金融・投資商品の税務Q&A 【Q74】 「令和4年度税制改正における大口株主等の要件の見直し」 PwC税理士法人 金融部 ディレクター 税理士 西川 真由美 ●○ 検 討 ○● 1 個人株主への配当に係る取扱い (1) 配当所得の課税方式 個人である居住者が受領する配当は、配当所得として、原則20.42%の税率(所得税及び復興特別所得税)で源泉徴収され、かつ、他の所得と合算して総合課税の対象となります。 総合課税の場合の所得税の適用税率は、所得金額の区分に応じて5%から45%(復興特別所得税と合わせると5.105%から45.945%)及び住民税10%です。 なお、総合課税の場合、配当控除の適用を受けることができます。 (2) 上場株式等に係る配当所得の課税の特例 金融商品取引所に上場されている株式(上場株式等)に係る配当の場合、源泉徴収税率は20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)が適用され、確定申告の際には、他の所得と区分して税額計算することが認められています(申告分離課税)。この場合の税率は、源泉徴収税率と同じ20.315%が適用されます。なお、申告分離課税を選択した場合、上場株式等の譲渡損失との損益通算が認められます(配当控除は適用なし)。 また、確定申告を不要とする特例も設けられ(申告不要制度)、これを選択した場合には、源泉徴収のみで課税関係が終了することになります(ただし、上場株式等の譲渡損失との損益通算は認められません)。 ただし、これらの特例は、株式の保有割合が3%以上である大口の個人株主(大口株主等)には、適用が認められていません。 これは、上場株式等に係る配当に対する課税の特例制度が、「貯蓄から投資へ」という政策課題への対応や金融所得課税一体化のための施策として、納税者の事務負担の軽減や金融所得の課税方式の均衡を図るために設けられたものであるところ、保有割合が3%以上である個人株主は、株式の保有が会社の経営に参画する持分としての事業参加的側面が強いことを考慮したものと解されています。 (3) 令和4年度税制改正における要件の見直し 会計検査院による「令和2年度決算検査報告」によれば、 にもかかわらず、 と指摘されました。 この指摘を受けて、令和4年度税制改正では、個人株主が保有する株式数に、その者を判定の基礎となる株主として選定した場合に同族会社に該当することとなる法人が保有する株式数を加えて、3%以上か否かの判定をすることとされました。この改正は、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当より適用されることとされています。 なお、上記の「同族会社」とは、法人税法上の同族会社と同様、株主等の3人以下(特殊関係者を含みます)に発行済株式総数等又は議決権の50%超を保有される場合のその会社をいいます。 なお、配当支払法人は、配当基準日において株式保有割合が1%以上の個人の氏名、個人番号等を記載した報告書を、支払確定日から1ヶ月以内に、所轄の税務署長へ提出することとされています(令和5年10月1日以後支払うべき配当等より適用)。 2 本件へのあてはめ おたずねの場合、上場会社であるA社の株式について、保有割合は2.9%とのことですので、原則的な課税方法である総合課税、特例である申告分離課税、申告不要制度のいずれも選択が可能です。したがって、申告不要制度を選択する場合には、確定申告を要しません。 ただし、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当については、注意が必要です。つまり、B社が法人税法上の同族会社に該当し、おたずねの個人の方がその判定の基礎となった株主に該当する場合には、特例適用の要件となるA社に対する保有割合の判定は、自己の保有割合に、B社による保有割合を合算して行うことになります。 したがって、これに該当する場合には、自己の保有割合(2.9%)に、B社による保有割合(30%)を合算した保有割合が3%以上となりますので、申告分離課税及び申告不要制度は選択できず、総合課税が適用されることになるものと考えられます。 (了)
事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第40回】 「合併した場合の「取引相場のない株式の評価」への影響」 太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) シニアマネジャー 税理士 佐藤 達夫 相談内容 私は、X社(不動産賃貸業)及びY社(製造業)の社長です。X社の株式は、私が100%所有しており、X社がY社株式を100%所有しています。X社及びY社は、ともに非上場会社です。 X社及びY社については、いずれ息子に承継する予定ですが、会社経営の効率化のためX社とY社を合併し、X社を合併存続会社とすることを考えています。 そこで、息子にX社株式を贈与するに当たり、本件合併が株式評価に与える影響とその留意点をご教示ください。 【直近の会社の主な状況】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 取引相場のない株式の評価 同族株主等が取得した取引相場のない株式の評価は、類似業種比準方式、純資産価額方式又は類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式により行います。 