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〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第91回】「ソフトウェア使用許諾契約書」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第91回】 「ソフトウェア使用許諾契約書」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   当社はソフトウェア開発会社です。当社所有のソフトウェアを使用することを許諾するにあたり、下記の「ソフトウェア使用許諾契約書」を取り交わすことを予定していますが、印紙税の取扱いはどうなりますか。 不課税文書に該当する。 [検討] ソフトウェアに係る著作権は、著作権法の第10条第9号において「著作物の例示」で「プログラムの著作物」として保護されている。また、著作権者には著作物の複製などの行為について、独占権が認められている。 したがって、ソフトウェアを使用する際には、著作権を有する者から使用許諾を受ける必要がある。事例の場合も、ソフトウェアに関する著作権は甲に帰属したままであり、著作権の譲渡を約するものではない。   ▷まとめ ソフトウェアの使用許諾契約は、著作権といった無体財産権の使用が許諾されるものであり、「譲渡」には該当しない。 このことから第1号の1文書には該当せず、ほかの課税文書にも該当しないことから不課税文書となる。   (了)

#No. 434(掲載号)
#山端 美德
2021/09/02

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第18回】「M&AのためのB/SとP/Lの基本姿勢~P/L編~」

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕 対象企業の見方・見られ方 【第18回】 「M&AのためのB/SとP/Lの基本姿勢~P/L編~」   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   《今回の対象者別ポイント》 買い手企業 ⇒M&Aの売り手探しに際して有用な財務面の見方のヒントを得る。 売り手企業 ⇒M&Aに備えて財務面のどこに着目するかを知る。 支援機関(第三者) ⇒売り手の財務面の見方のポイントを知りM&Aの助言や支援に活かす。 その他の対象者 ⇒売り手に対する視点を通じて対象企業の見方・見られ方のポイントをつかむ。   1 売り手の決算書はM&A情報の宝 中小企業のM&Aにおいて、買い手が売り手候補先の現状を探る情報源として決算書の入手や活用をまったくしないでM&Aを進めることは決してありません。それだけ売り手の決算書から得られる情報は買い手にとって有用なわけですが、一方で、決算書から得られる情報をどれだけ効果的に活用できているかといえば、すなわち、使いこなせているかどうかという点においては、買い手側の経営者や担当者の知見、経験値などに依存します。 これはつまり、売り手の決算書として与えられる情報は同じでも、その情報を活かせるかどうかは、買い手の腕によって大きく異なるということです。 しかも、中小企業のM&Aでは、多くの場合、買い手も売り手もM&Aの経験値が少なく、いわゆる大企業と比べると人材が相対的に不足気味ですので、決算書の内容を深読みできる能力に長けている人材が必ずしも社内にいるとは限りません。ならば、買い手は売り手の決算書を軽視していいかというと、それではいけません。M&Aは、売り手の決算書とともに歩むための決断を含むのですから、少なくとも決算書から読み取れる売り手の特徴、優位性、リスクを知って臨むのが吉というものです。 そこで今回から、売り手の決算書から読み取れる情報について、まずはB/SやP/Lといった財務諸表そのものに着目して売り手を見る際のポイントを紹介します。   2 M&AのためのB/SとP/Lの基本姿勢 中小企業の決算書では、キャッシュ・フロー計算書を作成するケースは稀でしょうから、財務3表といわれる貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュ・フロー計算書(C/F、C/S)のうち、B/SとP/Lを自ずと意識しながら売り手は決算書の作成をし、買い手はM&Aに際して主にB/SとP/Lに記録された内容から売り手の情報を得るはずです。 あくまで一般的に、ではありますが、売り手がM&Aに備えるために、B/SとP/L全体の基本姿勢として好ましいこと、好ましくないことはあります。 