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《速報解説》 各府省庁からの令和4年度税制改正要望が取りまとめられる~各特例措置の延長の他、コロナ禍受け「地方拠点強化税制」は要件緩和の要望も~

《速報解説》 各府省庁からの令和4年度税制改正要望が取りまとめられる ~各特例措置の延長の他、コロナ禍受け「地方拠点強化税制」は要件緩和の要望も~   Profession Journal編集部   昨年はコロナ禍の影響で1ヶ月遅れたが、今年は例年通りの日程で来年度(令和4年度)に向けた各府省庁からの税制改正要望が取りまとめられた。 ここ数年は経済活性化を目的に新たな税制措置を要望している経済産業省だが、今回の要望では、制度スタートと同時期にコロナ禍となった「オープンイノベーション促進税制(措法66の13)」や「5G投資促進税制(措法42の12の6)」が来年3月で適用期限を迎えるため一部要件の見直しと2年延長を要望しているほか、交際費課税の特例措置(措法61の4)、中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)の取得価額の損金算入の特例(措法67の5)について2年延長等を要望している。また、具体的な要望は見られないが、事業承継税制(法人版・個人版)については、「コロナ禍の影響も含め、事業承継の実施状況や本税制の活用状況等を踏まえ、法人版・個人版事業承継税制における円滑な事業承継の実施のための措置について」の検討を要望している。さらにG20/OECDにおけるデジタル課税の国際的な合意に向けた対応として下記の要望が示されており、令和5年度以降の改正を含めた動向について注視が必要と言える。 経産省からは他に、印紙税のあり方の検討(近年の電子取引の増大等を踏まえ、制度の根幹からあり方を検討)や、子会社からの配当及び子会社株式の譲渡を組み合わせた国際的な租税回避への対応の見直し(日本企業の海外での健全な事業活動に過度な負担が及ぶことがないよう本税制の趣旨やビジネス実態を踏まえた所要の見直し)、企業の生産性を向上させる事業再編を円滑化するための所要の措置として「グループ通算制度における、グループ通算子法人のグループ離脱時の取り扱い等について、制度の施行状況や組織再編税制との整合性等を踏まえ、中期的に必要な検討」を行うことが要望されている。 次に国土交通省からは、年末に適用期限を迎える住宅ローン控除(措法41)、住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置(措法70の2)等について「住宅投資の波及効果に鑑み、(中略)新型コロナウイルス感染症拡大及びまん延防止のための措置等による影響を含めた今後の経済情勢等を踏まえ、2050年カーボンニュートラルの実現等を図る観点も含め、必要な検討を行い、所要の措置を講じる」よう要望されており、具体的な改正の中身については年末にかけての議論で明らかになる模様。また、住宅リフォーム(耐震・バリアフリー・省エネ・多世帯同居・長期優良住宅)をした場合の特例措置(ローン型・投資型)についてもそれぞれ年末で適用期限が到来することから、2年延長と一部要件の見直しが要望されている(固定資産税の特例も同様)。その他、居住用財産の買換え特例(譲渡益の課税繰延べ、譲渡損の繰越控除等)の2年延長や、所有者不明土地対策として「ランドバンクが取得する土地等に係る特例措置の創設(登録免許税・不動産取得税)」が要望事項として示されている。 内閣府からは、国家戦略特区、国際戦略総合特区に係る各特例措置や沖縄振興に関する各施策の延長等の他、コロナ禍を受け本社機能の地方移転を行う企業を後押しするため「地方拠点強化税制(オフィス減税(税額控除又は特別償却)・雇用促進税制の特例(税額控除))」の2年延長及び、「感染症の影響によるビジネス環境や企業動向の変化等を踏まえた適用要件の緩和等の拡充」が要望されている。地方移転の検討を進めている企業にとって注目の改正と言えよう。コロナへの対応としては他に、令和3年度改正で延長された「特別貸付けに係る消費貸借契約書の印紙税の非課税(新型コロナ税特法11)」について、特別貸付けが延長された場合は当該期限まで延長することが要望事項として掲げられている。 既報のとおり「金融所得課税の一体化に関する研究会」より7月に公表された「論点整理」では、デリバティブ取引への損益通算の範囲拡大に向け、まずは有価証券市場デリバティブ取引について損益通算の対象としていくことが適切とされ、また租税回避のための施策案が提示されているが、今回の金融庁からの要望事項では、この論点整理に準じた要望がなされている(他には「上場株式等の相続税に係る見直し」や「生命保険料控除の拡充」等)。 全体として適用期限をむかえる各特例措置の延長要望が多く、新制度創設や抜本的な見直しは少ないと言えるが、ここ数年の与党大綱では、「相続税と贈与税の一体化(資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築)」や「小規模宅地等の特例措置(節税を目的とした駆け込み的な適用等の防止)」、「教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(次の適用期限の到来時に制度の廃止も含め改めて検討)」など今後の検討事項とされているものが特に資産税関係に多く、与党税制調査会での年末に向けた議論の動向には注視が必要と言えよう。 (了)

