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プロフェッションジャーナル No.458が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年2月24日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.458を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/02/24

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第11回】「納税者に有利な「実質的」遡及課税とその問題性」-国税不服審判所平成31年3月25日裁決による法令解釈と閣議決定によるその変更-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第11回】 「納税者に有利な「実質的」遡及課税とその問題性」 -国税不服審判所平成31年3月25日裁決による法令解釈と閣議決定によるその変更-   大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 第5回では、遡及課税は租税法律主義の下では原則として禁止されることを確認してきたが、このことは、遡及課税が納税者に不利な結果をもたらす場合についていえることである。つまり、逆にいえば、納税者に有利な遡及課税は許容されるのである。 この点に関して注目すべき動きが先月あった。それは、令和4年1月7日付けで国税庁ホームページ(ホーム/お知らせ/その他のお知らせ)に「クロスボーダーで行うデリバティブ取引の決済により生ずる所得の取扱いについて」という国税庁の見解(以下「国税庁デリバティブ所得見解」という)が公表されたことであるが、その見解は次のとおり述べている(下線筆者)。 なお、この見解の4は、納税者に不利な遡及課税をもたらすが故に原則として許容されず、その例外的許容性については、最判平成23年9月23日民集65巻6号2756頁等の判例で示された判断枠組み(第5回Ⅰ、拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【36】参照)に従って判断する必要があるが、今回は、この問題には立ち入らない。   Ⅱ 国税庁による納税者に有利な「実質的」遡及課税 国税庁デリバティブ所得見解でも「参考」として引用されているとおり、「令和4年度税制改正の大綱」(令和3年12月24日閣議決定)の「五 国際課税」の「3 その他(国税)」(3)では次のとおり述べられている(下線筆者)。 この閣議決定は、デリバティブ所得に係る従来の取扱いを変更するものであるが、その従来の取扱いは、国税不服審判所平成31年3月25日裁決(LEX/DB文献番号26013006。以下「平成31年裁決」という)が非居住者の「国内にある資産の運用又は保有により生ずる所得」(平成26年法律第10号による改正前の所得税法161条1号=本件規定)の判断について示した次の見解と少なくとも結論の点では同じ見解を採用するものであったことから、この閣議決定は平成31年裁決の見解とは異なる見解を「法令上明確化する」とするもの、すなわち、平成31年裁決の見解を法令によって明確に変更(少なくとも結論の点では「否定」)しようとするものとみてよかろう。 このように前記の閣議決定が平成31年裁決の見解を明確に変更しようとした背景については、次のような指摘がされている(週刊T&Amaster編集部「税制改正大綱踏まえ国税庁が公式見解 過去のデリバティブ取引も資産の運用保有所得に該当せず」週刊T&Amaster No.915(2022年1月24日)40-41頁)。 前記の閣議決定それ自体の当否やこれを受けて示された国税庁デリバティブ所得見解の当否は措くとして、ここで指摘しておきたいのは、前記の閣議決定はデリバティブ所得の取扱いの変更について明文では遡及適用を定めていないのに対して、内閣の統括の下にある国税庁が、その閣議決定を受けてその取扱いの変更に対して「実質的に」遡及立法と同様の効力を付与した、とみることができるということである。つまり、前記の閣議決定は平成31年裁決の示した見解(非居住者のデリバティブ所得に係る従来の取扱い)を納税者に有利に変更するものであることからすると、それまで平成31年裁決の見解を是認してきた国税庁としては、その閣議決定に従い見解を改め、納税者に有利な「実質的」遡及課税を認めることにした、とみることができるのである。 このように、国税庁による納税者に有利な「実質的」遡及課税は、国家行政組織において内閣の統括の下にある国税庁の地位(国家行政組織法2条1項・3条2項、財務省設置法2条1項・18条1項参照)からすれば当然の帰結といってよかろう。 なお、平成31年裁決は、筆者がこれを国税不服審判所のホームページで初めて確認した令和4年2月1日の時点では、同ホームページの裁決事例集No.114に「公表裁決事例」として掲載されていたにもかかわらず、筆者が本稿の執筆の過程で再度確認しようとした同月16日の時点では、削除されていた。それは、前記の閣議決定を受けて示された国税庁デリバティブ所得見解によって、平成31年裁決で示された見解が明確に変更されたからであろうが、ここにも国税不服審判所の独立性(税通99条参照)の限界が露呈しているように思われる。   