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相続税の実務問答 【第104回】「受贈財産の評価が誤っていた場合の相続時精算課税の特別控除額の是正」

相続税の実務問答 【第104回】 「受贈財産の評価が誤っていた場合の 相続時精算課税の特別控除額の是正」   税理士 梶野 研二   [答] 相続時精算課税の特別控除額は、贈与税の期限内申告書に適用する控除額を記載した場合に限って適用することができます。そのため、あなたが行う修正申告では、A社の株式600株の正しい評価額1,900万円から、期限内申告書に記載した特別控除額1,500万円を控除した残額400万円の20%(一律税率)である80万円の贈与税が算出されることとなります。 ただし、特別控除額を少なく記載してしまったことにやむを得ない事由があったと認められる場合には、修正申告において適用される特別控除額を是正することができます。 この場合の修正申告書の記載は、次のとおりとなります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続時精算課税の特別控除 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、基礎控除額を控除した後の贈与税の課税価格(注)(令和5年以前の贈与にあっては、相続時精算課税に係る基礎控除額の控除はできません)から、次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を控除します(相法21の12①)。 (注) 相続時精算課税に係る贈与税の課税価格とは、相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した財産について、特定贈与者ごとにその年中において贈与により取得した財産の価額の合計をいいます(相法21の10)。 この特別控除額の控除は、贈与税の期限内申告書に、控除を受ける特別控除額、前年以前にこの特別控除額の控除した金額がある場合にはその控除した金額及び財務省令で定める一定の事項(注)の記載がある場合に限って適用することができることとされています(相法21の12②)。 (注) 財務省令で定める記載事項は、次のとおりです(相規12)。 ① その年分のその特定贈与者に係る贈与税の課税価格、相続時精算課税に係る基礎控除額及び贈与税額その他の贈与税の額の計算に関する明細 ② 相続時精算課税選択届出書の提出をした税務署名及びその提出年分 ③ 既に当該特定贈与者からの贈与により取得した財産について相続時精算課税に係る特別控除額の控除をした金額がある場合には、当該控除を受けた年分及び当該控除を受けた年分の贈与税の申告書を提出した税務署名 ④ その他参考となるべき事項 したがって、贈与税の期限内申告書に特別控除額の記載がない場合には、原則として贈与税の申告書の提出期限後の手続きにおいてこの特別控除を適用することはできませんし、記載した金額が過少であったとしても、贈与税の申告書の提出期限後にその金額を増額することはできません。   2 贈与税の申告書の提出期限を過ぎた後に特別控除額を増額することの是非 上記1のとおり、各年の贈与税の課税における相続時精算課税に係る特別控除額は、贈与税の期限内申告書に記載した金額が限度となります。 しかしながら、税務署長は、相続時精算課税に係る財産について、適用する特別控除額の記載がない期限内申告書の提出があった場合において、その記載がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その記載をした書類の提出があった場合に限って特別控除額の控除を適用することができるとされています(相法21の12③)。 この適用する「特別控除額の記載がない期限内申告書」には、特別控除額の記載はあるものの、控除可能な金額の全額が記載されていなかった場合も含まれると考えられます。 また、税務署長が「やむを得ない事情があると認めるとき」に該当するかどうかについては、事案ごとの事実関係等に基づいて個別に判断されることとなります。 (注) この「やむを得ない事情があると認められるとき」の取扱いは、贈与税の期限内申告書の提出があった場合に限り認められるものです。期限内申告書の提出がなかった場合には、その後、期限後申告等において、相続時精算課税に係る特別控除額の控除は認められません(相法21の12③)。   3 特別控除額を増額する手続き それでは、やむを得ない事情により贈与税の期限内申告書に記載した相続時精算課税に係る特別控除額が過少となっていた場合において、その年に適用する特別控除額を増額するためにはどのような手続きをとることができるのでしょうか。 特別控除額を増額したとしても贈与税額が新たに発生し、又は贈与税額が増加することとなるのであれば、修正申告書を提出することができます。しかしながら、特別控除額を増額したとしても、なお贈与税額が発生しない場合に、修正申告書を提出することができるかどうかについて、疑問が生じるかもしれません。 この点、国税通則法は、納税申告書を提出した者は、一定の事由が生じた場合に、その申告について更正処分があるまでは、その申告に係る課税標準等又は税額等を修正する修正申告書を税務署長に提出することができると定め(通法19①)、修正申告書を提出することができる場合として、一般的な「先の納税申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載した税額に不足額があるとき」に加え、「先の納税申告書に記載した純損失等の金額が過大であるとき」を掲げています。 そして、この「純損失等」には、「相続税法第21条の12《相続時精算課税に係る贈与税の特別控除》の規定により同条の規定の適用を受けて控除した金額がある場合における当該金額の合計額を2,500万円から控除した残額」が含まれるとされているところです(通法2六ハ(3))。 つまり、贈与税の期限内申告書に記載した相続時精算課税の適用を受ける財産の価額が過少に評価されていたことから、適用した特別控除額もそれに見合う額としていましたが、当該財産の価額を正しく評価したことにより、贈与税の課税価格が上昇し、それに伴い適用する特別控除額を増額することになれば、必然的に翌年以降に繰り越される特別控除額が減少することとなりますので、新たに贈与税額が発生しないとしても贈与税の修正申告書を提出することができることとなります。   4 ご質問の場合 あなたは、相続時精算課税を適用した贈与税の申告書を提出期限内に提出し、その申告において、お父様から贈与により取得した株式の価額から相続時精算課税に係る特別控除額を控除する旨を記載しています。しかし、最近になって、その株式の評価額に誤りがあり、正しい評価額に基づいて申告をしたならば、適用することのできる特別控除額は、期限内申告額よりも大きい金額であったとのことです。 あなたが、贈与を受けた株式の価額を過少に評価し、その結果、相続時精算課税に係る特別控除の適用額が過少になっていたことについて、やむを得ない事情があると認められる場合には、正しい評価額により計算した贈与税の課税価格に見合う特別控除額を適用し、翌年以降に繰り越される特別控除額を期限内申告書に記載した金額から減額する修正申告書を提出することができます。この修正申告書を提出する際には、「やむを得ない事情」についての説明資料を添付すべきでしょう。 お尋ねの場合には、このような修正申告書を提出することにより、納付すべき贈与税額は算出されないこととなります。 (注) 修正申告において、相続時精算課税に係る特別控除額を増額しない場合には、期限内申告書に記載した「翌年以降に繰り越される特別控除額」を翌年以降のお父様からの贈与に適用することができます。したがって、今後も、お父様からの贈与が見込まれるのであれば、適用する特別控除額を期限内申告書に記載した金額のままとし、納付すべき贈与税額を算出したうえで、「翌年以降に繰り越される特別控除額」を期限内申告書に記載した額と同額とする修正申告を行うことも選択肢としてはあり得ます(この場合、加算税及び延滞税の負担も考慮する必要があります)。 (了)