#No. 434(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/09/06

プロフェッションジャーナル No.434が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年9月2日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.434を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/09/02

monthly TAX views -No.104-「デジタル課税、G20/OECD合意の賞味期限」

monthly TAX views -No.104- 「デジタル課税、G20/OECD合意の賞味期限」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   8月12日付の日経新聞に、「パナソニック、家電で機能詰め込み脱却」と題した要旨以下のような記事が掲載されていた。 筆者がこの記事から連想したのは、モノと機能が分離され、機能は後からダウンロードサービスという形で購入(提供)するという、IoTの発達したモノづくりの姿である。 そして、なぜこの内容に注目したかというと、この取組みが、現在G20で議論されているデジタル法人課税の議論と深く関連するからである。 *  *  * G20/OECDで行われているデジタル課税の議論をわかりやすく言えば、デジタル経済の発達によってPE(恒久的施設)を置くことなく国境を越えるビジネスの展開が可能になったことから、ユーザー(消費者)のいる市場国の税収が落ち込み、それをいかに取り返すかということである。 様々な議論の末、7月には、多国籍巨大企業を対象として、その超過利益の一部を市場国に配分することの大筋合意ができた。 当初の議論では、GAFA等の巨大デジタル企業を対象としていたのだが、「デジタル企業の定義がはっきりしない。GAFAの狙い撃ちはけしからん」という米国の声を受け、全事業(資源・金融などを除く)を対象にすることとなった。 すなわち、この問題はGAFAに限定されたものではなく、冒頭のパナソニックの例のように、IoTを得意とするわが国の大規模多国籍企業にも今後関連してくる話ということになる。 *  *  * 自動車産業の近未来像も、市場国では付加価値の低い自動車のボディー部分だけを製造し、自動運転に必要なデータや運転のシステムは、わが国からデジタルサービスとして供給(通信)するというビジネスモデルに変わる可能性がある。「第4次産業革命」で唱えられてきた製造業のaaS(アズ・ア・サービス)化ということでもある。 問題は、このようなビジネスモデルが進んでいくと、「市場国」に落ちる法人税収はますます減少するので、彼らとしてはさらなるルール変更に向けた議論が必要だということになる。 究極的なルールとして考えられるのは、現在本店所在地で課税している法人税を、消費税(VAT)のように仕向地(消費者の居住する国、市場国)で課税する方法(仕向地法人税)に変更することである。これは、“法人税の消費税化”とも言えよう。欧州各国で導入され、アジア諸国にも広がりつつあるデジタルサービス税(DST、売上税)は、その変形とも言える。 その意味で、今回のG20/OECDのデジタル課税に関する基本合意、秋に予定されている最終合意は、「最終的なもの」ではない、ということになるのではないか。 (了)

#No. 434(掲載号)
#森信 茂樹
2021/09/02

[令和3年度税制改正における]教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置

[令和3年度税制改正における] 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置   税理士 徳田 敏彦   教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、父母、祖父母等の直系尊属が30歳未満の子、孫等へ教育資金を信託等により一括して拠出した場合に、受贈者ごと1,500万円(うち、学校等以外に支払う金銭は500万円)まで贈与税が非課税となる制度である。 平成31年に1度目の改正があり、令和3年が2度目の改正となる。令和3年度税制改正における主な改正点は2点である。 1点目が適用期限の延長、そして2点目が管理残額の相続財産への加算及び2割加算の適用についてである。 本稿では改正点に重きをおくため、制度の基本的な内容について触れないことに留意する。   1 適用期限 平成25年4月1日から令和3年3月31日までの適用期限が2年延長され、令和5年3月31日までとなる。   2 管理残額の相続財産への加算及び相続税額の2割加算(相続税法18条)の適用 平成25年4月1日に本制度がスタートした段階では、拠出した金額は、贈与者が死亡した場合に管理残額があっても贈与者の相続財産への加算は行われず、相続税額の2割加算の対象からも外れていた(管理残額とは死亡日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残高のことをいう)。 しかし、平成31年度改正で、平成31年4月1日から令和3年3月31日までに拠出した金額について、管理残額がある場合には、贈与者の死亡前3年以内の拠出分は受贈者が23歳未満又は学校在籍中等の一定条件に該当する場合を除き、相続又は遺贈により取得したものとみなされ、贈与者の死亡に係る相続税の課税対象となり、相続財産への加算対象とされた。ただし、その場合でも相続税額の2割加算の適用はなかった。 そして、令和3年度改正で、贈与者死亡時における管理残額を、拠出時期と死亡日までの年数にかかわらず、受贈者が23歳未満又は学校在籍中等の一定条件に該当する場合を除き、相続財産に加算するよう改正された。あわせて贈与者の子以外の直系卑属(孫、ひ孫等)への贈与に係る管理残額の一定金額については、相続税額の2割加算の対象となるよう改正された。いずれも令和3年4月1日以後に信託等により拠出された教育資金から対象となる。 改正の推移を一覧表にすると以下となる。 (出典) 国税庁発表資料を一部加工   3 改正点における留意事項 (1) 平成31年4月1日から令和3年3月31日までの拠出分の管理残額のうち相続財産の加算対象外のもの 贈与者の死亡前3年以内の拠出分が相続財産への加算対象となるが、受贈者が贈与者の死亡日において、以下のいずれかに該当する場合には、相続財産には加算しないものとする。 (2) 令和3年4月1日以後拠出分の管理残額のうち相続財産の加算対象外のもの 贈与者の拠出日と死亡日までの年数にかかわらず、管理残額が相続財産への加算対象となるが、受贈者が贈与者の死亡日において、以下のいずれかに該当する場合には、相続財産には加算しないものとする。 (3) 管理残額の相続税額の2割加算について 相続や遺贈、相続時精算課税制度で財産を取得した者が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含む)及び配偶者以外の者である場合には、その者の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額を加算する。 教育資金一括贈与制度を利用する場合に、受贈者として孫、ひ孫への贈与が多いと思われるが、代襲相続人でない孫、ひ孫への管理残額は相続税額の2割加算の対象となる。 2割加算については、令和3年4月1日以後拠出分から適用される。 (4) 受贈者の所得制限 平成31年4月1日以後の拠出については、受贈者の前年分の合計所得金額が1,000万円以上の場合には本制度の適用はできない。これは令和3年4月1日以後も同様である。 (5) 管理残額以外の財産を取得しなかった者の相続開始前3年以内贈与加算 管理残額以外に被相続人から相続開始前3年以内に暦年贈与を受けていた場合でも、相続又は遺贈で管理残額以外の財産を取得しなかった場合には、相続財産の加算の適用はない。 ただし、死亡保険金や死亡退職金等のように、相続又は遺贈により取得としたものとみなされる財産を取得した場合には、3年以内贈与加算の適用があることに留意する。 (6) 管理残額の計算及び2割加算の計算について ① 管理残額の算出 この場合の相続財産に加算する管理残額の計算は以下となる。 (※1) 平成31年3月31日以前に取得したものは含まない。 (※2) 平成31年4月1日から令和3年3月31日までの間に取得したもののうち、贈与者の死亡前3年以内に取得したものでないものは含まない。 ② 2割加算の算出 2割加算の対象とならない金額は以下となる。 上記①の事例に当てはめると、2割加算の対象とならない金額は以下となる。 つまり、本事例では令和3年4月1日以後拠出した金額がないため、管理残額はあっても相続税額の2割加算の対象になるものはない。 (7) 管理残額に対する贈与税課税の発生事由 次のいずれか早い日に教育資金口座の契約は終了となり、管理残額が贈与税の課税価格に算入される。 (※) ただし、上記(4)の場合には贈与税の課税価格に算入されるものはない。 (出典) 国税庁パンフレット「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」   4 今後の動向 本制度創設時点では、管理残額があっても相続税の対象とはならず、受贈者が30歳になった時点で管理残額がある場合に贈与税だけが課税される仕組みであったため、父母、祖父母等の高齢者で金融資産を所有する者の相続税対策として利用されていた。 それから2度の改正を経て、受贈者が23歳未満あるいは学校在籍中等の一定条件に該当する場合を除き、管理残額が相続税課税の対象となり、さらに2割加算の対象となったため、今後の相続税対策として、以前のような利用は減ることが予想される。 しかし、本制度の趣旨である高齢者世代の保有する資産の若い世代への移転、教育資金の早期確保による多様な人材育成、子育て世代を支援し、経済活性化に寄与することという目的での利用は続くであろう。 また、税理士業務として相続税申告を受託した場合には、過去の本制度の利用を必ず確認する必要があることに留意したい。 (了)

