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《速報解説》 金融庁、「企業内容等開示ガイドライン」の改正案を公表~譲渡制限付株式の特例に関し、取締役等の死亡などの事由の取扱いを明確化~

《速報解説》 金融庁、「企業内容等開示ガイドライン」の改正案を公表 ~譲渡制限付株式の特例に関し、取締役等の死亡などの事由の取扱いを明確化~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023(令和5)年11月6日、金融庁は、「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の改正(案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、株式報酬として交付される株式が譲渡制限付である場合に、有価証券届出書の提出を不要とする特例に関して、取締役等の死亡などの事由の取扱いについて明確化を図るものである。 意見募集期間は2023(令和5)年12月5日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 総額1億円以上の有価証券の募集又は売出しを行う際には、有価証券届出書の提出が必要とされている。 他方、株式報酬として交付される株式が譲渡制限付である場合(いわゆる譲渡制限付株式(RS:Restricted Stock))については、有価証券届出書の提出を不要とし、臨時報告書の提出で足りるとする特例が設けられている。 「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の改正(案)は、株式報酬について発行会社が定める株式報酬規程等において、次の事由が生じた際、当該株式の譲渡が禁止される旨の制限を解除する旨の定めが設けられている場合であっても、上記の特例の譲渡制限期間の要件を満たし、有価証券届出書の提出が不要であることを明確化するものである。   Ⅲ 適用日 パブリックコメント終了後、速やかに適用する予定である。 (了)

#阿部 光成
2023/11/09

プロフェッションジャーナル No.542が公開されました!~今週のお薦め記事~

2023年11月2日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.542を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2023/11/02

monthly TAX views -No.129-「岸田減税の問題点-給付付き税額控除の検討を」

monthly TAX views -No.129- 「岸田減税の問題点-給付付き税額控除の検討を」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   岸田総理は、「成長の成果である税収増などを国民に適切に還元する」として、所得税・住民税1人当たり4万円の減税と、住民税非課税世帯への10万円(世帯当たり、実施中の3万円を含む)の給付の具体案作りを与党に指示した。実施時期については、給付は補正予算通過後、減税は来年の通常国会での税制改正法案通過後の6月頃ということのようだ。 今回の減税は、国民からの評判が芳しくない。大手新聞の社説の見出しも、「意義も効果も疑問が拭えない」(10月25日読売新聞)、「選挙対策のばらまきか」(10月21日朝日新聞)と、さんざんな評判となっている上、自民党内からも違和感が指摘されている。 その理由を筆者なりに考えると、以下のとおりである。 *  *  * 最大の理由は、今回の所得減税の大義名分が薄いということである。デフレ対策というが世間はインフレに悩んでいる。物価対策としては時期が遅い。SNSで揶揄された「増税メガネ」のイメージを払しょくする人気取り、さらには選挙前のバラマキと受け止められている。減税の理由が、「税収増の還元」というだけでは国民に訴える力は弱い。 次に、年末には国民負担増の議論が避けられないということである。防衛財源については昨年暮れに所得税、法人税、たばこ税での1兆円の増税が決まっている。2024年度は何とかしのぐにしても、2025年度からは増税を実施しなければ、わが国の防衛が不安定な国債依存の「張り子の虎」になってしまう。 加えて異次元の少子化対策である3.5兆円の財源問題も控えている。支援金(仮称)制度の創設で対応することとされているが、その中身は社会保険料の上乗せで、1兆円(半分は企業負担)の負担増が予定されている。 総理は「実質的な国民負担は生じないようにする」と発言している。これは、負担増分は少子化対策の給付として国民に返す、ということを意味しているのであろうか。そうであれば社会保障費として全額返す消費税も、負担はないといえることになる。 国民負担増と減税という逆方向の議論が行われることは、政策の信頼性を大きく損なうことになる。 最後に、給付と減税との組み合わせで、「はざま」に落ちる人たちが数百万人存在することが判明したことだ。住民税は負担しているので給付金はもらえないが、所得税は4万円×世帯人数に満たない額しか負担していないという世帯に、10万円の給付がされる世帯と比べて不公平のないようにどう手当てするのか。 このような「はざま」を生じさせないためには、国がマイナンバーで捕捉している所得情報を給付に連携させる給付付き税額控除が有効だ。英米などでは、所得情報が社会保障給付と連携され、低所得世帯への様々な支援が行われている。先般のコロナ対策でも、この仕組みを活用して、迅速で申請なしのプッシュ型の給付が行われたことは記憶に新しい。 今回わが国でも、このような制度や仕組みを持つことの重要性・必要性が認識されたわけで、導入に向け本格的な検討を始めてほしいものだ。のど元を過ぎれば忘れてしまうということのないようにしなければならない。 *  *  * 所得税減税が国民から受け入れられない背景には、「新しい資本主義」の具体的な中身がいまだ不明ということがある。「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」に記載されている実質賃金の継続的な増加のためには、勤労者のリスキリングの充実などによる人的資本の向上や生産性の上昇が必要である。そのための具体的な政策を明確に打ち出す必要がある。 (了)