Ⅲ 国税庁による納税者に有利な「実質的」遡及課税の問題性 国税庁デリバティブ所得見解の3は、デリバティブ所得の取扱いの変更に伴う確定申告等(納税義務の確定)の変更について、通常の更正の請求(税通23条1項)及び通常の期間制限(同70条1項1号・2項[平成30年3月31日以前に開始した事業年度については平成27年度税制改正前の2項])に服する減額更正によることを予定しているように読めるが、問題は、果たしてそれで、デリバティブ所得について従来の取扱いを受けた納税者(非居住者・外国法人)の救済を十分に図ることができるかである。 そもそも、減額更正も、税法が定める課税要件の充足によって成立した納税義務を正しく(税法の規定どおりに)確定するために課税庁に税法によって義務づけられた処分と解すべきであり(課税処分権及び課税処分義務の観念を前提とする課税処分の捉え方について前掲拙著【136】参照)、しかも国税庁がデリバティブ所得の取扱いについて内閣の統括の下閣議決定を受けて一方的に(平成31年裁決を含め)従来の取扱いを変更しその変更後の取扱いを遡及適用することとしたものである以上、課税庁としては、更正の請求の有無にかかわらず、デリバティブ所得に係る確定申告等につき減額更正を行い、「納めすぎた税金の還付」等をすべきである。 もっとも、課税庁がそのように減額更正をしようとしても、その時点から起算して減額更正に係る通常の除斥期間に相当する期間より以前にデリバティブ所得について従来の取扱いを受けた納税者に対しては、除斥期間経過の故に減額更正をすることができないことになる。つまり、そのような納税者は、国税庁デリバティブ所得見解によっては救済されないことになるのである。 このような問題を解決するためには、減額更正について特別の期間制限を定めるべきである。この点については、国税通則法施行令6条1項5号の規定が参考になる。この規定が定める理由は、特別の期間制限が認められる減額更正の理由とはされていないが(税通71条1項2号、同令30条・24条4項参照)、ただ、「その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額の計算の基礎となつた事実に係る・・・・・・国税庁長官の法令の解釈」が変更され「変更後の解釈が国税庁長官により公表された」場合を想定するものである点で、国税庁デリバティブ所得見解による減額更正の理由と類似する。 国税通則法施行令6条1項5号の規定は、親から贈与されたゴルフ会員権の名義書換料について従来の課税実務上の取扱いとは異なり取得費該当性を認めた最判平成17年2月1日訟月52巻3号1034頁に伴って、同施行令平成18年改正(平成18年政令第132号)によって新設され、同号所定の理由が特別の更正の請求をすることができる「やむを得ない理由」(税通23条2項3号)の1つとされたが、特別の期間制限が認められる減額更正の理由とはされなかった。つまり、国税通則法施行令6条1項5号所定の理由が減額更正に係る通常の除斥期間の経過後に生じた場合には、課税庁は減額更正をすることができず、したがって、納税者としては結果的にはその理由による特別の更正の請求をすることができない(しても意味がない)ことになるのである。 国税通則法がそのような結果を容認したのは、確定申告に係る更正や決定に対してその根拠となる法令の解釈を争って争訟を提起することが可能であること等を考慮したからであると解される(前掲拙著【135】(ハ)参照)。この点では、国税庁デリバティブ所得見解の場合とは事情が異なる。というのも、国税庁デリバティブ所得見解は、納税者が提起した争訟の結果に伴って示されたものではなく、国税庁が内閣の統括の下閣議決定を受けて一方的に示したものであるからである。 このように考えてくると、国税庁デリバティブ所得見解の場合のように国税庁長官が閣議決定を受けて法令の解釈を変更し変更後の解釈を公表する場合を想定して、これを理由とする減額更正について特別の期間制限を認め、併せて特別の更正の請求も可能にするよう法令の改正をすべきである。具体的には、そのような理由を定める国税通則法施行令6条1項6号を新設した上で、同号所定の理由を同令24条4項所定の理由から除外しないようにすべきである。   Ⅳ おわりに 以上において、国税庁デリバティブ所得見解の3について、それがデリバティブ所得に対する納税者に有利な「実質的」遡及課税をもたらすものであること及びその遡及課税の実施には減額更正の期間制限との関係で限界があることを明らかにし、そのような限界があるという問題を解決するための立法提案を行った。 このような検討作業は、既に述べたように、前記の閣議決定それ自体の当否に立ち入らないことを前提にして、行ったものであるが、ただ、国税庁デリバティブ所得見解の「真の」問題性は、令和4年度税制改正大綱がデリバティブ所得の取扱いの変更を「法令上明確化する」と明記するにとどまり、その法令の規定を遡及適用するものとする旨を明記せず、その代わりに、国税庁が内閣の統括の下行政内部の取扱いでその法令の規定を「実質的に」遡及適用することとしたことにあるように思われる。 デリバティブ所得の取扱いを「法令上明確化する」ことは、課税要件明確主義の見地から望ましいことであるが、その「明確化」した取扱いが課税実務上の従来の取扱いを変更するものである以上、課税要件明確主義の見地からは、その「明確化」した取扱いの遡及適用を法令上明文で定めるべきである。その際、併せて、その遡及適用を実効性あるものにするために、特別の更正の請求及び減額更正に係る特別の期間制限について所要の措置を講ずるべきである。 (了)