#No. 434(掲載号)
#徳田 敏彦
2021/09/02

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第1回】「小規模宅地等の特例の適用となる取得原因と取得者」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第1回】 「小規模宅地等の特例の適用となる取得原因と取得者」   税理士 柴田 健次   [Q] 次に掲げる事由で次に掲げる者が被相続人の居住の用又は事業の用に供していた宅地を取得した場合に、小規模宅地等の特例の対象にならないものはありますか。 [A] ②④⑤については、小規模宅地等の特例(以下単に「特例」という)の適用を受けることはできません。 ①③は他の要件を満たせば、特例の適用を受けることができます。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 特例の対象となる取得原因 個人が相続又は遺贈により取得した財産が特例の対象とされています(措法69の4①)。この場合における遺贈には、死因贈与が含まれます(措法69の2①)。 被相続人からの死因贈与以外の贈与は、特例の対象に含まれていませんので、暦年贈与又は相続時精算課税贈与により取得した財産については、特例の適用を受けることはできません(措通69の4-1)。 したがって、④⑤については、特例の適用を受けることができません。   2 特例の対象者 特例の対象者は、被相続人の親族に限られます(措法69の4③)。したがって、相続税の納税義務者であったとしても法人には適用がありません。 親族とは、次に掲げる者とされています(民法725)。 血族とは、血縁関係にある者をいいますが、養子縁組後の親族関係は、養子と養親の間に法定血族関係が生じることになるため、養子は血族として取り扱われます。 したがって、①の従弟、③の養子、④⑤の長男は親族に含まれますが、②の内縁の妻は、親族には含まれませんので、特例の適用を受けることはできません。 《親族の範囲》   ★実務上のポイント★ 実務上は、遺言書の増加により相続人以外の親族が宅地を取得することも増えていますので、親族の範囲をしっかりと確認することが重要となります。   (了)