#No. 607(掲載号)
#梶野 研二
2025/02/20

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第65回】「みずほ銀行事件(地判令3.3.16、高判令4.3.10、最判令5.11.6)(その1)」~旧租税特別措置法66条の6第1項、旧租税特別措置法施行令39条の16第1項・2項1号~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第65回】 「みずほ銀行事件 (地判令3.3.16、高判令4.3.10、最判令5.11.6) (その1)」 ~旧租税特別措置法66条の6第1項、 旧租税特別措置法施行令39条の16第1項・2項1号~   税理士 松田 祐弥     1 関連法令等 (1) 租税特別措置法66条の6第1項 (2) 租税特別措置法施行令39条の16(内国法人に係る特定外国子会社等の課税対象金額の計算等) ※下線筆者   2 事件の概要 (1) 概要 本件は内国法人であるX(原告・控訴人・被上告人)が、平成27年4月1日から同28年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」)の法人税及び地方法人税(以下「法人税等」)の申告をしたところ、処分行政庁から租税特別措置法(以下「措置法」)66条の6第1項の規定(以下「本件委任規定」)により、ケイマン諸島で設立されたXの子会社B及びC(以下「本件各子会社」)の課税対象金額に相当する金額が、Xの本件事業年度の所得金額の計算上、益金の額に算入されるなどとして、法人税等の各増額更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受けたものである。 Xは、本件事業年度の法人税等について更正の請求をしたことについても、処分行政庁から更正をすべき理由がない旨の各通知処分(以下「本件各通知処分」)を受けた。そこで国であるY(被告・被控訴人・上告人)を相手に、上記各増額更正処分(後の各減額更正処分により一部取り消されたもの)の一部及び上記各賦課決定処分並びに本件各通知処分の取消しを求めた(※1)。 (※1) 増額更正処分後の更正の請求と通知処分の取消しの訴えの争点について本稿では扱わないものとする。 (2) 事実関係 本件各子会社は、平成20年にケイマン諸島の法令に基づき設立された外国法人で、Xに係る特定外国子会社等であった。Aは同年にケイマン諸島の法令に基づいて設立された法人であり、その発行する普通株式の全部をXの親会社である株式会社Mグループが有していた。Aは平成20年12月29日、額面1億円の優先出資証券3,550口(以下「A優先出資証券」)を発行し、投資家に販売した。本件各子会社は同日、併せて額面1億円の優先出資証券3,550口(以下「本件優先出資証券」)を発行し、Aは、A優先出資証券の発行により調達した資金を原資として本件優先出資証券の全部を購入した。本件優先出資証券の保有者は原則として普通株主に優先して配当受領権を有する一方、議決権を有しないものとされていた。 本件各子会社は、同日、本件優先出資証券の発行により調達した資金を原資としてXに対し劣後ローン(以下「本件劣後ローン」)により金銭を貸し付けたところ、本件劣後ローンの利息の発生期間の終期は、本件優先出資証券及びA優先出資証券に係る配当の支払い日の前日とされていた。本件劣後ローン利息は、ほぼ全て本件優先出資証券の配当に当てられ、本件各子会社に利益が留保されたり、本件各子会社の発行する普通株式に配当がされたりすることは予定されていなかった。 本件各子会社は、平成27年6月30日、Xから本件劣後ローンの全額の返済を受けたうえで、これを原資として本件優先出資証券に係る資金及び配当金をAに送金し、本件優先出資証券を償還した。この結果、本件各子会社の平成26年12月30日から同27年12月3日までの事業年度(以下「本件各子会社事業年度」)の終了の時における発行済株式等は、Xが有する普通株式のみとなった。 Xは、本件各子会社の本件各子会社事業年度終了の時における発行済株式等のうちXの有する本件各子会社の請求権勘案保有株式等の占める割合(以下「本件保有株式等割合」)は0%であり、本件各子会社事業年度における課税対象金額は0円であるとして、本件事業年度に係る法人税等の申告をした。 処分行政庁は平成29年11月に、Xに対し、本件保有株式等割合は100%であり、本件各子会社の適用対象金額の全額が課税対象金額となるなどとして、法人税等の各増額更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。その後、処分行政庁は令和元年7月にXに対し上記各処分に係る法人税等の各減額処分及び過少申告加算税の各変更決定をした(以下「本件各増額更正処分」。各変更決定により一部が取り消された後の各賦課決定処分と合わせて「本件各増額更正処分等」とする)。 〈図表1:本件資金調達スキーム〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 〈図表2:時系列〉   3 争点 本件は、①「外国子会社が請求権の内容の異なる株式等を発行している場合」の判断の時期、②内国法人に係る特定外国子会社等の課税対象金額の計算等について定める措置法施行令39条の16第1項(以下「本件規定」)が本件委任規定の「政令で定めるところにより計算した金額」という政令委任の範囲を逸脱したものであるかどうかが争点となった。 ((その2)へ続く)