#No. 458(掲載号)
#谷口 勢津夫
2022/02/24

組織再編成・資本等取引の税務に関する留意事項 【第7回】「試験研究を行った場合の税額控除(後半)」

組織再編成・資本等取引の税務に関する留意事項 【第7回】 「試験研究を行った場合の税額控除(後半)」   公認会計士 佐藤 信祐   ←(前回)   5 平均売上金額 (1) 基本的な取扱い 平均売上金額とは、適用年度及び当該適用年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の売上金額の平均額をいう(措法42の4⑧十一)。具体的には、適用年度の売上金額及び当該適用年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度(以下、「売上調整年度」という)の売上金額(※14)の合計額を当該適用年度及び当該各売上調整年度の数で除して計算した金額により算定される(措令27の4㉙)。 (※14) 適用年度の月数と売上調整年度の月数とが異なる場合には、その異なる売上調整年度の売上金額に当該適用年度の月数を乗じてこれを当該売上調整年度の月数で除して計算した金額とする。 ただし、以下に掲げる合併法人等(合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人をいう)に該当する場合には、以下のように計算を行う(措令27の4㉚)。なお、基準事業年度の売上金額についても類似の特例が設けられている(措令27の4⑭⑮)。 (※15) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、当該適用年度開始の日の前日から当該適用年度終了の日の前日までの期間内においてその残余財産が確定したものをいう。 (※16) 基準事業年度の売上金額につき、基準事業年度開始の日から適用年度終了の日までに分割等(分割又は現物出資)が行われたものに係る分割法人等については、基準事業年度の売上金額を0とする特例も定められている(措令27の4⑭三)。そして、イ及びロの合併法人からは「基準事業年度開始の日から適用年度終了の日までに分割等(分割又は現物出資)が行われたものに係る分割法人等」を除くことから、適用年度において合併を行い、かつ、基準事業年度開始の日から適用年度終了の日までに分割等を行った場合にも、基準事業年度の売上金額は0円になる。 (※17) 未経過法人に該当する場合には、基準日から合併法人等の設立の日の前日までの期間を当該合併法人等の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。 (※18) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、その残余財産の確定の日の翌日。 (※19) 残余財産の全部の分配に該当する現物分配である場合には、当該売上調整年度のうち最も古い売上調整年度開始の日の前日から当該適用年度開始の日の前日を含む事業年度終了の日の前日までの期間内においてその残余財産が確定したものをいう。 (※20) 未経過法人に該当する場合には、基準日から合併法人等の設立の日の前日までの期間を当該合併法人等の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。 ここでいう月別売上金額とは、その合併等に係る被合併法人等の当該合併等の日前に開始した各事業年度の売上金額(※21)をそれぞれ当該各事業年度の月数(※22)で除して計算した金額を当該各事業年度に含まれる月(※23)の売上金額とみなした場合における当該売上金額をいう(措令27の4⑮)。 (※21) 分割事業年度等にあっては、当該分割等の日の前日を当該分割事業年度等の終了の日とした場合の当該分割事業年度等に係る売上金額。 (※22) 分割事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間の月数。 (※23) 分割事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間に含まれる月。 なお、現物分配により試験研究用資産の移転を受けていない場合において、当該現物分配により試験研究用資産の移転を受けていない旨の届出をしたときは、上記の特例を適用しないことができる(措令27の4㉜、措規20㊻)。 (2) 分割又は現物出資の特例 分割又は現物出資を行った場合には、分割又は現物出資の日以後2ヶ月以内に「分割等による移転売上金額の計算方法の認定申請書」「分割等による売上金額の区分に関する届出書」を提出することにより、以下のように計算を行うことも認められている(措令27の4㉛)。なお、基準事業年度の売上金額についても同様の特例が設けられている(措令27の4⑰一、措規20⑩⑮)。 (※24) 移転事業に係る売上金額をいう。 (※25) 未経過法人に該当する場合には、基準日から分割承継法人等の設立の日の前日までの期間を当該分割承継法人等の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。 (※26) 未経過法人に該当する場合には、基準日から分割承継法人等の設立の日の前日までの期間を当該分割承継法人等の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。 この場合における月別移転売上金額とは、その分割等に係る分割法人等の当該分割等の日前に開始した各事業年度の移転売上金額をそれぞれ当該各事業年度の月数(※27)で除して計算した金額を当該各事業年度に含まれる月(※28)の移転売上金額とみなした場合における当該移転売上金額をいう(措令27の4⑱)。 (※27) 分割事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間の月数。 (※28) 分割事業年度等にあっては、当該分割事業年度等の開始の日から当該分割等の日の前日までの期間に含まれる月。   6 適用除外事業者 中小企業者に該当する場合であっても、適用除外事業者に該当するときは、中小企業技術基盤強化税制の適用を受けることができない。 適用除外事業者とは、当該事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度(以下、「基準年度」という)の所得の金額の合計額を各基準年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額が15億円を超える法人をいう(措法42の4⑧八)。なお、15億円を超えるかどうかの判定上、基準年度において合併、分割、現物出資又は事業譲受(以下、「合併等」という)を行った場合には、一定の調整計算を行う必要がある(措令27の4㉒三、㉓三)。ただし、以下のいずれかに該当する場合にのみ調整計算が必要になることから、合併等を行った場合に常に調整計算が必要になるわけではない(措令27の4㉔一)。   (了)

#No. 458(掲載号)
#佐藤 信祐
2022/02/24

〔令和4年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第4回】「「所得拡大促進税制の見直し(大企業)」「所得拡大促進税制の見直し(中小企業者等)」「法人税の軽減税率」」

