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《速報解説》 『移転価格事務運営要領』(事務運営指針)の改正案がパブコメに付される~OECD公表「金融取引の移転価格ガイダンス」へ準拠~

《速報解説》 『移転価格事務運営要領』(事務運営指針)の改正案がパブコメに付される ~OECD公表「金融取引の移転価格ガイダンス」へ準拠~   公認会計士・税理士 霞 晴久   国税庁は、令和4年3月14日付けで「移転価格事務運営要領」(事務運営指針)の一部改正案(以下、「本改正案」という)を示し、本改正案に対する意見を募集している。 本改正案は、OECD移転価格ガイドラインの1章として追加されるものとして、2020年2月にOECDが公表した「金融取引の移転価格ガイダンス(Transfer Pricing Guidance on Financial Transactions)」(以下「金融ガイダンス」という)に準拠した内容等となっている。 本改正案は、「1 企業グループ内の金融取引」及び「2 費用分担契約」の2つを骨子としていることから、以下、それぞれの要点を記すこととしたい。   1 企業グループ内の金融取引について 金融ガイダンスでは、企業グループ内のローン取引の金利設定に当たり、借手の信用格付け、貸付条件等を十分考慮すべきとしている(同10.89)が、現行指針3-8(2)では、(借手でなく)貸手の信用力等を考慮して金利設定する方法を許容しているため、本改正案では、現行指針3-8(1)~(3)を廃止し、現実に行われる取引に依拠した客観的な指標(市場金利等)を用いて想定した比較対象取引を用いるものとし、取引当事者の信用力を検討する場合、当事者の信用格付等を用いることができるとしている。同指針を補足する別冊の「参考事例集」においても【事例4】を見直し、信用格付に基づく設例を提示している。 また、実務的には、金融機関等に金利水準を照会してそれをグループ内ローンの利率とする方法も用いられているが、金融ガイダンスでは、金融機関等からの回答(※)は実際の取引の比較に基づくものではないため、独立企業原則から逸脱すると規定している(同10.107~108)。そこで改正案(3-8(5))では、銀行等に照会して取得した見積り上の利率又はスプレッドは、市場金利等には該当しないとしている。 (※) 金融ガイダンスでは“Bankability” Opinionと呼んでいる。 さらに金融ガイダンスでは、関連者間の債務保証取引について、保証者と被保証者の間の信用力に差があることが一般的であることから、対価の支払いが必要な経済的便益が生じていることが、移転価格上、明確であるとしている(同10.157)。このことから、本改正案(3-8(6))では、金融ガイダンスにいうイールド・アプローチ、コスト・アプローチ等の手法を用いて想定した取引を比較対象取引とすることができるとしている。 なお、上記の参考事例集では、【事例4】において《前提条件3:債務の保証の場合》が追加されるとともに、金融取引の一環として、キャッシュ・プーリングの事例につき、【事例7】(寄与度利益分割法を用いる場合)において《前提条件4:キャッシュ・プーリング》を追加している。   2 費用分担契約について 現行指針3-15は、費用分担契約について、 と、やや限定的に定義していたのに対し、本改正案ではOECD移転価格ガイドラインに従い、 と、その適用範囲を拡大している。 かかる適用範囲の拡大を受け、本改正案3-16(費用分担契約の取扱い)では、共同活動への参加者の貢献の価値の額を「貢献価値額」、貢献価値額の合計額のうちに占める参加者それぞれの貢献価値額の割合を「貢献価値割合」とそれぞれ定義し、前者が独立の事業者間で通常の取引の条件に従って行われる場合に支払われるべき対価と一致していること、後者については、共同活動参加者の予測便益の合計額のうちに占める参加者それぞれの予測便益の割合(予測便益割合)に一致していることを要求しており、法人の貢献価値割合が予測便益割合を上回る場合には、移転価格税制の適用がある旨、定めている。 また、本改正案3-17(費用分担契約に関する留意事項)では、国税職員が、費用分担契約に基づいて行われた国外関連取引について調査を行う際の検討事項として、特に今回定義された「貢献価値割合」に関する留意事項を新たに設けている(本改正案3-17(4)及び(5))。 また、現行指針3-19(費用分担契約に係る検討を行う書類)は、国税職員が調査において検討する書類が列挙されているが、上記に伴い、本改正案3-19の(1)のホにおいて、「参加者それぞれの共同活動への貢献の形態及び貢献価値額の算定方法並びに貢献価値割合の算定に関する細目を記載した書類」が追加されている他、現行指針3-19の(1)のホにおける「予測便益割合と実現便益割合とが乖離した場合における費用分担額の調整に関する細目を記載した書類(下線筆者)」の下線部分が、本改正案では「貢献価値額」に置き換えられている。 *  *  * なお、冒頭に述べたとおり、国税庁は、改正案への意見(パブコメ)を募集している。募集期間は令和4年3月14日から同年4月12日までであり、郵便、FAX及びインターネットによる提出が可能である。詳細及び指針の新旧対照表は「e-govパブリック・コメント」のページを参照されたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 461(掲載号)
#霞 晴久
2022/03/17