#No. 607(掲載号)
#松田 祐弥
2025/02/20

リース会計基準を学ぶ 【第3回】「リースの識別」

リース会計基準を学ぶ 【第3回】 「リースの識別」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、リースの識別について解説する。 リース会計基準における「リースの識別」は、「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)では置かれていなかった規定である(リース適用指針BC165項)。 「リースの識別」の規定に従って、契約がリースを含むか否かを判断することになるので、当該規定は、リースに関する会計処理を行うにあたって重要なプロセスであると考えられる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 契約の締結時におけるリースの識別 リース会計基準では、「リース」を次のように定義している(リース会計基準6項)。 このように、「リース」とは、「契約又は契約の一部分」とされており、リースの識別の判断に際しては、契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断するとされている(リース会計基準25項)。 リースの識別に関する規定の概要は、次のとおりである(リース会計基準25項~30項、リース適用指針5項~16項)。   Ⅲ リースの識別の判断 契約がリースを含むか否かを判断するにあたり、契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含むとされている(リース会計基準26項)。 つまり、契約は、①資産が特定され、かつ、②特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合に、リースを含むと判断される(リース会計基準26項、リース適用指針5項)。 このため、リースの識別の判断に際しては、次の2つを理解することがポイントになると考えられる。 前述のとおり、「リースの識別」は新たに規定されたものであり、理解が難しいものと思われる。 また、以下に記載するように、リースの識別の判断に際しては、多くの要件を検討する必要がある。 リース適用指針は、下記のように「[設例1]リースの識別に関するフローチャート」を設けて、リースの識別の判断に資するように工夫されており、リース会計基準を実務に適用する際には、当該フローチャートを利用することが便利であると考えられる。 (※) ASBJホームページより 1 資産が特定されているかどうかの判断 資産は、通常は契約に明記されることにより特定される(リース適用指針6項)。 ただし、資産が契約に明記されている場合であっても、次の(1)及び(2)のいずれも満たすときには、サプライヤーが当該資産を代替する実質的な権利を有しており、当該資産は特定された資産に該当しない(リース適用指針6項)。 リースの識別において、「借手」及び「貸手」の用語を使用せずに「顧客」及び「サプライヤー」という用語を使用しているのは、リースの識別の判断の段階は契約がリースを含むか否かを判断する段階であり、契約がリースを含まない場合があるためである(リース適用指針BC9項)。 「顧客」及び「サプライヤー」は、リースを含む場合には、それぞれ「借手」及び「貸手」に該当することになる(リース適用指針BC9項)。 2 契約に明記されているかどうか 前述のとおり、資産は、通常は契約に明記されることにより特定される(リース適用指針6項)。 IFRS第16号「リース」では、資産が契約に明記されない場合でも黙示的に定められることによって特定され得るとの定めがあるが、リース適用指針は当該定めを取り入れなかった(リース適用指針BC10項)。 これは、当該定めを置かなくとも、顧客が資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し、かつ、顧客が当該資産の使用を指図する権利を有している場合には、資産が契約に明記されていなくとも事実と状況によりリースが含まれることが明らかであるときがあり、このときにはリースの識別に関する適切な判断がなされると考えられるためであると説明している。反対に、リースが含まれていないことが明らかな場合にまでリースの識別の判断を行う必要はないと考えられるとしている(リース適用指針BC10項)。 企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等に対する「主なコメントの概要とそれらに対する対応」のNo.56は、役務提供契約に含まれているリースの識別についてのコメントである。 当該コメントに対して、企業会計基準委員会は、契約の中に実質的に資産の使用の対価が含まれる場合で当該資産の使用を借手が支配しているときには、契約の実質を優先し、リースとして識別することが借手の経済実態を忠実に表現することになると考えられると述べている。 3 資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断 特定された資産の使用期間(リース適用指針4項(1))全体を通じて、次の(1)及び(2)のいずれも満たす場合、当該契約の一方の当事者(サプライヤー)から当該契約の他方の当事者(顧客)に、資産の使用を支配する権利が移転する(リース適用指針5項、BC9項)。 4 使用を指図する権利 「使用を指図する権利」に関して、顧客は、次の(1)又は(2)のいずれかの場合にのみ、使用期間全体を通じて特定された資産の使用を指図する権利を有している(リース適用指針8項)。 5 その他の留意事項 「リースの識別」の規定の適用により、これまで「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)により会計処理されていなかった契約にリースが含まれると判断される場合があると考えられている(リース適用指針BC165項)。 リース会計基準等の開発に際して、次の契約についても審議されたが、いずれの契約においてもサービスの要素を区分した後に、リースの定義を満たす部分が含まれる場合があるとし、当該部分についてリースの会計処理を行うことについて記載されている(リース会計基準BC31項)。 「設例」では、「[設例3]小売区画(特定された資産)」、「[設例5]ネットワーク・サービス(使用を指図する権利)」の例などが示されている。また、「Ⅱ 借手のリース期間」の設例([設例8-1]~[設例8-5])であるが、普通借地契約及び普通借家契約に関する設例も示されている。   (了)