〔令和4年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第4回】 (最終回) 「「所得拡大促進税制の見直し(大企業)」 「所得拡大促進税制の見直し(中小企業者等)」 「法人税の軽減税率」」   公認会計士・税理士 新名 貴則   令和3年度税制改正における改正事項を中心として、令和4年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。第3回は「研究開発税制の見直し」及び「大企業に対する租税特別措置の適用除外の見直しと延長」について解説した。 最終回となる第4回は「所得拡大促進税制の見直し(大企業)」、「所得拡大促進税制の見直し(中小企業者等)」及び「法人税の軽減税率」について解説する。   1 所得拡大促進税制の見直し(大企業) 所得拡大促進税制とは、青色申告書を提出している法人が給与等支給額を一定以上増加させた場合に、その増加額の一定割合について税額控除が認められる制度である。ただし、当期の法人税額に一定の割合を乗じた金額が、控除限度額となる。 中小企業者等以外(大企業)に対しては、設備投資の要件を設け、「賃上げ・投資促進税制」(中小企業者等も選択適用可能)としていたが、令和3年度税制改正において次のように見直された上で、「人材確保等促進税制」として令和5年3月期まで2年間延長されている。 ① 要件の見直し 次のように要件の見直しが行われている。 ② 控除税額の見直し 次のように控除税額の見直しが行われている。 (※) 雇用者給与等支給額の前事業年度からの増加額が上限。 この改正は令和3年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるため、令和4年3月期決算申告には適用されることになる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   2 所得拡大促進税制の見直し(中小企業者等) 令和3年度税制改正における所得拡大促進税制の見直しにおいては、中小企業者等を対象とした制度も次のように見直しが行われた上で、令和5年3月期まで2年間延長されている。 なお、中小企業者等であっても、上記「1 所得拡大促進税制の見直し(大企業)」で解説した「人材確保等促進税制」を選択して適用することも可能である。 ① 要件の見直し 次のように要件の見直しが行われている。 ② 控除税額の見直し 控除率や控除上限については、変更なし。 この改正は令和3年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるため、令和4年3月期決算申告には適用されることになる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   3 法人税の軽減税率 中小企業者等において、800万円までの課税所得に適用される軽減税率は本来19%だが、令和3年3月期決算申告までは、特例措置により15%に引き下げられていた。 この措置は令和3年3月31日までに開始する事業年度が対象であったが、令和3年度税制改正により2年間(令和5年3月31日までに開始する事業年度まで)延長された。したがって、令和4年3月期決算申告においても、15%が適用される。 【法人税率(令和3年3月期と変化なし)】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (連載了)

#No. 458(掲載号)
#新名 貴則
2022/02/24

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例107(法人税)】 「役員給与の定期同額給与につき、業績悪化改定事由による減額改定に該当しないとして税務調査で否認された事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例107(法人税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆役員給与の損金不算入(法法34) 法人が役員に対して支給する給与の額のうち「定期同額給与」、「事前確定届出給与」、「業績連動給与」のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されない。また、上記に該当するものであっても、不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されない。 ◆定期同額給与(法法34①一、法令69①) 定期同額給与とは、次に掲げる給与をいう。 ◆経営の状況の著しい悪化に類する理由(法基通9-2-13、国税庁「役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂版)」) 経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれない。このため、例えば、次のような場合の減額改定は、通常、業績悪化改定事由による改定に該当することになる。       (了)