#No. 542(掲載号)
#森信 茂樹
2023/11/02

〈令和5年度税制改正で創設された〉パーシャルスピンオフ税制のポイント 【第2回】「適用要件」

〈令和5年度税制改正で創設された〉 パーシャルスピンオフ税制のポイント 【第2回】 「適用要件」   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   前回は、パーシャルスピンオフ税制創設の背景と制度概要について取り上げた。 【第2回】では、パーシャルスピンオフ税制の適用要件について確認する。   1 適用要件 パーシャルスピンオフ税制の適用要件は次の通りである。 以下でそれぞれの要件について詳しく取り上げる。 (1) 株式のみ按分交付要件 「株式のみ按分交付要件」とは、産業競争力強化法に基づく認定を受けた事業再編計画に従って行われる特定剰余金の配当であって、完全子法人株式の80%超が移転し、かつ、現物分配法人の各株主の持株数に応じて完全子法人株式のみが交付されることをいう(措法68の2の2、措令39の34の3①一)。 なお、認定株式分配実施後に現物分配法人や現物分配法人の株主に対して株式を継続保有することは求められていない。 (2) 従業者継続要件 ① 「従業者継続要件」とは 「従業者継続要件」とは、認定株式分配直前の完全子法人の従業者(下記②参照)のうち、その総数のおおむね90%以上に相当する数の者が完全子法人の業務に引き続き従事することが見込まれていることをいう(措令39の34の3①四)。 ② 「従業者」とは 「従業者」とは、役員、使用人その他の者で、認定株式分配の直前において完全子法人の事業に現に従事する者をいう(措通68の2の2-1、法基通1-4-4)。 ただし、日々雇い入れられる者で従事した日ごとに給与等の支払を受ける者については、法人の選択により従業者の数に含めないことができる。 (3) 事業継続要件 ① 「事業継続要件」とは 「事業継続要件」とは、完全子法人の認定株式分配前に行う主要な事業(下記②参照)が完全子法人において引き続き行われることが見込まれていることをいう(措令39の34の3①五、法令4の3⑯四)。 ② 「主要な事業」とは 完全子法人の株式分配前に行う事業が2以上ある場合には、そのいずれが主要な事業に該当するかは、それぞれの事業に属する収入金額又は損益の状況、従業者の数、固定資産の状況等を総合的に勘案して判定する(措通68の2の2-1、法基通1-4-5)。 (4) 役員継続要件 ① 「役員継続要件」とは 「役員継続要件」とは、認定株式分配前の完全子法人の特定役員(下記②参照)の全てが株式分配に伴って退任するものではないことをいう(措令39の34の3①三)。 ② 「特定役員」とは 「特定役員」とは、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者(下記③参照)で法人の経営に従事している者をいう(措令39の34の3①三、法令4の3④二)。 ③ 「これらに準ずる者」とは 「これらに準ずる者」とは、役員又は役員以外の者で、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役又は常務取締役と同等に法人の経営の中枢に参画している者をいう(法基通1-4-7)。 (5) 非支配要件 ① 非支配要件とは 「非支配要件」とは、認定株式分配の直前に現物分配法人と他の者との間にその他の者による支配関係がなく、かつ、認定株式分配後に当該認定株式分配に係る完全子法人と他の者との間にその他の者による支配関係があることとなることが見込まれていないことをいう(措令39の34の3①二)。 ② 「他の者」に含まれるものとは 他の者が個人の場合には、その個人との間に特殊関係のある者(親族等)も含まれる。また、他の者には、その者が締結している民法667条1項に規定する組合契約等及び次に掲げる組合契約に係る他の組合員である者を含むこととされている(措令39の34の3①二、法令4の3⑨一)。 (6) 事業再編計画認定要件 通常の事業再編計画の認定要件に加えて、事業の成長発展が見込まれるものとして経済産業大臣が定める次のいずれかの要件を満たしていることが確認できることをいう(措令39の34の3①六、令5経済産業省告示50、事業再編実施指針四)。   2 従来の適格株式分配の要件との違い 適格株式分配に該当する認定株式分配の要件と従来の適格株式分配の要件の違いは、(1)株式のみ按分交付要件、(2)従業者継続要件、(6)事業再編計画認定要件である。 認定株式分配については、適格株式分配とするための前提として産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受けることが必要なことと、従業者継続要件が従来の適格株式分配や他の組織再編のおおむね80%と比べて厳格になっている点に留意が必要である。 *  *  * 次回は、事業再編計画認定要件とその認定手続きについて詳しく解説する。   (了)