《速報解説》 確定申告期限直前のe-Tax接続障害を受け、国税庁が個別の申告期限延長申請の対応を公表

《速報解説》 確定申告期限直前のe-Tax接続障害を受け、 国税庁が個別の申告期限延長申請の対応を公表   Profession Journal編集部   本年2月3日に、新型コロナウイルス感染症の影響による令和3年分確定申告期限の延長の方法等について国税庁から公表があったことは既報のとおり。個別延長をしない場合、令和3年分の所得税等の確定申告期限は本日(3月15日(火))となる。 ただし、期限前日の昨日(3/14)になってe-Taxの接続障害が発生し、終日システムにつながりづらい状況が続いていた。 これを受け同庁は、本日付けでe-Taxページ内に公表した「e-Taxへの接続障害について(第四報)」において、本日午前7時現在において、つながりづらい状態は改善されているものの、未だ障害原因の解明には至っていないとした上、今回の接続障害によって期限内の申告が困難な場合の対応を明らかにした。 対応の方法としては、このe-Taxの接続障害により期限内申告が困難な場合には、本日中に書面により提出を行うか、もしくは申告書に「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」である旨記載をすることで個別に申告期限を延長し、後日の提出が可能であることを明らかにしている(具体的な方法については上記リンク先の2ページ以降を参照されたい)。 なお、上記方法により延長申請ができる期間は、接続障害解消後に改めてお知らせを予定しているとのことなので、続報に注視されたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 460(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2022/03/15

プロフェッションジャーナル No.460が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年3月10日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.460を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/03/10