今回はまず、経営者が毎期において意識しているP/Lから見ていきましょう。次の(1)から(5)は中小企業のM&Aに備える経営者として好ましい(あるいは好ましくない)基本姿勢の例です。 それでは、それぞれの項目について、なぜ好ましいか、好ましくないかを解説します。 (1) 節税を意識していて、P/Lの当期純利益はトントンや赤字の期が多い ➡ 好ましくない 中小企業経営において、よく見かける決算書のパターンです。しかし、M&Aにおいては、このような意識のもとで作成された決算書は好ましくありません。 買い手からすれば、M&Aによる統合後の会社の成長を期待しますので、売り手の決算書から利益が生まれないビジネスと判断すれば最初からパートナー候補として相手にしません。 売り手にとっては、中小企業M&Aの手法でよく採用される株式譲渡などに際して、譲渡価額が安くなる原因を自ら作ってしまっている点でも、もったいない考え方です。 (2) 売上高は日頃から意識しているが、利益金額はさほど意識していない ➡ 好ましくない 経営する上で売上高という収益規模の程度を表す数値はとても大事ですし否定するつもりはありません。しかし、経営効率性という点から考えると、少ない労力でたくさんの利益を生み出すビジネスが好まれますし、M&Aにおいても“効率よく稼ぐ”売り手は好感のもてるポイントの1つです。 買い手が売り手の売上規模を欲しがってM&Aに臨む場合は、利益金額いかんでさほど成約に影響しない場合もありますが、多くのケースでは、売上高よりも利益金額、利益率を気にされます。「いくら稼ぐか」も大事ですが、「いくら残せるか」も大事です。 (3) 売上高利益率(対売上総利益(粗利)、対営業利益、対経常利益など)を即答できる ➡ 好ましい 即答できないのであれば、(2)と同様に経営への意識が利益よりも売上高に向いている可能性を思わせる項目の1つです。1つ1つの商品・サービスのような小さい単位でも、会社全体といった大きい単位でも、経営上はパフォーマンス(かけたコストに対する見返りの割合)の良し悪しが非常に重要です。採算性の有無や高低はM&Aで買い手が気にしますので、収益面、コスト面、利益面のバランスを欠いた経営にならないように留意します。 (4) コスト(とくに売上原価、販売費及び一般管理費)を下げれば利益を生み出せると考えている ➡ 好ましくない P/Lの構造上は確かに「収益-費用=利益」なので、費用、いわゆるコストを下げれば利益は残るはずです。しかし、コストダウンのしわ寄せとして、たとえば、人件費の削減にしても、経費や設備投資の削減にしても、今後収益を生み出す機会の喪失を招く可能性が高まります。 結局は、コストを下げれば利益が生まれるのは一時的で、M&Aで期待される統合後の企業価値の向上や成長に必要な売り手の魅力はコストダウンとともに下がります。かけるコストを上回る収益(売上高)力をいかに身につけるか、収益性(利益率など)をいかに高めるかを優先する方が、売り手の魅力がぐんと上がります。 この意味で、無駄を省く、費用対効果の悪い事業を見直す、などの採算性を意識したコストダウン程度なら効果は高いともいえます。 (5) 最終利益(当期純利益)が同じなら、コスト(売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用など)は、どの段階損益(営業利益、経常利益など)に計上しても構わない ➡ 好ましくない 税務を意識した申告書や決算書作成では、仕訳(会計処理)の段階からP/Lの各段階損益をあまり意識しないままに計上している場合があります。しかし、当然ながら段階損益には意味があるからこそ、それぞれの段階があり、M&Aにおいても、どの段階損益であっても無視はできません。 商品・サービス、本業、金融収支、例外取引、税金といった性質の異なる取引や実態に合わせて適切に区分された段階損益の金額をもって、買い手に対して売り手の実力を説明できるのはもちろん大切です。なかでも売上原価と販売費及び一般管理費の計上区分の違いは、メーカーなどでは在庫を経由するため期末時点の利益金額や利益率にも影響を及ぼしますので、これがいい加減だとすべてが狂ってしまい、買い手の心証を害する恐れがあります。 *  *  * 決算書1つが、M&Aにおいては買い手・売り手の判断と相手の見方に大きく影響します。今回はP/Lという区切られた期間をテーマにしましたが、次回のテーマとして予定する、過去の期間の蓄積情報として記録されるB/Sは、最近時点の時価の把握を重視するM&Aの世界では、より重要性の高い財務諸表といえます。 次回のテーマと合わせて、M&Aを意識したB/SとP/Lの基本姿勢のあり方を考え、経営への取り組み方まで見直す機会にしてはいかがでしょうか。 (了)