#No. 458(掲載号)
#齋藤 和助
2022/02/24

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第25回】「被相続人以外の者が建物を所有している場合の特定居住用宅地等の特例の適否」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第25回】 「被相続人以外の者が建物を所有している場合の特定居住用宅地等の特例の適否」   税理士 柴田 健次   [Q] 被相続人である甲(相続開始日:令和4年2月1日)は、下記の土地及び家屋を所有していました。土地建物の生前の利用状況は、下記の通り、1階部分は甲が居住の用に供し、2階部分は生計を別にする長男乙家族が居住の用に供し、3階部分は生計を別にする被相続人の兄である丙とその内縁の妻である丁が居住の用に供しています。 土地は被相続人が100%所有していますが、建物は、甲が2/10、乙が4/10、丙が3/10、丁が1/10所有しています。建物の各階ごとに玄関があり構造上区分された建物ですが、区分登記はしていません。甲は建物所有者から地代を収受しておらず、建物所有者も建物利用者から賃料は収受していません。 甲の相続発生に伴い、甲の所有していた土地及び建物持分を乙が取得し、引き続き居住の用に供した場合には、乙が適用できる特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用面積は何㎡でしょうか。 【相続発生前の利用状況】 [A] 特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例(以下単に「特例」という)の適用面積は、270㎡(300㎡ × 9/10)となります。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 特定居住用宅地等は、被相続⼈又はその被相続人と生計を一にしていた親族(以下「被相続人等」という)の居住の⽤に供されていた宅地等であることが要件の1つとなっています。したがって、その宅地等が「誰の」「用途」に供されていたかが重要となります。 租税特別措置法関係通達69-4-7(被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲)では、下記の通り定められています(下線筆者)。 上記通達の適用の留意点は下記の通りとなります。 ① 上記(1)について 居住用宅地等に該当するものは、下記のいずれかとなります。 被相続人の所有する宅地等の上に被相続人以外の者が建物を有する場合に相当の対価で貸し付けを行っているときは、被相続人の貸付事業の用に供されていたものとして取り扱いますので、特定居住用宅地等の特例の対象にはなりません。 例えば、土地は被相続人が所有し、建物は生計一親族が所有している場合において、土地が使用貸借であり、被相続人がその建物で居住していた場合を考えてみましょう。この場合に被相続人が建物を所有している生計一親族から無償で借り受け、被相続人が居住の用に供している場合には、被相続人の居住の用に供されている宅地等に該当することになります。これに対して、被相続人が建物を所有している生計一親族から相当の対価で借り受けている場合には、その生計一親族の貸付事業の用に供されている宅地等に該当することになりますので、貸付事業用宅地等の特例対象に該当する可能性があっても、特定居住用宅地等の特例対象にはなりません。 したがって、建物の所有者が被相続人以外の者である場合には、土地は使用貸借であり、かつ、被相続人等が無償で建物を借り受けている場合に特定居住用宅地等の特例の対象になります。この場合の無償には、相当の対価に至らない程度の対価の授受がある場合を含みます(措通69の4-4)。民法上の使用貸借の場合には、借主は、通常の必要費を負担することになっています(民法595)ので、固定資産税その他の通常の必要費について借主が負担していたとしても、通達の「無償」に含めて考えることになります。 また、建物所有者は被相続人の親族に限られる点にも注意が必要となります。基本的な考え方として、被相続人又は生計一親族の居住の用に供されていることが要件となっていますので、被相続人又は生計一親族が建物所有者であることが求められますが、被相続人の親族から使用貸借により借り受け、被相続人等の居住の用に供している場合も想定されることから、被相続人又は生計一親族に限らず、被相続人の親族までその範囲を広げています。 親族の範囲については、【第1回】で解説しています。 以上をまとめると、被相続人が有する宅地等の上に被相続人以外の者が建物を有する場合には、下記の要件を満たす必要があります。 なお、上記の要件については、特定事業用宅地等の取扱いの考え方と同様となり、【第16回】で解説しています。 ② 上記(2)について 平成25年度の税制改正によって、老人ホーム等に入居した場合において一定の要件(【第20回】で解説)を満たす場合には、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった宅地等であっても、その被相続人が居住の用に供されなくなる直前まで被相続人の居住の用に供されていた宅地等については、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することとされています。上記(2)は、老人ホームに入居した場合の居住用宅地等の範囲を明確にしたものですが、考え方は上記(1)と同様になります。 本問の場合において、仮に相続開始前に老人ホームに入居をし、1階部分がそのまま空き家であった場合には、他の要件を満たせば、特例の適用面積は同様に270㎡(300㎡ × 9/10)となります。 通達に記載されている通り、新たに被相続人等以外の者の居住の用に供された宅地等を除くとされていますので、例えば、老人ホームに入居後に新たに1階部分について生計を別にする親族の用に供した場合には、全体の敷地について特例の適用を受けることができなくなりますので、注意が必要となります。 ③ 1棟の建物で区分登記がされていないものについて 被相続人の居住の用に供されていた建物が一棟の建物(区分所有建物である旨の登記がされている建物を除く)である場合には、その一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうち被相続人の親族の居住の用に供されていた部分は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等として取り扱います(措令40の2④)。通達の注意書きではその留意点が記載されています。   2 本問への当てはめ 本問の場合には、1階部分は「被相続人」の居住の用に供されており、2階及び3階部分についても、区分登記がされていない建物の取扱いにより「被相続人」の居住の用に供されていた宅地等として取り扱います。ただし、丁は被相続人の親族ではありませんので、1/10部分については、特例の対象にすることはできません。取得者の要件については、【第22回】で解説をしていますが、乙は一棟の建物に居住していた者に該当し、同居親族の要件を満たすことになります。 したがって、乙の適用できる特例の適用面積は、270㎡(300㎡ × 9/10)となります。   ★実務上のポイント★ 被相続人以外の者が建物を有している場合には、被相続人の親族が所有し、かつ、土地及び建物共に使用貸借にすることで特例の適用を受けることができますので、生前に持分の買取りや土地契約の見直し等を検討することが重要となります。   (了)

#No. 458(掲載号)
#柴田 健次
2022/02/24

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第14回】「不動産取得税の課税標準である「固定資産の適正な時価」が何かについて争われた判例」