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第105回】「節税義務が争点とされた事例(その8)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第105回】 「節税義務が争点とされた事例(その8)」   中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦   1 事案の概要 (1) 概観 本件は、医療法人であるX(原告)設立の際、X代表者である甲野が、当時自身の顧問税理士であったY(被告)との間で、その設立手続の一部をYが行う旨の契約(以下「本件契約」という。)を締結したことに端を発する事案である。 Xは、本件契約上、Yが甲野に対し、設立後2期分の消費税免除などの税制上の有利を受けられるよう、Xの設立時の資本金を1,000万円未満とすべきであるといった指導を行う義務があったにもかかわらず、これを怠り、Xに設立後2期分の消費税を支払わせるなどの税務上の損害を与え、また、X設立後、XとYとの税務申告に関する契約上、Yが事務用品購入費について経費算入を怠ったとして、前者については選択的に債務不履行又は不法行為に、後者については債務不履行に基づき、支払った税金相当額又は繰越欠損金として扱われるべきであった額相当分を損害として、その賠償を求めた事案である。 (2) 具体的事実 当時個人で医院を経営していた甲野は、平成14年初めころ、Yと知り合い、同年2月ないし3月ころ、両者間で税務顧問契約を締結し、Yは顧問税理士として甲野の税務相談等に応じるなどしていた。 その間、Yは、節税対策として甲野が経営する医院の法人化の相談を受け、法人化した方が節税効果がある旨を回答したことで、X医療法人社団を設立することとなり、Yは、甲野の依頼を受けて、医療法人設立認可、医療法人設立登記及び登記届の手続に協力することとなり、本件契約を締結した。 甲野は、同人名義の預金1億円のほか、車両、電話加入権、パソコン2台の合計74万9,000円を現物出資し、資産総額を1億74万9,000円として、平成15年2月17日、Xを設立した。 その後、甲野は、平成22年1月、開業医セミナーに参加し、セミナー後の個別相談において、ファイナンシャルプランナーから、Xの資産総額の設定が疑問であり、資産総額1,000万円未満で設立していれば2期分の消費税が免税となった旨指摘された。 甲野は、同年2月20日、Yに対し電話を掛け、Xの資産総額を1億74万9,000円にした理由を尋ねたところ、Yは、資産総額が1億円を超えると税務署の管轄ではなく国税局の管轄になり、国税局の管轄になるとXの規模の法人には税務調査が入りにくいとの理由であった旨回答した。また、消費税については、Xが個人経営から法人成りした経緯から、消費税の免除の適用はない旨回答した。 甲野は、同月22日、Yに対し電話を掛け、税務署に確認したところ、個人と法人は別で関係なく、資産総額1,000万円未満で法人を設立すれば2期分の消費税は払わずに済んだ旨伝えたところ、Yは、個人医院からの資産は引き継がれる旨と再度国税局の管轄にすると税務調査が入りにくい点にあった旨を回答した。そして、個人が法人成りして2年で個人経営に戻すことを繰り返せばいつまでも消費税を支払わなくて済むことになるが、それはあり得ない旨説明した。   2 争点 本件の主たる争点は、①本件契約上のYの債務不履行責任の有無と、②税務申告手続上のYの債務不履行責任の有無である。その損害及び債務不履行責任の消滅時効の起算点等についての争点は割愛する。   3 判決の要旨 東京地裁平成27年5月28日判決(判時2279号33頁)は次のような事実認定の上、Yの債務不履行を認めた。 東京地裁はこのように示した上で、「したがって、Yには、節税の目的に沿うよう、資産総額について正しく説明・指導する義務に違反した債務不履行があったことが認められる。」としたのである。 なお、争点②については、「甲野又はXは、平成13年7月から平成21年3月まで、T事務器から事務用品を合計160万6,119円購入したことが認められ、Yはこれを経費として計上しなかったことが認められる。」として、これについても債務不履行を認めている。   4 解説 消費税法は、中小事業者の納税事務負担などに配慮して、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者については、納税義務を免除することとしている。 すなわち、消費税法9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》は、「事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者については、第5条第1項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。」と規定し、ここにいう「基準期間」とは、「個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が1年未満である法人については、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいう。」と規定されている(消法2①十四)。 したがって、新たに設立された法人については、その設立1期目及び2期目については基準期間がないことから、原則として消費税の納税義務が免除されることになるのであるが、その例外として、基準期間がない法人のうち、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である法人については、かかる課税期間の納税義務は免除されないこととされている(消法12の2①)。 本件事案において、Xは資本金1億47万9,000円で設立されているが、これを1,000万円未満としていれば、設立2期目までの消費税の納税義務が免除されることになったのではないかというのがXの主張の基礎にある。本件は、かような消費税法上の規定を用いてなし得る節税措置を説明・指導しなかった税理士に対して損害賠償責任を認めた事例である。 そもそも、節税を行うべき義務なるものを税理士法からダイレクトに読み取れるか否かについては議論のあるところであるが、本件の場合、税理士の業務上の義務と認定されているわけではない。 すなわち、東京地裁は、「Xの設立の主な目的は節税であったことが認められ、そうであるとすれば、甲野から相談を受け、設立手続の一部に協力する旨の本件契約を締結したYとしては、その目的に沿うよう、甲野に対し、資産総額についても正しく説明・指導する義務があったと認められる。」としているのであって、「Xの設立手続の一部に協力する」という本件契約に関する義務であると認定されているように見受けられる。 つまり、甲野とYとの間に、医療法人の設立が節税目的であったことが共有され、かかる共通認識の下での設立手続に関する協力契約に内在する義務として節税措置が包摂されるものと判断されたのであろう。 かような意味では、本件判決を、税理士の業務上の義務として広く一般に節税義務を認めた判断であるとみることはできそうにない。 (了)