#No. 434(掲載号)
#荻窪 輝明
2021/09/02

対面が難しい時代の相続実務 【第5回】「想定される場面(その3)」-遺産分割協議における対応-

対面が難しい時代の相続実務 【第5回】 「想定される場面(その3)」 -遺産分割協議における対応-   クレド法律事務所 弁護士 栗田 祐太郎   今回は、遺言書が残されておらず、遺産分割協議を行う必要がある場面におけるオンライン利用を取り上げる。 【想定される場面(その3) 遺産分割協議における対応】   1 遺産分割協議をオンラインで行う場合の留意点 (1) キーパーソンから情報を入手し把握することが重要 遺言書がなく、法定相続人全員での遺産分割協議を行う必要がある場合、士業の関与としては、相続人の一部とやり取りをし、後方支援的な形で遺産分割協議をバックアップする形が多いと思われる。 この場合、まず重要なことは、相談を受けているキーパーソン(大半は相続人自身であるが、その配偶者や親族であることも多い)から、法定相続人(親族関係)の概要、遺産の規模・内容、特別受益等の争点の有無といった基本的情報に加え、各当事者がどのような意向を示しているかについてよく聴取し、「どの部分に争いがあり、どの部分は争いがないのか」を十分に把握することが重要である。 その上で、異論を示している当事者に対する説明方法や譲歩するライン等につき、相談者と打ち合わせしながら検討していくことになる。 以上については、オンライン利用の有無に関わらず、重要となる部分である。 (2) オンライン協議の必要性とその方法を検討する このとき、相続人の一部が遠方に居住している等といった事情から、Zoom等のオンラインツールを利用して協議を進めるケースも生じてくる。 このような場合、完全オンラインだけでなく「ハイブリット方式」も検討したほうがよいときがあることや、オンライン協議でのコミュニケーションを充実させるための各種工夫などにつき【第4回】にて説明したので、ご参照いただきたい。   2 “話し合い解決の限界”の見極めと調停手続の利用 遺産分割協議が、多少難航しながらも、徐々に解決に向けて進んでいくようであればそれでよい。 問題は、一部の当事者が感情的になって自分の主張に強くこだわり、まったく譲歩する姿勢を見せないというケースである。 このように平行線のまま協議がまったく進まない状況にあっても、当事者からは、「それでも、なるべく調停や裁判の手続は取りたくない。できる限り、当事者間の話し合いをもって解決したい」との要望が寄せられることも非常に多い。 特にオンラインを利用した協議の場合、物理的な移動の必要がないため、慣れてくればオンラインでの協議の機会を設け、話し合いを続けていくことはある意味簡単である。そのため、余計にこのような要望が出てくる可能性は高い。 しかし、筆者の経験からすれば、当事者による話し合いでは平行線のまま協議が進まない場合には、話し合いは早々に打ち切り、裁判所の調停手続を利用することを検討したほうがかえって解決が早いというのが率直な感想である。 次回に紹介するように、裁判所の調停手続ではまだオンラインの利用はほとんど進んでいない。そうは言っても、公平中立的な第三者が遺産分割協議に参加し、舵取りをしながら協議を進めていってくれるメリットは非常に大きい。 したがって、関係当事者が遠隔地にいるような事案であり、オンラインを利用した協議が簡便と考えられるケースにおいても、当事者のみでの話し合いが難しいと感じられる場合は、早々に遺産分割調停を申し立てることを勧めたい。   3 オンライン上における「本人確認」をどうするか (1) 「なりすまし」の可能性はないか さて、遺産分割協議にオンラインを取り入れる場合に考えておかなければならないのは、参加する当事者の「本人確認」をどうするかという問題である。 遺産分割協議において、当事者になりすました「別人」が参加し、話し合いがまとまった際には遺産分割協議書に本人名義で署名捺印してしまうという恐れが、理屈上はあり得る。 ただ、遺産分割協議の場面においては、協議に加わる当事者が基本的には「親族・親戚」にあたるため、大なり小なりお互いに面識がある場合がほとんどであろう。したがって、「なりすまし」により、本人以外のまったくの別人が協議に参加してくるといった事態は、通常まず考えにくい。 しかしながら、設問のように、被相続人と家庭外の女性との間でできた子が当事者として参加してくるケースも考えられるところ、これまでに他の当事者の誰とも面識がない者が協議に登場してくるケースというのも十分あり得る話なのである。 (2) スムーズな「本人確認」の方法は? それでは、具体的にどのような形で本人確認を行うのがよいだろうか。まず一番簡便で、相手方に要求しても角が立ちにくいのは、協議の初回に、運転免許証やパスポートの提示を求める方法だろう。これらのコピーまで取得できればベストではあるが、個人情報にあたるため難色を示される場合も多いと思われる。本人確認という目的のためには、これらの提示を受けてその場で確認できれば、まずは十分であろう。 一般的には、生年の干支を聞く等の方法もあるが、質問の仕方・切り出し方によっては、相手方の感情を害する恐れもあり、注意が必要と思われる。 なお、運転免許証等の提示を求める際には、「これまで面識がまったくなく、今回、初めてお会いすることになったので申し訳ないが・・・」と趣旨を丁重に説明すれば、応じてくれることが大半と思われる。 それでも、相手方が頑なに本人確認への協力を拒む場合は、はじめから家庭裁判所に対して遺産分割調停の申立てをし、当事者ではなく裁判所が主体となって本人確認をしてもらうということも1つの方法と思われる。本人確認という“入口”の時点で既にぎくしゃくしているというならば、残念ながら遺産分割協議そのものの話し合いが円滑に進むこともあまり期待できないからである。 そして、協議の結果、一定の内容で合意が成立した場合には、遺産分割協議書を作成することになる。この際には、参加当事者の全員に、できる限り、実印での押印を求め、印鑑登録証明書原本の添付を求めるべきである(遺産分割協議書に、署名した相続人全員の印鑑登録証明書のコピーを添付しておけばよい)。 実印での押印、そして本人の印鑑登録証明書まで取得できているということは、なりすましの危険はほぼ回避できるし、後日に万一、なりすましをされた本人が遺産分割協議書の有効性を争って民事訴訟を申し立てた場合にも、他の相続人の立場では自己に有利な証拠として提出することができる。 以上のあたりが、本人確認に関する現実的な対応だと思われる。 (了)