#No. 434(掲載号)
#柴田 健次
2021/09/02

遺贈寄付の課税関係と実務上のポイント 【第2回】「遺贈寄付の課税の全体像」

遺贈寄付の課税関係と実務上のポイント 【第2回】 「遺贈寄付の課税の全体像」   税理士・中小企業診断士・行政書士 脇坂 誠也   遺贈寄付の税務を理解するために、まず、どのようなことが税務上問題になるのか、今回はその全体像を見ていきたい。   1 遺贈寄付が関係する税金 遺贈寄付に関係する税金というと、誰でも相続税のことを考える。しかし、遺贈寄付に関係する税金は、相続税だけではなく、所得税も関係してくる。なぜなら、遺贈寄付をした場合にも、通常の寄付と同様に、寄付金控除が受けられる可能性があるからだ。また、株式や不動産などの現物資産を遺贈寄付した場合には、みなし譲渡課税が課される可能性がある。遺贈寄付に関係する税金としては相続税と所得税がある(場合によっては住民税なども関係する)ということを押さえたい。   2 「遺言による寄付」と「相続財産の寄付」の違い 次に、遺贈寄付に関係するポイントとして、遺贈寄付には、大きく、「遺言による寄付」と相続人による「相続財産の寄付」があるが、このどちらに該当するかによって課税関係は大きく異なってくる、ということを理解する必要がある。 (1) 遺言による寄付 遺言による寄付とは、被相続人の方が、公正証書遺言や自筆証書遺言を遺され、その遺言の中で、非営利団体への寄付などが明記されており、その遺言通りに実行された場合である。遺言による寄付の場合には、寄付者は被相続人である。 遺言に基づく財産の提供の場合には、その財産は遺言の効力が生じたときから法人に帰属したものとみなす。そして、法人は、相続税の納税義務者にならない。したがって、遺言による寄付の場合には、原則として、その財産について相続人の相続税の課税問題が発生することはない。 また、寄付先が国や地方公共団体、特定の公益法人等である場合には、被相続人の準確定申告で寄付金控除を受けることができる。 (2) 相続財産の寄付 それに対して、相続財産の寄付とは、遺言はなく、相続人が非営利団体に寄付をする場合である。相続財産の寄付の中には、被相続人の方の遺志を汲んで行われることもあるし、あるいは、相続人が、相続をした財産から、日頃から支援している団体に寄付をするようなケースもある。いずれにしても、寄付をすることは、最終的には相続人の意思であり、この場合には、寄付者は相続人である。 相続財産の寄付は、その提供財産は、いったん被相続人から相続人に相続され、その後に相続人から法人に寄付されると考える。したがって、原則として相続人に相続税が発生する。しかし、相続又は遺贈により取得した財産を、国や地方公共団体、あるいは特定の公益法人等に相続税の申告期限までに寄付をした場合には、相続税が非課税になる。これが租税特別措置法70条の規定である。 また、寄付先が国や地方公共団体、特定の公益法人等である場合には、相続人の確定申告で寄付金控除を受けることができる。   3 現物寄付によるみなし譲渡課税 不動産や株式などの資産を遺贈寄付した場合で、これらの資産に含み益がある場合には、みなし譲渡課税の対象になることがある。みなし譲渡課税とは、無償又は著しく低い価額で資産を譲渡した場合に、時価で譲渡したとみなして課税するものであり、個人から法人への資産の譲渡は、みなし譲渡課税の対象になる。普段の実務ではなかなか出てこないが、遺贈寄付の場合においては、不動産や株式を遺贈寄付するケースもしばしばあり、その場合、みなし譲渡課税の対象になることがある。 ただし、これらの財産を公益法人等に寄付をした場合に、その寄付が一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、所得税を非課税とする特例がある(租税特別措置法40条)。 また、寄付先が国や地方公共団体、特定の公益法人等である場合には、現物寄付であっても、寄付金控除の対象になる。したがって、このみなし譲渡所得分に寄付金控除が適用される場合もある。ただし、寄付金控除は、総所得金額等の40%が限度とされており、必ずしも寄付をした資産の全額が寄付金控除の対象になるわけではない。 含み益のある現物資産を遺贈寄付しようとする場合には、みなし譲渡課税にどのような対策を取っておくのか、ということが、税理士に求められるケースになることがある。 以上をまとめると、以下の通りである。 《遺贈寄付の課税の全体像》 (※1) 租税特別措置法70条の非課税規定あり。 (※2) 租税特別措置法40条の非課税規定あり。 *  *  * 次回から、「遺言により現預金の寄付をした場合」、「相続人が現預金の寄付をした場合」、「遺言により現物の寄付をした場合」、「相続人が現物の寄付をした場合」の順序で、詳しい内容を解説していきたい。 (了)