どの方法を採用するかは、評価会社の会社規模等(総資産価額(帳簿価額)、従業員数及び取引金額)により決定します。ご相談の事例では、合併後のX社の主な業種が製造業となりますので、従業員数が70人未満の場合は、次のように評価方法を決定します。 なお、会社の規模は、①総資産価額(帳簿価額)と②従業員数のいずれか下位の区分と③取引金額のいずれか上位の区分により判定します。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 類似業種比準価額は、1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額により計算し、各計算要素は、実際の発行済株式総数で計算するのではなく、1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の発行済株式総数により算定します。 [2] 取引相場のない株式の評価上の留意点 合併があった場合の類似業種比準価額又は純資産価額の算定における主な留意点は、次のとおりです。 (1) 類似業種比準価額 ① 類似業種の業種目の変更 取引金額のうちに2以上の業種目に係る取引金額が含まれている場合の評価会社の業種目は、取引金額全体のうちに占める業種目別の取引金額の割合が50%を超える業種目とされます。 ご相談の事例の場合、合併前のX社の業種目は不動産業ですが、合併後は製造業の売上高の割合が全体の売上高の50%を超えるため、合併後の業種目は製造業になると考えられ、製造業の株価、1株当たり配当金額、年利益金額及び純資産価額を基として、類似業種比準価額を計算することになります。 ② 会社規模の拡大 会社規模は、上記「[1] 取引相場のない株式の評価」における総資産価額(帳簿価額)、従業員数及び取引金額により判定します。 合併前のX社の会社規模は中会社ですが、合併前のY社が有する総資産(1,000百万円)及び従業員(50人)を引き継ぎ、また売上高(500百万円)が変わらないのであれば、合併後のX社の会社規模は大会社になります。そのため、合併前は併用方式による株価と純資産価額のいずれか低い株価を採用することとなっていましたが、合併後では類似業種比準価額と純資産価額のいずれか低い株価を採用することになります。 一般的に、社歴が長く、業績が安定した会社の場合、純資産価額よりも類似業種比準価額のほうが、株価が低くなる傾向にあるため、合併後のX社の株価は、類似業種比準価額を採用することにより下がる可能性があります。 ③ 類似業種比準価額の適用の可否 類似業種比準価額により評価する場合は、X社における各比準要素(1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額)が適切に把握されることが前提となります。この各比準要素は、課税時期の直前事業年度又は直前前事業年度の数字を基に計算します。合併に伴い、X社の事業実態に変化がある場合には、少なくとも合併があった事業年度及び合併の翌事業年度は、X社の各比準要素が適切に把握できないので、類似業種比準価額により株式評価することが適切でなく、純資産価額等により評価することが妥当と考えられます。 また、当該合併が、単なる将来的な承継にあたっての株価対策を目的として行われたとみなされる場合には、税務当局に類似業種比準価額を適用することを否認されるリスクもあるため、合併のビジネス上の目的を明確にしておくことをお勧めします。 (2) 純資産価額 ① 課税時期前3年内に取得した不動産の評価方法 課税時期前3年以内に取得した土地等、家屋、建物附属設備及び構築物は、路線価や固定資産税評価額ではなく、課税時期の通常の取引価額により評価します(財基通185)。 当該合併が、適格合併に該当する場合には、法人税法上、資産・負債の取得日は、被合併法人の取得日を引き継ぐことになりますが、財産評価基本通達による不動産の取得日は、合併が適格合併であっても、合併日と考えることになります。そのため、息子へのX社株式の贈与が、合併日後3年以内に行われる場合には、土地等、家屋、建物附属設備及び構築物は、路線価や固定資産税評価額ではなく、課税時期の通常の取引価額により評価することになります。 ② 合併に伴う評価差額に対する法人税額等相当額計算上の制限 純資産価額の計算上、「評価差額に対する法人税等相当額」の計算における現物出資等受入れ資産には、合併により著しく低い価額で受け入れた資産も含まれます(財基通186-2)。 合併に伴い受け入れた資産がある場合には、評価差額に対する法人税額等相当額の計算上、次の点に留意する必要があります。ただし、課税時期における相続税評価額による総資産価額に占める合併受入れ資産の相続税評価額の合計額の割合が20%以下である場合には、考慮する必要がありません。 【合併時の合併受入れ資産の相続税評価額>合併受入れ資産の被合併法人の帳簿価額の場合】 〈合併受入れ資産のイメージ図〉 【合併時における合併受入れ資産の評価額>課税時期における合併受入れ資産の評価額の場合】 〈合併受入れ資産のイメージ図〉 [3] 結論 ご相談の事例では、合併により、類似業種比準方式による株価の計算や純資産価額方式における不動産の評価等に影響が及ぶことになります。上述した留意点以外にも、X社及びY社の事業内容や資産・負債の状況に応じた詳細な検討が必要になります。 株式の承継については、合併前又は合併後のどのタイミングが税務上有利になるかを事前にシミュレーションすることが必要です。 具体的な対策については、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。 (了)
〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第32回】 「被相続人と同居していた者がいる場合に別居親族が宅地を取得した場合の特定居住用宅地等の特例の適否」 税理士 柴田 健次 [Q] 被相続人である甲(相続開始日:令和4年4月10日)は、東京都内にA土地及び家屋(1階の床面積60㎡、2階の床面積60㎡で構造上区分された家屋ではありません)を所有し、居住していました。そのA宅地及び家屋は、持家を有していない二男(二男は、相続開始前10年間は、第三者から東京都内にある家屋を賃借し居住しています)が取得しましたが、相続開始の直前において甲と同居していた者が次のそれぞれの場合には、特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用を受けることは可能でしょうか。 相続人は長男と二男の2人ですが、長男は相続放棄をしています。 [A] 同居者が甲の内縁の妻、甲の長男の子、甲の弟である場合には、他の要件を満たせば特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例(以下単に「特例」という)の適用を受けることができますが、同居者が相続放棄をした長男である場合には、特例の適用を受けることができません。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 特定居住用宅地等に係る別居親族の要件 被相続人の居住用宅地等を取得した親族が次に掲げる要件の全てを満たすことが要件となります(措法69の4③二ロ、措令40の2⑭⑮、措規23の2④)。 平成30年度の税制改正により、持ち家がない状況を作出して特例を受けることが問題となり、下記の④の下線部部分が追加となり、⑤の要件も追加となりましたので、注意する必要があります。 なお、平成30年度の税制改正は、原則として平成30年4月1日以後の相続又は遺贈から適用されますが、平成30年4月1日から令和2年3月31日までの間に相続又は遺贈により取得した居住用宅地等がある場合には、改正前の要件を満たせば、特例を適用することができる経過措置があります(附則118②)。 2 本問への当てはめ 本問の場合には、上記1③の要件である「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)がいないこと」が問題となります。 租税特別措置法関係通達69の4-21(被相続人の居住用家屋に居住していた親族の範囲)においては、下記の通り記載されています。 本問の場合には、構造上区分された家屋ではありませんので、同居をしていた場合には、共に起居していたということになります。 同居をしていた者ごとに判定すると下記の通りとなります。 〔甲の内縁の妻について〕 内縁の妻については、法律上の配偶者には該当せず、かつ、相続人にも該当しませんので、上記1②③の要件は満たされることになります。 〔甲の長男の子について〕 長男の子は、相続人には該当しませんので、上記1③の要件は満たされることになります。仮に先に長男が亡くなっていた場合には、代襲相続人となりますので、上記1③の要件は満たされなくなり、二男は特例の適用を受けることができなくなります。 〔甲の長男について〕 相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人が同居していないことが要件となります。したがって、特例の適用を受けることができません。 〔甲の弟について〕 甲の弟は、相続人には該当しませんので、上記1③の要件は満たされることになります。 ★実務上のポイント★ 別居親族の持ち家なしの要件は複雑になっていますので、1つ1つの要件をしっかりと確認することが重要となります。 (了)
〔顧問先を税務トラブルから救う〕 不服申立ての実務 【第12回】 「反論書・意見書・求釈明回答などの主張整理における留意点」 公認会計士・税理士 大橋 誠一 1 国税不服審判所における一般的な審理の流れ 一般的な審理の流れは次のとおりとなっている。 (出所) 国税不服審判所「審判所ってどんなところ? 国税不服審判所の扱う審査請求のあらまし(令和3年8月)」6頁より抜粋。 (1) 主張に関する流れ 審査請求人により提出された「審査請求書」に対して、原処分庁による「答弁書」が提出された時点で、主張のやりとりが一巡したことになる。 次に、審査請求人が答弁書に対する「反論書」を提出して、これに対して原処分庁から「意見書」が提出されれば、やりとりが二巡したことになる。 その後は、相手方の主張について反論がある場合には、適宜「意見書」を提出して主張のやりとりが継続される。 (2) 反論書・意見書の様式 〈反論書〉 〈(審査請求人)意見書〉 (出所) 国税不服審判所「提出書類一覧」 (3) 主張は対比できれば十分 審査請求人としては、答弁書における原処分庁の主張を仔細に至るまで逐一反論したい気持ちや、反論しなければ原処分庁の主張を承服したと判断されてしまうのではないかという懸念を抱くことも理解できる。 