#No. 434(掲載号)
#栗田 祐太郎
2021/09/02

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第48話】「金融所得課税の一体化」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第48話】 「金融所得課税の一体化」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「そうか・・・金融所得課税の一体化か・・・」 中尾統括官は、金融庁の「金融所得課税の一体化」(金融所得課税の一体化に関する研究会)と題する資料を見ている。 金融所得課税の一体化の「現状と問題点」について、次のように述べられている。 「デリバティブ取引・・・か」 中尾統括官が腕を組んで、思案顔になっていると、昼食を終えた浅田調査官が爪楊枝を加えて、やって来る。 「何をしているのですか?」 浅田調査官は、机の上に広げられた書類を覗きながら、尋ねる。 「金融庁が公表した・・・金融所得課税の資料だよ。」 中尾統括官はぶっきらぼうに答える。 「・・・確か尾統括官は・・・昔から株の売買をしているのですよね。」 浅田調査官は、ニヤニヤしながら言う。 「別に・・・税務職員が株の売買をしていけないという法律はないだろう。」 中尾統括官は、少しムキになって答える。 「署内の噂ですけど、中尾統括官は、かなりのキャピタルゲインを得ているとか・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の顔を見ながら、愉しんでいる。 「・・・そんなことはない。」 中尾統括官は、ハッキリと言う。 「ところで君は・・・デリバティブ取引について知っている?」 中尾統括官が浅田調査官に尋ねる。 「ああ・・・デリバティブ・・・ですか・・・」 浅田調査官は、頸を傾ける。 「この金融庁の資料によると、市場デリバティブ取引の規模は562兆円で、店頭デリバティブ取引は、6,760兆円もあるらしい・・・」 そう言いながら、中尾統括官は、円グラフのある資料を見せる。 「デリバティブ取引は、日本では大阪取引所が行っているが、世界の取引高ランキングでは17位となっている。」 中尾統括官は、資料を見せながら説明を続ける。 「金融庁はこのデリバティブ取引について、投資家の環境整備のため、他の金融商品と損益通算ができるようにしようと考えているようだ・・・しかし、デリバティブ取引に損益通算を認めると・・・租税回避が行われる可能性があるという・・・」 中尾統括官は、机の上の罫紙を取り出し、金融庁の資料をもとに表を書いて浅田調査官に見せる。 (※) 太枠内は本稿公開日現在、損益通算が認められている。 (注) 金融庁(金融所得課税の一体化に関する研究会)「金融所得課税の一体化(2021.5.10)」p8より筆者一部変更。 「・・・平成25年度税制改正で、金融所得課税の一体化を図るため、平成28年以降、公社債や公社債投資信託等の受益権について、その譲渡所得等を課税対象とした上で、損益通算等の対象になった・・・さらにこの改正に伴って、株式等に係る譲渡所得等の分離課税制度を、上場株式等に係るものと非上場株式等に係るものに区分して、それぞれの区分の中でのみ譲渡損益の通算ができることになったし・・・公社債についても、『特定公社債等』と『一般公社債等』に区分され、次のようにグループ化された・・・」 そう言うと、中尾統括官は、さらに図を描き始める。 「これって・・・租税回避行為を防止するための規定ですよね・・・」 浅田調査官は、図を見ながら言う。 「そうだ。法律を改正するとき、立法者は必ず、その改正に伴って生じる租税回避行為について、防御することを考えるから・・・仕方がない・・・ところで、デリバティブ取引だけど、これも他の金融商品との損益通算を認めると、租税回避行為に利用されるという。」 中尾統括官は、デリバティブ取引の「買い」と「売り」を両建てした租税回避行為の具体的な例(ストラドル(Straddle)取引)の図を見せる。 (注) 金融庁(金融所得課税の一体化に関する研究会)「金融所得課税の一体化(2021.5.10)」p27より。 「これによって、株式譲渡益が多額に発生した年の年末に、両建てのうち損失のあった方だけを売却して損失を実現させ、他の株式譲渡益と損益通算をする・・・もっとも、米国では、簡便な租税回避防止策として、含み益(未実現利益)に対して時価評価で課税するという法律(IRC1256)もあるが・・・もし、日本でもデリバティブ取引にこのような損益通算を認めるならば、何らかの租税回避防止策が必要だろう・・・」 中尾統括官は、机の上に散らばっている資料を整理しながら言う。 「もっとも、私なんかは、こんなデリバティブ取引の改正よりも、平成14年度改正で導入され平成26年に廃止になった上場株式等に係る軽減税率(本則税率20%を10%に軽減)を、もう一度復活させてもらいたい・・・そうすれば、今の株式市場はもっと活況を呈すると思うんだ。」 中尾統括官は、真剣な顔で言う。 「それはまさに・・・投資家である中尾統括官の願望ですね。」 浅田調査官は、笑いながら、中尾統括官を見る。 (つづく)