#No. 460(掲載号)
#酒井 克彦
2022/03/10

〔疑問点を紐解く〕インボイス制度Q&A 【第12回】「電子インボイスとデジタルインボイスの違い」

〔疑問点を紐解く〕 インボイス制度Q&A 【第12回】 「電子インボイスとデジタルインボイスの違い」   税理士 石川 幸恵   【Q】 電子インボイスとデジタルインボイスの違いは何ですか。 〔ポイント〕 (1) 電子インボイスは、データそのもののほか、PDF保存したファイルや、紙をスキャンして画像データ化したものを含みますが、デジタルインボイスは電子インボイスのうちデータそのもののみを指します。 (2) 日本のデジタルインボイスの標準仕様「Peppol BIS Billing JP」のドラフト版(ver.0.9)が2021年12月にデジタル庁のホームページで公開されました。2022年秋以降には、インボイス制度導入に先駆けてサービス提供が始まる可能性があります。 *  *  * 【A】 (1) 電子インボイスとは? 「電子インボイス」とは、インボイス制度の下で紙のインボイスに代わって提供される電磁的記録を指します。したがって、下記(2)で解説するデジタルインボイスのほか、適格請求書発行事業者が電子メールに添付して送るPDF形式のインボイスも「電子インボイス」に含まれます。 PDFによるやり取りでは、売り手(インボイスの発行者)がPDFファイルを電子メールで送ったとしても、買い手(インボイスの受け手)で内容の確認や購買システムへの入力などのために紙に印刷することも多く、必ずしもペーパーレスにつながっていないと考えられます。   (2) デジタルインボイスとは? 売り手が、自社の請求システムからインボイスのデータをインターネット経由などで送信し、送られてきたデータを買い手が購買システムに取り込めば、紙に印刷することなく処理を進めることができます。このようにデータそのものでやり取りするインボイスがデジタルインボイスです。 PDF形式のインボイスはディスプレイで表示したり、プリンターで印刷すれば人が読めるものですが、デジタルインボイスはコンピュータが取り込んで処理するための符号であり、人が見て読めることは求められていません。   (3) 標準化とは? デジタルインボイスのようなデータを事業者間でやり取りできるようにするためには、電子メールのやり取りのようにデータ中継の仕方やデータの並び方などを取り決めておく(=標準化)必要があります。日本では、デジタル庁が官民連携でデジタルインボイスの標準化策定を進めており、昨年12月に「Peppol BIS Billing JP」のドラフト版(ver.0.9)が公表されました。   (4) デジタルインボイスの実用化にあたって ① 中小企業は利用可能か? 会計・業務システムベンダーが自社のソフトやシステムにPeppol対応サービスを組み込んで、事業者に提供することが想定されています。事業者は、Peppolの仕組みを意識することなく、データのやり取りが可能になると考えられます。 (出典) 電子インボイス推進協議会ホームページ「電子インボイスとは」の図を参考に筆者作成。 ② インボイスとしての保存要件を満たすか? データセットを電子帳簿保存法に準じた方法で保存すれば、仕入税額控除のインボイス保存の要件を満たします。 ③ 実用化の時期 2022年秋にはPeppol対応サービスが各システムベンダーから提供される可能性があります。 (了)

#No. 460(掲載号)
#石川 幸恵
2022/03/10

金融・投資商品の税務Q&A 【Q73】「前年に確定申告をしなかった譲渡損失がある場合の繰越控除の可否」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q73】 「前年に確定申告をしなかった譲渡損失がある場合の繰越控除の可否」   PwC税理士法人 金融部 ディレクター 税理士 西川 真由美   ●○ 検 討 ○● 1 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除 (1) 繰越控除の概要とその対象となる上場株式等の範囲 上場株式等に係る譲渡損失について、その年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、控除してもなお控除しきれない部分の金額は、一定の要件のもと、翌年以降3年間にわたって繰り越す特例が認められています。 過去3年以内に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額を控除する場合において、その年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額(申告分離課税を選択したものに限ります)があるときは、まず譲渡所得等の金額から控除し、なお控除しきれない損失の金額があるときは、配当所得等の金額から控除します。 本特例の対象となる上場株式等に係る譲渡は、証券会社(金融商品取引業者)等への売委託によるものや証券会社等に対する譲渡など一定のものに限られていますので、上場株式等の譲渡であっても、相対取引によるものや外国の証券会社に対して直接譲渡するものは対象にはなりません。 (2) 必要な手続き 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の特例を適用するためには、以下の手続きが必要となります。 また、上記の確定申告書には、期限後申告書を含むこととされています。したがって、確定申告書の提出期限後に提出したものであっても、本特例の適用を受けるための手続きとして認められることになります。   2 本件へのあてはめ 上場株式等に係る譲渡損失が生じた年分(つまり、2020年分)の確定申告書が提出されていないことから、上記1(2)①の手続き要件を充足していないようにも考えられます。しかしながら、ここでいう確定申告書には期限後申告書も含むこととされているため、2021年分の確定申告書を提出するまでに、必要書類を添付した2020年分の申告書を提出すれば、譲渡損失の繰越控除が適用されるものと考えられます。 具体的には、2020年分の申告書に、「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用の確定申告書付表」及び「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を添付して、2021年分の確定申告書の提出より前にこれを提出し、2021年分の確定申告書にも当年分の確定申告書付表及び計算明細書を添付することで、A株式について2020年に生じた譲渡損失(1,000,000円)は、2021年のB株式に係る譲渡所得等の金額から控除されるものと考えられます。 また、控除しきれない金額(1,000,000円-600,000円=400,000円)は、翌年以降2年間にわたって、2023年まで繰越控除の対象となるものと考えられます。   (了)

