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〔一問一答〕税理士業務に必要な契約の知識 【第22回】「法務と税務にまたがる契約の類型別ポイント」

〔一問一答〕 税理士業務に必要な契約の知識 【第22回】 「法務と税務にまたがる契約の類型別ポイント」   虎ノ門第一法律事務所 弁護士 高橋 弘行   〔質 問〕 契約において、法務、税務、それぞれにまたがる問題があると思いますが、それぞれの観点で問題が異なることがあるのでしょうか。また、契約書の表現によって、課税関係や法的効力に影響があるのでしょうか。 〔回 答〕 税務的には問題となるが法的な効力には影響のないもの等、税務と法務で効果が異なるものがあります。契約スキームの選択や契約書の表現が、課税関係及び法的効力にどのような影響を与えるかについて、「売買契約」「請負・委任」「消費貸借契約」の場合における具体例は以下のとおりです。 ◆◆◆◆ 解 説 ◆◆◆◆ 1 売買契約 ~土地建物の一括売買を行う際の代金表示について(消費税)~ (1) 設例 土地及びその土地上の建物を代金総額1億円で売買する際、契約書に以下の記載がある場合、どのような取扱いとなるか。なお、土地の時価は8,000万円、建物の時価は2,000万円とする。 (2) 税務の観点 消費税法上、土地の売買は非課税だが(消費税法6条、別表第一第1号)、建物の売買は課税対象となる取引である(消費税法4条1項)(ただし、売主が事業者でない場合は、建物の売買についても、消費税は課税されない)。 (3) 法的な観点 それでは、建物と土地の代金の内訳の記載がない場合、売買契約の法的効力になにか影響があるのであろうか。 この点について、法的には、合計金額やその支払方法等の契約の要素が定められていれば、代金の内訳記載がなくとも、法的効力には影響がない。 税務上、消費税の金額に争いが生じる契約であっても、法的な効力には影響がなく問題ない場合も多いのである。   2 請負・委任契約 ~請負と委任の区別(印紙税)~ (1) 設例 甲が経営する飲食業について、乙にコンサルティングを委託する際、契約書に以下の記載がある場合、どのように取り扱われるか。 (2) 税務の観点 請負契約書は、印紙税法別表第一「課税物件表」2号の文書に該当し、印紙税の課税対象となる。他方、委任契約書は印紙税の課税対象とはならない。 このように、請負と委任では、印紙税法上の取扱いが異なるが、実際の契約書では両者が混在して記載されている等、その区別が容易でない場合も多い。このような契約書は、請負に該当する文書と扱われ、課税対象とされる(印紙税法別表第一 課税物件表の適用に関する通則2)。 (3) 法的な観点 コンサルティング契約の法的性質としては、請負契約(民法632条)、委任契約(民法643条)、両者の混合契約等が考えられる。 請負と委任の違いは、仕事を完成させる義務があるか否かである。法的にどちらの規律が適用されるか否かは、業務の実態及び特定の業務の完成義務が明記されているか否か等による。 《ア》の場合、契約書において報告書の作成が明記されている。他の事情にもよるが、報告書を成果物として完成させることに意味のある契約であれば、請負契約に該当すると考えられる。 《イ》の場合では、報告方法が契約書において定められていない。口頭での助言のみが想定される等、特定の業務の完成義務を負わないものであれば、委任契約と認定されることになると考えられる。 法的には、業務の実態によっては、《ア》《イ》ともに請負と準委任の混合契約に該当するとされる可能性も考えられる。どちらの要素も含む場合には、混合契約として、その性質に応じて双方の規定が適用される。   3 消費貸借契約 ~債務承認弁済契約(印紙税)~ (1) 設例 甲が乙に1億円を貸し付け、乙は2,000万円を弁済したものの、約定の期日までに残額を弁済できなかったため、残債務を承認し、新たな支払期日を合意する契約を締結しようとしている。契約書に以下の記載がある場合、どのように取り扱われるか。 (2) 税務の観点 債務承認弁済契約書は、印紙税法別表第一「課税物件表」1号の3文書(消費貸借に関する契約書)に該当する(印紙税法別表第一 課税物件表の適用に関する通則5)。この場合における契約金額については、原契約の締結状況等で決まり、印紙税の取扱いが異なる。 (3) 法的な観点 金銭消費貸借契約(民法587条)において、約定通りに支払いがなされない場合、債務承認弁済契約書を締結することがある。これは、①その時点での残債務の額を相互に確認して、残額に関する争いを未然に防止し、②その債務を債務者が承認することにより時効を中断させ、新たな弁済条件を合意するという意味をもつ。 原契約の金銭消費貸借契約と同一性があり、残額と支払条件を定める場合には、債務承認弁済契約は法的には準消費貸借契約(民法588条)と解される。 他方、当事者間の紛争が存在し、互譲して、紛争を終結させる合意という側面が強い場合(原契約の金銭消費貸借契約と同一性は不要である)、和解契約(民法695条)と解される場合もある。 (了)