#No. 434(掲載号)
#八ッ尾 順一
2021/09/02

《速報解説》 会計士協会、「農業協同組合法に基づく会計監査に係る監査上の取扱い及び監査報告書の文例」を含む6つの実務指針を改正~監査基準の改訂に関する意見書等を受け、その他の記載内容の規定の創設や電子化対応等行う~

《速報解説》 会計士協会、「農業協同組合法に基づく会計監査に係る監査上の取扱い及び監査報告書の文例」を含む6つの実務指針を改正 ~監査基準の改訂に関する意見書等を受け、その他の記載内容の規定の創設や電子化対応等行う~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年8月19日付けで(ホームページ掲載日は2021年8月30日)、日本公認会計士協会は、次のものを公表した。これにより、2021年4月22日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対するコメントの概要及び対応が公表されているものもある。 これは、「監査基準の改訂に関する意見書」(2020年11月6日、企業会計審議会)及び「監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」」(2021年1月14日)等を受けたものである。さらに、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」における公認会計士法の改正を受けた「監査基準委員会報告書700「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」」等の改正にも対応するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 「監査基準の改訂に関する意見書」において、監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容、すなわち「その他の記載内容」について、監査人の手続を明確にするとともに、監査報告書に必要な記載を求める改訂が行われた。 監査報告書では、「その他の記載内容」又は他の適切な見出しを付した区分を設けて記載する(監基報720第20項)。 そこで、各実務指針において、「その他の記載内容」に関する規定を設け、「付録 独立監査人の監査報告書の文例」を改正する内容となっている。 また、2021年5月12日付けの公認会計士法の改正において、監査報告書への押印が廃止され、監査報告書等の交付を電磁的方法により行うことが可能となったこと等に対応した改正を行っている。   Ⅲ 適用時期等 2022年3月31日以後終了する事業年度(会計年度)に係る監査から適用する。 ただし、2021年3月31日以後終了する事業年度(会計年度)に係る監査から適用することができる。 2021年5月12日付けの公認会計士法の改正を踏まえた改正については、2021年9月1日以降に提出する監査報告書から適用する。 (了)

#No. 433(掲載号)
#阿部 光成
2021/08/31

《速報解説》 「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査に関する実務指針」の確定を会計士協会が公表~原則2022年1月1日以後の適用も一部例外もあるため注意~