#No. 542(掲載号)
#川瀬 裕太
2023/11/02

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例57】「法人の支出に係る事業関連性と寄附金の損金性」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例57】 「法人の支出に係る事業関連性と寄附金の損金性」   拓殖大学商学部教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、九州地方の政令指定都市において、主として健康食品の製造・販売を行う株式会社X(資本金1億3,000万円で3月決算)に勤務し、現在総務部長を務めている者です。わが社の創業者Aは若い頃相当苦労したようで、地元宮崎県内の高校を卒業後福岡市に出て様々なアルバイトを経験し、その資金を元手にまずはゲームソフトの会社を立ち上げ、そこそこ成功したとのことです。しかし、従業員の巨額横領にあい当該ゲームソフトの会社は廃業を余儀なくされ、A自身も多額の借金を抱えることになったようです。その後、旅行先の韓国で出会った健康食品にほれ込み、その輸入販売を手掛けて再び会社経営を軌道に乗せ、現在に至っております。 わが社はその後、朝鮮人参の調達やその加工等を行う100%子会社を韓国に設立し、取引を行ってきましたが、ここ数年、当該子会社の業績が思わしくないため、わが社は親会社として様々な支援をしてきました。それに関し、今般の国税局の税務調査で問題となった事項があります。すなわち、2022年3月期に韓国の子会社に契約に基づき業務委託費として支出した2,400万円と、2023年3月期に同子会社に開発費として支出した3,000万円のいずれもが寄附金に該当し、また、それらの支出は国外関連者への寄附金であるため、全額損金不算入になると指摘されました。 わが社が韓国の子会社に対して支出した業務委託費と開発費は、子会社固有の営業能力や人材では収益を得られるような業務を獲得することができないため、やむを得ず親会社の業務の一部につきかなり無理をして委託したものであり、それは子会社に対する親会社の責任として当然のことをしたまでと考えます。したがって、契約自由の原則から、当該支出は業務の対価としての性格があるため、当然に経費・損金になるものと解しますが、法人税法上はどう考えるのが適切なのでしょうか、教えてください。 【A】 私法上は契約自由の原則が採用され、当事者間で合意した内容(契約)により取引が実行されるのですが、 法人税法上は、その取引内容からみて、金銭その他の資産又は経済的利益の贈与又は無償の供与があった場合には、当該取引により経済的利益を供与した側から供与を受けた側に寄附があったものと取り扱われます。したがって、親会社から子会社(国外関連者)への業務委託契約に基づく支出についても、その内容と実態が乖離し、子会社が契約内容に基づく業務を履行せず、実質的に親会社が子会社に資金援助をしている場合などに関しては、親会社から子会社に対して経済的利益の供与があったものと認定されることから、当該支出は寄附金とされるとともに、国外関連者への寄附金であるため、全額損金不算入になるものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 寄附金の法的性格 周知の通り、法人税法上の寄附金とは、その名義を問わず、金銭その他の資産又は経済的利益の贈与又は無償の供与のことをいう(法法37⑦)。したがって、それは、一般的に「寄附金」と解されている慈善のためや公益のための支出のカテゴリーに該当するものよりも、はるかに広範囲の概念であり(※1)、これが法人税法における損金概念を複雑化させている要因の1つであると考えられる。 (※1) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂・2021年)415頁。 もっとも、寄附金といえども法人の純資産が減少するのは当然のことであるから、損益法の考え方によれば費用になると解されよう。しかし、収益の獲得を目指して事業活動を営む、営利社団法人である会社において、その外部に対して経済的利益を無償で供与するということは一般的とはいえず、特異な行動であるともいえる。寄附金のような支出は一般に、法人の収益との関連性が見出し難く、事業との関連性もない場合が多い。仮に明確にそういえるのであれば、当該支出は本来、課税所得の算定において控除(損金算入)すべきものとはいえない。しかし、それが必ずしも客観的にかつ明確にいえるケースばかりではないことから(※2)、法人税法においては、行政的便宜及び公平の維持の観点から、一種の擬制として(※3)、寄附金に関し統一的な損金算入限度額を設定し、その範囲内で損金算入を認めるという措置を導入している(法法37①)。 (※2) 岡村忠生・酒井貴子・田中晶国著『租税法(第4版)』(有斐閣・2023年)175頁。 (※3) 岡村他前掲(※2)書175頁。   (2) 寄附金の無償性 上記(1)の通り、法人税法上の寄附金は、金銭その他の資産又は経済的利益の贈与又は無償の供与であり、金銭等の贈与を含む「無償」の供与があることが求められる。ここでいう無償とは、対価又はそれに相当する金銭等の流入を伴わない行為等を指すと考えられる(※4)。