#No. 460(掲載号)
#西川 真由美
2022/03/10

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第27回】「区分登記がされていない場合の特定居住用宅地等の特例の適用(同居親族と別居親族の「居住していた」の要件の留意点)」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第27回】 「区分登記がされていない場合の特定居住用宅地等の特例の適用 (同居親族と別居親族の「居住していた」の要件の留意点)」   税理士 柴田 健次   [Q] 被相続人である甲(相続開始日:令和4年3月1日)は、下記の土地及び家屋を所有していました。土地建物の生前の利用状況は、下記の通り、1階部分は甲が居住の用に供し、2階部分は長女である乙家族が居住の用に供しています。区分登記はされていませんが、建物の各階ごとに玄関があり、構造上区分された建物で甲は1階で1人で生活をしていました。また、甲は乙から賃料を収受していませんでした。 【相続発生前の利用状況】 甲の相続発生に伴い、甲の所有していた土地及び建物を乙及び長男である丙が1/2ずつ取得した場合には、乙及び丙が適用できる特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用面積は何㎡でしょうか。 相続人は乙と丙の2人です。乙は甲と生計を別にしており、相続後は引き続き上記の土地家屋に居住しています。丙は甲と生計を別にしており、相続開始前10年間の間は会社の社宅に居住し、相続後も引き続き会社の社宅に居住しています。 [A] 乙及び丙は取得した宅地等の面積の1/2相当である165㎡についてそれぞれ特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例(以下単に「特例」という)を受けることができます。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 特定居住用宅地等の意義 被相続⼈⼜は当該被相続⼈と⽣計を⼀にしていた当該被相続⼈の親族(以下「被相続人等」という)の居住の⽤に供されていた宅地等(当該宅地等が2以上ある場合には、政令で定める宅地等に限る。「第19回で解説」)で、当該被相続⼈の配偶者⼜は一定の要件を満たす当該被相続⼈の親族(当該被相続⼈の配偶者を除く)が相続⼜は遺贈により取得したものをいいます(措法69の4③二)。 一定の要件を満たす被相続人の親族は、下記の(1)~(3)のいずれかを満たす親族をいいます。 (1) 同居親族 当該親族が相続開始の直前において当該宅地等の上に存する当該被相続⼈の居住の⽤に供されていた⼀棟の建物(当該被相続⼈、当該被相続⼈の配偶者⼜は当該親族の居住の⽤に供されていた部分として政令で定める部分に限る)に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該建物に居住していること。 政令で定める部分とは、次に掲げる場合の区分に応じてそれぞれに定める部分をいいます(措令40の2⑬、措通69の4-7の4)。 (2) 別居親族 当該親族が次に掲げる要件の全てを満たすこと(措令40の2⑭⑮、措規23の2④)。 (3) 生計一親族 当該親族が当該被相続⼈と⽣計を⼀にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を⾃⼰の居住の⽤に供していること。   2 一棟の建物で区分登記がされていない二世帯住宅の場合の特定居住用宅地等の範囲 被相続人の居住の用に供されていた建物が一棟の建物(区分所有建物である旨の登記がされている建物を除く)である場合には、その一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうち被相続人の親族の居住の用に供されていた部分は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等として取り扱います(措令40の2④、措通69の4-7)。   3 本問への当てはめ 本問の場合には、入口の要件として被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当するのか、出口の要件として取得者の要件を確認することになります。 入口の要件としては、1階部分については、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当し、2階部分についても上記2の取扱いにより被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することになりますので、入口の要件は満たしていることになります。続いて取得者の要件ですが、取得者ごとに確認すると下記の通りとなります。 〔乙について〕 乙は上記1(1)に記載されている「被相続⼈の居住の⽤に供されていた⼀棟の建物に居住していた者」であり、かつ、「相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該建物に居住していること」の要件を満たします。したがって、取得者の要件を満たすことになりますので、他の要件を満たせば特例の対象になります。 〔丙について〕 上記1(2)の③の要件である「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)がいないこと」が問題になります。 すなわち、乙が被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた相続人に該当するか否かについて検討を行う必要があります。租税特別措置法関係通達69の4-21(被相続人の居住用家屋に居住していた親族の範囲)においては、下記の通り記載されています。 本問の場合には、1階と2階は構造上区分されており、甲は独立して1階部分に1人で居住していますので、甲の居住の用に供されていた家屋に居住していた者はいなかったことになります。したがって、上記1(2)の③の要件も満たされることになりますので、他の要件を満たせば特例の適用を受けることができます。   ★実務上のポイント★ 区分登記がされていない一棟の建物で構造上区分されている建物である場合には、同居親族の要件である「⼀棟の建物に居住していた」と別居親族の要件である「被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた」の意味がそれぞれ異なる点については、十分に注意する必要があります。   (了)