《速報解説》 「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査に関する実務指針」の確定を会計士協会が公表 ~原則2022年1月1日以後の適用も一部例外もあるため注意~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年8月19日付けで(ホームページ掲載日は2021年8月26日)、日本公認会計士協会は、監査・保証実務委員会実務指針第103号「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査に関する実務指針」を公表した。これにより、2021年4月22日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 公開草案に対するコメントの概要及び対応も公表されている。 これは、訂正報告書の提出が必要となる状況における監査人の対応について、昨今の監査基準等の改訂も踏まえて検討したものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 実務指針は、目次を含めて87ページに及ぶものであるので、以下では主な内容について解説する。 付録として、次のものが記載されている。 1 適用 訂正後の財務諸表に対する監査業務の受嘱は、新規の監査契約の締結であり、訂正後の財務諸表全体の監査が必要であるため、すべての監査基準委員会報告書等に準拠することになる(3項)。 このため、次のことに注意する。 2 監査契約の締結 訂正後の財務諸表に対する監査業務は、たとえ訂正対象期間又は年度(過年度又は当年度)に監査契約を締結していたとしても、締結済みの監査契約に含まれてはいないので、監査基準委員会報告書210「監査業務の契約条件の合意」及び品質管理基準委員会報告書第1号第25項に従って、監査契約の新規の締結を行う(A1項)。 次のケースの留意事項が記載されている。 3 訂正対象年度の監査人が交代している場合 監査人が交代した後に、交代以前の会計年度に虚偽表示が発覚した場合、法令上、訂正後の財務諸表に対する監査を行うべき監査人は定められていないが、実務上は、元監査人又は現監査人が監査を実施することが多い(A15項、A16項)。 「元監査人」とは、訂正対象年度の監査人が交代している場合の訂正前の財務諸表等に対して監査証明を行った監査人をいい、「現監査人」とは、過年度の不正又は誤謬による虚偽表示が発覚した年度の監査人をいう(8項(6)(7))。 次のケースの留意事項が記載されている。 4 訂正により財務諸表数値が変更された結果として影響を受ける事項 訂正により財務諸表数値が変更された結果として影響を受ける事項として、次のものが例示されている(A47項)。 5 財務諸表の訂正が当時の会計上の見積りに与える影響 訂正前の財務諸表における会計上の見積りについて、訂正後の財務諸表に対する監査を行う時点において、取引、事象又は状況が最終的に確定している場合がある。 会計上の見積りの確定額と訂正前の財務諸表における認識額との差異があったとしても、必ずしも訂正後の財務諸表において確定額を反映しなければならないわけではない(A49項)。 しかしながら、例えば、訂正前の財務諸表の確定時に経営者が利用可能であった情報や、当該財務諸表の作成及び表示時に入手及び考慮しておくことが合理的に期待される情報から差異が生じている場合には、訂正する必要があることを示していることがある(A49項)。 6 訂正後の財務諸表における後発事象 訂正後の財務諸表は、当初提出した有価証券報告書等に記載した訂正前の財務諸表を訂正したものであることから(金商法24条の2第1項で準用する同法7条(四半期報告書及び半期報告書の訂正についても同条準用))、訂正後の財務諸表に反映させる後発事象は、訂正前の財務諸表に対する監査報告書日までに発生していた事象である(A68項)。 訂正前の財務諸表に対する監査報告書日後に発生した事象については、その訂正対象年度の翌年度(翌四半期)以降の有価証券報告書等の開示書類において反映されると考えられる(A69項)。 7 第三者委員会の調査報告書の利用の可否及び利用する場合 第三者委員会は、その専門性を有していることを考慮すると訂正後の財務諸表を作成する上での経営者の利用する専門家として位置付けられる(A91項)。 第三者委員会の調査を利用する場合は、第三者委員会の調査報告書のみをもって十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断することは適切ではない(A93項)。 第三者委員会の調査の目的と訂正後の財務諸表に対する監査の目的は異なるため、第三者委員会の調査手続及び範囲と監査人の立案した監査手続の種類及び範囲は必ずしも一致しないので、第三者委員会の調査結果の利用の程度に応じて、監査人自らが第三者委員会の入手した証拠の閲覧、第三者委員会の調査に対する再実施等を行うことに留意する(A93項)。 8 監査意見形成に必要な監査証拠を入手できない場合 例えば、複数の取引先との共謀による長期間の架空売上計上のように、すべて遡って事後的に検証することが困難な場合や、経営者による監査範囲の制約や経営者による不正が判明し、監査の前提条件となる経営者の誠実性に疑義が生じている場合があり得る。 このような場合、通常、監査人は、監査報告書において監査範囲の制約に伴う限定付適正意見の表明又は意見不表明とすることを検討する(A110項。監査人が限定付適正意見の表明又は意見不表明とする場合には、監査基準委員会報告書705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」の要求事項に従う)。 9 財務諸表が訂正された場合の内部統制監査 内部統制報告制度においては、「「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令」の取扱いに関する留意事項について(内部統制府令ガイドライン)」1-1に記載されているとおり、訂正内部統制報告書に対して監査証明は必要とされていないため、監査人は、過年度の内部統制報告書の訂正報告書に対する内部統制の監査を実施することは求められていない(A134項)。 10 会社法監査における訂正事項の取扱い 会社法においては、株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとされ(会社法431条)、上場会社に適用される過去の誤謬の訂正に関する企業会計の慣行とは、「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号。以下「過年度遡及会計基準」という)である。 過年度遡及会計基準では、過去の財務諸表に誤謬が発見された場合には修正再表示することを定めており(過年度遡及会計基準21項)、単年度表示となる会社法の計算書類においては当事業年度の期首剰余金を修正することになる(A136項)。 「誤謬の訂正に関する注記」(会社計算規則102条の5)において、誤謬の訂正をした場合、当該誤謬の内容、当該事業年度の期首における純資産額に対する影響額の注記を行う(A138項)。   Ⅲ 適用時期等 実務指針は、2022年1月1日以後に監査報告書を発行する訂正後の財務諸表に対する監査に適用する。 ただし、2021年12月31日以前に監査契約が締結された訂正後の財務諸表に対する監査においては、本実務指針を適用しないことができる。 2021年8月19日付けの監査・保証実務委員会実務指針第85号「監査報告書の文例」(以下「改正第85号実務指針」という)では、文例35「事後判明事実により訂正報告書を提出する場合」が改正され、2021年9月1日以後に提出する監査報告書から適用される。 そのため、本実務指針適用前・の訂正後の財務諸表に対して監査報告書を発行する場合であっても、改正第85号実務指針の適用後においては、同文例35に従って、本実務指針付録7の記載例に示された追加情報と同内容の文言を記載した監査報告書の文例を適用することになる。 (了)

#No. 433(掲載号)
#阿部 光成
2021/08/30

《速報解説》 会計士協会、2度の意見募集を経て「事業報告等と有価証券報告書の一体開示に含まれる財務諸表に対する監査報告書に関する研究報告」を確定~現時点で考え得る作成上の留意点及び文例を取りまとめる~