したがって、例えば、利益調整目的で行う、親子会社間でよくみられる取引形態であるが、親会社から子会社へ業務委託費等の名目で業務を発注し、契約通りそれに対する報酬を支払うものの、当該業務委託の内容に内実が伴っていない場合には、当該支払いは親会社から子会社に対する経済的利益の無償の供与ということになり、寄附金に該当することとなる。 (※4) 金子前掲(※1)書418頁。 なお、寄附金の支出先である子会社が親会社の国外関連者である場合には、当該国外関連者と独立企業間価格で取引をした場合であっても、親会社が別に当該子会社に寄附を行い、それが損金に算入されるとすると、独立企業間価格と異なる対価で取引を行ったのと同じこととなることから、当該寄附金は日本の親会社の課税所得計算上、全額損金に算入されないこととされている(※5)(措法66の4③)。 (※5) 金子前掲(※1)書607頁。   (3) 法人の支出に係る事業関連性と寄附金課税該当性が争われた事例 それでは、本件と同様に、法人の支出に係る事業関連性と寄附金課税該当性が争われた事例(福岡高裁平成14年12月20日判決・税資252号(順号9251)、TAINSコード:Z252-9251)について、以下で確認してみたい。 ① 事案の概要 本件は、昭和60年10月5日、ローヤルゼリー、プロポリス、蜂蜜等の蜂蜜関連健康食品の製造、販売を主たる目的として設立された株式会社である原告が、平成9年10月1日から平成10年9月30日までの事業年度にかかる法人税について、韓国のソウル市内に本店を有する原告の子会社B株式会社(100%原告出資、以下「B」という)に対して、業務委託契約に基づく業務委託費として支出した費用1,200万円、及び、平成8年10月1日から平成9年9月30日までの事業年度に開発費として支出し、翌平成10年9月期に業務委託費に勘定科目を振り替えた300万円の合計1,500万円を損金に算入して確定申告していたところ、被告により上記業務委託費を寄附金であると認定され、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分がなされたため、これを不服として国税不服審判所に審査請求をし、同審判所長により審査請求を棄却する旨の裁決を受けたことから、本件更正処分のうち確定申告額を超える部分及び本件賦課決定処分の取消しを求めた事案である。 ② 事案の争点 原告のBに対する本件支出が、法人税法第37条に規定される寄附金に該当するか否か。 ③ 裁判所の判断 〈一審(熊本地裁平成14年4月26日判決・税資252号(順号9117)、TAINSコード:Z252-9117)〉 〈控訴審(福岡高裁平成14年12月20日判決・税資252号(順号9251)、TAINSコード:Z252-9251)〉 なお、本件は上告されたが不受理となり(最高裁平成15年6月12日決定・税資253号(順号9363)、TAINSコード:Z253-9363)、納税者敗訴で確定している。 ④ 本裁判例から学ぶこと 法人税法上の寄附金は、企業会計上は一般に費用となるものであっても、統一的な損金算入限度額の範囲を超えるものについては、損金算入が認められていない。これにつき裁判所は、租税法の通説を引用しつつ、法人の行う対価性のない支出については、そのうち「どれだけが費用の性質をもち、どれだけが利益処分の性質をもつのかを客観的に判定することは困難であるため、法は、事業活動の費用であることが明らかな同条6項の括弧書きの支出を例外として寄附金から除くとともに、行政的便宜及び公平の維持の観点から一種の擬制として統一的な損金算入限度額を設け、その範囲内の金額には当然に費用性があるものとして損金算入を認め、それを超える部分については、仮に何らかの事業関連性があるとしても、損金算入を認めないものとしている(下線部筆者)」と解している。 また、裁判所は、親会社と子会社Bとで締結された業務委託契約の中身を検討してみたところ、それにより委託された業務を具体的に子会社自身が行ったという事実を確認することができず、その実態は「Bが行った役務の対価ではなく、経営状態の悪かったBを維持存続させるための」(親会社からの)「無償の資金供与であった」と認定した。これはとりもなおさず、親会社から子会社への経済的利益の無償の供与に該当するため、法人税法上の寄附金となり、国外関連者(100%子会社)への寄附金に該当することから、全額損金不算入であると判示された。海外子会社が業務不振に陥り、その日本親会社が資金援助を行う必要があるケースは珍しくないが、子会社の実態(実力・力量)に即した業務等を委託し、それに対する報酬を支払わないと、損金算入が否定される、極めて効率の悪い支出となることが想定されるため、十分注意する必要があるだろう。   (4) 本件へのあてはめ 私法上は契約自由の原則が採用され、当事者間で合意した内容(契約)により取引が実行されるものの、 法人税法上は、その取引内容からみて、金銭その他の資産又は経済的利益の贈与又は無償の供与があった場合には、当該取引により経済的利益を供与した側から供与を受けた側に寄附があったものとして取り扱われる。したがって、親会社から子会社(国外関連者)への業務委託契約に基づく支出についても、その内容と実態が乖離し、子会社が契約内容に基づく業務を履行せず、実質的に親会社が子会社に資金援助をしている場合などに関しては、親会社から子会社に対して経済的利益の供与があったものと認定できることから、当該支出は寄附金とされるとともに、それは国外関連者への寄附金であるため、全額損金不算入になるものと考えられる。 (了)