しかし、担当審判官としては、原処分を取り消すべきか否かに直接関係のある争点に対する両当事者の主張が対比できればそれで良く、いつまでも主張のやりとりをしたところで主張が一致することはあり得ないし、争点と関係の薄い枝葉末節の議論(筆者が国税不服審判所に所属していた当時の審判部では、これを「空中戦」と評することがあった)が展開されることは、争訟指揮の妨げになりかねない。 答弁書を受けて反論書を提出する場合(及び原処分庁からの意見書を受けて審査請求人意見書を提出する場合)には、過去に自らがした主張の二度塗りは避けて、答弁書や意見書によって原処分庁が新たに指摘した事実や主張の矛盾点に照準を当てて、簡潔な記載を心掛けた方が担当審判官の印象は向上すると考えられる。 ちなみに、追加の主張がない場合には、反論書(意見書)の別紙に「原処分庁に対する反論については、審査請求人がこれまでに主張したとおりであり、新たに追加すべき主張はない。」と記載して提出するか、担当審判官に対して口頭(電話)でその旨を申し出れば良い。 2 担当審判官による求釈明 (1) 求釈明とは 前述の国税不服審判所による「一般的な審理の流れ」には直接的に記載されていないが、審査請求人が主張整理において慎重に対応すべき手続がある。 それは、担当審判官が、必要に応じて審査請求人(又は原処分庁)に対して主張の補充をさせることがあり、それを「求釈明」と称している。 ちなみに、訴訟でいう求釈明は、相手方に対して質問することや証拠の提出を求めたい場合に、相手方にそのようにさせるよう裁判長に求める行為を指すようであるが、国税不服審判所においては、主張の敷衍や矛盾の解消などを目的に担当審判官の主導で行われることが多い。 (2) 求釈明を行う場合 担当審判官は、審査請求人と原処分庁との書面による主張のやりとりの経緯を追うことにより、自らの想定している争点に対する主張の対比関係が形成されるか否かを見極めているといって差し支えない。 そして、主張のやりとりによって対比関係が形成されれば、担当審判官から特段に求釈明事項を発する必要はなくなり、争点整理作業を行うことになる。 しかし、例えば、以下の場合が識別されることによって、双方のやりとりのみでは主張整理が困難になる(又はいたずらに時間を空費する)ことが見込まれる場合には、担当審判官が争点に関係すると考えている主張を深掘りさせ、議論の収斂を企図するのである。 (3) 求釈明事項の例 (4) 求釈明事項の回答形式 担当審判官が上記の求釈明事項について書面による回答を求めた場合には、タイトルを適宜「釈明事項」「回答書」などとして各項ごとに記載することになる。 しかし、代理人が選任されていない(本人審査請求の)事案のように、まっさらな状態から書面に回答を起案させたとしても、それが担当審判官の求めるレベルに達することが期待薄の場合には、来所を依頼して面談の機会を設定することによって、担当審判官が「釈明陳述録取書」という書面に回答内容を取りまとめて、その内容を審査請求人に確認させて署名を求めるといった対応が取られることもある。 (5) 求釈明事項の回答内容の共有 審査請求人に求めた求釈明事項の回答内容は主張として取り扱われるが、主張である限りは、担当審判官は原処分庁に内容を共有して反論の機会を与えなければならないことから、それを送付の上で3週間程度の期限をもって意見書の提出依頼をすることになる。 同様に、担当審判官が原処分庁に対して求釈明を実施した場合には、意見書の写しが審査請求人に送付されて審査請求人意見書の提出依頼がある。 (6) 担当審判官の着眼点を窺う 求釈明事項は、担当審判官が主張に関して疑問に感じた点を単に明らかにするだけではなく、担当審判官が本件審査請求について何を争点とし、その判断のポイントをどこに置いているかが窺えるという点でその質問項目自体に着目すべきであろう。 筆者は、原処分庁の不服申立担当者や補佐する国税局課税部審理課職員が、担当審判官による求釈明事項の意図を裏の裏まで読もうとすると仄耳したことがある。 担当審判官としてはそこまでの意図を持って求釈明をしていないこともあったが、原処分庁がその程度まで気にするくらいに、判断権者による求釈明内容については関心を持って対応した方が良いだろう。 (了)
さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第74回】 「第二次納税義務における徴収不足の要件事件」 ~最判平成27年11月6日(民集59巻7号1796頁)~ 弁護士 菊田 雅裕 (了)