#No. 607(掲載号)
#阿部 光成
2025/02/20

給与計算の質問箱 【第62回】「同月得喪の社会保険料」

給与計算の質問箱 【第62回】 「同月得喪の社会保険料」   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 1月1日にA(18歳)とB(25歳)が当社に入社しましたが、どちらも1月10日に退職しました。 当社は末日締めの翌月25日支給で給料計算を行っています。AとBの1月分の給料(1月31日締め2月25日支給)から社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)は控除するのでしょうか。 A 控除する。なお、AとBが退職後、1月中に他社へ入社した場合及び1月中は無職だった場合の取扱いについても以下で解説する。 * * 解 説 * * 1 同月得喪の社会保険料 社会保険の資格取得日は入社日の1月1日、資格喪失日は退職日の翌日の1月11日である。社会保険料の支払期間は、資格取得日の属する月から資格喪失日が属する月の前月までである。資格取得日と資格喪失日が同じ月である同月得喪の場合、資格喪失日の属する月の前月は存在しないが、その月の社会保険料は発生することとされている。 したがって、1月分の社会保険料は発生するので、1月分の給料から健康保険料と厚生年金保険料を控除する。   2 退職後、1月中に他社へ入社して社会保険に加入した場合 例えば、1月10日に当社を退職し、1月20日に他社へ入社して社会保険に加入した場合、資格取得日が1月20日となり、他社においても1月分の社会保険料が発生する。他社の給料計算が末日締め翌月25日支給の場合、1月分の給料(1月31日締め2月25日支給)から社会保険料を控除する。 1月分の社会保険料を当社と他社で二重に支払うことになるが、健康保険料と厚生年金保険料で取扱いが異なる。健康保険料は二重払いのままである。 一方、厚生年金保険料は先に資格喪失した当社の厚生年金保険料の納付は不要とされる。当社が1月分の社会保険料を納付後、年金事務所から厚生年金保険料の還付のお知らせが当社へ届き、当社の銀行口座へ1月分の厚生年金保険料が還付される。その後、当社から退職者したAとBへ1月分の給料から控除した厚生年金保険料を還付する。   3 退職後、1月中は無職だった場合 A(18歳)とB(25歳)で取扱いが異なる。国民年金は日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満で厚生年金保険に加入していない者が加入することになっている。 Aは、1月10日に退職し、1月11日~31日は無職だった場合、国民年金に加入する義務はなく、上記2の厚生年金保険料の還付はされない。 Bは、1月10日に退職し、1月11日~31日は無職だった場合、1月11日に国民年金に加入し、1月分の国民年金保険料を納付する。また、上記2の厚生年金保険料の還付がされる。 (了)