#No. 542(掲載号)
#安部 和彦
2023/11/02

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第29回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第29回】   東洋大学法学部准教授 泉 絢也   ➤《更なる考察》 邦貨と外貨の交換(両替)と所得税法33条の「譲渡」 譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいう(所法33①)。 したがって、暗号資産の譲渡による所得の譲渡所得該当性を論ずる際には、所得税法33条の「資産」のみならず、「譲渡」該当性も含めた考察が必要となる。 ところで、邦貨と外貨の交換(両替)は所得税法33条の「譲渡」となりうるのであろうか。 民法の領域では、当事者が相互に金銭の所有権の移転を約する両替は、一種の有償契約(無名契約)とみて売買の規定を類推すべきであると解されている(我妻栄『債権各論 中巻一』341頁(岩波書店1957)など参照)。 他方、両替契約とは、通貨媒体の種類を変更とすることを目的とした契約であり、このことは、現金通貨が種類の異なる通貨媒体間でも代替性があることを意味するとした上で、次のとおり指摘する見解もある(森田宏樹「電子マネーの法的構成(3)」NBL619号31頁、34頁の脚注41)。 この辺りは、民法領域における議論の進展等に依存せざるをえない面があるが、所得税法の規定から議論を出発した場合には異なる様相を呈する可能性もある。 所得税法33条の「譲渡」とは、有償であると無償であるとを問わず所有権その他の権利の移転を広く含む観念で、売買や交換はもとより、競売、公売、収用、物納(ただし、譲渡はなかったものとみなされる。措法40の3参照)、現物出資等もこれに含まれるという見解が一般に支持されている(金子宏『租税法〔第24版〕』266頁(弘文堂2021)参照)。 このように所得税法33条の「譲渡」を広い意味に捉えるならば、両替契約の私法上の性質に議論があったとしても、邦貨と外貨の交換(両替)が所得税法33条の「譲渡」に包摂されるという結論に至るのに大きな障害はないのかもしれない。 他方で、外貨のような支払手段の譲渡、あるいは支払手段としての譲渡の場合は、所得税法33条の「譲渡」には含まれないという見方も検討する必要がある。 例えば、ある論者は次のような疑問を提起している(中里実『租税法の潮流第2巻 金融取引の課税』149頁(税務経理協会2021)(初出2002))。 暗号資産との関係では、同じ論者による次のような指摘も有益である(中里実『財政と金融の法的構造』132頁(有斐閣2018)の脚注61)。 暗号資産については、ここでいう金銭として使用できる範囲が極めて限られている通貨に該当する可能性がある。そうであれば、金銭と金銭の取引というよりも、売買に近い実態が存在し、それを円とドルの両替の場合と同様に考えるわけにはいかないということになるであろうか。 この議論の先には、外貨と暗号資産を支払手段として同列に扱うことの妥当性を問う見解が待ち受けている。   (了)