#No. 440(掲載号)
#高橋 弘行
2021/10/14

《編集部レポート》 第47回日税連公開研究討論会が、コロナ禍による1年延期を経て広島・松山からライブ配信で開催

《編集部レポート》 第47回日税連公開研究討論会が コロナ禍による1年延期を経て広島・松山からライブ配信で開催 Profession Journal 編集部   2021年10月8日(金)、日本税理士会連合会(神津信一会長)は、第47回日税連公開研究討論会を開催した。 昨年は新型コロナウイルスの影響を受け開催が延期されたことから、2年ぶりの開催となり、日本税理士会連合会・中国税理士会・四国税理士会による共催という形がとられた。 なお、今回の開催においても感染予防の徹底を図る観点から、ライブ配信にて実施され、広島と松山を中心とした複数の会場から各会の発表が行われた(四国税理士会の研修ライブ・オンデマンド視聴システムの他、YouTubeでも配信)。また、冒頭挨拶を行った神津会長も東京都内の日税連会館内からのリモート参加となった。 公開研究討論会は、税理士による研究成果の発表、討論の過程を通じて、税制・税務行政及び税理士業務の改善・進歩並びに税理士の資質の向上を図るとともに、本会が行う研修事業に資することを目的として実施する、との理念の下、毎年開催されているもの。 今回の担当は、中国税理士会が「給与の源泉徴収制度と年末調整制度のあり方」、四国税理士会が「技術革新と税理士の将来像」というテーマで、それぞれ発表を行った。また年末調整の必要性について、中国会・四国会の間で意見を交わす場面もあった。 また、両会の研究発表後の総括では、四国会のテーマに関係して、今年6月に国税庁が公表した「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0-」を取り纏めた永田寛幸広島国税局長(当時、国税庁長官官房企画課長)による本報告の概要説明が行われるサプライズもあった。 当日はパネルディスカッション参加者の間にアクリル板を設置する、一部を録画とし映像技術を駆使する、来賓者挨拶をビデオメッセージとするなど、感染防止対策が徹底された。 (中国会の発表の様子) (四国会の発表の様子) 当日の研究発表の模様は、後日、日税連HP(会員専用ページ)から視聴できる。 (了)

#No. 440(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/10/14

《速報解説》 法務省が「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」を公表~事業報告及び計算書類に表示すべき事項の一部をウェブ開示によるみなし提供制度の対象に~

《速報解説》 法務省が「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」を公表 ~事業報告及び計算書類に表示すべき事項の一部をウェブ開示によるみなし提供制度の対象に~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021(令和3)年10月12日、法務省は、「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」を公表し、意見募集を行っている。 これは、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、事業報告に表示すべき事項の一部並びに貸借対照表及び損益計算書に表示すべき事項をいわゆるウェブ開示によるみなし提供制度の対象とするためのものである。 意見募集期間は2021(令和3)年11月12日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ ウェブ開示によるみなし提供制度に関する改正 ウェブ開示によるみなし提供制度に関して次の改正を行う(会社法施行規則133条の2、会社計算規則133条の2)。   Ⅲ 施行時期等 1 施行期日 公布の日から施行する予定である。 2 失効 (了)

#No. 439(掲載号)
#阿部 光成
2021/10/12

《速報解説》 金融庁、「企業内容等開示ガイドライン」の改正を確定~第三者割当に係る有価証券届出書につき提出会社ごとの状況にあわせた適切な対応・開示を求める~

《速報解説》 金融庁、「企業内容等開示ガイドライン」の改正を確定 ~第三者割当に係る有価証券届出書につき提出会社ごとの状況にあわせた適切な対応・開示を求める~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年10月7日、金融庁は、「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の改正を公表した。これにより、2021年6月30日から意見募集していた改正(案)が確定することになる。改正(案)に対するコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方も公表されている。 これは、第三者割当に係る有価証券届出書について、重点的に行う審査対象や審査要領を、より一層明確化するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 重点的に行う審査対象の明確化 次の改正を行う。 2 審査要領の明確化 次の改正を行う。   Ⅲ 適用時期等 2021年10月7日付で適用する。 (了)