#No. 607(掲載号)
#上前 剛
2025/02/20

《税理士のための》登記情報分析術 【第21回】「贈与の登記」~不動産の生前贈与における士業間の連携~

《税理士のための》 登記情報分析術 【第21回】 「贈与の登記」 ~不動産の生前贈与における士業間の連携~   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   相続対策のために税理士が顧客に不動産の生前贈与を提案することがある。不動産の生前贈与の場合、登記が必要になるため司法書士との連携が必要となる。そこで本稿では、円滑に生前贈与を進めるために司法書士の視点からみて大切なポイントについて解説を行う。   1 贈与の登記に必要な書面等 贈与を原因として所有権(持分)移転登記を行う場合に必要となる書類は、以下のとおりである。 【贈与者の必要書類】 ※このほか登記記録上の贈与者の住所と現在の住所が異なる場合には、沿革を付けるため住民票等が必要になる場合がある。 【受贈者の必要書類】 正式には司法書士から顧客に対して必要書類の案内を行うことになるが、事前に税理士からもこれらの書類が必要になることを伝えておくと、顧客としても心づもりができスムーズに手続を進めることができる。   2 見積りには評価額の情報が必要になる 税理士から司法書士に対して贈与の登記の案件を紹介する場合、まずは見積りから依頼をすることになると思われる。見積りには登録免許税を計算するために、最新年度の固定資産税評価額が分かる固定資産税の評価証明書か納税通知書が必要となるため、物件情報とともに提供するとよいだろう。   3 贈与する持分について 司法書士に対しては、税理士から贈与の対象となる持分の情報もあわせて提供する必要がある。贈与税等の税務の観点から、どれくらいの持分を贈与の対象とすべきかという判断は司法書士ではできないため、税理士から提供される情報を信頼して登記を行うことになる。 いったん贈与による持分移転登記が終わった後に、贈与すべき持分が間違っていた場合、誤った登記を正しく直す「更正」の登記を行うことになるが、少なくない労力がかかることになる。税理士と司法書士間での正確な情報の連携がポイントとなる。 【更正の登記の登記記録例】   4 本人確認・意思確認が重要 贈与の登記を司法書士が受任する場合、贈与者及び受贈者双方の本人確認と意思確認を行うことになる。贈与の登記は親族間で行われることが多いため、本人確認・意思確認についてはあまり厳格でなくともよいのではないかという考えもありうるが、筆者としては親族間で行われるからこそ原則通り本人確認・意思確認を行うことが重要であり、事後に疑義が生じることを防止する効果があると考えている。 高齢化が進み判断能力に問題が生じる人が増えているからこそ、原則に従って手続を進めていくことが最終的に顧客を守ることにつながるだろう。 (了)