固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第14回】 「不動産取得税の課税標準である「固定資産の適正な時価」が何かについて争われた判例」   税理士 菅野 真美   ▷不動産取得税の価格について不服を申し出ることができる人は 不動産取得税は、不動産を取得した者に対して、不動産の価格を課税標準として、その不動産所在の道府県が課する税金である(地方税法第73条の2、第73条の13)。この価格とは、適正な時価とされ(地方税法第73条第1号)、課税標準となる不動産の価格は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、その価格に基づく(地方税法第73条の21第1項)。 固定資産課税台帳の登録価格(以下「固定資産税評価額」という)について不服がある場合は、固定資産所在地の市町村の固定資産評価審査委員会への審査の申出をしなければならないが、この審査の申出ができるのは、その年1月1日において不動産を取得した者に限られ、年の中途において不動産を売買により購入した者は、固定資産評価審査委員会への審査の申出はできない。 不動産取得税に不服がある場合は、納税者は審査請求をすることができるが、不動産取得税の取得者が、固定資産税評価額より時価が低いとして減額を求める訴訟をしても否定される場合が多い(【第13回】参照)。不動産取得税の課税標準を固定資産税評価額としたのは、固定資産評価基準に基づいた登録価格により画一的に処理をすることにより、膨大な徴税事務コストやトラブルを低減するためと考えられる。しかし、明らかに固定資産税評価額が時価よりも高い場合でも、納税者の主張は認められないのだろうか。 今回は、大量に売れ残った傾斜地の別荘についての不動産取得税の課税標準となる不動産の価額について争われた事案を検討する。   ▷どのような事案か 不動産の固定資産税評価額よりも時価が低いため、時価を超える部分の不動産取得税を取り消すことができるか否かを争った事案である。 問題となった別荘地は、別荘地として開発して30年以上経過しても、総区画数の5%程度しか利用されておらず、その他の土地は山林同様の状態にある土地であったが、固定資産税評価額の算定は、修正前も修正後も通常の別荘地の評価額に基づいて調整したものであった。 時系列に並べると次のようになる。   ▷事案の争点 争点は、2つあり、1つは、不動産取得税の賦課決定について、知事に対する訴えが適法か否かである。もう1つは固定資産税評価額が適正な時価とは言えないにもかかわらず、固定資産課税台帳の登録価格に基づく賦課決定は違法であるか否かの点であるが、本稿においては後者に絞って地裁から最高裁までの流れを検討する。   ▷地裁の判断 地裁は、次のような理由からXの請求を棄却した。   ▷高裁の判断 地裁の判決に不服なXが控訴した。 高裁は、原判決を変更し、違法と認められる限度で賦課決定を取り消すという、不動産取得税の裁判では画期的な判断を下した。具体的な判決理由は次のとおりである。   ▷最高裁の判断 高裁の判決に不服な行政庁Yが上告した。 最高裁は、以下のような理由から、高裁の判決のうち敗訴部分を取り消して、その部分について東京高等裁判所に差し戻すとした。   ▷まとめ このように、本件においては、固定資産税評価額による課税標準が高裁により覆され、最高裁においては、高裁が判断した評価方法は独自の評価方法として否決されたが、急傾斜地であることによる評価減等を考慮すべきとして高裁に差し戻したから、行政庁Yが決定した固定資産税評価額を是認したものでもない。 高裁はXの主張を認めたが、国家としては独自の方法を不動産取得税の評価額として認めることは弊害が大きいので、その部分は認めない。しかし、裁判の過程で固定資産税評価額の算定方法に杜撰な部分も見受けられたことから、現行の評価基準を認めながら、個別に問題がある部分は調整せよというところを落としどころとした。 最高裁の立場を考えると判決は合格点なのだろう。 (了)