#No. 439(掲載号)
#阿部 光成
2021/10/11

プロフェッションジャーナル No.439が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年10月7日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.439を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/10/07

monthly TAX views -No.105-「岸田新総理の最初の試金石」

monthly TAX views -No.105- 「岸田新総理の最初の試金石」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   4日、自由民主党の岸田文雄氏が、国会の承認を経てわが国の第100代内閣総理大臣に就任した。 総裁選挙では4人の候補者の間で、外交・安保から社会保障まで、野党の提案も取り込み幅広くわが国の政策について議論が交わされた。結果自民党の支持率は上がったようで、野党は総選挙で苦戦を強いられるのだろう。 税・社会保障という観点から、筆者が岸田総理の政策に注目するのは以下の点である。 *  *  * 岸田総理の公約である「新自由主義的な経済政策からの転換、分配重視」という政策に対し、筆者は共感を覚えるのだが、今後、どう実現していくのか。 アベノミクスの下では、期待したトリクルダウンは生じず、家計調査の分析でも中間層は二極化したことが明らかになっている。引き続くコロナ禍により、所得・資産格差はさらに拡大した。 これへの対策として、岸田総理は「成長の成果を分配する」という。しかし常識的には、「分配」は「負担能力がある者からそうでない者へ所得を移転させること」を意味しており、税制で負担能力がある者にさらなる負担を求め、困窮者への社会保障・給付にまわすという政策を意味している。そこを説明せず、「経済成長の成果を分配する」というだけでは、無責任な印象を受ける。 *  *  * 一方で、分配強化の具体策として、金融所得の課税強化を打ち出しておられる。周知のようにわが国税制では、金融所得が、勤労所得の最高税率より低い水準で分離課税となっている。この理由は、グローバルに取引される金融所得について、国外への資金逃避を防ぐ「税の効率性」のためである。90年代後半に北欧から始まり、欧米の多くの国がこのような税制を採用してきた。 しかしここ数年、OECD諸国は資金の流れを捕捉できるような協調体制を築いてきた。わが国でも、国外財産調書制度の導入、海外の税務当局との金融口座情報の自動的情報交換の開始、年間所得2,000万円超で3億円以上の財産を有する者への財産債務調書の提出義務付け、さらには預貯金口座へのマイナンバー適用も始まり、適正課税を担保するための納税環境整備は大きく進展した。日本居住者である限り、わが国で課税される度合いが飛躍的に向上したといえよう。 このような環境の整備に加えて、コロナ禍での格差拡大が所得再分配機能強化の必要性を認識させ、金融所得税制の見直しが政治レベルでの課題になったといえる。この見直しは、高所得者により多く帰属する金融所得に対して負担増を求めるので、世代間の公平にも資する。 *  *  * 当然だが、投資家や金融機関は、株式相場への悪影響を懸念して、見直しには消極的である。しかし、「投資家のリスクテイクにあたっては、損失が生じた場合に損益通算がどこまで可能かという点が重要であって、税率の高低には影響されない」というのが経済理論である。 例えば、譲渡益に50%で課税されても、損失を出した場合には50%が還付してもらえるという税制(損益通算)が整っておれば、投資家はリスクテイクを続けるので、相場に与える影響は限定的ということである。戦後のわが国税制の基礎となったシャウプ勧告も、前文でそう述べている。そこで、税率の見直しには、損益通算の拡充を合わせ検討することが必要となろう。 もう1つ、累進性を強化するには、税率を一律引き上げるのではなく、一定以上の金融所得のある者(源泉分離課税となっている利子所得は除く、例えば100万円)に限定して税率を引き上げる(例えば現行の15%から30%へ)ことが必要だ。特定口座の配当所得と株式譲渡益はすべてマイナンバーで把握されており、名寄せができる。デジタルの成果を税制に活用することにもつながる。 コロナ禍で税制の潮流も変化した。米国でも議論が進む金融所得課税強化は、岸田政権にとって、最初の試金石となろう。 (了)