#No. 607(掲載号)
#北詰 健太郎
2025/02/20

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第62回】「アスベストの使用と建物価格への影響」

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第62回】 「アスベストの使用と建物価格への影響」   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに 前回は、建物に関する「有害な物質の使用の有無及びその状態」について、ポリ塩化ビフェニル(PCB)の使用状況及び保管状況の調査や建物価格との関連を中心に述べました。 今回は、PCBと同じく不動産鑑定評価基準運用上の留意事項に掲げられている「建設資材としてのアスベストの使用の有無及び飛散防止等の措置の実施状況」(留意事項Ⅱ.2.(1))に関連する調査及び建物価格への影響について述べていきます。   2 アスベストとは アスベストとは、石綿(せきめん、いしわた)とも呼ばれる天然の繊維状の鉱物を指しています(原石をほぐして繊維状にしたものです)。 そして、日本では輸入された以下の3つのものが大半を占めるといわれています。 〈アスベストの種類〉 ご承知のとおり、現在、これらについては製造や輸入が禁止されています。 アスベストは、耐熱性が高い、薬品にも強く絶縁性がある、柔軟性がある等の点から建設資材の原料として使用されてきました。 しかし、次の理由により、昭和50年以降段階的に使用が禁止(又は中止)され、平成24年3月以降は全面的に禁止されています(※1)。 (※1) アスベストの使用が段階的に禁止(又は中止)されてきた経緯については、東京都環境局「アスベストQ&A基本的知識」に解説があります。   3 アスベストの使用されている用途 東京都環境局の資料(上記(※1))によれば、アスベストの使用用途は3,000種類以上に上るといわれ、その9割以上が建築物の壁材、屋根材、外装材、内装材に利用されています。そして、住宅や倉庫では、軒裏、外壁、屋根等にセメント板が使用され、ビルでは、空調機械室等の天井、壁に吹付け材が使用されていることも報告されています。 それだけでなく、自動車のブレーキ、電線の被覆材、器具の断熱材、シーリング材等として使用され、一部の家電製品にも使用されていましたが、現在市販されているものに関しては、アスベストは使用されていないとされています。   4 アスベスト使用の有無の調査と建物価格への影響の評価 アスベスト使用の有無の調査と建物価格への影響の評価ですが、これに当たっては次の2段階を経ることになります。 すなわち、鑑定評価に当たってのポイントは、アスベストが使用されている場合でも、その影響は建物撤去時に顕在化するため、建物を継続使用することが最有効使用であれば特段の減価は必要ないという捉え方です。 仮に、対象建物が老朽化し撤去することが合理的と判断され、しかもアスベストが使用されているという場合には、その除去費用を織り込んだ建物撤去費(通常よりも割高となります)を更地価格から控除して評価することが必要となります。このような場合に撤去費が割高となる理由としては、建物を撤去する際にその建物に使用されているアスベストが周囲に拡散されるのを防ぐため、除去作業を外気と隔離して実施する必要があることがあげられています。   5 アスベストの除去費用 (1) アスベスト除去(処理)費用の目安 国土交通省ホームページ「アスベスト対策Q&A(Q40)」には、アスベスト除去費用の目安が以下のとおり示されています(公表されている資料としては数少ないものです)。 詳細は同ホームページを参照ください。なお、このなかには、仮設、除去、廃棄物処理費等のすべての費用が含まれます。 (2) 上記(1)の資料の取扱い方 上記(1)の資料は、(そのなかに付されている)国土交通省の解説にもみられるとおり、費用の目安については、施工実績データの費用単価分布から処理件数上下15%を除いたものであり、施工条件によってはこの値を大きく上回ったり、下回ったりする場合があり得ます(※2)。