《速報解説》 会計士協会、2度の意見募集を経て「事業報告等と有価証券報告書の一体開示に含まれる財務諸表に対する監査報告書に関する研究報告」を確定 ~現時点で考え得る作成上の留意点及び文例を取りまとめる~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年8月19日付けで(ホームページ掲載日は2021年8月26日)、日本公認会計士協会は、監査・保証実務委員会研究報告第35号「事業報告等と有価証券報告書の一体開示に含まれる財務諸表に対する監査報告書に関する研究報告」を公表した。 これにより、2021年1月18日から2月1日までの間及び同年6月8日から6月29日の間に意見募集されていた公開草案が確定することになる。 公開草案に対するコメントの概要及び対応も公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 適用範囲 研究報告は、金融商品取引法及び会社法に基づく監査において、一体書類として作成された「有価証券報告書兼事業報告書」に含まれる財務諸表及び連結財務諸表(以下「財務諸表」という)に対する監査報告書に関して、現時点で考えられる作成上の留意点及び文例を取りまとめたものである(1項)。 研究報告は、有価証券報告書と事業報告等を一体の書類として同時に開示する「一体書類」としての有価証券報告書兼事業報告書に含まれる財務諸表に対する監査報告書を対象としている(3項)。 2 財務報告の枠組み 一体書類に含まれる財務諸表に対して監査を行う場合、財務報告の枠組みの組合せについて、次の2つの解釈があると考えられる(7項)。 研究報告は、新たな実務として、これらの方法のうち、金融商品取引法及び会社法それぞれの財務報告の枠組みに関して別個の監査報告書を発行せず、単一の監査報告書を発行する場合の監査報告書の文例を提供している(7項。付録文例1から文例4)。 研究報告においては、一体書類に「適用される財務報告の枠組み」は、金融商品取引法の財務報告の枠組み(金融商品取引法193条)及び会社法の財務報告の枠組み(会社法431条)の両方が「同時に」又は「組み合わせて」適用されるという考え方によっており、会計処理に関する基準は金融商品取引法及び会社法に共通であるものの、表示及び開示に関する規則は異なるものである(18項)。 3 適用される財務報告の枠組みの考え方(特に、キャッシュ・フロー計算書の会社法上の取扱い)について 研究報告が対象としている一体書類に含まれる財務諸表に対する監査報告書については、適用される財務報告の枠組みをどう考えるか、また、会社法に基づく監査の対象をどう考えるかによって、様々な考え方があり、いまだ確立した考え方がないと考えられている(17項)。 様々な考え方があることから、研究報告は、次の両方の考え方による監査報告書の文例を示している(17項)。 文例1及び文例2は、2つの財務報告の枠組みが同時に適用されている場合、並びに金融商品取引法及び会社法の枠組みを組み合わせた単一の財務報告の枠組みが適用されている場合の両方に適用可能であるのに対して、文例3及び文例4は、前者の場合にのみ適用可能であり、適用される財務報告の枠組みを問わず汎用可能な点において、実務上は、文例1及び文例2の利用が好適であると考えられる。 実務上の汎用性にかかわらず、会社法に基づく監査において、キャッシュ・フロー計算書を対象外とすることを監査報告書の文面において明らかにしたいと考える場合には、文例3及び文例4を利用することが考えられる。 4 キャッシュ・フロー計算書 キャッシュ・フロー計算書については、次の2つの考え方がある(8項)。 なお、詳しくは「財務報告の枠組みの考え方と監査報告の関係の整理」の図表をご確認いただきたい。 5 一体書類に含まれる財務諸表に対する監査報告書と内部統制監査報告書の一体作成 有価証券報告書提出会社が金融商品取引法及び会社法に基づき一体書類を作成する場合であっても、財務諸表監査に係る監査報告書と内部統制監査報告書を一体として作成することを妨げる重要な理由が見当たらないことから、研究報告においては一体として作成することとしている(22項)。 (了)

#No. 433(掲載号)
#阿部 光成
2021/08/30

《速報解説》 会計士協会が電子化等の促進に向け「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」及び「監査報告書の文例」を改正~連結計算書類に対する監査報告書(文例14)を除き適用は原則本年9月1日~

《速報解説》 会計士協会が電子化等の促進に向け「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」及び「監査報告書の文例」を改正 ~連結計算書類に対する監査報告書(文例14)を除き適用は原則本年9月1日~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年8月19日付けで(ホームページ掲載日は2021年8月26日)、日本公認会計士協会は、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」における公認会計士法の改正等を受けて、次のものを公表した。これにより、2021年7月26日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 公開草案に対するコメントの概要及び対応も公表されている。 これは、2021年5月19日に公布された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」における公認会計士法の改正並びに2021年8月4日に公布された「公認会計士法施行規則」、「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」及び「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令」の改正を受けたものである。 これらの法令の改正により、監査報告書等(監査報告書、中間監査報告書又は四半期レビュー報告書)への自署、押印を求めている規定は署名のみに変更され、さらに監査報告書等の交付を署名された書面に代えて、電磁的方法、すなわち電子化された監査報告書等によって行うことができることとなる。 公認会計士法の改正は2021年9月1日から施行される。 適合修正の対象となる監査基準委員会報告書についても示されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 監査基準委員会報告書700「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」 主に次の事項が改正されている。 改正後の監査基準委員会報告書700は、2021年9月1日から適用する。   Ⅲ 「監査報告書の文例」(監査・保証実務委員会実務指針第85号) 主に次の事項が改正されている。 改正後の監査・保証実務委員会実務指針第85号は、2021年9月1日以後に提出する監査報告書から適用する。 文例14 の連結計算書類(会社計算規則第120条第1項後段の規定により指定国際会計基準又は同規則第120条の2第3項において準用する同規則第120条第1項後段の規定により修正国際基準で求められる開示項目の一部を省略して連結計算書類が作成されている場合)に対する監査報告書については、2021年12月31日以後終了する連結会計年度に係る監査報告書から適用する。 (了)