#No. 439(掲載号)
#森信 茂樹
2021/10/07

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例34】「事業年度末における未使用ポイントの損金算入の可否」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例34】 「事業年度末における未使用ポイントの損金算入の可否」   国際医療福祉大学大学院教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、首都圏北部の県庁所在地でアニメのキャラクター商品を企画・開発し、直営店において販売する株式会社A(3月決算法人)において、総務及び経理担当の部長を務めております。アニメのキャラクター商品は小中学生から大人まで、さらに男女を問わず人気で、その販売については競争も激しいところではありますが、おかげさまでわが社の業績はうなぎ上りであり、販売活動を行う直営店は、現在首都圏全域に20店舗まで拡大しております。 わが社はキャラクター商品に係るマーケティング戦略として、顧客の囲い込みの観点から、代金の一部として使用することができるポイント制度を採用しております。当該ポイント制度は、基本的に販売代金(税抜)の10%相当額のポイントを付与し、顧客がそのポイント(1ポイント=1円相当)を使用して直営店やネットショップでグッズを購入することができるという仕組みを採っています。また、当該ポイントはわが社が指定する景品(非売品だが市場価格を参考にポイントを設定)との引き換えにも使用することができます。なお、ポイントの有効期限は付与の日から2年間です。 ところで、このようなポイント制度に関し、先日わが社が受けた国税局の税務調査で問題点を指摘されました。わが社は顧客に付与したポイントにつき、その付与した事業年度末において未使用の残高のうち、過去の実績からポイントの有効期限を踏まえて翌事業年度以降において使用される可能性が高い金額、具体的には未使用残高の50%相当額を損金に算入しております。これに対し調査官は、当該ポイントのうち各事業年度末における未使用分は、債務が確定していないため全額損金に算入すべきでないとして、否認してきました。 わが社としては、会計士の指導の下、各事業年度末において未使用のポイント残高のうち、過去の実績に基づく合理的な算定方法により、その50%相当額を損金に算入しているため、法人税法上の公正処理基準に照らし適正な処理であると考えておりますが、わが社と課税庁のいずれの見解が正しいのでしょうか、教えてください。 【A】 ポイント制度に関しては、顧客に対して商品購入の際にポイントが付与された時点では、次回購入時における代金充当の選択又は景品交換の選択がされない限り、その債務に基づいて給付すべき具体的内容が明らかにならないため、これに伴う費用が発生したとはいえず、その費用の金額を合理的に算定することはできません。 そして、当該ポイント制度については、法人税法及びそれを受けた法令解釈通達における債務確定要件のうち、まず債務が成立していないと考えられるが、仮に成立しているとしても、事業年度末までに具体的原因事実が発生していること、その金額を合理的に算定することができるものであることの2点を充足しているとは認めることができないことから、事業年度末におけるポイントの未使用相当分については債務が確定していないため、全額損金に算入することはできないと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 法人税法における損金 法人税法上、損金の額には、別段の定めがあるものを除き、原則として、すべての原価・費用及び損失の額が含まれるとされている(法法22③)。ここでいう原価・費用及び損失の額は、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算されるべきというのが、法人税法の基本原則であり、これを公正処理基準ないし企業会計準拠主義という(法法22④)。 また、費用については、償却費を除き、当該事業年度終了の日までに債務の確定していないものは、損金の額に算入すべき費用から除外している(法法22③二)。これは法人の費用の年度帰属の問題と関連する点であり、法人税法では一般に、権利確定主義が妥当すると解されている(※1)。 (※1) 金子宏『租税法(第23版)』(弘文堂、2019年)358頁。   (2) 債務の確定の意義 債務の確定については、実務上、法人税基本通達の規定を参考にするケースが多い。すなわち、同通達によれば、債務が確定している費用とは、以下の要件すべてに該当するものをいう(法基通2-2-12)。 上記要件は、企業会計における引当金の計上基準(下記参照)と類似している。 〈企業会計原則注解18における引当金の計上基準〉 上記通達の③と引当金の計上基準エはほぼ同視することができる。問題は通達の①、②で、引当金の計上基準ア~ウでは債務が成立しているとまではいえない(条件付債務)。したがって、法人税法上の債務の確定は、企業会計における引当金の計上基準より狭い概念であるといえる。   (3) ポイント制度とは 次に、本件で問題となっているポイント制度について、その概要を見ておきたい。ポイント制度(customer royalty program)とは、一般に、商品の販売やサービスの提供に応じて、その代金の一定割合を乗じて計算したポイントを顧客に付与する制度で、顧客は次回以降の商品の販売やサービスの提供の際に、付与されたポイントをその代金の一部に充当することができる。付与されたポイントは、付与した企業の商品やサービスにのみ充当できるケースと、参加する複数の企業に広く使用できるケースとがある。多くのポイント制度では、付与されたポイントについて有効期限がある。 企業が当該ポイント制度を導入する理由としては、マーケティング戦略上、顧客へのポイントの付与により、自社製品や自社サービスの値引きを約束することで、顧客を競合企業から囲い込む効果を期待してのものと考えられている(ロックイン効果)。ポイント制度はアメリカにおいて19世紀中ごろから始まったとされる説があるが(※2)、わが国では1985年にヨドバシカメラが開始したことで一般的になったと考えられる(現:ゴールドポイントカード)。 (※2) 小本恵照「進化するポイントカードとその将来性」(『ニッセイ基礎研REPORT』2007年2月号1頁)。   (4) 収益認識基準導入後のポイントに係る収益認識 企業会計においては、従来、収益の認識基準について、企業会計原則にいう実現主義ないし実現原則により処理するものとされてきたが、平成30年3月30日に「企業会計基準第29号」が公開され、「収益認識基準」が定められた。これを受け、法人税法においても、平成30年度税制改正で新たに収益の計上時期及び計上金額に関する通則的な規定(法法22の2)が置かれた。それに伴い法人税基本通達も整備され、ポイント制度に関しても対応する収益認識基準が新たに示されている(法基通2-1-1の7)。 当該通達の骨子は、企業会計上の収益認識基準に従って、ポイント等の付与による履行義務を当初の資産の販売等とは別の履行義務として区分した場合において、一定の要件を満たすときには、法人税においても、別の取引に係る収益の前受けとして取り扱うことが容認されるというものである。   (5) 未使用のポイントに係る損金性が争われた事案 本件のように、期末において未使用のポイントがある場合、その損金性が問われた事案として、東京地裁令和元年10月24日判決(裁判所ホームページ行政事件裁判例集、TAINSコード:Z888-2302)があるので、以下でその内容を確認しておきたい。 ① 事案の概要 本件は、アニメのキャラクター商品等の販売等を行う原告が、ア.平成22年10月期、イ.平成23年10月期から同26年10月期までの各事業年度につき、顧客が原告の各店舗で商品等を購入する際に付与したポイントの各事業年度末における未使用分に相当する金額(ただし、イ.の各事業年度については、それぞれ前年度のポイント未払残高より増額した金額を指す)を、当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入したところ、豊島税務署長から、本件ポイント未払計上額につき、各事業年度末において債務が確定しているとは認められないとして、各事業年度に係る法人税の更正処分等を受けたため、原告が、これら処分の一部の各取消しを求めた事案である。 ② 事案の争点 事業年度末におけるポイント未払計上額の損金算入は可能か。 ③ 裁判所の判断 なお、本件は納税者側が控訴せず確定している。 ④ 本裁判例からいえること ポイント制度に関しては、会計上、新たに導入された収益認識基準を採用していない企業の場合には、その多くがポイント等引当金により経理処理しているものと考えられる(※3)。その場合、ポイント等引当金繰入額は別段の定めに規定される引当金(貸倒引当金)ではないため、原則通り「債務の確定」の有無に従い損金性が判断されることとなる(法法22③二)。 (※3) この点、本件判決文中の「前提事実」において、「本件各事業年度の当時、ポイントの会計処理方法について個別に定める会計基準は存在しておらず、実務上は、①ポイントを顧客に付与した時点で費用処理する方法(以下「付与時費用処理法」という。)、②ポイントが使用された時点で費用処理するとともに、期末に未使用ポイント残高に応じた引当金を計上するという方法(以下「引当金処理法」という。)、③ポイントが使用された時点で費用処理するが、引当金計上はしないという方法(以下「使用時費用処理法」という。)が行われていたところ、そのうち、②引当金処理法を採用する企業が多数であった」とされている。 企業会計上の引当金は、法人税法にいう「債務の確定」の要件、具体的には通達(法基通2-2-12)でいうところの「債務が成立していること」及び「具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること」という要件を満たしていないため、ポイント等引当金繰入額は損金に算入できないものと考えられる。なお本裁判例の場合、原告はポイント等引当金を採用していないようである。 ところで、裁判所は「カード会員の初回購入時にポイントが付与された時点では、仮にその時点で原告の主張する債務(次回購入時における代金充当又は景品交換をすべき債務)が成立しているとしても」としているが、当該債務は次回購入時・・・・・(ないし交換時)においてはじめて(発生ではなく)成立する債務であると考えられ、「仮に」という譲歩がついているとはいうものの、ポイント付与時という次回購入前・・・・・(ないし交換時)において成立するという原告の主張を受け入れることは、必ずしもなかったのではないかと考えられる。むしろ、期末時点の未使用残高のうち、仮に(引当金の場合と同様に)翌期以降に使用される額を過去の実績等に基づき算定することができれば、それは「その金額を合理的に算定することができる」という要件を満たしているものと考えられる。 ところで、本件のように、翌期以降に使用される(見込み)額を過去の実績等に基づき算定するという手法が、通達にいう「その金額を合理的に算定することができる」という要件に当てはまるかどうかは、裁判例等がないため不明であるが、引当金の場合それを実行し認められていることから、筆者は検討に値するものと考えるところである。もっとも、仮にそれが合理的と判断されたとしても、法人税法上は、残りの2要件を満たすかどうかにつき、当然別途検討する必要がある。   (6) 本件へのあてはめ ポイント制度に関しては、顧客に対して商品購入の際にポイントが付与された時点では、次回購入時における代金充当の選択又は景品交換の選択がされない限り、その債務に基づいて給付すべき具体的内容が明らかにならないため、これに伴う費用が発生したとはいえず、その費用の金額を合理的に算定することはできない。そして、当該ポイント制度については、法人税法及びそれを受けた法令解釈通達における債務確定要件のうち、まず債務が成立していないと考えられるが、仮に成立しているとしても、事業年度末までに具体的原因事実が発生していること、その金額を合理的に算定することができるものであることの2点を充足しているとは認めることができないことから、事業年度末におけるポイントの未使用相当分については債務が確定していないため、その全額を損金に算入することはできないと考えられる。 (了)

