床になってしまうから、あるいは短期手術・検査等の患者は高額な室料差額を払ってくれるなどの病院の都合で入院させるのは、保険診療では許されることではない。時代の波に乗り遅れることなく、無理のない範囲で外来化を推進していく必要があると筆者は感じる。 ただし、外来化のためには回復室を充実させる必要がある医療機関も多く、また7対1入院基本料のために、病棟ばかりに重点的に看護師を配置してきた方針を変更する視点も求められるだろう。 3 短期滞在手術基本料のさらなる評価を 今後は診療報酬において、短期滞在手術基本料の評価が高まることが予想される。 短期滞在手術基本料1及び2は、届出が必要であるが、現状では全国で100病院程度しか届け出る医療機関はない。施設基準の緩和あるいは包括評価されている報酬等の見直しが行われれば、届け出る医療機関は増加するであろう。 外来で短期手術等を実施することは医療機関にとって大きな負担になり、その決断を行うことは容易ではない。 医療費抑制につながる施策を積極的に展開する医療機関の取組みに高い評価を期待したいところである。 (了)
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《速報解説》 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の創設~平成26年度税制改正大綱~
《速報解説》 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の創設 ~平成26年度税制改正大綱~ 税理士 小幡 修大 平成21年度税制改正において、中小企業法に定める中小企業者に対しては「取引相場のない株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予制度」が創設されたが、医療法人は適用対象外となっていた。 「地域医療を確保するには、医療機関の円滑な事業承継がさらに図られ、医業水準の維持向上が期待できるものであることが望ましい」との観点から、日本医師会から医療法人においても相続税及び贈与税の納税猶予制度が適用できるよう要望がされていた。 そこで、平成26年度税制改正大綱において、「医療継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度」の創設が明記された。 1 相続税の納税猶予制度 (1) 制度の概要 相続人が持分の定めのある医療法人の持分を相続又は遺贈により取得した場合において、その医療法人が相続税の申告期限において認定医療法人(仮称)であるときは、担保の提供を条件に、当該相続人が納付すべき相続税額のうち、当該認定医療法人の持分に係る課税価格に対応する相続税額については、移行計画(仮称)の期間満了まで、その納税を猶予する。 また、移行期間内に当該相続人が持分のすべてを放棄した場合には、猶予税額を免除する。 (注) 認定医療法人(仮称)とは、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律に規定される移行計画(仮称)について、認定制度の施行の日から3年以内に厚生労働大臣の認定を受けた医療法人をいう。 【イメージ】 (2) 税額の計算 2 贈与税の納税猶予制度 (1) 制度の概要 持分の定めのある医療法人の出資者が持分を放棄したことにより他の出資者の持分の価額が増加することについて、その増加額(経済的利益)に相当する額の贈与を受けたものとみなして当該他の出資者に贈与税が課される場合において、その医療法人が認定医療法人(仮称)であるときは、担保の提供を条件に、当該他の出資者が納付すべき贈与税額のうち、当該経済的利益に係る課税価格に対応する贈与税額については、移行計画(仮称)の期間満了までその納税を猶予する。 また、移行期間内に当該他の出資者が持分のすべてを放棄した場合には、猶予税額を免除する。 【イメージ】 (2) 税額の計算 3 適用期間 上記1、2の改正は、移行計画(仮称)の認定制度の施行の日以後の相続若しくは遺贈又はみなし贈与に係る相続税又は贈与税について適用される予定となっている。 (了)
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「民法の一部を改正する法律」の成立について~民法900条4号前段但書(婚外子の差別相続規定)の削除~(更新)
「民法の一部を改正する法律」の成立について ~民法900条4号前段但書(婚外子の差別相続規定)の削除~ 平成25年9月4日の婚外子差別相続に係る最高裁違憲決定に基づき改正が審議されていた「民法の一部を改正する法律」が、12月5日に可決・成立しました。 この改正法は、公布の日から施行され、経過措置として平成25年9月5日以後に開始した相続について適用されます。 既掲載の関連記事等は以下の通りです。
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《速報解説》 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(取得費加算の特例)の見直し~平成26年度税制改正大綱~
《速報解説》 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例 (取得費加算の特例)の見直し ~平成26年度税制改正大綱~ 税理士 齋藤 和助 1 はじめに 会計検査院は平成24年10月に、相続財産である土地等の一部を譲渡した場合の取得費加算額が、平成5年改正により「その譲渡した土地等に対応する相続税相当額」から「その者が相続したすべての土地等に対応する相続税相当額」となっていることについて、特例を取り巻くその後の状況が大きく変化した結果、その必要性が著しく低下しているとし、本来の趣旨に沿ったより適切なものとするための検討を行うよう求めていた。 これを受け、「平成26年度税制改正大綱」において、取得費加算の特例の見直しが盛り込まれた。 2 改正の内容 大綱に盛り込まれた改正の内容は次の通りである。 なお、以下の2点のほかに、取得費加算における「適用対象者」「計算の基礎となる相続税額」「対象となる相続財産」などの現行の取扱いを法令に規定する旨が併せて記載されている。 (1) 土地等を譲渡した場合の取得費加算の特例 相続財産である土地等を譲渡した場合の特例について、当該土地等を譲渡した場合に譲渡所得の金額の計算上、取得費に加算する金額を、その者が相続したすべての土地等に対応する相続税相当額から、その譲渡した土地等に対応する相続税相当額とする。 (改正前) (改正後) (2) 取得費加算の特例の更正の請求期限 相続財産の譲渡に係る確定申告書の提出期限後に、当該相続財産の取得の基因となった相続に係る相続税額が確定した場合(相続税の期限内申告に限る)には、当該相続税の期限内申告書を提出した日の翌日から2月以内に限り、更正の請求により本特例の適用を受けることができることとする。 3 適用時期 上記2の改正は、「平成27年1月1日以後に開始する相続又は遺贈により取得した資産を譲渡する場合について適用する。」とされている。 なお、本改正による実務への影響等については、下記拙稿をご覧いただきたい。 (了)