収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第76回】 千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也 (10) 請負に係る収益の帰属の時期(法人税基本通達2-1-21の7) ア 概要 請負に係る収益の帰属の時期について定める法人税基本通達2-1-21の7の内容を図表で示すと次のようになる。 (※1) 長期大規模工事に該当し工事進行基準による所得計算が強制されるもの(法人税法64①)及び請負工事について工事進行基準による所得計算を任意適用するもの(法人税法64②)については、別途これらの計算規定が適用されるので本通達の適用対象外となっている。 (※2) 物の引渡しを要する取引にあってはその目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日をいい、物の引渡しを要しない取引にあってはその約した役務の全部を完了した日(法基通2-1-21の2)。 (※3) 法人税基本通達2-1-21の5に準じて算定される額(本連載第75回参照)。 収益認識会計基準では、約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、充足した履行義務に配分された額で収益を認識する。履行義務は、所定の要件を満たす場合には一定の期間にわたり充足され、所定の要件を満たさない場合には一時点で充足される(基準17(5))。 本通達は、請負については、別に定めるものを除き、法人税基本通達2-1-21の2及び3にかかわらず(本連載第74回参照)、その引渡し等の日が法人税法22条の2第1項の役務の提供の日に該当し、その収益の額は、引渡し等の日の属する事業年度の益金の額に算入することが原則であることを留意的に明らかにしている。 その上で、本通達ただし書は、当該請負が法人税基本通達2-1-21の4(1)から(3)までのいずれかを満たす場合(履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに該当する場合。本連載第74回参照:法人税基本通達2-1-21の2《履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに係る収益の帰属の時期》)において、その履行義務が充足されていくそれぞれの日の属する事業年度において進捗度に応じて算定される額(同通達2-1-21の5に準じて算定される額(本連載第75回参照))を益金の額に算入しているときは、これを認めることを明らかにしている。 以下、留意点として次のようなものがある。 イ 本通達の趣旨 本通達の趣旨は次のとおりである(趣旨説明61頁以下)。 収益の帰属の時期についての伝統的な実現主義の考え方では、次の時点で収益認識することが一般的であったものと考えられる。 本通達は、請負についての民法における報酬の支払時期は、原則として、物の引渡しを要する取引にあってはその目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日であり、物の引渡しを要しない取引にあってはその約した役務の全部を完了した日であり、これらの時点をもって実現したものとして収益の計上時期とするのが伝統的な会計慣行であったことを踏まえ、旧通達2-1-5の取扱いを引き続き原則として据えるものである。 請負は、収益認識基準において「履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの」に該当する場合もあり得るが、請負等の報酬の請求が可能となる日は民法上比較的明確であり、法律概念を優先した方が同じ法律である法人税法の安定に資するため、本通達では、収益認識会計基準の取扱いをむしろ例外としている。 請負の収益計上時期について、本通達は、その本文において伝統的な実現主義の考え方、そのただし書において同基準の考え方を採用している。 会計上、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準の範囲内の複数の選択肢の中から一の収益計上時期を選択しながら、申告調整によって他の収益計上時期に変更することは、法人税法22条の2第3項に照らしても認められないと考えるべきであろう。 このため、例えば、その請負に係る履行義務が充足されていくそれぞれの日の属する事業年度において収益経理を行った場合には、引渡し等の日の属する事業年度の収益の額として申告調整を行うことはできないことに留意が必要である。 ウ 本通達と役務提供基準 法人税法22条の2第1項の役務提供基準に関する議論に論及しておく。本通達は、役務提供基準を採用しているのか、引渡基準を採用しているのか、という視点で捉えておいてもよい。 捉え方によってはおよそすべての契約は役務提供契約の側面も有しているという見解も示されているところ、建設請負契約は、典型的な役務提供契約である一方、「物の取引にかかる」ように思われる役務提供型契約であるともいわれる(沖野眞已「契約類型としての『役務提供契約』概念(上)」NBL583号7頁(1995年)参照)。 かような建設請負契約等に係る収益計上時期について、これまで、法人税法においては、権利という法的な観点から一種の引渡基準を導出してきた。 請負報酬については、次の点が考慮され、物の引渡しを要する場合は仕事の目的物の引渡しの時に、物の引渡しを要しない場合は約定の仕事を完成した時に、現実の収入がなくても、その収入すべき権利が確定し、その時の属する年度の益金に計上すべきであるという説明がなされてきた。 民法632条にいう仕事の完成とは「請負工事が当初予定された最終の工程まで一応終了したこと」、同633条にいう引渡しとは、「正式の引渡証の交付の有無を問わず目的物の占有ないし、実力的支配の任意の移転」を意味することを前提とした場合に(大阪高裁昭和61年12月9日判決・判タ640号176頁)、上記のように引渡しをもって収益を計上することは権利確定主義や実現主義とも親和的である。 よって、平成30年度税制改正後においても上記のような引渡基準が建設請負工事等に係る収益計上時期を決する基準として妥当するように思われる。 この点について、法人税法22条の2第1項は役務提供取引については引渡基準ではなく役務提供基準を採用している。 本通達のように、物の引渡しを要する場合は仕事の完成ではなく、仕事の目的物の引渡しこそが同項の役務提供基準に適合するという解釈論もありうる。 しかしながら、同項の「役務の提供」の意義について場面によって引渡しを包蔵するような解釈論を展開するというのであれば、いわば引渡しや役務の提供を包摂する上位概念になりうる原理原則のようなルールを法に明定すべきではなかったか、という議論も検討の対象になりえよう。 (了)
〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2022年3月】 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年3月1日から3月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 Ⅱ 公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案 令和4年3月1日、第208回国会に「公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案」が提出された。 これは、会計監査の信頼性の確保並びに公認会計士の一層の能力発揮及び能力向上を図り、もって企業財務書類の信頼性を高めるため、上場会社等の監査に係る登録制度の導入などの措置を講ずるものである。 Ⅲ 新会計基準関係 企業会計基準委員会から次のものが公表されている。 ① 「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い(案)」(内容:電子記録移転有価証券表示権利等の発行・保有等に係る会計上の取扱いを示す) ② 「資金決済法上の暗号資産又は金融商品取引法上の電子記録移転権利に該当するICOトークンの発行及び保有に係る会計処理に関する論点の整理」(内容:金融商品取引法上の電子記録移転権利又は資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンの発行・保有等に係る会計上の取扱いに関する論点の整理を行うもの) ③ 「改正実務対応報告第40号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」」(内容:金利指標置換後の会計処理に関する取扱いの適用期間を、米ドル建LIBORとそれ以外の通貨建てのLIBORを分けることなく、一律に2024年3月31日以前に終了する事業年度まで延長することなどを示す)。 Ⅳ 有価証券報告書の開示関係 金融庁から次のものが公表されている。 ① 「記述情報の開示の好事例集2021」の更新(内容:監査の状況と役員の報酬等の好事例を追加) ② 「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(令和4年度)」(内容:重点テーマ審査として収益認識会計基準に着目することなどを示す) ③ 「監査上の主要な検討事項(KAM)の特徴的な事例と記載のポイント」(内容:望ましいKAMの記載や現状の課題等を記載) Ⅴ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査に関連して、次のものが公表されている。 ① 「IT委員会研究報告第60号「監査データ標準化に関する留意事項とデータアナリティクスへの適用」」(内容:監査データの標準化の動向や将来の監査手法などを記載) ② 「監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関する留意事項(内容:過年度の会計不正が疑われるような状況の発生を踏まえ、監査意見不表明と有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期について記載) ③ 「監査・保証実務委員会実務指針第103号「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査に関する実務指針」の改正」(内容:監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」に関連する後発事象への対応などを記載) Ⅵ ESG関係 信託協会に設置された「企業のESGへの取り組み促進に関する研究会」から「「ESG版伊藤レポート」ESGへの実効性ある取り組みの促進と課題解決に向けて~マテリアリティの特定と役員報酬制度の在り方~」が公表されている。 ESG(環境・社会・ガバナンス(ESG:Environment Social Governance))への取り組みに関する実効性や情報開示の質の向上などの課題について検討したものである。 (了)
ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第25回】 「中小企業のパワハラ防止措置の義務化に関連する留意点及びチェックポイント」 弁護士 柳田 忍 【Question】 4月から、中小企業に対しても、パワハラ防止のための雇用管理上の措置義務が課されることになりました。中小企業である当社においても体制整備等を行ったつもりですが、法の要求を満たしているのか不安があります。 中小企業において気をつけるべき点とあわせて最終チェックの際のチェックポイントを教えてください。 【Answer】 中小企業においては、企業の規模が小さいことから、相談者の身元が推測されやすく、プライバシーの侵害に繋がりやすいといった問題点などがありますので、これらに対処する必要があります。 チェックポイントについては本文の末尾に記載していますので、ご参照ください。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 1 中小企業とパワハラ防止のための雇用管理上の措置義務 パワハラについては、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)第30条の2、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年1月15日厚生労働省告示第5号・パワハラ指針)により、使用者に対してパワハラ防止のための雇用管理上の措置義務が課されている。 中小企業については令和4年3月31日までは努力義務であったので、「4月のタイミングにあわせて本腰を入れて準備をしたが、これで足りているのかよくわからない」といった中小企業も少なくないであろう。 そこで、以下のとおり、措置義務の履行に際して中小企業において特に気をつけるべき点を指摘し、チェックポイントを挙げるものとする。 2 パワハラ防止のための雇用管理上の措置義務の内容 パワハラ防止のための雇用管理上の措置義務の内容は、パワハラ指針に定められており、その概要は以下のとおりである。 (1) 事業主の方針等の明確化及び周知・啓発 (※) 上記の「(例)」はパワハラ指針が各項目について挙げている例の概要を示したものである。以下同様とする。 以上を端的にまとめると、以下のとおりである。 要は、何がパワハラであるか及び、それらのパワハラが行ってはならないことであることを明確にし、これらを従業員に知らしめなければパワハラを防止する効果は期待できないということであるが、更に上記1については、パワハラをしてはならない旨を就業規則等に定め、これに違反する行為を懲戒事由とすることにより、行為者の懲戒処分を可能にするという意味を持つ。 したがって、最低限の準備として、パワハラの定義等とこれを行ってはならないことを就業規則の服務規律等として定め、従業員に周知しておく必要がある。 (2) 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 本項目において求められているのは、窓口を設置したうえで、実効性のある窓口の運用を確保することである。 場当たり的な運用では実効性のある窓口の運用は難しいことから、窓口における対応マニュアルを作成したり、窓口において受け付けた案件の処理フローを策定したりして準備しておくのがよいであろう。 なお、中小企業におけるパワハラ対応窓口の運用に際してよく問題となるのは、企業の規模が比較的小さいことから、(i)窓口への相談内容等により窓口担当者に相談者の身元が容易に推測されてしまうおそれが高いケースがあることや、(ⅱ)誰を窓口担当者に選任するにしても窓口担当者が社内の誰かしらと利害関係を有することが多く、相談対応の公正性について従業員が不信感を覚えがちであること、などである。 このような場合には従業員が窓口の利用を控えてしまい、その結果、会社によるパワハラ事案の発生の把握が妨げられるおそれがある。対応策としては、上記(2)①の例の1つとして挙げられているように、相談対応業務を外部機関に委託するのがよい。 なお、実務上、外部機関として顧問弁護士に相談窓口対応業務を委託する会社が少なくないが、顧問弁護士を受付窓口とすることについては、顧問弁護士に相談を行うことを躊躇する者が存在し、そのことがパワハラ事案の早期把握を妨げるおそれがあることに注意が必要である(※)。 (※) 消費者庁「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説(令和3年10月)」第3.Ⅱ.1(4)④参照。なお、同解説は、公益通報者保護法上の内部公益通報に該当しない通報についても、同解説で規定する内容に準じた対応を行うよう努めることが望ましいとしており(同解説第1.Ⅰ脚注4)、パワハラ防止のための措置義務の履行に際しても参考になる。 特に、中小企業の場合、企業のトップと顧問弁護士とが密接な関係を持っていることが多く、そのような場合、トップや幹部によるパワハラについて、被害者たる従業員が(内部窓口はもちろんのこと)外部窓口である顧問弁護士を信用できずに相談が遅れ、それにより事態が更に悪化することがある。 (3) パワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応 上記②及び③の例に記載がある「被害者と行為者を引き離すための配転」については、事後の対応策としては有効であるが、中小企業においては、物理的・機能的に困難を伴う場合が多い(対応策について、拙稿【第23回】参照)。 また、上記④については、すなわち、パワハラの事実が確認できるか否かにかかわらず、定期的な実施が求められているといえる。少なくとも年1回程度は、社内報を配布したり、社内ホームページの該当ページをメール等で通知したりする等の周知を行い、また、従業員に対する研修を行うべきである。 (4) (1)から(3)と併せて講ずべき措置 上記のとおり、企業の規模が小さい場合、相談内容の一部が漏洩しただけで相談者の身元等が容易に推測されてしまう場合がある。よって、中小企業においては、特に相談者等のプライバシーの保護が重要となる。 プライバシー保護のための措置としては、指針が定めるとおり、窓口業務や調査業務のマニュアル化や担当者に対する研修などもあるが、更に「プライバシー保護のための措置」として、誓約書等により相談対応担当者に守秘義務を課すこと、そしてこれに違反した場合に懲戒処分の対象となり得る旨を就業規則等に定めることも考えられる。 入社時に従業員の誓約書を取得する会社は多いであろうが、守秘義務の対象たる情報を明確にし、また、担当者に責任の重さを認識させるため、窓口や調査等の担当者に対して改めて誓約書を提出させることも有用である。 3 最終チェックポイント 以上の問題点に留意しつつ、中小企業においては、以下を参考に、改めて社内の体制等をチェックするのがよいであろう。 〈パワハラ防止措置チェックリスト〉 (了)
《速報解説》 JICPAが「ウクライナをめぐる現下の国際情勢を踏まえた監査上の対応」について示す ~企業や監査人の事業活動への影響を踏まえ、監査上の留意事項をまとめる~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年4月7日、日本公認会計士協会は、「2022年3月期監査上の留意事項(ウクライナをめぐる現下の国際情勢を踏まえた監査上の対応について)」を公表した。 これは、ウクライナをめぐる国際情勢により、グローバルに活動を展開する企業や監査人の事業活動にも影響が及んでいることから、監査上の留意事項をまとめたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 監査人は、ウクライナをめぐる国際情勢が被監査企業の事業活動に及ぼす影響を理解した上で、それによる事業上のリスク等が財務諸表に重要な虚偽表示をもたらす可能性を考慮し、監査意見を表明するための十分かつ適切な監査証拠を入手することが求められるとし、以下に述べることを記載している。 1 関連する地域に被監査企業の拠点がある場合の直接的な影響 関連する地域に被監査企業の拠点がある場合、事業の見直しに基づく拠点の閉鎖等が監査基準委員会報告書315「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」3項(2)の事業上のリスクに該当することが想定される場合がある。 2 政府の措置が産業や経済事象に及ぼす間接的な影響 日本政府を含め、各国政府は、諸般の措置を実施しており、監査人は、これらの措置により被監査企業に関連する産業や経済事象に影響が及ぶ可能性を考慮し、当初のリスク評価について修正が必要となるかどうか検討することを要する。 リスク評価への影響が生じる状況として、次の事項を例示している。 3 会計上の見積りの監査 会計上の見積りの監査において、基礎データとして用いられることが想定される各種経済指標は、ウクライナをめぐる国際情勢の直接的及び間接的な影響を踏まえ入手可能な最新の情報を検討することが必要である。 例えば、次のような経済指標が参考になるとのことである。 収束時期や帰結が不透明な場合など、不確実性の高い環境下における監査の基本的な考え方については、「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その2)」(2020年5月12日更新)が参考になるとのことである。 4 会計上の見積りへの影響 会計上の見積りへの影響として、例えば、将来キャッシュ・フロー等の予測に影響する次の項目(仮定や基礎データ)が挙げられている。 5 監査上の主要な検討事項 監査人が2022年3月期の財務諸表の監査において、会計上の見積りに関し、職業的専門家として特に重要であると判断した事項については、監査上の主要な検討事項として監査報告書に記載することに留意が必要であるとし、今般のウクライナをめぐる国際情勢による影響についても十分な検討が必要であるとしている。 6 グループ監査 現地子会社等に関連して、十分かつ適切な監査証拠を入手できない状況として、関連する地域において発生した次のような事態が例示されている。 十分かつ適切な監査証拠を入手できなかった場合には、グループ財務諸表の監査意見に与える影響を評価しなければならない。 7 経営者確認書 ウクライナをめぐる国際情勢について、経営者確認書の文例が示されている。 例えば、次のものである。 8 その他の記載内容 2022年3月期決算では、「その他の記載内容」に関して、監査人の検討が行われる。 「その他の記載内容」とは、監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容である。 「その他の記載内容」としては、計算書類等における事業報告及びその附属明細書や有価証券報告書における事業等のリスクや経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析等の記載内容があげられる。 今後の事業の見通し等、今般のウクライナをめぐる国際情勢に関する記載がその他の記載内容に含まれることがあることに留意する。 (了)