#No. 439(掲載号)
#安部 和彦
2021/10/07

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第11回】「外国関係会社で損失が生じた場合に、その損失を内国法人の所得から控除することは認められるか否か」

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第11回】 「外国関係会社で損失が生じた場合に、その損失を内国法人の所得から控除することは認められるか否か」   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 外国子会社合算税制(※1)によれば、外国関係会社に該当する法人の留保所得は内国法人の所得に合算されるということですが、当該外国関係会社に損失が生じた場合には、内国法人の所得から控除することが認められますか。 (※1) 本稿では、平成29年度改正を受け、従来慣行的に用いられていた「タックス・ヘイブン対策税制」の用語は、判決文を除き、極力使用しないこととする。 〔A〕 外国関係会社に帰属する損失について、当該損失を内国法人の所得の計算上損金の額に算入することは認められません。 ●●●〔解説〕●●● 1 会社単位の合算課税制度 (1) 平成29年度税制改正の趣旨 平成28年12月8日に公表された「平成29年度税制改正大綱」では、「平成29年度税制改正においては、外国子会社を通じた租税回避を抑制することを目的とする『外国子会社合算税制』を総合的に見直す」という方針が示され、「具体的には、『外国子会社の経済実態に即して課税すべき』との『BEPSプロジェクト』の基本的考え方を踏まえ、経済実体がない、いわゆる受動的所得は合算対象とする一方で、実体ある事業からの所得であれば、子会社の税負担率にかかわらず合算対象外とする(※2)」との考え方が示され、それまでの外国子会社合算税制が大幅に改正された。改正後は、下記のとおり、①特定外国関係会社、②対象外国関係会社の2つに分類(※3)される。 (※2) 従前のトリガー税率(直近で20%)の下では、実体のある事業からの所得でも合算されてしまうという問題(「オーバーインクルージョン」と呼ばれる)が指摘されていた。 (※3) この他、従前の適用除外基準を満たし(改正後は「経済活動基準」)、一定の資産性所得を有するもの(特定外国関係会社を除く)のうち、租税負担割合が20%に満たないものは、平成29年度改正により、所得単位の合算課税の対象として、「部分対象外国関係会社」と規定された。 (2) 制度の概要 平成29年度改正では、外国関係会社(措法66の6②一)のうち、租税回避リスクの高いものを特定外国関係会社と定義し(措法66の6②二)、会社単位で合算課税の対象とする制度が新設された。 ① 特定外国関係会社 特定外国関係会社は、その後の改正もあり、現在では次に掲げる4つが規定されているが、いずれも、その租税負担割合が30%以上であるときには、合算課税の適用が免除とされる(措法66の6⑤一)。 ② 対象外国関係会社 対象外国関係会社とは、上記①に該当せず、かつ、経済活動基準(※4)(平成29年度改正前の「適用除外基準」)のうちいずれかを満たさない外国関係会社をいい、同基準のいずれかが欠けると、能動的所得を得る上で必要な経済活動の実体を備えていないと判断される。ただし、租税負担割合が20%以上であれば、合算課税の適用は免除される(措法66の6⑤二)。 (※4) (ⅰ)事業基準、(ⅱ)実体基準、(ⅲ)管理支配基準、(ⅳ)非関連者基準又は所在地国基準の4つの基準から成る。 なお、この制度は、平成29年度改正前の外国子会社合算税制と類似するが、同改正において、一定の要件を満たす航空機の貸付けについては、経済活動基準の内の事業基準を満たすこととされた。さらに、平成30年度改正において、一定の外国金融持株会社についても、同じく事業基準を満たすこととされた。 (3) 適用対象金額の計算 租税特別措置法66条の6第1項は、外国関係会社のうち、特定外国関係会社又は対象外国関係会社に該当するものが適用対象金額を有する場合、その適用対象金額のうち調整対象金額に相当する金額について、その内国法人の所得の計算上益金の額に算入すると規定している。 ここでいう適用対象金額とは、外国関係会社の決算に基づく所得の金額について法人税法等による所得の金額の計算に準ずる一定の基準により計算した金額(基準所得金額)を基礎として、繰越欠損金の額及び法人所得税の額に関する調整を加えて計算したものをいう。また、調整対象金額とは、適用対象金額に外国関係会社の各事業年度の時における内国法人の有する株式の占める割合を乗じて計算したものをいう(措法66の6①、②四、措令39の15)。この場合の欠損金の繰越期間の制限は前7年以内とされている。なお、かかる計算構造は平成29年度改正前と同様である。 (4) 問題の所在 そもそも、租税特別措置法66条の6は、外国関係会社に欠損が生じた場合の取扱いについては明示していない。上記(2)で見たような内国法人に従属するペーパーカンパニー等の場合、実質所得者課税の原則(法法11)(※5)から、その所得は内国法人に合算されることとの平衡上、損失が計上された場合に内国法人の所得の計算上損金に計上されるべきという主張もあり得よう。 (※5) 法人税法11条《実質所得者課税の原則》とは、収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益はこれを享受する法人に帰属するものとして、法人税法を適用するというものであり、法律上の所得の帰属の形式とその実質が異なるときには実質に従って租税関係が定められるべきであるという租税法上当然の条理を確認的に定めた規定である。