#No. 434(掲載号)
#脇坂 誠也
2021/09/02

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例33】「業績悪化事由による賞与の減額と事前確定届出給与」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例33】 「業績悪化事由による賞与の減額と事前確定届出給与」   国際医療福祉大学大学院教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、都内の下町において作業工具の製造及び販売を行う株式会社A(3月決算法人)において経理担当の課長を務めております。当社は創業以来50年以上、下町の町工場として地道に事業を継続してきましたが、その技術力はNASAや航空機メーカーから直接注文が来るくらい一流であると自負しております。そのためなのか、当社の業績にはかなりムラがあり、高度な工具の受注が多数入り売上が大幅に伸びる期もあれば、その反動で売上が落ち込み損失を計上する期もあります。 わが社においては、業績を左右するような大口の商談は、担当の役員が競って受注する状況であるため、業績に貢献した役員に対しては賞与で報いるという方針を採っております。その場合の賞与の支給形態ですが、ここ数年は前年実績に応じた事前確定届出給与によっております。 ところが、先日受けた税務調査で当該事前確定届出給与の損金性が問題となりました。A社の取締役のうちBとCに対して、前事業年度について事前確定届出給与としてそれぞれ夏季に300万円、冬季に500万円支払うものとして届け出ていましたが、夏季賞与については届出通り支払ったものの、冬季賞与については100万円に減額して支給していました。 冬季賞与について届出額から減額支給した理由は、コロナ禍の影響でA社の資金繰りが急速に悪化し、満額支払うことは極めて困難ということで、支給日直前の臨時株主総会及び取締役会で減額決議がなされたというものです。今回の減額支給は、会社法に定められた正当な手続きを経て行ったものであり、役員給与の支給で問題となりがちな「恣意的な」利益調整の側面は全くないものと考えられるため、夏季・冬季とも全額損金算入されるべきものと認識しております。 それに対し調査官は、届出通り支払っていない場合には、すべて事前確定届出給与に該当せず、減額した冬季のみならず、届出通り支払った夏季も全額損金不算入であると主張しております。調査官のこのような主張は、極めて理不尽ではないかと感じているのですが、果たして法人税法の解釈として正当といえるのでしょうか、教えてください。 〇 事前確定届出給与の届出内容(変更前)とその変更後の内容 【A】 本件のように、事前確定届出給与につき、取締役に対して届出通り賞与を支給していない場合であっても、業績悪化改定事由に該当するときには、変更の届出期限(改定事由が生じた日から1ヶ月以内)までに減額した金額を届け出ていれば、損金算入が認められます。 しかし、この業績悪化改定事由による減額に係る変更の届出を提出しておらず、また、その提出がなかったことについてやむを得ない事情がない場合には、届出の対象となったすべての賞与(夏季・冬季いずれも)につき損金不算入となるものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 役員給与の損金不算入 よく知られるように、平成18年度において抜本的な改正がなされた後の役員給与に関する法人税の取扱いの特徴は、役員給与は原則「損金不算入」となったということである。これは法人税法第34条第1項(役員給与の損金不算入(※1))の規定ぶりが、内国法人がその役員に対して支給する給与のうち次の3類型に該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない、となっていることがその根拠である(※2)。 (※1) 例えば、新日本法規編『実務税法六法(令和3年版)』の法人税法第34条のタイトルはこうなっている。 (※2) ちなみに、改正前の旧法人税法第34条第1項では、役員報酬のうち不相当に高額な部分の金額については損金の額に算入しないとなっており、原則は損金算入であるが、一定の報酬については例外的に損金不算入であるという規定ぶりであった。この規定ぶりは、別段の定めとして損金不算入を規定している他の規定(資産の評価損の損金不算入等(法法33)、寄附金の損金不算入(法法37)など)と平仄が合っており、改正後の役員給与の規定ぶりの特異性が際立っているといえる。   (2) 事前確定届出給与の損金算入 上記(1)①~③のうち、事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の「定め」に基づいて支給する給与(定期同額給与及び利益連動給与を除く)で、一定の届出期限までに所定の事項を記載した書類を納税地の所轄税務署長に届け出ることにより損金算入が認められる役員給与である(法法34①二)。 事前確定届出給与の届出期限であるが、以下のア~ウによりそれぞれ異なってくる。 ア 定時株主総会等の決議による場合 定時株主総会等の決議による場合、以下の①又は②のいずれか早い日となる(法令69④一)。 (※3) 法人の財産及び損益の計算の単位となる期間をいう(法法13①)。 イ 新設法人の場合 また、新設法人の場合は、その役員の設立の時に開始する職務につき、所定の時期に確定額を支給する旨の定めをしたときには、その設立の日以後2ヶ月を経過する日までとなる(法令69④一カッコ書)。 ウ 臨時改定事由の場合 さらに、臨時改定事由が生じた場合、次の①と②のいずれか遅い日までに、当該臨時改定事由に係る役員の職務について新たに「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」に関する届出を行うことにより、事前確定届出給与として損金算入が認められる(法令69④二)。 ここでいう「臨時改定事由」とは、その役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情により改定されたもの(法令69①一イにいう「通常の改定」に該当するものを除く)をいう(法令69①一ロ)。   (3) 事前確定届出給与の届出内容の変更 事前確定届出給与に関し既に届出を行っている法人が、当該届出(直前届出)の内容を変更する場合で、それが以下の2つの事由によるときには、それぞれに掲げる日が届出の提出期限となり、その提出により損金算入が可能となる(法令69⑤)。 (※4) 業績悪化改定事由により変更の届出を提出するケースにおいては、通常減額改定を行うものと考えられるが、施行令でわざわざこのような条件を付す理由は、例えば、業績悪化により単に支給のタイミングを後ろにずらすというのは適用対象外であるということを意図してのものであろう。   (4) 事前確定届出給与の損金性について争われた事例 本件のように、事前確定届出給与の支給額につき、届出額と異なる金額を支給した場合の損金性について争われた事案(東京地裁平成24年10月9日判決・訟月59巻12号3182頁、TAINSコード:Z262-12060)があるので、以下で確認しておきたい。 ① 事案の概要 本件は、超硬工具の製造及び販売等を業とする内国法人である原告が、本件事業年度中にその代表取締役甲及び取締役乙に対して支給した役員給与のうち、冬季賞与は法人税法第34条第1項第2号の事前確定届出給与に該当し、その額は原告の本件事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されるとして、本件事業年度の法人税の確定申告をしたところ、川崎北税務署長(処分行政庁)から、平成22年6月29日付けで、上記冬季賞与は事前確定届出給与に該当せず、その額は原告の本件事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されないという理由により、法人税の更正及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けた。