#No. 542(掲載号)
#泉 絢也
2023/11/02

金融・投資商品の税務Q&A 【Q84】「税制適格ストックオプションの行使により取得した株式を他の証券会社へ移管した場合のみなし譲渡」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q84】 「税制適格ストックオプションの行使により取得した株式を他の証券会社へ移管した場合のみなし譲渡」   PwC税理士法人 金融部 ディレクター 税理士 西川 真由美   ●○ 検 討 ○● 1 税制適格ストックオプションの行使により取得した株式に係る課税関係 法人の役員又は使用人等が当該法人の発行する税制適格ストックオプションを付与され、これを行使したことによって当該法人の株式を取得した場合、当該株式を取得したことによる経済的利益については、所得税を課さないこととされています。そして、当該株式を譲渡した場合には、当該譲渡による所得(譲渡収入からストックオプションの行使による払込金額を控除して計算した金額)は、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率で申告分離課税の対象となります。つまり、税制適格ストックオプションの行使により取得した株式に係る所得に対する課税は、原則として、譲渡時まで繰り延べられることとなります。   2 取得した株式の保管委託要件とみなし譲渡課税 ストックオプションが税制適格となるための要件の1つに、株式の保管委託に関するものがあります。これは、ストックオプションの行使により取得する株式について、当該ストックオプションを付与する法人を通じて、金融商品取引業者等の振替口座簿に記載若しくは記録又は金融商品取引業者等の営業所等に保管の委託、又は管理及び処分に係る信託(保管の委託等)がされること、というもので、当該保管の委託等をされた株式を当該金融商品取引業者等への売委託等により譲渡した場合にのみ課税の繰延べを認めることとされています。 したがって、ストックオプションの発行法人と金融商品取引業者等との間で締結された当該株式に係る保管の委託等の契約が終了する場合、例えば、ストックオプションの発行法人と契約している証券会社に開設した証券口座から株式を引き出し、これを他の証券会社が開設する証券口座に移管する場合には、それ以降の課税の繰延べは認められなくなり、株式を譲渡したものとみなして、当該株式に係るキャピタルゲイン(含み益)について所得税が課されます。税制適格ストックオプションにより取得した株式は特定口座やNISA口座での保管が認められていないため、株式を譲渡したものとみなされる場合には確定申告が必要となります。   3 本件へのあてはめ 税制適格ストックオプションの行使により取得したA社株式は、A社が当該株式の保管の委託等に係る取決めを行ったB証券会社の証券口座に入庫されますが、その後、C証券会社の証券口座に移管する場合は、当該株式が譲渡されたものとみなして所得税が課されることになると考えられます。したがって、C証券会社に移管した時点での価額(時価)からストックオプションの行使に係る払込金額を控除した譲渡益相当額が、20.315%の税率で申告分離課税の対象となり、確定申告することになります。A社株式の保管先である証券口座を移管するのみで実際に譲渡をしたわけではありませんが、譲渡したものとみなされるため注意が必要です。   (了)

#No. 542(掲載号)
#西川 真由美
2023/11/02

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第35回】「外国税額控除の適用における租税条約と国内法の適用関係」

