税務判例を読むための税法の学び方【77】
〔第9章〕代表的な税務判例を読む
(その5:「事業に従事したことその他の事由」の解釈①
~問題の所在)
立正大学法学部准教授
税理士 長島 弘
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1 問題の所在
前回、前々回に分けて検討した所得税法56条であるが、同条は「生計を一にする」の意義のみならず「事業に従事したことその他の事由」についても議論がある。
そこで今回より、その点について争われた、前々回冒頭で紹介した「夫弁護士・妻弁護士事件(略して「妻弁護士事件」とも呼ばれている)」(最高裁平成16年11月2日判決)及び「夫弁護士・妻税理士事件(略して「妻税理士事件」とも呼ばれている)」(最高裁平成17年7月5日判決)について検討する。
これらの事案では、お互いに独立した事業を営む夫婦間の弁護士報酬や税理士報酬が必要経費として認められるか否かが争われている。
すなわち、この条文の解釈として、お互いに独立した事業については規定の範囲外という見解があるからである。
まずは条文を確認しよう。
所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)
居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。
まずこの条文の第1文だけ見ていく。この第1文は、「〜場合には」という条件を示した部分と、その条件に該当した場合に、居住者が生計を一にする親族等に支払った対価に相当する金額を必要経費に算入しないという部分、さらに、その親族のその対価に係る必要経費を居住者の必要経費に算入するという部分から構成されている。
問題はこの条件を示した部分の読み方である。
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