昭和53年に外国子会社合算税制が導入される以前は、タックス・ヘイブンに子会社を設立して税負担を不当に回避ないし軽減を図る行動への対抗措置として、課税庁は法人税法11条を適用し、子会社の損益が内国法人に帰属するものとして課税するなどの方法により対応していた。 これに対し、上記(3)のとおり、適用対象金額の計算過程で繰越欠損金を控除することから、外国関係会社に欠損が生じた場合、いくら当該外国関係会社が特定外国関係会社等に該当したとしても、当該欠損金を内国法人の所得の計算上損金算入することは認められないという主張が対立する。これについて争われたのが、以下で検討する双輝汽船事件である。   2 過去の裁判例 《双輝汽船事件最高裁判決》(※6) (※6) 最高裁二小平成19年9月28日判決・平成17年(行ヒ)第89号(TAINSコード:Z257-10794)。 (1) 事案の概要 本件は、海運業を営む内国法人であるX(原告・被控訴人・上告人)が、パナマにおいて設立した子会社であるB社に生じた欠損が実質的には親会社であるXに帰属するとして、これをXの損金に算入して各事業年度に係る法人税等の申告をしたところ、処分行政庁から、B社の欠損をXの損金に算入することは租税特別措置法66条の6の規定の認めるところではないなどとして、法人税等の更正及び過少申告加算税賦課決定を受けたため、Xが、これらの処分を不服として提訴した事案である。 なお、本件の第一審ではXが勝訴(※7)し、第二審(※8)では課税庁が逆転勝訴したことで、Xが最高裁に上告した。 (※7) 松山地裁平成16年2月10日判決・平成14年(行ウ)第4号(TAINSコード:Z254-9554)は、タックス・ヘイブン税制の趣旨を述べた上で、租税特別措置法66条の6は、特定外国子会社等の所得が生じている場合についての取扱いを規定したものであり、特定外国子会社等に欠損が生じた場合について規定したものではないため、当該欠損金額を内国法人の損金の額に算入することが、同法において禁止されるということはできないと判示し更正処分等を取り消した。 (※8) 高松高裁平成16年12月7日判決・平成16年(行コ)第7号(TAINSコード:Z254-9847)。 (2) 裁判所の判断 ① 外国関係会社の欠損金の繰越控除との関係について 最高裁は、租税特別措置法66条の6第2項4号の立法趣旨について、「特定外国子会社等(現行:外国関係会社)の留保所得について内国法人の益金の額に算入すべきものとしたこととの均衡等に配慮して、当該特定外国子会社等に生じた欠損の金額についてその未処分所得の金額の計算上5年間(現行:7年(上述))の繰越控除を認めることとしたもの」と判示し、この措置が、「内国法人に係る特定外国子会社等に欠損が生じた場合には、これを翌事業年度以降の当該特定外国子会社等における未処分所得の金額の算定に当たり5年を限度として繰り越して控除することが認められているにとどまるものというべきであって、当該特定外国子会社等の所得について、同条1項の規定により当該特定外国子会社等に係る内国法人に対し上記の益金算入がされる関係にあることをもって、当該内国法人の所得を計算するに当たり、上記の欠損の金額を損金の額に算入することができると解することはできないというべき(下線筆者)」と判示し、子会社の損失の損金算入を明確に否認した。 ② 実質所得者課税の原則と外国子会社合算税制の関係 B社の実体について、最高裁は、「B社は、本件各事業年度においてXに係る特定外国子会社等に該当するものであり、本店所在地であるパナマに事務所を有しておらず、その事業の管理、支配及び運営はXが行っており、措置法66条の6第3項(旧法の「適用除外基準」をいい、現行同2項3号イ~ハの「経済活動基準」を指す)所定の要件は満たさないが、他方において、パナマ船籍の船舶を所有し、Xから資金を調達した上で自ら船舶の発注者として造船契約を締結していたほか、これらの船舶の傭船に係る収益を上げ、船員を雇用するなどの支出も行うなど、Xとは別法人として独自の活動を行っていた」と認定している。その上で、実質所得者課税の原則該当性について、「本件においてはXに損益が帰属すると認めるべき事情がないことは明らかであって、本件各事業年度においては、B社に損益が帰属し、同社に欠損が生じたものというべきであり、Xの所得の金額を算定するに当たり、B社の欠損の金額を損金の額に算入することはできない」と判示した。 (3) 実質所得者課税の原則に関する若干の考察 実質所得者課税の原則は、法律的帰属説と経済的帰属説が対立するが、前者が通説(※9)であり、それによれば、外国関係会社の事業が内国法人によって管理・支配されていたとしても、設立根拠法が異なる別法人である以上、当該外国関係会社の損益が内国法人に帰属することはあり得ないということとなろう(※10)。 (※9) 金子宏『租税法(第21版)』(弘文堂、2016年)171頁は、「経済的帰属説を採ると、所得の分割ないし移転を認めることになりやすいのみでなく、納税者の立場からは、法的安定性が害されるという批判がありうるし、税務行政の見地からは、経済的に帰属を決定することは、実際上多くの困難を伴う、という批判がありうる。その意味で、法律的帰属説が妥当である」と述べる。 (※10) 入谷淳『タックスヘイブン対策税制』税務弘報2015年1月号・中央経済社・73頁参照。 上記のとおり、最高裁は、B社の欠損はB社に帰属すると判定しており、法律的帰属説を採用する以上当然の帰結といえる。 (了)