#No. 458(掲載号)
#菅野 真美
2022/02/24

〔具体事例から読み取る〕“強い”会社の仕組みづくりQ&A 【第1回】「なぜ内部統制報告制度を導入しても不正や会計上の誤りはなくならないのか」

〔具体事例から読み取る〕 “強い"会社の仕組みづくりQ&A 【第1回】 「なぜ内部統制報告制度を導入しても 不正や会計上の誤りはなくならないのか」 米国公認会計士・公認内部監査人 打田 昌行   ◆◇ 解 説 ◇◆ 次の3つの問いかけに対し、自社としてどこまで自信を以て応ずることができるだろうか。他社の多くの失敗や躓きに隠された教訓から学びを得ることが大切である。   1 その①:「直訴」の実践的な仕組みが、使いやすく正しく機能しているか ここでいう「直訴」とは、組織上の権限と責任を持つ窓口に、違法あるいは反倫理的な行為について知り得たことを直接通報することをいう。内部統制の仕組みでいえば、内部通報制度がその典型といえる。よく似た仕組みとして、ほかにも経営者(社長)に対し、全社員が電子メールで直接に、相談や通報をできるよう工夫をしている会社もある。 実際に、通報制度によって不正や不祥事が早期に把握され、効果を上げる場面も数多く見聞きする。正しく使えば、誠実な従業員の通報によって早期に不正や不祥事の芽を摘み取ることができる。しかし他方で、せっかく経営者に直接実情を訴えられる仕組みがあっても、実際には使い勝手が良くないために、運用されずお飾りとなってしまっているケースも耳にする。 冒頭の品質検査不正事件に関し、三菱電機株式会社の杉山社長(発覚当時)は、記者会見で社員の通報による情報の迅速な収集について問われ、記者に次のように応じている。 (※) 三菱電機株式会社「鉄道車両用空調装置等の不適切検査/当社の品質風土改革に向けた取り組みに関する会見 質疑応答(報道機関)」7頁より一部引用。 制度を作っただけで安心せず、使い手の使いやすさをしっかりと考慮することが大切だ。次のことを十分加味し、制度の実践をしなければ、効果が半減してしまうことに注意すべきである。 (1) 制度利用の目的を周知して心理的な壁を取り除く 通報すると会社の利益が損なわれ、上司にも迷惑が及ぶと考え、通報をためらう従業員がいる。これではせっかくの制度の趣旨を活かすことはできない。通報制度の趣旨を十分に社内に周知することが肝要である。それに加え、通報には匿名を認め、制度を使う社員の心理的な抵抗感を取り除く工夫も求められる。 (2) 通報の秘匿性を確保する メールによる通報時は、システム上で発信者の特定ができないようにして通報者の秘匿性を確保し、使いやすさを考慮することも大切である。 (3) 通報者の利益を必ず守る約束をする 顕名による通報の場合、会社が通報者に対し不利益を与えないことを約する必要がある。せっかくの制度も社員からの信頼がなければ、いきなり外部のマスコミや監査法人に通報され、会社のリスク管理責任が問われかねない。通報内容が会社の方針等に反することを理由に不利益を与えれば、通報する者はなくなり、制度は形骸化するばかりとなる。 (4) 通報に基づき改善結果をフィードバックする 正しい通報の結果、改善を施した場合はその成果を社内全体に、あるいは通報者(顕名の場合のみ)に必ずフィードバックして制度自体の信頼性を高める努力をすべきである。 (5) 制度の悪用者を厳しく処罰する 他方、偽りの通報で他者を陥れようと企む者は、厳しく処罰する必要がある。内部通報制度は、ナチスや旧社会主義の東欧諸国が用いた密告とは性格を全く異にする。通報制度では、通報内容の真実性が求められ、他者を悪意により陥れる手段では決してない。 (6) リニエンシー制度を併用する リニエンシー制度を用い、複数による不正にも効果的に対応することができる。自らが関わった(複数人による)不正を自主的に通報した者には、懲戒処分などの社内処分の減免をする仕組みをリニエンシー制度といい、これを通報制度と併設して使うことも望ましいと考えられる。   2 その②:教育こそ内部統制報告制度運用のための礎と考えているか 内部統制に関する社員教育を継続することは、口にするのは簡単だが実際に行うとなると難しい。なぜなら教育に対する投資は、一定のコストを要する反面、数値など客観的な物差しによって成果が計りにくいからである。とはいえ、経営者はじめ従業員の意識や日頃の行動に強い影響をもたらし、不正や不祥事を許さない企業風土を培うために、やはり教育の継続を欠かすことができない。 現状を追認するコトナカレ主義、不正や不祥事を見て見ぬふりをする意識や行動様式は、長年にわたり繰り返される因習や行動パターンによって形成されてゆくものである。こうした組織の垢を新陳代謝によって取り払うには、根気強い教育研修に頼らざるを得ない。実際に会社が取り組む次の事例を参考に挙げることができる。 (1) 経営層が自分の言葉でコンプライアンスの大切さを伝える コンプライアンスに関する社内研修は、経営層が直接従業員に訴える場とする。年度初め、期中、期末、予算・決算の発表、節目に応じて定期的に経営層が従業員に向けてコンプライアンスに関するメッセージを送る機会を確保する。メッセージは、経営層自らの言葉で、分かりやすく伝える。間違ってもマスコミや報道が伝える、ありきたりな標語を使うことは避けるべきである。 (2) 感染症の流行を制度定着のチャンスと考える コスト、時間、機会のどれを考慮しても、コロナ禍の今こそ、教育研修に取り組む絶好のチャンスとなり得る。感染症の流行に端を発したテレワークが浸透するにつれて、オンラインによる教育研修を充実させる会社が増えている。物理的な身体の移動はなく、海外や地方などいかに遠方でも旅費等のコストを要せず、研修室や会議室のイスの数に制約されずに多くの参加者が一度に研修を行うことができる。 (3) 研修内容は自社や他社の失敗事例を大いに活用する 研修の内容は、マスコミで報道された他社の事例はもちろんのこと、自社の監査で指摘された案件、場合によっては社内の社内調査委員会や第三者委員会で公知となった不正や不適切事例でも研修材料として用いることが非常に有効である。   3 その③:常に第三者の眼に晒される機会を作っているか 昨今、会社の不正や不適切な会計処理を巡り、調査のために第三者委員会を設ける件数が増大している。モノ言う株主が増加し、ますます企業経営に対する説明責任が厳しく問われている証拠でもある。内部統制上で不備や問題があれば、改善に加え社会に対する説明責任が厳しく求められる。そのため、企業活動を第三者の眼に晒す努力をすれば、広く公平性や客観性、信頼性を得ることができるのも確かである。 例えば、前述の通報制度も、通報窓口を社内に設置し、社外の弁護士事務所にその運用を委託することで、通報する者が持つ心理的なプレッシャーを和らげる効果が得られ、かつ制度の客観性や信頼性も確保できる。 品質管理問題の場合でいえば、品質に関する外部専門家による検証や検査を定期的に実施し、社内ルールが遵守されていることを客観的に検証することが重要となる。ただし検証や検査は各グループ会社単位では行わず、必ず本社主導でグループの壁を越えて徹底的に実施することが、ものづくりのプライドを守る意識の醸成に繋がるはずである。 *  *  * 前述した三菱電機株式会社の社長が引責辞任にあたり、報道機関に次のように応じた。あらためて、内部統制が取り組むべき問題の根深さを実感する。 (※) 前掲「質疑応答」13頁より一部引用。 (了)