#No. 433(掲載号)
#阿部 光成
2021/08/30

《速報解説》 経産省、「デジタル経済下における国際課税研究会」による中間報告書を公表~G20大枠合意に伴う課題等への検討を行い、今後の対応の方向性を示す~

《速報解説》 経産省、「デジタル経済下における国際課税研究会」による中間報告書を公表 ~G20大枠合意に伴う課題等への検討を行い、今後の対応の方向性を示す~   公認会計士・税理士 霞 晴久   経済産業省は、経済のデジタル化が加速する中、我が国が「投資立国」として持続的に成長を続けるため、国際的な議論を踏まえつつ、内外市場における公平な競争環境を整備し、日本企業の競争力強化及び経済活性化に資する公正な国際課税の在り方を検討することを目的として、本年3月、「デジタル経済下における国際課税研究会」を設置し、6回の議論を重ね、8月19日に中間報告書(以下「報告書」という)を公表した。 報告書ではまず、本年7月9、10日のG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、2015年のBEPS最終報告以降検討課題となっていた「経済のデジタル化に伴う課税上の課題への対応」について、デジタル企業等多国籍企業から市場国に新たな課税権を配分する措置(ピラー1)(※1)及び居住地国から軽課税国への資産・事業の移転を防止し、各国間の法人税の引下げ競争を防止する措置(ピラー2)(※2)が、一体のものとして大筋合意に至った(最終合意は本年10月の予定)とし、その上で、この間の米国及び欧州の独自の動向について詳述している。 (※1) 200億ユーロ超の全世界売上高及び10%の税引前利益率を有する多国籍企業の利益について、売上の10%を超える残余利潤の20%~30%を市場国に配分する制度。 (※2) 自国の多国籍企業に対し15%の最低税率で追加課税する制度。導入は各国で任意。課税標準から一定額の控除を認める適用除外措置(カーブアウト)がある。 次に報告書は、デジタル企業が市場国にPE等を必要とせず、創出した付加価値に応じた法人税を市場国に納税していない状況は我が国にも妥当するとし、上記国際合意(ピラー1)の早期発効に期待すると述べる。なお、早期に発効した段階においては、ピラー1と目的が類似する諸外国におけるデジタルサービス税等は、速やかに廃止されることが、二重課税の排除を通じた国際投資の活性化等の観点から重要であるとしている。ただし、我が国に残された課題として、外国企業による越境取引(オンラインゲーム等)に対する消費税の適正化や、外国企業の日本子会社等による租税回避対策(利子以外の損金算入支払を制限する措置等)も検討する必要があるとし、万が一、ピラー1の発効が遅れた場合、国際的な合意が実現するまでの過渡的な措置として、日本としての具体的対応について検討を深めていく必要があるとも述べている。 ピラー2の最低税率課税については、収益源たるデータなど無形資産の軽課税国への移転の可否といった事業の特質によってグローバルな税負担格差が生じており、このような状況を是正し、グローバルに公正な競争環境を構築する観点から、各国がグループ企業の最終親会社に対してグローバルに共通する最低限の税負担を課すピラー2は、価値ある取組みであると述べる。ただし、今後の最終合意や国内法化に当たっては、①導入時期については我が国企業の競争相手国である欧米、中韓等との関係を考慮すべき、②現地に実体ある経済活動を有する事業(製造業)の税負担への配慮、③既存のCFC税制(海外子会社合算税制)との関係整理及びその簡略化、④国内における無形資産の形成及び利用を促進する税制の在り方について検討が必要としている。 最後に報告書は、中長期的な観点で国際課税の難局に対応する解決策として、国境税調整(輸出免税、輸入課税)の導入を通じて、創造された価値を消費地で課税する税制に移行する考え方を提案する。具体的には、米国で議論されている仕向地主義キャッシュフロー税(DBCFT:Destination Based Cash Flow Tax)である。DBCFTは、価値創造地の特定や各国間の価値の配分を求めない点で、現状の国際課税が抱える諸問題を一部抜本的に解決することに繋がる可能性があると結んでいる。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 433(掲載号)
#霞 晴久
2021/08/26

プロフェッションジャーナル No.433が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年8月26日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.433を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/08/26
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