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第35回】 「外国税額控除の適用における租税条約と国内法の適用関係」   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 我が国居住者に課された外国所得税につき、外国税額控除を適用する場合、租税条約と国内法の規定の適用関係はどのように考えたらよいのでしょうか。 〔A〕 我が国とブラジルとの間の租税条約(日伯租税条約)の適用が問題とされた事案において、「同条約2条2項においては、一方の締約国がこの条約を適用する場合には、特に定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、この条約が適用される租税に関するその締約国の法令上有する意義を有するものとするとされていることや、そもそも国際的二重課税の問題は低い税率の国の実効税率の範囲内で生じ、通常の税額控除方式における外国税額控除限度額は国外所得金額に国内の実効税率を乗じて計算されるものであることに照らしても、日伯租税条約は、ブラジルで納付した租税の外国税額控除限度額の計算については日本の法令に従うことを予定している」という判断が示されました。 ●●●〔解説〕●●● 1 所得税法上の外国税額控除 居住者のその年の所得税の計算上、国外所得について納付する外国所得税があるときは、一定の調整を行った所得税の額から、下記(2)によって計算した金額を限度として、その外国所得税の額を控除することができる(所法95①、所令222)。また、不動産所得、事業所得、山林所得、一時所得又は雑所得についての外国所得税は、これらの各種所得の金額の計算上必要経費に算入することができる(所法46、所基通46-1)。 (1) 外国税額控除の対象となる国外源泉所得 平成26年度税制改正において、国外源泉所得については、従来の「国内源泉所得以外の所得」という定義の代わりに、所得の種類ごとに22種類の所得(所法95④、所令225の14)が列挙され、またその意義が明らかにされた(※1)(所令225の2~225の14)。 (※1) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂・2021年)578頁は、平成26年度改正について「国外源泉所得に関するソース・ルールが明確化された意義は大きい。」と述べている。なお、同588頁では「所得の源泉の所在地に関する法原則をソース・ルール(source rule)と呼ぶ。」としている。 ※①~⑯は所得税法95条4項、⑰~㉒は所得税法施行令225条の14に規定 (2) 控除限度額の算定 外国税額控除限度額は、次の算式によって求められる。 (注1) その年分の所得税の額とは、配当控除、住宅借入金等を有する場合の所得税額等の税額控除後の金額をいう(所令222①)。 (注2) その年分の所得総額とは、純損失の繰越控除、雑損失の繰越控除、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除又は特定居住用財産譲渡損失の繰越控除をしないで計算したその年分の総所得金額、分離短期譲渡所得の金額、分離長期譲渡所得の金額、分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額、株式等に係る譲渡所得の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額をいう(所令222②他)。 (注3) その年分の調整国外所得金額とは、純損失の繰越控除又は雑損失の繰越控除を適用しないで計算した場合の国外所得金額をいう(所令222③)。また、調整国外所得金額の計算に当たっては、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除、特定株式に係る譲渡損失の繰越控除及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用もない。ただし、その年分の国外所得金額がその年分の総所得金額を超える場合には、その金額が限度とされる。 (3) 租税条約との関係 OECDモデル租税条約は、国際的二重課税を排除する方式として、①所得免除方式(23条A)及び②外国税額控除方式(23条B)を並記し、条約締約国がいずれかを選択できるようにしている。例えば、②について、OECDモデル租税条約23条B第1項(a)は、一方の締約国の居住者が取得した所得について、「他方の締約国において納付される所得に対する租税の額と等しい額を当該居住者の所得に対する租税の額から控除する」とし、同項ただし書きで、「控除の額は、その控除が行われる前に算定された所得(中略)のうち当該他方の締約国において租税が課される所得(中略)に対応する部分を超えないものとする。」とし、税額控除の基本原理を規定するのみで、その具体的計算方法は当該一方の締約国の国内法の規定に委ねている。 以下では、居住者の外国税額控除の適用が問題とされた最近の裁判例を取り上げる。   2 過去の裁判例 《居住者の外国税額控除事件》 (※2) (※2) (第一審)名古屋地裁令和3年12月8日判決(税資第271号-139(順号13641))・TAINSコード:Z271-13641 (控訴審)名古屋高裁令和4年5月26日判決(棄却)(判例集未登載) (上告審)最高裁令和4年10月6日決定(上告不受理)(確定)(判例集未登載) (1) 事案の概要 本件は、X(原告・控訴人)が、平成28年及び平成30年にブラジル国債を保有し、支払を受けた利子を含む所得について、外国税額控除の額を記載して確定申告をしたところ、所轄税務署長から、外国税額控除の額が誤っているとして、増額更正処分等を受けたことから、同処分は日伯租税条約に反するなどとして、処分の取消しを求めた事案である。 Xの確定申告時の外国税額控除の金額は、平成28年度は国外源泉所得の15%に相当する額、平成30年度は国外源泉所得の20%に相当する額となっており、前者は、分離課税の税率、後者は、日伯租税条約22条2項(b)(ⅰ)で定める「第10条2項の規定が適用される利子については20%の率で納付されたものとみなす。」(いわゆるタックス・スペアリング)という規定を根拠としていると推察されるが、このように年度によって異なる税率を適用した理由については、判決文からは不明である。 また、いずれの年の税率も、総所得金額と併せて計算される実効税率を上回っており、この点につきXは、「外国税額控除限度額につき、総合課税の対象となる所得金額に累進税率を乗じて算出した税額と分離課税の対象となる所得金額に一定税率を乗じて算出した税額とを合算した総税額に対し、国内所得額と国外所得額との合計所得額に占める外国所得額の割合を乗じて算出することとしているから、総合課税の対象となる所得に対し分離課税の15%以上の税率が適用されていない限り、外国税額控除限度額は分離課税部分の税額を下回ることとなり(Xのように総合課税の対象となる所得に対する課税の税率が5%(※3)の場合にはこれに該当する。)、ブラジル国債の利子に対する所得税は0円とならず、二重課税を避けることができない。」と主張していた。 (※3) 我が国所得税の累進税率のうち課税総所得金額195万円以下に適用される税率を指す(所法89①)。 (2) 裁判所の判示 ① 租税条約の規定と国内法の関係について 本件の第一審である名古屋地裁は、「日伯租税条約は、(中略)複数存在する国際的二重課税を回避する方法のうち、国外所得であるブラジル源泉所得に対し居住地である日本の実効税率を乗じて計算した外国税額控除限度額を限度として外国税額控除をする、いわゆる通常の税額控除方式を採用すべきことを定めたものであり、我が国の所得税法95条1項も、国外所得に対する外国税額控除について通常の税額控除方式を採用しているから、同条約22条2項(a)(ⅰ)は、所得税法95条1項と同旨の内容を確認的に規定したもの」とし、「同条約22条1項(a)(ⅰ)ただし書は、外国税額控除限度額について、『日本国の租税の額のうち、その所得に対応する部分を超えないものとする。』と規定するにとどまり、同条約中に『その所得に対応する部分』の定義やその具体的な計算方法を定める規定はなく、その適用方法に関する規定もないから、同条項から具体的な控除限度額を計算することはできず、同条項の規定を直接適用することはできない。」とした上で、「同条約2条2項においては、一方の締約国がこの条約を適用する場合には、特に定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、この条約が適用される租税に関するその締約国の法令上有する意義を有するものとするとされていることや、そもそも国際的二重課税の問題は低い税率の国の実効税率の範囲内で生じ、通常の税額控除方式における外国税額控除限度額は国外所得金額に国内の実効税率を乗じて計算されるものであることに照らしても、日伯租税条約は、ブラジルで納付した租税の外国税額控除限度額の計算については日本の法令に従うことを予定しているものと解される。」と判示している。 ② 当てはめ及び原告の主張の排斥 上記①の判示より、名古屋地裁は、「以上からすれば、ブラジル国債の利子を取得した日本の居住者に対する所得税の外国税額控除限度額の計算に当たっては、日本の所得税等の関係法令が適用されるべきものであり、我が国においては所得税法95条1項及びその委任を受けた同法施行令222条1項の規定を適用して外国税額控除限度額の計算がされることになるから、Xの本件各年分の所得税における本件ブラジル国債の利子に係る外国税額控除の計算にこれらの規定を適用することが日伯租税条約に違反するものとはいえない。」と結論付けている。 Xによる、「所得税法95条1項の委任を受けた同法施行令222条1項の規定は、日伯租税条約の目的である二重課税の回避ができる規定となっていない」という主張に対し、名古屋地裁は、「我が国が国際的二重課税を排除することを目的として採用している外国税額控除制度も、いわゆる資本輸出中立性の確保等という政策目的実現のために課税を免除するものである。そして、同条約が、ブラジル源泉所得について納付したブラジルの租税の全額を控除することやブラジルの租税を控除した後のブラジル源泉所得に対する日本の課税が0円となることを求めるものと解釈すべき根拠を見出すことはできない。」と判示して、Xの主張を排斥した。 名古屋地裁の判決を不服としたXは、名古屋高裁に控訴したが、二審の判断も、一審と同様であった。さらにXは、上告したようであるが、最高裁は上告不受理として本件は確定した。 (3) 解説 Xによる確定申告及び裁判での主張は独自の解釈によるものであり、最初から勝ち目はなかったと思われる。一方で、本判決の意義は、租税条約の位置付けにつき丁寧に論じたことにあったと考える。 (了)