#No. 460(掲載号)
#柴田 健次
2022/03/10

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第39回】「受益者連続型信託における登録免許税及び不動産取得税」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第39回】 「受益者連続型信託における登録免許税及び不動産取得税」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) シニアマネジャー 公認会計士・税理士 岩丸 涼一   相談内容 私Aは個人事業主として不動産賃貸事業をしていますが、80歳を迎え最近は物忘れが多くなりました。また、私の二男Cは障害があり(配偶者・子供なし)、将来、経済的に安定した生活を過ごせるか不安を感じています。賃貸事業は会社Xを経営している長男Bに承継してほしいと考えています。 こうしたなか、認知症対策として最近「家族信託」というものがあり、受益者連続型信託とすることで二男の将来の生活不安も解消できる可能性があることを知りました。 そこで、私Aが所有する賃貸不動産を信託し、私が委託者兼第1受益者となり、第2受益者を二男C、第3受益者を長男Bとし、最終的には長男Bの子供(私Aの孫D)を帰属権利者とする受益者連続型信託を組成したいと思っています。受託者は長男Bの経営する会社Xに依頼しようと考えています。 しかし、不動産の時価がとても高く、受益者連続型信託の場合の信託終了時の流通税(登録免許税及び不動産取得税)の適用がわからず困っています。 〈信託のスキーム〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 流通税を考慮すべき場面   [2] 信託開始時・受益権相続時の流通税 信託開始時は、固定資産税評価額に対して登録免許税が0.4%(※1)生じ、不動産取得税は非課税です。受益権相続時は不動産1件当たり1,000円の登録免許税が必要となります。 (※1) 建物について令和5年3月31日までは0.3%。   [3] 信託終了時の登録免許税の取扱い 信託が終了して不動産を受託者から帰属権利者に移す場合であって、下記の要件を満たす場合、相続による財産権の移転と同様に登録免許税が減免(2%→0.4%)されます(登録免許税法第7条②)。   [4] 登録免許税に関する文書回答事例 国税庁ホームページの文書回答事例(※2)では、信託の終了に伴い帰属権利者が受ける所有権の移転登記時の登録免許税の適用について、上述[3]の要件①(信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが元本受益者である信託)の継続状況をどのように考えるかが問われています。 (※2) 国税庁文書回答事例「信託の終了に伴い、受託者兼残余財産帰属権利者が受ける所有権の移転登記に係る登録免許税法第7条第2項の適用関係について」(平成30年12月18日 名古屋国税局) 背景としては、信託法では、信託が終了した場合においても、その清算が結了するまで信託はなお存続するものと擬制され(信託法176条)、帰属権利者は、当該清算中は受益者とみなされる旨(信託法183条⑥)が規定されているためです。 