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《速報解説》 給与所得控除の見直し(縮小)~平成26年度税制改正大綱~
《速報解説》 給与所得控除の見直し(縮小) ~平成26年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 先日(2013年12月12日)、与党による「平成26年度税制改正大綱」が公表された。 所得税に関する改正事項は、「① 給与所得控除の見直し」「② 金融・証券税制」「③土地・住宅税制」「④ 租税特別措置等」「⑤ その他」に大きく区分される。 今回は、所得税に関するこれらの改正事項のうち、「給与所得控除の見直し(縮小)」について解説を行う。 1 給与所得控除の概要 給与所得の金額は、給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いて求められる(所法28②)。 この算式から明らかなように、給与所得控除は、所得税の課税ベースを自動的に引き下げる性質のものである。 2 見直しの背景 給与所得控除の現行の水準は、平均すると給与等の収入金額の30%程度を占めており、給与所得者が実際に負担している勤務関連支出と比べても、主要国の概算控除額との比較においても、その割合が高いと指摘されている。 そこで「平成26年度税制改正大綱」では、中長期的に主要国並みの控除水準とすることを目的として、給与所得控除の額を順次引き下げることが示されている。 3 見直しの概要 平成24年度の税制改正により、すでに平成25年分の所得税計算からは、給与所得控除に上限額が設定されている。給与等の収入金額が1,500万円を超える場合の給与所得控除額は、一律245万円である(所法28③六)。 詳しくは拙稿「〈平成25年分〉おさえておきたい年末調整のポイント【第1回】「給与所得控除の上限設定」」(本誌No.41掲載)をご覧いただきたい。 「平成26年度税制改正大綱」においては、当面の措置として、所得水準の比較的高い給与所得者を対象に追加の見直しが示されている。 具体的には、平成28年は、給与等の収入金額が1,200万円を超える場合の給与所得控除の上限が230万円となり、平成29年以後は、給与等の収入金額が1,000万円を超える場合の給与所得控除の上限が220万円となる。 平成25年分の所得税計算から適用されている改正内容と合わせると、次のように、段階的に給与所得控除の上限額が引き下げられることとなる。 〈各年における給与所得控除の上限額の推移〉 (注1) 個人住民税では、平成29年分に適用。 (注2) 個人住民税では、平成30年分以後に適用。 〈給与等の収入金額に対する給与所得控除額〉 ※一部抜粋 なお、給与所得控除の上限額が引き下げられることに伴い、下記についても所要の措置が講じられる。 4 改正の影響 この見直しによる所得税に対する影響額を試算すると、次の通りとなる(復興特別所得税を除く)。 ① 給与等の収入金額1,000万円以下の場合 ⇒影響なし ② 給与等の収入金額1,200万円の場合(所得控除の合計額を320万円と仮定) ③ 給与等の収入金額1,500万円の場合(所得控除の合計額を340万円と仮定) ④ 給与等の収入金額2,000万円の場合(所得控除の合計額を340万円と仮定) (了)
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《速報解説》 交際費課税の見直しについて(大企業への拡充等)~平成26年度税制改正大綱~
《速報解説》 交際費課税の見直しについて(大企業への拡充等) ~平成26年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 新名 貴則 自由民主党と公明党は、平成25年12月12日、「平成26年度税制改正大綱」を発表した。 この中で、消費税引上げに伴う消費拡大のための対策として、交際費課税の見直しが明記され、大企業にも50%の損金算入が認められる見通しとなった。 ここでは、その内容について解説する。 【現行の交際費課税(平成25年度末まで)】 (*) 資本金1億円以下の法人(資本金5億円以上の大法人の完全子会社を除く) 【現行の中小企業の特例のイメージ】 上記のとおり、現行の交際費課税においては、資本金1億円超の大企業については、税務上の交際費等の損金算入は一切認められていない。これに対して、一定の中小企業については、特例として年間800万円までは損金算入が認められている。 「平成26年度税制改正大綱」では、以下の改正点が明記された。 (*) これらの見直しを加えた上で、交際費の損金不算入制度(措法61の4)そのものを2年間延長する。 〈①の改正について〉 これまで大企業は税務上の交際費等を一切損金算入できなかったが、改正後は飲食のために支出した交際費等の50%を損金算入できることになる。また、その損金算入額に上限は設定されない予定である。 ただし、あくまで「飲食のために」支出したものに限定されており、すべての交際費等の50%が損金算入されるわけではない点に注意が必要である。 また、飲食のための交際費等であっても、いわゆる社内接待費(専ら社内の役員や従業員等の接待等のための費用)についても、50%の損金算入は認められない。 【①のイメージ】 〈②の改正について〉 中小企業に認められている交際費課税の特例(800万円まで損金算入可能)の適用期限を、2年間延長する。 ただし、①との選択適用とされているので、有利な方を選択する必要がある。飲食での接待費が年間1,600万円を超える中小企業では、①を選択した方が、損金算入額が多くなる。 ◆ ◆ ◆ 最後に、交際費の損金不算入制度の適用期限は、平成26年3月31日までに開始する事業年度とされているが(措法61の4①)、上記①と②の改正を加えた上で2年間延長されることになる。 (了)