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#打田 昌行
2022/02/24

税理士事務所の労務管理Q&A 【第6回】「在宅勤務導入に当たっての留意点②(賃金管理)」

税理士事務所の労務管理Q&A 【第6回】 「在宅勤務導入に当たっての留意点②(賃金管理)」   特定社会保険労務士 佐竹 康男   今回は、在宅勤務(テレワーク)における賃金(基本給、通勤手当等の手当)の取扱いについて解説します。 * * 解 説 * * 1 在宅勤務における賃金 通常、在宅勤務における賃金は、基本給は在宅勤務者も変更せず、通勤手当は、月給者の場合、在宅勤務の頻度によって、通勤定期代相当額(定額)か実費で支給するかを決めることになります。 (1) 基本給及び諸手当 在宅勤務においても、基本給及び諸手当(通勤手当については(2)を参照)の減額は、不利益変更になるためできません。 ただし、在宅勤務により、通常の勤務より労働時間が短くなるような場合に、その時間に応じて、基本給を変更することは可能です。 (2) 通勤手当 在宅勤務を月単位で実施し、1日も事務所に出勤しない場合は、就業規則を変更することで定額支給をしなくても問題ありません(〈就業規則規定例〉参照)。 週単位等の場合は、事務所に出勤する日もあることから、その往復に要する費用を実費で支払うことで合理性が満たせると考えられます。ただし、その出勤日の勤務地が自宅であるか事務所であるかにより、社会保険料等を算定する場合の賃金に該当するか否かが変わってきます(後述の「3 社会保険料等の算定基礎に係る在宅勤務(テレワーク)における交通費の取扱い」参照)。 また、在宅勤務の導入に伴い、支給されていた通勤手当が支払われなくなる、支給方法が月額から日額単位に変更される等の固定的賃金に関する変動があった場合には、標準報酬月額の随時改定の対象となる場合がありますので、健康保険と厚生年金保険に加入している事務所は注意が必要です。 〈就業規則規定例〉   2 費用の負担及び情報通信機器・ソフトウェア等の貸与 在宅勤務に係る通信費やパソコン等の費用については、事務所負担ではなく、在宅勤務者が負担することも考えられます。労使のどちらが負担するのかをあらかじめ協議して、就業規則で定めます。 〈就業規則規定例〉   3 社会保険料等の算定基礎に係る在宅勤務(テレワーク)における交通費の取扱い 在宅勤務(テレワーク)を導入した際の交通費を社会保険料・労働保険料等の算定基礎に含めるべきか否かについては、厚生労働省年金局の「業務連絡(令和3年4月1日付)」の17ページに以下のように示されています。 〈厚生労働省年金局「業務連絡(令和3年4月1日付)」より抜粋〉   4 結びに 在宅勤務の留意点として、2回にわたり、労働時間管理と賃金管理について、就業規則の規定例を示しながら説明しましたが、労使双方が共通の認識の下、労働関係法令を踏まえ労働条件を協議する必要があります。 コロナ禍への対応のみならず、働き方改革により多様な働き方が求められています。在宅勤務等導入に当たっては、その費用の一部を助成する事業(厚生労働省の助成金等)もありますので、検討してみてはいかがでしょうか。 (了)

#No. 458(掲載号)
#佐竹 康男
2022/02/24

〔相続実務への影響がよくわかる〕改正民法・不動産登記法Q&A 【第3回】「法定相続分に基づく相続登記の後に遺産分割協議が成立した場合の注意点」

〔相続実務への影響がよくわかる〕 改正民法・不動産登記法Q&A 【第3回】 「法定相続分に基づく相続登記の後に遺産分割協議が成立した場合の注意点」   司法書士 丸山 洋一郎 弁護士 松井 知行    【Q】 法定相続分に基づく相続登記の後に遺産分割協議が成立しました。この場合に気を付けることを教えてください。 【A】 遺産分割協議の結果、法定相続分を超えて所有権を取得した者は、その遺産分割の日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならない。 -《解説》- 本来は、死亡 ➡ 相続人による遺産分割協議 ➡ 遺産分割に基づく相続登記 をすべきだが、相続人間のもめごと等により遺産分割協議がすぐに成立しないこともある。このような場合、相続人全員の関与がなくてもできる法定相続分の相続登記を申請することがある。 法定相続分の相続登記の申請をした場合でも相続登記の申請義務が履行されたことになる。 このような法定相続分による登記がされた後に、さらに遺産の分割があったときは、その遺産の分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者は、その遺産分割の日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならない(不動産登記法76条の2第2項、同法164条1項)。 相続実務に関わる税理士としては、上記の追加的義務である遺産分割に関する登記申請義務を依頼者に伝え、司法書士事務所へ取りつなぐことがこれまで以上に求められる。 追加的義務の具体的な内容は以下のとおりである。 例えば、Aが死亡し、その相続人が妻・長男・次男である場合、Aの死亡後に妻1/2、長男1/4、次男1/4の割合で法定相続分の相続登記がなされたとしよう。その後、妻・長男・次男の間で不動産を長男が単独で相続する旨の遺産分割協議が成立した。この場合、長男は遺産分割協議が成立した日から3年以内に、自身を所有権の登記名義人とするための登記を申請する必要がある。この申請は更正の登記(登記事項を訂正する登記のこと)によることができ、長男が単独ですることが可能である。 〈改正前後でどう変わるか〉 (了)

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#丸山 洋一郎、松井 知行
2022/02/24
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