文書回答事例では、「本件信託に係る委託者の地位は、帰属権利者(受益者)として指定されている者が取得し、委託者の権利については、相続により承継されることなく消滅します」とし、上述[3]の要件①の委託者兼受益者の状況が信託期間中、常に継続するように信託契約を作成することにより、上述[3]の要件①が満たされることが示されています。 受益者連続型信託についても、信託契約で「委託者の地位」を「受益者」が常に引き継いでいくことにより、上述[3]の要件①を満たすと考えます。   [5] 信託終了時の不動産取得税の取扱い 受託者から受益者(帰属権利者)に信託財産を移す場合における不動産の取得について下記の要件を満たす時は、相続による財産権の移転と同様に不動産取得税は非課税(4%→0%)とされています(地方税法第73条の7四ロ)。   [6] 不動産取得税に関する実務担当官の見解 上述「[5] 信託終了時の不動産取得税の取扱い」について、「月刊税(2011年8月号)ぎょうせい」のP75~79において、東京都主税局資産税部担当官が、信託受益権の相続が複数回生じた事例について、相続の場合は所有権取得による課税関係は非課税であるので、信託財産の引継ぎにおいても相続による所有権移転の規定との均衡を重視した解釈をするべきである見解を私見として記載しています。 すなわち、信託受益権の相続が複数回生じた場合で上述[5]の要件②(受益者(帰属権利者)が信託の効力が生じた時における委託者から相続(包括遺贈等含む)をした者)に該当しない場合、文理解釈上は非課税規定の適用はないことになりますが、立法趣旨を鑑みた行政担当官の見解はこの場合も非課税とすべきとしています。   [7] 結論 信託終了時に残余財産の給付として、受託者XからDに不動産が移転する場合を前提とすると、上述の[3]の要件①及び[5]の要件①は、いずれの流通税でも委託者兼受益者の状況が常に継続するような信託契約を作成することで満たすことができます。 しかし、上述の[3]の要件②及び[5]の要件②について、登録免許税は信託終了時に所有権を取得する帰属権利者であるDが信託の効力発生時の委託者であるAの相続人でないため満たしません。また、不動産取得税についても信託の効力が生じた時における委託者Aから相続するのは相続人のBとCですのでDは満たしません。 したがって、文理解釈上は登録免許税及び不動産取得税について、相続同様の減免・非課税措置は適用されないものと考えます。 一方で、不動産取得税の実務担当官の見解によると、AからCへ受益権の相続、CからB(Cの唯一の相続人)へ受益権の相続、そして信託終了によるBからDへの経済的利益の移転(信託終了による受託者からの残余財産給付)について非課税適用することは、相続による不動産の所有権移転を非課税としていることとの均衡を図るという趣旨に合致することとなりますので非課税となります。 しかしながら、これは都道府県での統一見解ではなく、実務を行う担当官による取扱いの違いも想定できるところ、当該見解のみによることはリスクがあると考えます。 以上より、不動産取得税の実務担当官の見解(不動産取得税の非課税措置の立法趣旨)を踏まえたうえで、最終的には条文の文理解釈を採用するべきと考えます。 今後、受益者連続型の信託における流通税の取扱いが整備される可能性はありますが、信託終了時の課税関係については、帰属権利者Dにも情報共有しておくべきでしょう。 具体的な対策については、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。   (了)