そこで原告は、本件更正等は法人税法第34条第1項第2号の事前確定届出給与に係る該当性の判断を誤った違法な処分であると主張し、処分行政庁(国)を被告として、本件更正のうち上記申告に係る欠損金額等を下回る部分及び本件賦課決定の各取消しを求めた事案である。 原告は、平成20年11月26日に開催された本件事業年度の直前の事業年度(平成19年10月1日から平成20年9月30日までの事業年度)の定時株主総会において、甲及び乙に対して支給する役員給与を年間合計8,000万円の範囲内と定め、それぞれに対する支給額は取締役会に一任することを決議し、同年11月26日に開催された取締役会において、甲及び乙に対して支給する月額報酬を甲につき各月180万円、乙につき各月140万円と定めるとともに、甲及び乙に対して支給する冬季及び夏季の賞与を甲につき各季500万円、乙につき各季200万円(支給時期は冬季につき同年12月11日、夏季につき平成21年7月10日)と定めた。 原告は、平成20年12月1日及び同月9日、冬季賞与として、甲に対し500万円、乙に対し200万円をそれぞれ支給した。また原告は、平成21年7月6日に開催された臨時株主総会において、本件事業年度の厳しい経済状況による業績の悪化を理由に、前年11月の取締役会決議により定めた役員給与のうち夏季賞与の額を甲につき250万円、乙につき100万円にそれぞれ減額することを決議し、同月15日、夏季賞与として、甲に対し250万円、乙に対し100万円をそれぞれ支給した。 なお、原告は、川崎北税務署長に対し、本件夏季賞与の上記減額について、法人税法施行令第69条第3項の変更届出期限までに事前確定届出給与に関する変更届出をしていなかった。 ② 事案の争点 本件冬季賞与は、法人税法第34条第1項第2号の事前確定届出給与に該当せず、その額は原告の本件事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されないのか否か。 ③ 裁判所の判断 なお、本裁判例の控訴審(東京高裁平成25年3月14日判決・訟月59巻12号3217頁、TAINSコード:Z263-12165)で、裁判所は、「変更届出期限を遵守できなかった場合の例外措置に関する「やむを得ない事情」とは、控訴人側の個別的なあらゆる事情がこれに含まれるものではなく、納税者の何びとにおいても期限内に変更届出をすることができない場合、すなわち天変地異その他客観的にみて期限を遵守し得なかったことをその責に帰すことができない事情をいうことは明らかであるから」とし、納税者側の届出書を提出できなかったことにつき「やむを得ない事情」があったとの主張を斥けて、納税者敗訴で確定している。 ④ 本裁判例からいえること 本裁判例は、本件と同様に、取締役に対して事前確定届出給与の支給を行う予定であったが、企業業績の悪化のためそのうち1回につき届出金額よりも少ない金額しか支給しなかった場合において、届出通り支給しなかった賞与のみならず、届出通り支給した賞与についても損金不算入となるのかどうかが争われた事案である。これが「臨時改定事由」又は「業績悪化改定事由」に該当する場合において、最も確実な方法は、前述(3)で触れたとおり、法人税法施行令第69条第5項の「事前確定届出給与に関する変更届出書」を提出するというものであり、そうすれば当初の届出(直前届出)通り支給した賞与はもちろんのこと、減額変更した賞与についても全額損金算入が可能となる。しかし、本裁判例も本件のいずれも、当該「事前確定届出給与に関する変更届出書」の提出を失念しており、その意味で納税者側の落ち度は大きいと言わざるを得ないであろう。 しかし一方で、法令解釈上、減額改定につき、「事前の定めに係る確定額を高額に定めていわば枠取りを」するといった手法を採っているわけではなく、「租税回避の意図がない場合」には、仮に当該「事前確定届出給与に関する変更届出書」の提出を失念している場合であっても、損金算入を認める余地はあるものとも考えられる(※5)。 (※5) 渡辺充「事前確定届出給与」、中里他編『租税判例百選(第7版)』(有斐閣・2021年)119頁参照。 ところで、当該変更届出書の提出がない場合、「一の職務執行期間中に複数回にわたる支給がされた場合に、当該役員給与の支給が所轄税務署長に届出がされた事前の定めのとおりにされたか否かは、特別の事情がない限り、個々の支給ごとに判定すべきものではなく、当該職務執行期間の全期間を一個の単位として判定すべきもの」であるから、一回でも届出通り支給されていない場合には、増額はもちろんのこと、減額の場合も、届出対象の全賞与の支給につき損金不算入となる。 この点については、国税庁は法人税基本通達9-2-14の解説(質疑応答事例「定めどおりに支給されたかどうかの判定(事前確定届出給与)」)で、「3月決算法人がX年6月26日からX+1年6月25日までを職務執行期間とする役員に対し、X年12月及びX+1年6月にそれぞれ200万円の給与を支給することを定め、所轄税務署長に届け出た場合において、当該事業年度中の支給であるX年12月支給分は定めどおりに支給したものの、翌事業年度となるX+1年6月支給分のみ定めどおりに支給しなかった場合は、その支給しなかったことにより直前の事業年度の課税所得に影響を与えるものではないことから、翌事業年度に支給した給与の額のみについて損金不算入と取り扱っても差し支えない(※6)」とし、届出通り支給しなかった場合であっても個別の支給額に損金算入を検討する余地があるとする解釈を示している。しかし、そもそも法令に明確な定めがなく理論的ともいえないこのような取扱いを通達の「解説書(※7)」で示すことについては、租税法律主義の建前から言っても問題があるといえないであろうか(※8)。 (※6) 髙橋正朗編著『法人税基本通達逐条解説(十訂版)』(税務研究会出版局・令和3年)890頁参照。 (※7) 国税庁「役員給与に関する質疑応答事例(平成18年12月)」(問7)にも同様の記述がある。 (※8) 渡辺徹也「法人税法34条1項2号にいう事前確定届出給与該当性の可否」『ジュリスト』2015年5月号130頁もその旨厳しく指摘している。 なお、仮に「事前確定届出給与に関する変更届出書」の提出がない場合であっても、その提出がないこと(もしくは提出期限後に提出したこと)にやむを得ない事情がある場合には、本来の変更届出書の提出期限までに提出があったものとして扱うことができることとされている(法令69⑦)。この場合の「やむを得ない事情」とは、控訴審で裁判所が判示するように、「納税者の何びとにおいても期限内に変更届出をすることができない場合、すなわち天変地異その他客観的にみて期限を遵守し得なかったことをその責に帰すことができない事情をいう」のであるから、その適用は極めて限定的といえよう。   (5) 本件へのあてはめ 本件のように、事前確定届出給与につき、取締役に対して届出通り賞与を支給していない場合であっても、業績悪化改定事由に該当するときには、変更の届出期限(改定事由が生じた日から1ヶ月以内)までに減額した金額を届け出ていれば、損金算入が認められる。 しかし、納税者がこの業績悪化改定事由による減額に係る変更の届出を提出しておらず、また、その提出がなかったことについて災害等のやむを得ない事情がない場合には、届出の対象となったすべての賞与(夏季・冬季いずれも)につき損金不算入となるものと考えられる。 (了)