そのため、当該資料はあくまで目安値として考える必要があります。 (※2) 筆者注。この他に、障害物の有無や足場設置の必要性等によっても費用は大きく異なるようです。 また、次の点についても追記されているため留意が必要です。   6 鑑定評価上の条件との関係 前回も述べましたが、不動産の鑑定評価に当たり、不動産鑑定士の通常の調査の範囲では、対象不動産の価格への影響の程度を判断するための事実の確認が困難な特定の価格形成要因が存する場合には、これを価格形成要因から除外する(=調査範囲等条件を付す)ことも可能とされています。アスベストの取扱いについてもその対象とされています。 ただし、このような条件を付して鑑定評価を行えるのは、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないと判断される場合に限られています。 不動産鑑定士としては、仮に調査範囲等条件を設定して鑑定評価を行う場合でも、本稿で述べた必要最低限の調査を省略することはできません。併せて、アスベストの使用の有無と価格上の取扱いについて鑑定評価書に明記しておくよう留意しています。 (了)

#No. 607(掲載号)
#黒沢 泰
2025/02/20

《速報解説》 会計士協会、補助金等に関する会計基準の不存在を踏まえ、「補助金等の会計処理及び開示に関する研究報告」の公開草案を公表

《速報解説》 会計士協会、補助金等に関する会計基準の不存在を踏まえ、 「補助金等の会計処理及び開示に関する研究報告」の公開草案を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年2月19日、日本公認会計士協会は、会計制度委員会研究報告「補助金等の会計処理及び開示に関する研究報告」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、補助金等に関する会計処理及び開示について研究したものである。 意見募集期間は2025年4月19日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 我が国には、現時点においては補助金等に関する会計基準は存在しておらず、補助金等に係る会計処理及び開示について、様々な実務が行われていることが想定されるとのことである。 以下に述べる問題のほか、圧縮記帳や補助金等の会計処理について詳細に検討している。 1 会計処理 我が国においては補助金等の認識に関する会計基準は存在しない。 このため、「企業会計原則」などの定めを参考に、補助金等の交付額確定通知の受領時や付帯条件を満たした時点等、具体的にどの時点で企業が計上すべきかについて、事実と状況に応じて判断することになると考えられる。 なお、補助金等の交付に付帯条件が付された場合には当該条件を満たしているか、満たす可能性が確実かどうかの検討が必要となると考えられる。 2 表示 原則として、事業対象に係る費用と補助金等を純額処理することはなく、補助金等は営業外収益に計上することになると考えられる。 3 実務上の課題 研究開発助成金について、原則として、研究開発費と助成金を純額処理することはなく、助成金は営業外収益に計上することになると考えられるとしている(純額処理した場合には追加情報の開示)。 雇用調整助成金について、政府は、雇用を維持する企業(事業主)に対して雇用の安定を図るために雇用調整助成金を支給するものであり、政府が従業員に対して支給することを目的として企業(事業主)に支給するものではないため、雇用調整助成金が支給される場合、人件費のマイナスではなく、当該支給金額を営業外収益として表示することが考えられるとしている(純額処理した場合には追加情報の開示)。 4 会計方針 補助金等の会計処理は会計事象等に関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に該当すると考えられ、重要性がある場合には重要な会計方針として注記することが考えられるとしている(「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)4-2項等)。 (了)