#No. 460(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2022/03/10

〔顧問先を税務トラブルから救う〕不服申立ての実務 【第11回】「原処分庁からの答弁書には何が書かれているか」

〔顧問先を税務トラブルから救う〕 不服申立ての実務 【第11回】 「原処分庁からの答弁書には何が書かれているか」   公認会計士・税理士 大橋 誠一   1 答弁書要求 審査請求書が提出されて、形式審査の結果、それが適法のものである(却下事件ではない)と確認した場合、各地域国税不服審判所長(首席審判官)は、原処分庁に対して答弁書の提出を要求する。 期限については、再調査の請求を経ない(直接審査請求)事件である場合には4週間以上の期間を、再調査の請求を経ている事件である場合には、既に再調査決定書の起案段階で原処分庁としての内容整理を事実上終えていると考えられることから、それよりも短い期間をそれぞれ指定することが多い。 しかし、審査請求人による審査請求書と比較して、原処分庁による答弁書は、起案者から各段階の担当官の審査、最終的には原処分庁本人である税務署長に対する報告及び決裁を経る必要があることから、年末年始・ゴールデンウィークその他の決裁ラインの者が揃わない時期については、弾力的に期限を伸長することもあり得る。   2 答弁書の様式 (1) 答弁書のひな形 ある法人税(地方法人税)の審査請求事件の答弁書の様式は以下のとおりである。 (2) ページ数 審査請求人の主張がおおよそ課税要件から離脱しているような苦情事案でない限り、本文のみで10ページ以上に及ぶことが通常であり、事実関係が複雑な事案や国際事案などは100ページ以上に及ぶこともある(裁決書も同様である)。 (3) 作成過程 原処分庁である税務署長所属の不服申立担当者が各課税第1部門に配属されており、答弁書案はその者によって起案されるのが通常である。 次に、国税局課税部審理課の税目別の不服申立担当の主査(税務署統括官級)及びその部下である実査官のレビューを受けて、場合によっては証拠評価の再検討がなされる(起案者である税務署の不服申立担当者の能力や経験によっては主査・実査官が肩代わりして起案することもある)。 審理課のレビューを終えた答弁書案は、担当副署長を経て署長に説明して決裁を得た上で正本と副本が作成され、各地域国税不服審判所に送付される。 正本は各地域国税不服審判所(担当審判官)が保管し、副本が「反論書」の提出依頼と併せて審査請求人に送付される。   3 答弁書の吟味 (1) 記載された「事実」の認否 上記のひな形の2(1)に記載されている事実が審査請求人にとって真実であるか否かを慎重に吟味する必要がある。 仮に、記載された事実が真実ではない場合には、その旨及び審査請求人が真実と考える事実を反論書に記載した上で、それを裏付ける証拠書類を「証拠説明書」とともに担当審判官に提出することになる。 (2) 閲覧謄写請求の検討 答弁書に事実として記載された事項が、必ずしも審査請求人から提出された証拠に基づくものでなく、原処分庁による職権調査によって収集されたものであることも考えられる。 その場合、担当審判官に対して、原処分庁が任意に提出した証拠及び担当審判官が職権で収集した証拠について、閲覧及び写しの交付を請求することを検討すべきであろう。 なお、閲覧を請求するといっても、どのような証拠を担当審判官が保管しているかわからないことが通常であり、あらかじめ、担当審判官から以下の各リストの提供を受けて、これを基に閲覧を求める証拠の特定を行うことになる。 (3) 審査請求の理由に対する答弁であるか 国税通則法第93条第2項は、「前項の答弁書には、審査請求の趣旨及び理由に対応して、原処分庁の主張を記載しなければならない」旨規定されている。 これは、答弁書の記載が原処分通知書の「処分の理由」の引き写しにすぎないケースや、審査請求書における審査請求人の主張内容を無視して独りよがりの結論を導いているケースがなくはないことから、審査請求人と原処分庁との主張の対比を明確にして、担当審判官による争点整理に資するために存在する規定であると考えられる。 したがって、上記のようなケースが認められる場合には、反論書を通じて、原処分庁側の追加対応を求めることが想定される。   4 反論書起案上の留意点 前述のとおり、答弁書は相応のボリュームがあり、原処分通知書と比較してより争訟の色彩を帯びた様式となっている。 これを争訟の経験の薄い審査請求人又は代理人が表面的に見ると、いかにも隙のない内容の書面との印象を受けるようである。 しかし、答弁書の起案者である税務署の不服申立担当者や国税局の審理課職員は、 といった本音を隠して、さも、 という姿勢が表面上だけでも滲み出るように工夫して起案しているケースもあると仄聞する。 答弁書のボリュームが多いといっても、それを丁寧に読み下した上で分析を加え、 といった事項が識別されれば、それらを中心に積極的に反論を加えていくことになるだろう。 (了)

#No. 460(掲載号)
#大橋 誠一
2022/03/10

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第73回】「都市計画法による土地の買取と長期譲渡所得の特別控除事件」~最判平成22年4月13日(民集64巻3号791頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第73回】 「都市計画法による土地の買取と長期譲渡所得の特別控除事件」 ~最判平成22年4月13日(民集64巻3号791頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 460(掲載号)
#菊田 雅裕
2022/03/10
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