#No. 439(掲載号)
#霞 晴久
2021/10/07

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第6回】「限度面積を超えた場合の小規模宅地等の特例の適用の適否」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第6回】 「限度面積を超えた場合の小規模宅地等の特例の適用の適否」   税理士 柴田 健次   [Q] 被相続人である甲の相続人は、乙1人となりますが、小規模宅地等の特例対象宅地等は、自宅の土地(165㎡)と駐車場敷地(110㎡)が該当します。小規模宅地等の特例の減額の計算については、自宅敷地(165㎡)について8割減額、駐車場敷地(110㎡)について5割減額をして、相続税の申告書を期限内に提出しました。 この場合において、限度面積を超えて申告をしてしまったことについて、後日、限度面積内で小規模宅地等の特例対象宅地等を選択して修正申告をすることは可能でしょうか。 また、税務署から修正申告をする前に増額更正処分を受けた場合には、後日、限度面積内で小規模宅地等の特例対象宅地等を選択して更正の請求をすることは可能でしょうか。 [A] 小規模宅地等の特例(以下、単に「特例」という)は、限度面積要件がありますので、限度面積を超えて特例を適用した場合には、要件を満たさないことになりますので、特例の適用を受けることはできません。ただし、期限後申告や修正申告の場合にも、特例の適用を認めていますので、当初申告後に限度面積要件を満たした修正申告書を提出した場合には、特例の適用を受けることはできます。 しかし、修正申告前に増額更正処分があった場合には、更正の請求事由に該当しないと考えられますので、その後、限度面積要件を満たしたことによる更正の請求はできません。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 限度面積要件 限度面積要件は、貸付事業用宅地等の特例の適用があるか否かに応じて、下記の通りとなります(措法69の4②)。限度面積要件を満たさない場合には、その選択特例対象宅地等のすべてについて特例の適用がないことになります(措通69の4-11)。 【限度面積】 ① 選択した特定居住用宅地等の面積 ② 選択した特定事業用宅地等の面積 ③ 選択した特定同族会社事業用宅地等の面積 ④ 選択した貸付事業用宅地等の面積 なお、本問の場合、自宅の土地(165㎡)が①に、駐車場敷地(110㎡)が④に該当し、上記に当てはめると となり、限度面積である200㎡を超えてしまっています。   2 修正申告 本問の場合には、限度面積要件を満たさず当初申告を行っていますので、納付すべき税額に不足額があるときに該当し、下記の国税通則法19条1項の修正申告事由に該当しますので、更正があるまでは、修正申告を行うことができます。 国税通則法 第19条 (※) 本稿で引用している条文等につき、一部括弧書等を省略している。以下同様。 特例は、期限後申告や修正申告の場合にも認められています(措法69の4⑦)ので、修正申告書の提出において、限度面積内で特例対象宅地等を選択して修正申告をすることが可能となります。 本問の場合には、特定居住用宅地等の特例を優先的に適用させる場合には、特定居住用宅地等の選択適用面積(165㎡)、貸付事業用宅地等の選択適用面積(100㎡)となり、貸付事業用宅地等の特例を優先的に適用させる場合には、貸付事業用宅地等の選択適用面積(110㎡)、特定居住用宅地等の選択適用面積(148.5㎡)となります。   3 更正の請求 修正申告前に増額更正処分が行われた場合には、当初申告の特例の適用がないものとして税額計算が行われます。その増額更正処分後に限度面積内で特例を適用して更正の請求を行うことができるかどうかについては、下記の国税通則法23条1項1号に該当するか否かを検討することになります。 国税通則法 第23条 増額更正処分の税額計算は、特例がないものとして計算をしていることになりますが、計算に誤りがあったことにはなりませんので、本問の場合には、更正の請求事由に該当しないため、更正の請求はできないと考えられます。   ★実務上のポイント★ 限度面積要件を常に確認して申告するとともに、万が一、限度面積を超えて申告してしまった場合には、更正前に修正申告をすることが重要となります。   (了)

#No. 439(掲載号)
#柴田 健次
2021/10/07
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