#No. 434(掲載号)
#安部 和彦
2021/09/02

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第10回】「非居住者である個人株主からの借入れに対して過少資本税制が適用されるか否かの判断」

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第10回】 「非居住者である個人株主からの借入れに対して過少資本税制が適用されるか否かの判断」   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 非居住者である個人株主からの借入れに対し過少資本税制は適用されますか。 〔A〕 当該個人株主が国外支配株主等に該当し、同株主に利子を支払う内国法人の負債資本比率が一定割合を超える場合、同割合を超える部分に対応する支払利子の損金算入が制限されます。 ●●●〔解説〕●●● 1 過少資本税制の立法趣旨 (1) 制度導入の経緯 法人税の所得計算において、支払利息は原則として全額損金算入されるのに対し、支払配当は利益処分に該当し、損金不算入とされている。すなわち、企業の資金調達の局面では、借入金が税務上有利な取扱いになるということで、我が国では、資金調達に関し伝統的に借入金に依存する傾向が強かった。 また、このような税制上の不均衡は、国際間の資金調達においても問題視されており、過少資本(Thin Capitalization)」として、各国で対抗策が導入されてきた。我が国においても、対内投資において、国際的租税回避に利用される恐れがあることから、平成4年度の税制改正で過少資本税制として制度化された。 (2) 我が国の過少資本税制の概要 内国法人が国外支配株主等又は資金提供者等に負債の利子を支払う場合、その事業年度の国外支配株主等及び資金提供者等に対する負債にかかる平均負債残高が、国外支配株主等の当該内国法人に対する資本持分の3倍に相当する金額を超えるときは、その事業年度において国外支配株主等及び資金提供者等に支払う負債の利子の額のうち、その超える部分に対応する金額は損金の額に算入できない。ただし、その事業年度の総負債に係る平均負債残高が、内国法人の自己資本の額の3倍に相当する金額以下であればこの制度の適用はない(措法66の5①)。 ここでいう国外支配株主等とは、非居住者又は外国法人(以下「非居住者等」という)で、内国法人との間に、次の特殊の関係にある者をいう(措法66の5⑤一)。 以上から、我が国の過少資本税制が適用されるか否かは、まず、非居住者等が、措置法にいう国外支配株主等に該当するかどうかが問われることになる。以下では、借入れの実行時には居住者であった個人からの借入れについて、国外支配株主等該当性が問題となった事例について検討する。   2 過去の裁判例 平成4年に導入された過少資本税制に関する争訟はこれまでに例がなく、以下の事例はその課税処分の是非が法廷で争われた初めての事案である。 《東京地裁令和2年9月3日判決》(※1) (※1) 平成30年(行ウ)第171号(TAINSコード:Z888-2355)。 (1) 事案の概要とその背景 有価証券の保有・投資等及び財務のコンサルティング等を事業の目的とする内国法人X(原告)は、平成23年6月30日から同年7月4日までの間に、M(個人)から年利14.5%で合計164億円を借り入れ(本件借入れ)、これに対する支払利子(本件支払利子)の額を損金の額に算入して平成23年11月期及び同24年11月期の法人税の確定申告をし、さらに、上記を前提に、平成25年11月期について、繰越欠損金額を損金の額に算入して所得零円として確定申告した。 これに対し、処分行政庁は、Mがシンガポールに住所地を移転した平成23年7月5日以降非居住者となり、Xがその事業活動に必要とされる資金の相当部分を非居住者であるMからの借入れによって調達していることから、MはXの事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係にあるものとして「国外支配株主等」に該当すると認定し、過少資本税制に係る法令の規定が適用され、上記支払利子の一部(合計約14億6,250万円)について損金の額に算入することができないとして、法人税の更正処分等を行った。 Xは、かかる更正処分等に対し、Mは「国外支配株主等」に該当せず、各処分は違法であると主張して、同処分の取消しを求めた。 Mは、著名なアクティビストで、Mファンドの主宰者であり、同ファンドの顧問税理士A、顧問弁護士N及び社員KらがXの取締役(AとKは一時期代表取締役)を務めていた。 (2) 裁判所の判断 ① 借入れの実行時に貸主が非居住者であることを要するか 東京地裁は、MがXの「国外支配株主等」に該当するかについて、まず、本件支払利子が、Mが非居住者となった平成23年7月5日から借入金完済の平成24年3月7日までの期間に対応するものであることから、かかる利子の支払は、「非居住者等からの借入れ」と認定した。Xは、本件借入れが実行された時点においてMは非居住者ではなかったから、本件借入れは「非居住者等からの借入れ」に当たらないと主張していたが、東京地裁は、「借入れ(貸付け)の実行時とは、貸主と借主との消費貸借関係という継続的な契約関係の始点であり、その関係は借入金が完済されるまで存続し、借入れの利子も、かかる消費貸借関係が存続する間、継続的に発生するものである」と判示した。 また、東京地裁は、「措置法66条の5は、内国法人が非居住者である国外支配株主等から過大な貸付けを受けることによる租税回避を防止する趣旨で、国外支配株主等に対する支払利子の一部について損金算入を認めない旨を定めているところ、貸付け後に貸主が住所地を日本国外に移転した場合に同条の規定が適用されないこととなれば、上記趣旨が容易に潜脱されることとなってしまう」と判示し、Xの主張を排斥した。 ② 事業方針決定関係の判断基準 次に東京地裁は、事業方針決定関係があるか否かの認定判断に当たっては、取引、資金調達及び人事上のつながりを含め、当該事案において事業方針決定関係の発生に影響を及ぼすと考えられる諸般の事情を総合して認定判断を行うのが相当であるとして、MとXの事業方針決定関係の有無について検討した。 その結果、東京地裁は、Xが、本件借入れに係る借入金を原資として、別会社からの借入金の返済をしたほか、不動産会社の出資持分の購入代金に充てていることから、本件借入れは原告の事業資金を調達するものであり、また、本件借入期間中の各月末時点における原告の総資産額に占める本件借入れの額の割合は、約60%~75%であったことから、Xは、本件借入期間において、事業活動に必要とされる資金の相当部分をMからの本件借入れにより調達していたものと認定した。さらに、本件借入れに係る基本契約であるコミットメントライン契約において、XがMから借り入れる資金の使途についてMの事前の承認を得なければならないものとする事前承認条項が定められていたことから、同条項に基づき、Mが本件借入れに係る借入金の使途の事前承認を通じて原告の事業の方針につき実質的に決定することは十分に可能な状態であったと認定した。 また、Mは、Mファンドの関係者であるAらとの人的なつながりを通じて、Xに対する影響力を依然として有していたものであるところ、Xが得る利益についての税負担の軽減を図るための一連の措置(※2)は、いずれもMの主導により行われたものであって、そのほかXの投資事業及び株式取引事業の運営や、Xの役員人事等の重要事項の決定についてもMが重要な影響力を行使していたものと認められるから、本件借入れがXの事業資金の調達において極めて大きな比重を占めること等をも併せ考慮すると、MはXの事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係(事業方針決定関係)を有していたと認定し、以上から、本件支払利子については措置法66条の5第1項の規定が適用され、所定の金額を超える部分について損金の額に算入することができないため、処分行政庁がした各処分は適法であると判示した。 (※2) 本件借入れによる既存の借入れの返済や不動産会社の出資持分の取得及びその後の同持分の売却等を指す。 (3) その後の展開 本件は、Xにより控訴されたが、東京高裁は、令和3年7月7日、X敗訴の判断を下した。 Xは、控訴審でも「借入れの時点においてMは非居住者ではなかったから『非居住者等からの借入れ』には該当しない」として、ホステス報酬事案最高裁判決(※3)を引用し、字義通りに解すべきと強く主張したが、東京高裁は、措置法66条の5第1項の規定から、「国外支配株主等に該当するか否かは、利子等の支払時を基準として決定される」と判示し、地裁判決よりさらに踏み込んだ解釈を示した(※4)。 (※3) 最高裁三小平成22年3月2日判決・平成19年(行ヒ)第105号(TAINSコード:Z260-11390)。 (※4) T&Amaster No.891(2021.7.19)40頁。 (了)