#No. 542(掲載号)
#霞 晴久
2023/11/02

〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第11回】「国税通則法第68条における重加算税の「隠ぺい、仮装」と相続税法第19条の2第5項における「隠蔽仮装行為」の異同点」

〈事例から理解する〉 税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第11回】 「国税通則法第68条における重加算税の「隠ぺい、仮装」と相続税法第19条の2第5項における「隠蔽仮装行為」の異同点」   公認会計士・税理士 大橋 誠一   1 大阪国税不服審判所平成28年3月30日裁決(TAINSコード:J102-1-02) (1) 事実関係の概要 (2) 原処分庁の主張の概要 (3) 「隠ぺい、仮装」と「隠蔽仮装行為」の法令解釈 (4) 審判所の判断の概要・原処分庁の主張の排斥   2 法令解釈の出所 上記1(3)①の法令解釈は、最高裁判所第二小法廷平成7年4月28日判決(TAINSコード:Z209-7518)をほぼそのまま引用しているが、これは過少申告の重加算税の法令解釈であり、本件裁決では、「過少申告がされたことを要する」を「法定申告期限までに申告書を提出しなかったことを要する」に置き換えている。 しかし、法令解釈があるといってもその基準は定性的であり、これに当てはまるか否かは事実認定及びその当てはめの次第によるところが大きい。 原処分庁は、上記の法令解釈が存在することは当然承知の上で、何とかこれに当てはめられるような納税者による「外部からもうかがい得る特段の行動」を探索しているといって差し支えないだろう。 なお、上記1(3)②については、「隠ぺい、仮装」と「隠蔽仮装行為」という異なる文言を用いているが、あえて解釈に相違点があるとはいえず、原処分庁の主張のとおり両者は同質と考えて差し支えないだろう。   3 本件裁決のポイント 公表裁決によると、P証券扱いの金融資産が相続財産の大方を構成しているようであり、これを原処分庁に認識させなければ、相続税申告の必要性が乏しい水準であったのかもしれず、これが今回の証拠隠滅行為に走らせたのかもしれない。 しかし、本件の証拠隠滅行為が「外部からもうかがい得る特段の行動」であったかもしれないが、審判所の説示のとおり、相続税を無申告で済ませようとする態度、行動をできる限り貫こうとしたとまではいい難いし、法定申告期限までに「外部からもうかがい得る特段の行動」があったとも認定しがたいだろう。 過少申告の場合には「相続財産を間引いて申告した」という行動が生じやすいところ、本件のような無申告事案において、納税者による積極的な行動が、しかも、外部からうかがえる状態で発露するというのは相対的に限定的であり、その点において原処分庁にとってはハードルが高いと考えられる。 最近の税制改正において、無申告事案は過少申告事案より悪質(むしろ重加算事案に近い)と位置付けるような措置が講じられており、例えば、過去5年以内に無申告加算税又は重加算税を課された者が再び無申告であった場合の加重措置(平成28年度改正)、高額・連続で無申告であった者の加重措置(令和5年度改正)などが設けられている。   4 重加算税の取消事案は案外多い 重加算税の法令解釈が定性的であることに基因してか、重加算税の賦課決定処分が国税不服審判所の裁決によって取り消される(過少申告加算税・無申告加算税を超える部分の一部取消し)例は案外多い印象がある。 重加算税は賦課決定処分(不利益処分)であり、たとえ本税で納税者から(渋々とはいえ)修正申告をしたとしても、重加算税の取消しを求めて不服申立てをすることは可能であることを知らない納税者が多く、争えば取り消される可能性があったかもしれないにもかかわらず、処分を受忍して埋没している事案は案外多いものと思料する。 (了)

#No. 542(掲載号)
#大橋 誠一
2023/11/02

〈一から学ぶ〉リース取引の会計と税務 【第10回】「セール・アンド・リースバック取引と転リース取引の会計処理」

〈一から学ぶ〉 リース取引の会計と税務 【第10回】 「セール・アンド・リースバック取引と転リース取引の会計処理」   公認会計士・税理士 喜多 弘美   これまで、リース取引の借手の会計処理を扱ってきました。今回は、【第6回】で概要を整理したセール・アンド・リースバック取引と転リース取引の会計処理について、見ていきます。   1 セール・アンド・リースバック取引 (1) セール・アンド・リースバック取引とは(おさらい) セール・アンド・リースバック取引とは、「取引する物件を貸手に売却し、貸手から当該物件のリースを受ける取引」をいいます(「リース取引に関する会計基準の適用指針」48)。 (2) セール・アンド・リースバック取引の会計処理 それでは、セール・アンド・リースバック取引の会計処理はどのようになるのでしょうか。 まずは、他のリース取引と同じように、ファイナンス・リース取引に該当するか判定することになります。この判定において、経済的耐用年数は、リースバック時のリース物件の性能、規格、陳腐化の状況等を考慮して見積もった経済的使用可能予測期間を用います。また、リース物件の見積現金購入価額は、実際の売却価額を用いることになります。つまり、セール・アンド・リースバック取引時点の物件の実態で判断することになります。 次に、ファイナンス・リース取引に該当した場合、物件の売却取引とリース取引を一連の取引とみなして会計処理をします。借手は物件の売却損益について、長期前払費用又は長期前受収益等として繰延処理をします。その後、リース資産の減価償却費の割合に応じて、減価償却費に加減して損益に計上します。 セール・アンド・リースバック取引では、使用している物件を一度「売却」するものの、同じ物件を「借り受ける」(リース)ため、物件はそのまま使用することができ、物件の売却前も後も実態は変わらないといえます。しかし、売却益を計上することで業績を良く見せることができてしまうため、売却した時に売却益を計上するのではなく、リース期間に渡って計上するようにしています。 ただし、売却損失が生じる場合で、物件の合理的な見積市場価額が帳簿価額を下回ることが原因であることが明らかな時は、売却損を繰延処理せずに売却時の損失として計上することになっています。 また、ファイナンス・リース取引に該当しない場合は、売却損益の繰延処理はせず、売却時に売却損益として計上することになります。   2 転リース取引 (1) 転リース取引とは(おさらい) 転リース取引は、「リース物件の所有者から当該物件のリースを受け、さらに同一物件を概ね同一の条件で第三者にリースする取引」をいいます(「リース取引に関する会計基準の適用指針」47)。いわゆる「また貸し」です。 (2) 転リース取引の会計処理 では、転リース取引の会計処理は、どのようになるのでしょうか。 借手としてのリース取引と貸手としてのリース取引の双方がファイナンス・リース取引に該当する場合、貸借対照表上では、リース債権(又は、リース投資資産)とリース債務のどちらも計上することになります。一方、損益計算書上では、支払利息、売上高、売上原価等は計上せずに、貸手として受け取るリース料総額と借手として支払うリース料総額の差額を手数料収入として各期に配分し、転リース差益等の名称で計上します。 なお、リース債権(又は、リース投資資産)とリース債務は、利息相当額控除後の金額で計上することが原則となりますが、利息相当額控除前の金額で計上することもできます。   (了)

#No. 542(掲載号)
#喜多 弘美
2023/11/02
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