#阿部 光成
2025/02/19

《速報解説》 JICPAより「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」等の改正(公開草案)が公表される~一部記載の明確化等を行い2025年4月1日以後の期中レビューから適用~

《速報解説》 JICPAより「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」等の改正(公開草案)が公表される ~一部記載の明確化等を行い2025年4月1日以後の期中レビューから適用~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年2月14日、日本公認会計士協会は、「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」(期中レビュー基準報告書第1号)などの期中レビューに関する報告書を改正する公開草案を公表し、意見募集を行っている。 意見募集期間は2025年2月28日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 主な改正内容は次のとおりである。   Ⅲ 適用時期等 2025年4月1日以後開始する期中財務諸表に係る会計期間の期中財務諸表に対する期中レビューから適用する予定である。 (了)

#阿部 光成
2025/02/17

《速報解説》 会計士協会が「財務報告に係る内部統制の監査」の改正を確定~「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」に基づく要求事項と適用指針を明確化~

《速報解説》 会計士協会が「財務報告に係る内部統制の監査」の改正を確定 ~「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」に基づく要求事項と適用指針を明確化~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年2月13日付けで(ホームページ掲載日は2025年2月14日)、日本公認会計士協会は、「財務報告内部統制監査基準報告書第1号「財務報告に係る内部統制の監査」の改正」を公表した。これにより、2024年11月15日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に寄せられたコメントの概要とその対応も公表されている。 これは、監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」に基づく要求事項と適用指針の明確化を行うものである。 なお、改正内容には、改正監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」(2023年1月12日改正)に関連する改正も含まれている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 主に次の改正を行うとともに、重複箇所を整理するなど記載内容を整理している。   Ⅲ 適用時期等 2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度に係る内部統制監査から適用する。なお、97項(2)及び116項(3)の改正並びにこれに関連する改正(付録5)については、倫理規則(2024年7月18日変更)を早期適用する場合には、併せて適用する。 ただし、他の監査人の作業の利用に関する要求事項(90項)及びこれに関連する改正(97項(4)、付録5)は、2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度に係る内部統制監査から適用する。また、公認会計士法上の大規模監査法人以外の監査事務所においては、2024年7月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度に係る内部統制監査から適用する。なお、それ以前の決算に係る連結会計年度及び事業年度に係る内部統制監査から適用することを妨げない。 (了)

#阿部 光成
2025/02/17

《速報解説》 JICPA、報酬依存度に関する取扱いにつき理解不足との意見踏まえ、「監査報告書に係るQ&A」を改正

《速報解説》 JICPA、報酬依存度に関する取扱いにつき理解不足との意見踏まえ、 「監査報告書に係るQ&A」を改正   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2025年2月13日付けで(ホームページ掲載日は2025年2月14日)、日本公認会計士協会は、監査基準報告書700実務ガイダンス第1号「監査報告書に係るQ&A(実務ガイダンス)」の改正を公表した。これにより、2025年1月17日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対して特段の意見は寄せられなかったとのことである。 これは、報酬依存度に関する取扱いが十分に理解されていないことなどについて補足するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 主な改正内容は次のとおりである。 (了)

#阿部 光成
2025/02/17
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