#No. 434(掲載号)
#霞 晴久
2021/09/02

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第44回】「買換家屋が店舗併用住宅の場合」-買換家屋の床面積要件の判定-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第44回】 「買換家屋が店舗併用住宅の場合」 -買換家屋の床面積要件の判定-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、居住用の家屋とその土地を売却しましたが、多額の譲渡損失が出てしまい、新居購入にあたっては、銀行で住宅ローンを組み、店舗兼住宅(居住専用部分44㎡、併用部分20㎡、店舗専用部分36㎡)とその土地を購入しました。 買換家屋の居住の用に供する床面積(50㎡以上)に係る要件以外の適用要件が具備されている場合に、Xは「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A 買換家屋の居住の用に供する部分の面積が50㎡以上であることから、Xは、「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 「居住用財産買換の譲渡損失特例」に係る買換家屋については、一棟の家屋の床面積のうちその個人が居住の用に供する床面積が50㎡以上であるものと規定されています(措令26の7⑤一)。 そして、買換家屋が店舗兼住宅等である場合には、措通31の3-7(店舗兼住宅等の居住部分の判定)に準じて計算した居住の用に供する部分の面積により判定するとされています(措通41の5-14(買換家屋の床面積要件の判定)(3))。 本事例において、買換家屋の利用状況を上記の算式に当てはめると、居住用に該当する部分の面積は、次のとおりとなります。 したがって、Xが居住の用に供する床面積が50㎡以上であることから、「居住用財産買換の譲渡損失特例」に係る買換家屋の床面積要件を満たすこととなります。 (了)

#No. 434(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/09/02
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